今回は衣服等の素材のひとつ「再生繊維」をテーマに紹介していきます。
再生繊維は人工的に作られた環境にやさしい繊維で、主に衣服の繊維として使われている。
合成繊維と間違いやすいが、全く違うものなのでどのように違うか、どのような特徴があるか学んでいこう。

今回は「再生繊維」の種類や特徴、利用例を化学メーカーの研究員ライターY.oB(よぶ)と一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。天然物の化学修飾等の経験がある化学に詳しいライター。

再生繊維とは何?

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再生繊維とは廃木材等を一度溶かし、再度繊維にした化学繊維の総称。具体的には廃木材の主成分のセルロースを溶解した後、再紡糸(再生)します。天然由来のため生分解性があり、天然素材のデメリットを解消したものが再生繊維です。非常に優れた特徴を持っているため、環境への配慮を考えると今後も注目されていくでしょう。

この章では再生繊維にはどのような種類、特徴があるか解説していきます。

再生繊維の種類とは?

再生繊維の種類とは?

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セルロースを原料とした再生繊維にはレーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセルがあります。原料は同じですが、作り方に違いがあるため、それぞれ特徴を持たせた繊維です。再生繊維は主にこの4つに大別されています。合成繊維と混合しやすいですが、合成繊維は低分子から化学合成によって製造された化学繊維の総称。代表的な合成繊維はよく目にするナイロンやポリエステルです。

再生繊維の特徴とは?

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再生繊維は他の化学繊維と比較すると柔らかく、光沢があり、吸湿性に優れている特徴を持っています。また、合成繊維と比較すると染色しやすく発色が良い点や肌触りが良い点がメリットです。ペットボトルを原料にできるため、環境に配慮する事もできます。

一方、合成繊維より強度が弱く、シワになりやすく回復しにくい等がデメリットです。

レーヨンについて解説!

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レーヨンは昔に人造絹糸と呼ばれ、絹に似た光沢感やツヤのある繊維です。これは繊維の断面が絹に似ており、光を反射するため光沢感が出ています。レーヨン自体は環境に負荷がかからないが、製造時に使用する薬品の毒性や原料の問題がある。

この章ではレーヨンの良い点、悪い点や作り方を解説します。

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レーヨンのメリット、デメリットとは?

レーヨンの特徴は絹に似ています。肌触りが良く、光沢感があり、吸湿性に優れている。また、染料との相性が良い。この相性とは繊維を直接染める際に、染めやすい特徴がある。様々な色の服が売られているので意外かもしれないが、繊維と染料の相性は製品を製造する際の問題になりがちです。日々研究している事でもあります。

レーヨンの弱点は水に濡れると縮み、強度が大幅に落ちる点。また、耐摩耗性も低い。そのため、洗濯が難しく、シワが残りやすい等もデメリットです。

レーヨンの作り方は?

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レーヨンの原料は天然パルプです。木の細胞壁の主成分はセルロース。このセルロースを苛性ソーダでアルカリセルロースに変換します。次にアルカリセルロースを二硫化炭素で処理する事で、ビスコースと呼ばれる中間体が溶解。このビスコース溶液を細い孔が多数あるパスタマシンのようなものから、酸性溶液中に押し出すと繊維を形成しながらセルロースが再生されていく

キュプラについて解説!

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キュプラは銅アンモニアレーヨンとも呼ばれる再生繊維の一つ。レーヨンと比較すると耐久性や耐摩耗性が向上している。また、レーヨンと同様に肌触りの良さや光沢感やツヤを持つ。用途はスーツの裏地に使用される事が多いので、スーツの素材を確認してみてはいかがでしょうか。

この章ではキュプラの良い点、悪い点や作り方を解説します。

キュプラのメリット、デメリットとは?

キュプラのメリットはレーヨン同様に肌触りの良さ等があります。その他、キュプラの特徴として吸放湿性があり、吸湿すると外へ湿気を逃すため、蒸れません。また、静電気も逃すため、裏地に最適な素材です。繊維断面を観察すると、断面が丸い事が確認できます。この丸さが肌触りの滑りの良さを生み出しているのでしょう。

デメリットは濡れた時の脆さです。レーヨンから多少改善されたとは言え、まだ強度は低いと言えます。

キュプラの作り方は?

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キュプラの作り方はレーヨンとほぼ同じです。溶かして酸性溶液に押し出します。レーヨンと違う点は原料と溶かし方です。キュプラの原料はコットンリンターと呼ばれる綿花の種子の周りの短い繊維を使用します。これを銅アンモニア溶液に溶かし、酸性溶液で繊維を再生。押し出す時は繊維断面が丸くなるようにしているため、肌触りが良くなります。

\次のページで「ポリノジックについて解説!」を解説!/

ポリノジックについて解説!

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ポリノジックはレーヨンの重合度を上げたものになります。重合度を上げるとは分子量を大きくするという事で、より長い繊維にしたものです。長い繊維にする事でレーヨンの弱点を克服するために開発されました。レーヨンの光沢感やツヤを残しながら、水に濡れた時の強度の低下を抑えています。

この章では高級レーヨンのポリノジックについて学んでいきましょう。

ポリノジックのメリット、デメリットとは?

ポリノジックのメリットはレーヨンと比較すると水を吸うと強度が落ちる点は少し改善されている点です。これは吸湿性能を落とす事で改善しました。繊維としてのメリットはレーヨンと同様の性能があります。耐熱性能も優れており、軟化も溶融もしません。デメリットもレーヨンと同じでシワや洗濯の難しさが挙げられます。

ポリノジックの作り方は?

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ポリノジックの原料はレーヨンと同じく木材パルプです。作り方もほぼ同じですが、繊維にする際の成形を変えています。レーヨンの断面図は三角形、ポリノジックは円形です。この成形の仕方と分子量の大きさがポリノジックの性能を出し、レーヨンの弱点を抑えることに繋がっています。

リヨセルについて解説!

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リヨセルはユーカリの木材を原料とした再生繊維。リヨセルは度々テンセルと表記されますが、それぞれ別々の企業の製品名であった経緯があるためです。現在では企業が合併したため、総称をリヨセル、ブランド名をテンセルとなります。特徴は他の再生繊維と似ていますが、リヨセルは環境負荷低減に関して優秀です。

この章ではリヨセルについて学んでいきましょう。

\次のページで「リヨセルのメリット、デメリットとは?」を解説!/

リヨセルのメリット、デメリットとは?

リヨセルは他の再生繊維と同様にツヤや吸湿性、速乾性に優れています。他の再生繊維より優れている点は強度が高い点。水に濡れた際の縮みは少なく、レーヨンよりも高い強度を持っています。繊維の断面の形状はキュプラのように丸いため、肌触りが良い事もメリットです。

一方、摩擦には非常に弱く、毛羽立ちやすいため、生地が白化してしまう点はデメリットになります。白化してしまうと見た目の印象が悪くなるため、洗濯は十分に気をつけましょう。

リヨセルの作り方は?

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リヨセルの作り方はレーヨンと同様に一度溶かして再生します。違う点は原料の木材パルプがユーカリである事や、溶かすための溶剤が異なる事です。また、レーヨンのように中間体を経由せず溶解させるため、工程が少なく、環境負荷が低い。製造工程を完全に閉じた系で製造することができる事も環境負荷を低減させている。

再生繊維は優れた性能を持たせた材料

再生繊維は天然素材の短い繊維を長く再生した繊維です。安定した長さを持つ事で天然素材の弱点である耐久性の低さを少し克服しながら、天然素材の良さを持った優れた材料になります。再生繊維の原料自体は天然物のため、生分解性を持っており、環境問題を解決したい国際的な流れが追い風になるでしょう。そのため、今後も市場が大きくなる分野であると予想できます。

リヨセルは特に原料であるユーカリの成長が早く、成長に必要な水も少ない事がメリットです。原料自体が環境負荷が小さく、製造工程も負荷が比較的少なく、できた製品は生分解性がある大注目の素材になります。

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再生繊維とは一体何?種類や特徴、利用例などを現役研究員が5分でわかりやすく解説!

今回は衣服等の素材のひとつ「再生繊維」をテーマに紹介していきます。
再生繊維は人工的に作られた環境にやさしい繊維で、主に衣服の繊維として使われている。
合成繊維と間違いやすいが、全く違うものなのでどのように違うか、どのような特徴があるか学んでいこう。

今回は「再生繊維」の種類や特徴、利用例を化学メーカーの研究員ライターY.oB(よぶ)と一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。天然物の化学修飾等の経験がある化学に詳しいライター。

再生繊維とは何?

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再生繊維とは廃木材等を一度溶かし、再度繊維にした化学繊維の総称。具体的には廃木材の主成分のセルロースを溶解した後、再紡糸(再生)します。天然由来のため生分解性があり、天然素材のデメリットを解消したものが再生繊維です。非常に優れた特徴を持っているため、環境への配慮を考えると今後も注目されていくでしょう。

この章では再生繊維にはどのような種類、特徴があるか解説していきます。

再生繊維の種類とは?

再生繊維の種類とは?

image by Study-Z編集部

セルロースを原料とした再生繊維にはレーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセルがあります。原料は同じですが、作り方に違いがあるため、それぞれ特徴を持たせた繊維です。再生繊維は主にこの4つに大別されています。合成繊維と混合しやすいですが、合成繊維は低分子から化学合成によって製造された化学繊維の総称。代表的な合成繊維はよく目にするナイロンやポリエステルです。

再生繊維の特徴とは?

image by iStockphoto

再生繊維は他の化学繊維と比較すると柔らかく、光沢があり、吸湿性に優れている特徴を持っています。また、合成繊維と比較すると染色しやすく発色が良い点や肌触りが良い点がメリットです。ペットボトルを原料にできるため、環境に配慮する事もできます。

一方、合成繊維より強度が弱く、シワになりやすく回復しにくい等がデメリットです。

レーヨンについて解説!

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レーヨンは昔に人造絹糸と呼ばれ、絹に似た光沢感やツヤのある繊維です。これは繊維の断面が絹に似ており、光を反射するため光沢感が出ています。レーヨン自体は環境に負荷がかからないが、製造時に使用する薬品の毒性や原料の問題がある。

この章ではレーヨンの良い点、悪い点や作り方を解説します。

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