今回のテーマは「後生動物」です。

動物の分類については中学や高校で習ったこともあると思うが、「後生動物」といってもピンとこない人は多いのではないかと思う。今回は後生動物の定義をはっきりさせていくとともに、含まれる動物群や他の分類体系での位置づけについても見ていきます。

解説してくれるのは生物学オリンピックメダリストのNoctilucaです。

ライター/Noctiluca

高校時代に生物学の面白さに気づき、のちに国際生物学オリンピックで金メダルを受賞。現在は自分の「好き」を突き詰めるため、医学生として勉強中。

後生動物の定義とは?

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まず、後生動物(こうせいどうぶつ)の定義について見ていきましょう。どんな特徴を持つ生物が後生生物に分類されるのでしょうか?

動物の性質を持ち、かつ多細胞である生物の事

ある生物が後生動物に分類されるには以下の二つの条件が必要になります。

多細胞生物であること
動物の性質(従属栄養生物、動き回れるなど)を持つこと

かなり古い定義で、基準があいまい

この定義の「動物の性質」についてはかなりあいまいな基準で、「捕食によって栄養を得る」「動き回ることができる」などが基準とされています。ですが海綿やホヤのように自分から動くことはない生物もたくさんいますのですべての動物に使えるわけではないですね。

後生動物の特徴には何がある?

さて、先程説明した後生動物に分類されるための条件についてもう少し詳しく見ていきましょう。

真核生物で多細胞生物

まず後生動物の細胞は核膜がある「真核細胞」で構成されています。加えて「多細胞生物」である、つまり一つの個体に役割分担された様々な種類の細胞が存在するという意味です。

一方で対極である「単細胞生物」はすべての生命活動を一つの細胞で担っているのが大きな違いとなります。

\次のページで「他の生物を捕食することで栄養を摂取する、従属栄養生物である」を解説!/

他の生物を捕食することで栄養を摂取する、従属栄養生物である

二つ目の特徴は、従属栄養生物であることです。これは光合成などで自分から栄養を作ることはできず、他の生物から栄養を摂取する必要があるという意味になります。

同じく従属栄養生物である生物群として菌類がありますが、菌類は体外に消化酵素を分泌して消化した有機物を吸収するのに対し動物類は捕食という方法を取るのが大きな違いです。消化はほとんどの場合体内(あるいは細胞内)で行われます

有性生殖ができ、新しい個体は胚葉から発生する

続いて(すべてではないですが)多くの動物には有性生殖の機能が備わっています。精子か卵子(もしくは両方)を作れる個体が存在し、受精によって新しい個体を作ることができるということですね。

発生した新しい個体は細胞分裂を繰り返してより複雑な器官を形成しますが、初期の段階で細胞が2-3種類の層に分かれます。それぞれの層が違う器官に分化していくのですがこれらの細胞層を「胚葉」と呼んでいるのです。これは海綿動物以外、すべての後生動物にみられます。

動き回ることができる

この特徴も必須ではないですが、多くの動物は何らかの形で動き回るための器官(筋肉など)を持っています。他の生き物を能動的に捕食するために動き回れることは大きなアドバンテージとなりますので、高等動物になるにつれて筋肉や神経系が発達していく傾向があるのです。

後生動物に含まれる生物には何がある?

後生動物に含まれる生物には何がある?

image by Study-Z編集部

続いて後生動物に含まれる動物群をざっくりと分けて紹介します。

後生動物はまず「海綿生物」と「真正後生動物」に分けられ、そして真正後生動物はざっくりと「刺胞動物+有櫛動物」、「前口生物」と「後口生物」の3つのグループに分けることができますね。詳しく見ていきましょう。

海綿動物

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まず、一番原始的な構造を持つ動物として分類されているのが海のスポンジ、「海綿動物」です。

このグループははっきりした組織の分化がありません。細胞間が緩くつながってスポンジ状の形をしているだけです。また、唯一後生動物で胚葉の発生がないグループでもあります。そのためこのグループだけ他の後生動物と区別しているのです。

\次のページで「刺胞動物+有櫛動物」を解説!/

刺胞動物+有櫛動物

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ここから先は発生段階で胚葉を形成する「真正後生動物」というグループです。真正後生動物のうち2層の胚葉(外胚葉と内胚葉)を形成するグループには「刺胞(しほう)動物」「有櫛(ゆうしつ)動物」があり、この特徴を「二胚葉性」と呼びます。

刺胞動物は獲物を仕留めるための毒針が入った袋、「刺胞」を持つグループで、多くのクラゲやイソギンチャクが属していますね。一方で有櫛動物は毒針を保持しておらず、代わりに粘液が入った「膠胞(こうほう)」で小さな生物をからめとって食べます。こちらのグループはクシクラゲという生物が代表です。

前口生物

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続いて外胚葉と内胚葉に加え、3層目の胚葉「中胚葉」も形成する動物に移ります(三胚葉性)。このグループはざっくりと「前口生物」そして「後口生物」に分けることができます。

前口生物とは消化管の発生時、肛門より口を先に形成する動物の事。先に口が来るので前口動物、ということですね。かなりの種類の動物がこのグループに含まれており、プラナリアが属する「扁形(へんけい)動物」、ミミズなどが含まれる「環形(かんけい)動物」、貝やイカ、タコ類を含む「軟体(なんたい)動物」などなど多種多様です。

後口生物

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最後に後口生物。こちらは肛門を形成した後に口が生成される動物の総称で、前口生物よりは比較的小さな生物群です。

ヒトデやウニ、ナマコに代表される「棘皮(きょくひ)動物」、そして脊索という器官を形成する「脊索(せきさく)動物」の2グループが含まれています。人間は脊索動物の一種ですのでこのグループに含まれますね。

後生動物は他の分類法ではどこに位置する?

最後に、他の分類法で後生生物の位置づけを見ていきます。

二界説では動物界の一部、五界説では動物界とほぼ同じ

まず生物を「動物界」と「植物界」だけに分ける二界説では、後生生物は動物界の一部となります。これは二界説の動物界に単細胞生物も含まれるためです。

そしてホイッタカーの五界説では、原生生物を動物界とは別の界に分類しているので後生生物と動物界の位置づけはほぼ同じとなります。

3ドメイン説では真核生物の一部、オピストコンタに属する

現在主流の生物分類法、3ドメイン説では「オピストコンタ(後方鞭毛生物)」の一部に含まれていますね。このグループは精子の後ろの部分に鞭毛がついているのが共通する特徴で、動物類の他に菌類や一部の原生生物も含まれます。

\次のページで「後生動物とは多細胞生物のうち、動物的な特徴を持つもの」を解説!/

後生動物とは多細胞生物のうち、動物的な特徴を持つもの

ここまで後生動物の特徴をまとめてみましたが、理解に役立ちましたか?そもそも定義自体が甘い部分があるのでつかみどころが難しいかもしれませんがざっくりとした全体像が把握できれば十分だと思います!

この記事では後生動物という広いテーマが主体ですが、「五界説」や「脊索動物」などの単語に興味を持たれましたら、それにフォーカスした記事も書いていますので是非読んでみてください!

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理科生物生物の分類・進化

後生動物って何だ?後生動物の特徴、含まれる生物群および他の分類体系との比較について生オリメダリストがわかりやすく解説

今回のテーマは「後生動物」です。

動物の分類については中学や高校で習ったこともあると思うが、「後生動物」といってもピンとこない人は多いのではないかと思う。今回は後生動物の定義をはっきりさせていくとともに、含まれる動物群や他の分類体系での位置づけについても見ていきます。

解説してくれるのは生物学オリンピックメダリストのNoctilucaです。

ライター/Noctiluca

高校時代に生物学の面白さに気づき、のちに国際生物学オリンピックで金メダルを受賞。現在は自分の「好き」を突き詰めるため、医学生として勉強中。

後生動物の定義とは?

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まず、後生動物(こうせいどうぶつ)の定義について見ていきましょう。どんな特徴を持つ生物が後生生物に分類されるのでしょうか?

動物の性質を持ち、かつ多細胞である生物の事

ある生物が後生動物に分類されるには以下の二つの条件が必要になります。

多細胞生物であること
動物の性質(従属栄養生物、動き回れるなど)を持つこと

かなり古い定義で、基準があいまい

この定義の「動物の性質」についてはかなりあいまいな基準で、「捕食によって栄養を得る」「動き回ることができる」などが基準とされています。ですが海綿やホヤのように自分から動くことはない生物もたくさんいますのですべての動物に使えるわけではないですね。

後生動物の特徴には何がある?

さて、先程説明した後生動物に分類されるための条件についてもう少し詳しく見ていきましょう。

真核生物で多細胞生物

まず後生動物の細胞は核膜がある「真核細胞」で構成されています。加えて「多細胞生物」である、つまり一つの個体に役割分担された様々な種類の細胞が存在するという意味です。

一方で対極である「単細胞生物」はすべての生命活動を一つの細胞で担っているのが大きな違いとなります。

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