みんなは「栄養段階」という用語を聞いたことはあるでしょうか。高校生物の生態系の分野で登場し、よく試験でも問われる内容です。そこで、この記事では栄養段階についてとエネルギー効率の計算の仕方を中心に、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

栄養段階とは?

皆さんは、シマウマが草を食べ、ライオンがシマウマを食べるといったように捕食と被食の関係をテレビや教科書で目にしたことや、耳にしたことがあるでしょう。このように栄養(有機物)が植物から草食動物、肉食動物へと徐々に移動していく各段階のことを「栄養段階(えいようだんかい)」と呼びます。実は栄養段階の各段階は、生物が有機物を吸収する方法によって決まるのです。

食物連鎖における各段階とその個体数は?

食物連鎖における各段階とその個体数は?

image by Study-Z編集部

栄養段階の各段階は「生産者」、「消費者」、「分解者」の3つに分類することができます。普通、生態系では被食者に比べて捕食者の方が大形であることから、上記の図のように栄養段階が上がるにつれて個体数も減っていくのです。それでは、栄養段階の各段階について詳しく学んでいきましょう。

1. 生産者

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「生産者」とは緑色植物のように、自ら二酸化炭素や水、金属などの「無機物」から「有機物」を合成する生物のことを指します。植物の場合、光合成によって無機物である二酸化炭素から有機物であるデンプンを合成して体を構成していますね。植物や海藻、プランクトンなどの光合成生物や硝化細菌や硫黄細菌といった化学合成をする化学合成生物は栄養段階の「生産者」に当たるのです。

2. 消費者

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「消費者」とは、生産者とは異なり、自分で無機物から有機物を合成できないことから、他の生物を食べることで有機物を体内に取り込んでエネルギーとして利用する生物のことです。消費者の中でも、生産者から有機物を得る消費者のことを「一次消費者」と呼びます。そして、その一次消費者から有機物を得る消費者のことを「二次消費者」と言い、これが「三次消費者」、「四次消費者」…と続いていくのです。私たち人間も牛肉や鶏肉、野菜を摂取して、そこから有機物を得て生きているので、高次的な消費者であることが言えます。

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3. 分解者

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「分解者」とは土壌中などに生息する菌類や細菌類などの生物で、生産者や消費者の排泄物や遺骸の有機物を取り入れて、それをエネルギー源にして生きています。

実は、分解者と消費者の境界は曖昧であることがあるのです。例として、ミミズやダンゴムシは消費者でありながら、生物の死骸の有機物を取り込んでいることもあるので、分解者にも当てはまります。このように、分解者は少し複雑な段階ではありますが、基本的に生物の死骸や排せつ物から栄養を得ていると考えると良いでしょう。

栄養段階と物質収支

栄養段階と物質収支

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生物が捕食と被食を繰り返すことで、エネルギー源となる栄養が移動するのでしたね。その栄養が「どの段階でどのように使われたのか」、「どれくらい生物体内に残ったのか」、などを知るには「物質収支」を理解する必要があります。「物質収支」とは、生態系内の各栄養段階での物質(栄養)の出入りのことです。ここでは、生産者と消費者の物質収支について学習していきましょう。

1. 生産者

生産者の物質収支は上記のグラフのようになります。各用語について以下にまとめました。

現存量:その生物の体にもともとあった有機物量のこと。

成長量:生産者の成長にまわした有機物量のこと。

被食量:一次消費者によって食べられた有機物量のこと。

枯死量:枯れて失ってしまった有機物量のこと。

呼吸量:生産者が生きていくために必要な呼吸に使われた優位物量のこと。

総生産量:生産者が光合成などによって作った全体の有機物量のこと。

純生産量:総生産量から呼吸量を引いた有機物量のこと。

このように、生産者が持つ有機物量は上記のように分けることができます。現存量と総生産量を合わせたものが生産者の全体の有機物量になることがわかりますね。

\次のページで「2. 消費者」を解説!/

2. 消費者

消費者の物質収支も上記のグラフの通りです。生産者でも使われた用語は消費者でも同じ意味になるので、説明は省略しますね。

死亡量:消費者の細胞などが死ぬことがあり、その失った分の有機物量のこと。

不消化排出量:消化しきれなかったことや吸収しきれなかったことで体外に排出される有機物量のこと。

摂食量:消費者が生産者を食べて取り入れた全体の有機物量のこと。

同化量:摂食量から不消化排出量を引いた有機物量のこと。つまり、体内に取り入れた有機物のこと。

純同化量:同化量から呼吸量を除いた有機物量のこと。

生産者と消費者で用語は異なりますが、有機物の役割としては同じですよね。

消費者のエネルギー効率の計算

「エネルギー効率」とは、ある栄養段階の1つ前の栄養段階のエネルギー量のうち、その栄養段階で利用できるエネルギー量の割合のことを言います。計算式は以下の通りです

エネルギー効率 (%) =( ある栄養段階の同化量 / 1つ前の栄養段階の同化量) × 100

ただし、生産者の場合、同化量ではなく総生産量で計算する。

この式を、一次消費者を使って簡単に説明すると、分母は「生産者が光合成で得た全有機物量」で分子は「一次消費者が体内に吸収した有機物量」になります。一次消費者の「摂食量」ではなく、「摂食量」から「不消化排出物量」を引いた「同化量」であることを忘れないようにしましょう。

このエネルギー効率の計算は試験などでよく問われるので、しっかりと覚えるようにしましょう。

生物は栄養段階のどこかに属する!

栄養段階とは生産者から一次消費者、二次消費者へと次々に栄養(有機物)が移動していく各段階のことでしたね。生物が活動するためのエネルギー源となる有機物(物質)が、各栄養段階でどれくらい利用され、どれくらい排出されたのかなどは、物質収支で分かるのでした。物質収支に登場する用語は似ていて複雑ですが、実際に自分でグラフを繰り返し書くと、さらに理解が深まり覚えられるので、ぜひ試してみてくださいね。

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理科生き物・植物生態系生物

栄養段階って何?エネルギー効率の計算方法についても現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは「栄養段階」という用語を聞いたことはあるでしょうか。高校生物の生態系の分野で登場し、よく試験でも問われる内容です。そこで、この記事では栄養段階についてとエネルギー効率の計算の仕方を中心に、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

栄養段階とは?

皆さんは、シマウマが草を食べ、ライオンがシマウマを食べるといったように捕食と被食の関係をテレビや教科書で目にしたことや、耳にしたことがあるでしょう。このように栄養(有機物)が植物から草食動物、肉食動物へと徐々に移動していく各段階のことを「栄養段階(えいようだんかい)」と呼びます。実は栄養段階の各段階は、生物が有機物を吸収する方法によって決まるのです。

食物連鎖における各段階とその個体数は?

食物連鎖における各段階とその個体数は?

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栄養段階の各段階は「生産者」、「消費者」、「分解者」の3つに分類することができます。普通、生態系では被食者に比べて捕食者の方が大形であることから、上記の図のように栄養段階が上がるにつれて個体数も減っていくのです。それでは、栄養段階の各段階について詳しく学んでいきましょう。

1. 生産者

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「生産者」とは緑色植物のように、自ら二酸化炭素や水、金属などの「無機物」から「有機物」を合成する生物のことを指します。植物の場合、光合成によって無機物である二酸化炭素から有機物であるデンプンを合成して体を構成していますね。植物や海藻、プランクトンなどの光合成生物や硝化細菌や硫黄細菌といった化学合成をする化学合成生物は栄養段階の「生産者」に当たるのです。

2. 消費者

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「消費者」とは、生産者とは異なり、自分で無機物から有機物を合成できないことから、他の生物を食べることで有機物を体内に取り込んでエネルギーとして利用する生物のことです。消費者の中でも、生産者から有機物を得る消費者のことを「一次消費者」と呼びます。そして、その一次消費者から有機物を得る消費者のことを「二次消費者」と言い、これが「三次消費者」、「四次消費者」…と続いていくのです。私たち人間も牛肉や鶏肉、野菜を摂取して、そこから有機物を得て生きているので、高次的な消費者であることが言えます。

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