今回は「ゲルマニウム」という元素について解説していきます。

ゲルマニウムは半導体としての性質をもつ珍しい元素です。半導体ということもあり、元素群におけるゲルマニウムの分類は非常に曖昧です。しかし、そのような理由から工業的な利用価値は極めて高い。この記事では、ゲルマニウムの物理学的および化学的な性質だけでなく、それがどのような技術に応用されているのかという点も解説していく。ぜひ、この機会にゲルマニウムについての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

ゲルマニウムについて学ぼう!

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皆さんはゲルマニウムという元素のことをご存じでしょうか?理科の授業でゲルマニウムについて取り上げられないこともあり、この元素の知名度はあまり高くないはずです。しかしながら、ゲルマニウムは私たちの生活を支える重要な物資であり、決して価値のない化学物質ではありません。

今回の記事では、化学や物理学の視点に工学の知識も加えて、ゲルマニウムがどのような元素であるのかを解明していきますね。知っておいて損はない情報をまとめたので、ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。それでは早速説明をはじめます。

ゲルマニウムとは?

ゲルマニウムとは?

image by Study-Z編集部

ゲルマニウムは元素番号が32典型元素です。ゲルマニウムは元素記号でGeと表記され、半金属に分類されます。また、同族元素のケイ素(シリコン)と同じ半導体でもありますよ。以上のことを知っただけで、ゲルマニウムがいかに特殊な物質であるかが理解できますよね。

また、単体のゲルマニウムは共有結合結晶を構成しており、その構造はダイヤモンドと同じ四面体構造になります。このことから、ゲルマニウムは比較的安定した物質であることがわかりますよ。

ゲルマニウムの発見

ゲルマニウムの存在は、元素周期表という概念を作ったメンデレーエフによって予想されていました。その約15年後に、ヴィンクラーという学者がドイツのフライベルグにある鉱山で、アージロード鉱を発見したのです。

この鉱石にゲルマニムが含まれていました。この発見により、メンデレーエフとヴィンクラーの両者の功績がたたえられたのですね。そして、ヴィンクラーの出身国であるドイツの古代ローマ時代の名称に由来して、ゲルマニムという名前がつけられました

ゲルマニウムの毒性

ゲルマニウムの化合物であるプロパゲルマニウムはB型肝炎の治療薬として認められています。このように聞くと、ゲルマニウムは安全な物質であるように思われますよね。しかしながら、ゲルマニウムとその化合物による健康被害も確認されており、必ずしも安全な物質とは言えないのです

例えば、プロパゲルマニウムの副作用として、消化器の障害脱毛などが報告されています。また、ゲルマニウム系の化合物による死亡事例も確認されていますよ。このような事情から、日本の厚生労働省はゲルマニウムの使用に関する注意喚起を度々行っています。

ゲルマニウムの分布

ゲルマニウムに単体は自然界にはほとんど存在せず、化合物として鉱物中に含まれています。ゲルマニウムを含む鉱石の中で最も有名なものは閃亜鉛鉱です。また、ゲルマナイト・硫銀ゲルマニウム鉱などにもゲルマニウムが含まれています。

現在、ゲルマニウムの主要産出国は中華人民共和国であり、その生産量は全世界の生産量の6割以上を占めていますよ。ちなみに、2000年代初頭のゲルマニウム産出国トップはアメリカ合衆国でした。

\次のページで「ゲルマニウムの応用例」を解説!/

ゲルマニウムの応用例

ここまで、ゲルマニウムの性質や特徴について一通り学んできました。それをもとに、本チャプターでは、ゲルマニウムが実際にどのような技術に応用されているのかを学んでいきます。ゲルマニウムの応用例について知ることで、ゲルマニウム自体についての理解も深まりますよ。

今回は具体的に、電子工学分野エネルギー分野放射線分野光学分野におけるゲルマニウムの活用方法について述べます。それぞれの分野でゲルマニウムのどの性質が活かされているのかを考えながら、記事を読み進めてみてください。

電子工学分野:ダイオードなどの半導体

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現在、ダイオードやトラジスタなどの半導体部品の原料には、シリコンを用いることが多くなっています。ですが、かつてはシリコンの精製が技術的に難しく、単体の抽出が容易なゲルマニウムが半導体部品の原料になっていました

そして、シリコンが主流になった今、ゲルマニウムの活躍はもうないと思う方も多いかもしれません。ですが、現在ゲルマニウムが再び日の目を浴びています。実は、ゲルマニウムによる半導体には、高速スイッチングが可能であるといったポテンシャルを秘めており、次世代半導体として期待が集まっているのです

エネルギー分野:太陽電池

Perovskite solar cells 1.jpg
By Stanford ENERGY, Video by Mark Shwartz - https://www.youtube.com/watch?v=MJqh5A3A2Cs, CC BY 2.5, Link

ゲルマニウムは、次世代太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」の添加剤になることが期待されていますよ。ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池と発電効率は同じで、折り曲げることができるなどフレキシブル性に優れたものになっています。

この太陽電池に、ゲルマニウムナノ粒子を添加すると、発電効率が向上することが近年になって明らかになってきました。この発見により、ゲルマニウムはエネルギー分野を支える重要な資源になりつつあるのです。

放射線分野:ガンマ線検知器

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ガンマ線と呼ばれる放射線が、ゲルマニウム半導体に入射すると、半導体素子内の電場が変化します。これを電気的に測定することで、空間中のガンマ線量を間接的に知ることができますよね。この仕組みを応用したものが「ゲルマニウムガンマ線検知器」です。

この装置は、原子力発電所周辺の環境モニタリング自然放射線のモニタリングなどに用いられています。私たちの安全を守るためにも、ゲルマニウムは必要不可欠な資源になっているのですね。

光学分野:赤外線レンズ

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赤外線カメラは、物体から放出される赤外線の強度を可視化するためのカメラです。暗闇でも被写体を写すことができるので、赤外線カメラは防犯や安全保障の分野などで活用されています。

当たり前のことではありますが、赤外線カメラのレンズは赤外線をよく透過する必要がありますよ。ゲルマニウムは数ある元素の中でも赤外線透過率が高いので、赤外線レンズの用途に適しているのです

ゲルマニウムについて学ぶ意義

ゲルマニウムは、何年も前から存在する枯れた技術から最先端のハイテク技術に至るまで幅広い分野で活躍している元素です。また、ゲルマニウム自体がもつ特殊性のことも考慮すると、今後も需要がなくなることはない元素であると考えられます。ですから、ゲルマニウムについての雑学は必ずこれからも役に立つはずです。

この記事では、ゲルマニウムについて性質から用途まで詳しく説明しています。ぜひこの機会に、ゲルマニウムについての知識を身につけてみてくださいね。

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ゲルマニウムとはどのような元素?半導体部品の原料となる物質を現役理系学生ライターが5分で徹底わかりやすく解説!

今回は「ゲルマニウム」という元素について解説していきます。

ゲルマニウムは半導体としての性質をもつ珍しい元素です。半導体ということもあり、元素群におけるゲルマニウムの分類は非常に曖昧です。しかし、そのような理由から工業的な利用価値は極めて高い。この記事では、ゲルマニウムの物理学的および化学的な性質だけでなく、それがどのような技術に応用されているのかという点も解説していく。ぜひ、この機会にゲルマニウムについての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

ゲルマニウムについて学ぼう!

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皆さんはゲルマニウムという元素のことをご存じでしょうか?理科の授業でゲルマニウムについて取り上げられないこともあり、この元素の知名度はあまり高くないはずです。しかしながら、ゲルマニウムは私たちの生活を支える重要な物資であり、決して価値のない化学物質ではありません。

今回の記事では、化学や物理学の視点に工学の知識も加えて、ゲルマニウムがどのような元素であるのかを解明していきますね。知っておいて損はない情報をまとめたので、ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。それでは早速説明をはじめます。

ゲルマニウムとは?

ゲルマニウムとは?

image by Study-Z編集部

ゲルマニウムは元素番号が32典型元素です。ゲルマニウムは元素記号でGeと表記され、半金属に分類されます。また、同族元素のケイ素(シリコン)と同じ半導体でもありますよ。以上のことを知っただけで、ゲルマニウムがいかに特殊な物質であるかが理解できますよね。

また、単体のゲルマニウムは共有結合結晶を構成しており、その構造はダイヤモンドと同じ四面体構造になります。このことから、ゲルマニウムは比較的安定した物質であることがわかりますよ。

ゲルマニウムの発見

ゲルマニウムの存在は、元素周期表という概念を作ったメンデレーエフによって予想されていました。その約15年後に、ヴィンクラーという学者がドイツのフライベルグにある鉱山で、アージロード鉱を発見したのです。

この鉱石にゲルマニムが含まれていました。この発見により、メンデレーエフとヴィンクラーの両者の功績がたたえられたのですね。そして、ヴィンクラーの出身国であるドイツの古代ローマ時代の名称に由来して、ゲルマニムという名前がつけられました

ゲルマニウムの毒性

ゲルマニウムの化合物であるプロパゲルマニウムはB型肝炎の治療薬として認められています。このように聞くと、ゲルマニウムは安全な物質であるように思われますよね。しかしながら、ゲルマニウムとその化合物による健康被害も確認されており、必ずしも安全な物質とは言えないのです

例えば、プロパゲルマニウムの副作用として、消化器の障害脱毛などが報告されています。また、ゲルマニウム系の化合物による死亡事例も確認されていますよ。このような事情から、日本の厚生労働省はゲルマニウムの使用に関する注意喚起を度々行っています。

ゲルマニウムの分布

ゲルマニウムに単体は自然界にはほとんど存在せず、化合物として鉱物中に含まれています。ゲルマニウムを含む鉱石の中で最も有名なものは閃亜鉛鉱です。また、ゲルマナイト・硫銀ゲルマニウム鉱などにもゲルマニウムが含まれています。

現在、ゲルマニウムの主要産出国は中華人民共和国であり、その生産量は全世界の生産量の6割以上を占めていますよ。ちなみに、2000年代初頭のゲルマニウム産出国トップはアメリカ合衆国でした。

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