今回は「ヒートアイランド現象」について解説していきます。

ヒートアイランド現象は、急速な都市化が招く環境問題のことです。ヒートアイランド現象によって、都市部の人々は異常気象や健康影響にさらされることになるぞ。また、ヒートアイランド現象は都市におけるエネルギー消費の増大も引き起こし、これは地球温暖化にも寄与する。それゆえ、環境問題について議論するときには、ヒートアイランド現象についての知識が必須となるでしょう。ぜひ、この機会にヒートアイランド現象についての理解を深めてくれ。

環境工学を専攻している現役理系学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。土壌、生態系、気象、地球温暖化について学んだこともある。

ヒートアイランド現象について学ぼう!

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皆さんはヒートアイランド現象という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?ヒートアイランド現象は、東京や大阪といった大都市で顕著になる環境問題です。日本では、都市化が急速に進んだ高度経済成長期以降に、この現象について注目が集まってきました

今回の記事では、ヒートアイランド現象のメカニズムについて深掘りをして、さらにその現象が私たち人間やその他の生物に対してどのような影響を及ぼすのかという点を考察していきますよ。それでは早速、ヒートアイランド現象についての解説をはじめます。

ヒートアイランド現象とは?

ヒートアイランド現象とは?

image by Study-Z編集部

ヒートアイランド現象は、都市部の気温がその周辺部の気温に比べて相対的に大きくなる現象のことをさします。ヒートアイランドの訳語は『熱の島』であり、これは都市部とその周辺の気温分布の断面を考えたときに、都市部が島のように浮かび上がることに由来していますよ

ヒートアイランド現象が世界で初めて観測された街はイギリスのロンドンであり、それは1810年代の出来事でした。当時のイギリスは産業革命期にあり、ロンドンが急速に都市化していたのです。ロンドンでのヒートアイランド現象は気象学者のリューク・ハワードによって発見されました。その後、欧米の各都市においてもヒートアイランド現象が確認されるようになったのです。

ヒートアイランド現象のメカニズム

続いて、ヒートアイランド現象のメカニズムについて考えてみましょう。ヒートアイランドの原因は主に3つあります。1つは土地利用の変化です都市部では森林や水田などに変わって、アスファルトやコンクリートによる土地の被覆が多くなります。これにより、都市部では植物の蒸散による地面から大気への熱移動量が少なくなり、地面に熱がこもりやすくなりますよ

もう1つの原因は、人口排熱にあります。人口密度の高い都市部では、単位面積当たりの空調などからの排熱量が多くなり、それが気温上昇に寄与するのです

3つ目の原因は、都市の形態に依存する放射冷却量の低下ですよ。都市部では建物の高層化や高密度化が進んでいるので天空率が低下し、夜間の放射冷却量が小さくなり、地面から熱が逃げにくくなります。以上が、ヒートアイランドの原因についての説明です。

\次のページで「ヒートアイランド現象による影響」を解説!/

ヒートアイランド現象による影響

ここからはヒートアイランド現象が人々やそのほかの生物にどのような影響を与えるのかということを考察していきましょう。今回は、異常気象人間への健康影響都市におけるエネルギー消費の増大生物への影響の4つをヒートアイランド現象が及ぼす影響としてご紹介します。

これらの影響を知ることで、ヒートアイランド現象がいかに深刻な環境問題であるかが理解できることでしょう。ヒートアイランド現象のメカニズムを思い出しながら、以下の記事を読み進めてみてください。

異常気象

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ヒートアイランド現象により、地表面が暖められた都市部ではゲリラ豪雨の原因となる積乱雲が発生しやすくなります。近年は関東地方の都市圏で、排水設備のキャパシティを大幅に超える降雨をもたらすゲリラ豪雨の発生も頻発するようになってきました。

また、都市部おける冬場の乾燥にもヒートアイランド現象が寄与していることが判明しています。ヒートアイランド現象により、気温が上昇することで飽和水蒸気量が大きくなり、都市部の相対湿度が低下しているのです。以上のような、ゲリラ豪雨や極端な乾燥といった異常気象がヒートアイランド現象により都市部で発生してしまうのですね

人間への健康影響

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ヒートアイランド現象による人間への健康影響の中で最も深刻なものが熱中症です。日本における東京などの都市の夏季平均気温は、郊外などのエリアに比べて3℃程度高くなっており、都市部における熱中症患者数が増加しています

最悪の場合、熱中症は死に至るケースもあるため、深刻な健康影響と言えるでしょう。今後、地球温暖化による気候変動の影響も相まって、都市部における熱中症のリスクはさらに増大する可能性もあるので注意が必要です。

\次のページで「都市におけるエネルギー消費の増大」を解説!/

都市におけるエネルギー消費の増大

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ヒートアイランド現象により夏季の都市部の気温が上昇すると、都市部における冷房需要は大きくなります。そして、冷房需要が高まると電力需要も大きくなりますよね。関東の都市圏におけるヒートアイランド現象による電力需要の増加量は最大で1時間あたり500万kWhになるという推計結果もありますよ。

そして、これだけの電気を作り出す過程で2000トン程度の二酸化炭素が放出されます。二酸化炭素は温室効果ガスで地球温暖化に寄与しますよね。つまり、ヒートアイランド現象が深刻化すると、地球温暖化もより深刻化するという悪循環に繋がってしまうのです

生物への影響

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ヒートアイランド現象は人間以外の生物にも影響を与えますよ大阪市では、中心市街地と大阪湾沿岸部でソメイヨシノの開花が最大で1週間程度差があることが確認されており、この現象の原因はヒートアイランドによる中心市街地の気温上昇にあると考えられています

また、本来であれば越冬できない昆虫がヒートアイランド現象により気温が上昇した都市で越冬することで、伝染病などを深刻化させてしまうケースもあるのです。実際、ヒートアイランド現象により、マラリアを媒介するハマダラカの生息域は広がりつつあります。

ヒートアイランドについて学ぶ意義

ヒートアイランド現象という言葉を耳にしたことはあるが、詳しくは知らなかったという方は決して少なくはないでしょう。ですが、ヒートアイランド現象が都市で生活する人々に与える影響は極めて深刻であり、他人事とは言えない状況にありますよね。

そして、少しでも多くの人が、ヒートアイランド現象について知ることが、この環境問題を解決するための第一歩となります。ぜひ、この記事を読んでヒートアイランド現象について詳しく学んでみてくださいね。

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地学地球大気・海洋熱力学物理理科生態系生物

3分で簡単ヒートアイランド現象!異常気象との関係は?現役理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「ヒートアイランド現象」について解説していきます。

ヒートアイランド現象は、急速な都市化が招く環境問題のことです。ヒートアイランド現象によって、都市部の人々は異常気象や健康影響にさらされることになるぞ。また、ヒートアイランド現象は都市におけるエネルギー消費の増大も引き起こし、これは地球温暖化にも寄与する。それゆえ、環境問題について議論するときには、ヒートアイランド現象についての知識が必須となるでしょう。ぜひ、この機会にヒートアイランド現象についての理解を深めてくれ。

環境工学を専攻している現役理系学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。土壌、生態系、気象、地球温暖化について学んだこともある。

ヒートアイランド現象について学ぼう!

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皆さんはヒートアイランド現象という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?ヒートアイランド現象は、東京や大阪といった大都市で顕著になる環境問題です。日本では、都市化が急速に進んだ高度経済成長期以降に、この現象について注目が集まってきました

今回の記事では、ヒートアイランド現象のメカニズムについて深掘りをして、さらにその現象が私たち人間やその他の生物に対してどのような影響を及ぼすのかという点を考察していきますよ。それでは早速、ヒートアイランド現象についての解説をはじめます。

ヒートアイランド現象とは?

ヒートアイランド現象とは?

image by Study-Z編集部

ヒートアイランド現象は、都市部の気温がその周辺部の気温に比べて相対的に大きくなる現象のことをさします。ヒートアイランドの訳語は『熱の島』であり、これは都市部とその周辺の気温分布の断面を考えたときに、都市部が島のように浮かび上がることに由来していますよ

ヒートアイランド現象が世界で初めて観測された街はイギリスのロンドンであり、それは1810年代の出来事でした。当時のイギリスは産業革命期にあり、ロンドンが急速に都市化していたのです。ロンドンでのヒートアイランド現象は気象学者のリューク・ハワードによって発見されました。その後、欧米の各都市においてもヒートアイランド現象が確認されるようになったのです。

ヒートアイランド現象のメカニズム

続いて、ヒートアイランド現象のメカニズムについて考えてみましょう。ヒートアイランドの原因は主に3つあります。1つは土地利用の変化です都市部では森林や水田などに変わって、アスファルトやコンクリートによる土地の被覆が多くなります。これにより、都市部では植物の蒸散による地面から大気への熱移動量が少なくなり、地面に熱がこもりやすくなりますよ

もう1つの原因は、人口排熱にあります。人口密度の高い都市部では、単位面積当たりの空調などからの排熱量が多くなり、それが気温上昇に寄与するのです

3つ目の原因は、都市の形態に依存する放射冷却量の低下ですよ。都市部では建物の高層化や高密度化が進んでいるので天空率が低下し、夜間の放射冷却量が小さくなり、地面から熱が逃げにくくなります。以上が、ヒートアイランドの原因についての説明です。

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