今回はプラスチックについて考えていこう。
今やプラスチック製品は世界中にあふれている。原料や製造方法は知っているでしょうか?また、ペットボトルがリサイクルできることは有名だと思うが、他のプラスチックごみもリサイクルされているんです。
そんなプラスチックについて、大学では有機合成の実験が大好きだったというライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

プラスチックとはそもそも何?

image by iStockphoto

プラスチックと聞いて何が思い浮かびますか?食べ物を入れる容器やペットボトル、歯ブラシなどの生活雑貨やスマートフォンなどの電化製品。わたしたちはプラスチックに囲まれて生活していると言っても過言ではありません。今回はそんなプラスチックについて、理解を深めていきましょう。

プラスチックとは

プラスチックとは、人工的に作られた高分子物質のひとつで、「合成樹脂」とも呼ばれます。樹脂は大きく分けて2種類あり、ウルシや松ヤニなどの自然の中で生成されているものは天然樹脂。石油などの化学資源から生成されたものが合成樹脂です。

プラスチックという名前は、ギリシャ語の「プラスティコス」が語源になっています。これは「形成する」という意味で、プラスチックは昔からさまざまな形となって世の中に存在していたことがわかりますね。

プラスチックの3つの特徴

プラスチックの最大の特徴は、加熱することでいろいろな形に変えられることです。プラスチックの融点はだいたい100℃前後と高温ではないので、加工がしやすい素材といえます。原料に染料などを混ぜれば簡単に着色できますし、溶けたプラスチックを多数の同じ型に流し込んでいけば大量生産もできますね。

2つめの特徴は、金属やガラスに比べて軽量で丈夫なことです。プラスチックは錆びたりする心配もありません。

そして3つめの特徴は、絶縁性が高いということです。その特徴を活かして、プラスチックは多くの電化製品に利用されています。電気を通しづらい分帯電し、静電気か起きやすくなるので注意が必要です。

プラスチックの種類

プラスチックの種類

image by Study-Z編集部

プラスチックは、熱を加えたときの変化で2種類に分類されます。熱すると溶けて冷やすと固まる熱可塑性樹脂と、徐々に固まって元には戻らない熱硬化性樹脂です。

さらに熱可塑性樹脂は、溶けた状態から固まるときの分子の状態で2つに分けられています。固まったときに分子が規則正しく並んだ部分を持つ結晶性樹脂不規則になっている状態のままなのが非晶性樹脂です。

現在プラスチックは、なんと100種類以上存在します!透明度や強度など、それぞれの用途に適したプラスチックが使われているのですね。

\次のページで「プラスチックができるまで」を解説!/

プラスチックができるまで

プラスチックの製造は原油から始まります。プラスチックができるまでの過程をみていきましょう。

プラスチックの主原料「ナフサ」

まず、原油は石油精製工場へ運ばれます。ここで原油を熱すると、常圧蒸留によって沸点の差を利用してガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油、アスファルトと石油製品を分けることができるのです。プラスチックは、この中の「ナフサ」から精製されています

ちなみに、日本では原油はほぼ採取できません。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの国から輸入しているので、これからも友好関係を築いていかなければなりませんね。

プラスチックの製造方法

image by iStockphoto

まず、ナフサを熱してエチレン、プロピレンやベンゼンなどの基礎化学製品を作ります。これらを「モノマー」と呼び、水素と炭素から成る分子です。これらを繋いでいくと、「ポリマー」と呼ばれるポリエチレンやポリ塩化ビニルなどのプラスチックが出来上がります

プラスチックを製品化するには、目的に合った性質や外観にしなければいけません。そこで強化剤や着色剤などをブレンドし、「ペレット」という成形材料を作ります。このペレットからいろいろな形のプラスチック製品が作られていくのです。

プラスチックのリサイクル法は3つ!

image by iStockphoto

世界では、プラスチックごみ削減のための活動が積極的に行われています。そのために重要なのはリサイクル。プラスチックの主なリサイクル法は3つです。

マテリアルリサイクルでそのまま再利用!

image by iStockphoto

「マテリアル」とは、原料・材料という意味があります。その名の通り、マテリアルリサイクルとはプラスチックの廃棄物を、プラスチックの原料として再利用する方法です。

例えば、家庭でゴミとなったペットボトルは、リサイクル工場へ運ばれて粉砕、加工されてペレットなどの再生原料となります。ペレットとはプラスチックを加工しやすいように3~5mmほどの粒子状にしたものです。これらが、衣類や文房具、電化製品の部品などに加工されていくのですね。

\次のページで「ケミカルリサイクルで化学的に再生!」を解説!/

ケミカルリサイクルで化学的に再生!

ケミカルリサイクルは、プラスチックの廃棄物を化学的に処理し、新たに他の製品の原料としてリサイクルする方法です。

ケミカルリサイクルには、主に下記のような技術が用いられています。

・原料・モノマー化:原料やモノマーに戻して再度プラスチックにする方法

・高炉原料化:製鉄所などの高炉でコークス(石炭を乾留して炭素の部分だけを残した原料)の代わりに還元剤として用いる方法。

・ガス化:プラスチック廃棄物をガスにして工業的に再利用する方法

・油化:プラスチック廃棄物を石油に戻して再利用する方法

サーマルリサイクルで新たなエネルギーに!

サーマルリサイクルとは、廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを回収し、再利用する方法です。プラスチック製品には、再利用が難しい物質も含まれています。それらをただ処理するのではなく、焼却時に発生する熱エネルギーを発電や温浴施設などに利用しているのです。

プラスチックの問題点と取り組み

image by iStockphoto

世界で深刻化しているのは、プラスチック廃棄物が海洋へ流れ着くことで発生する「海洋プラスチック問題」です。ウミガメがクラゲと間違えてビニール袋を飲み込んでしまうというケースを聞いたことがある人も多いでしょう。また、漁網に絡まって身動きが取れなくなり命の危機が生じるなど、海洋生物の生態系に大きな影響を及ぼします

石油から作られるプラスチックは自然分解しないので、プラスチックごみを削減していかなければいけません。そのために、日本ではスーパーやコンビニなどのレジ袋の有料化や、カフェのストローを紙製に変えるなど、さまざまな取り組みを行っているのです。

また、石油を使わずトウモロコシなどの植物由来の原料で作られる「バイオマスプラスチック」が注目されています。

バイオマスプラスチック:バイオマスを原料としたプラスチックと生分解性を持つプラスチックの総称。元来地上にある植物を原料とするため、地上の二酸化炭素の増減に影響を与えないカーボンニュートラルの性質をもつ材料とされる。

\次のページで「プラスチックは環境に優しくなりつつある素材!」を解説!/

プラスチックは環境に優しくなりつつある素材!

プラスチックは、熱によって形を変えられるのと軽くて丈夫な特徴があることから,扱いやすい素材であることがわかりますね。石油からナフサを精製し、プラスチックができるまでの過程は理解できたでしょうか?

プラスチックのリサイクル方法を3つ紹介しましたが、一方で適切に処理されなかったプラスチックによる環境汚染が問題になっています。今後プラスチックの使用量を減らすと同時に、自然由来の原料を用いたバイオマスプラスチックの利用などで、自然に優しい素材になっていくことを期待したいですね。

" /> プラスチックはどう作られる?作り方から素材・特徴・問題点までを理系ライターが詳しくわかりやすく解説! – Study-Z
化学理科

プラスチックはどう作られる?作り方から素材・特徴・問題点までを理系ライターが詳しくわかりやすく解説!

今回はプラスチックについて考えていこう。
今やプラスチック製品は世界中にあふれている。原料や製造方法は知っているでしょうか?また、ペットボトルがリサイクルできることは有名だと思うが、他のプラスチックごみもリサイクルされているんです。
そんなプラスチックについて、大学では有機合成の実験が大好きだったというライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

プラスチックとはそもそも何?

image by iStockphoto

プラスチックと聞いて何が思い浮かびますか?食べ物を入れる容器やペットボトル、歯ブラシなどの生活雑貨やスマートフォンなどの電化製品。わたしたちはプラスチックに囲まれて生活していると言っても過言ではありません。今回はそんなプラスチックについて、理解を深めていきましょう。

プラスチックとは

プラスチックとは、人工的に作られた高分子物質のひとつで、「合成樹脂」とも呼ばれます。樹脂は大きく分けて2種類あり、ウルシや松ヤニなどの自然の中で生成されているものは天然樹脂。石油などの化学資源から生成されたものが合成樹脂です。

プラスチックという名前は、ギリシャ語の「プラスティコス」が語源になっています。これは「形成する」という意味で、プラスチックは昔からさまざまな形となって世の中に存在していたことがわかりますね。

プラスチックの3つの特徴

プラスチックの最大の特徴は、加熱することでいろいろな形に変えられることです。プラスチックの融点はだいたい100℃前後と高温ではないので、加工がしやすい素材といえます。原料に染料などを混ぜれば簡単に着色できますし、溶けたプラスチックを多数の同じ型に流し込んでいけば大量生産もできますね。

2つめの特徴は、金属やガラスに比べて軽量で丈夫なことです。プラスチックは錆びたりする心配もありません。

そして3つめの特徴は、絶縁性が高いということです。その特徴を活かして、プラスチックは多くの電化製品に利用されています。電気を通しづらい分帯電し、静電気か起きやすくなるので注意が必要です。

プラスチックの種類

プラスチックの種類

image by Study-Z編集部

プラスチックは、熱を加えたときの変化で2種類に分類されます。熱すると溶けて冷やすと固まる熱可塑性樹脂と、徐々に固まって元には戻らない熱硬化性樹脂です。

さらに熱可塑性樹脂は、溶けた状態から固まるときの分子の状態で2つに分けられています。固まったときに分子が規則正しく並んだ部分を持つ結晶性樹脂不規則になっている状態のままなのが非晶性樹脂です。

現在プラスチックは、なんと100種類以上存在します!透明度や強度など、それぞれの用途に適したプラスチックが使われているのですね。

\次のページで「プラスチックができるまで」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: