小学生の頃から多くの人が慣れ親しんでいる鉛筆の芯ですが、まだまだお前たちが知らないことが多いんです。鉛筆の芯の成分や、宝石の王とも言えるダイヤモンドとの関係、シャープ芯との違いについて化学に詳しいライターsarasaと一緒に解説していきます。

ライター/sarasa

国立大学生物学科卒業。新卒で就職するも、学問の探求したさに大学心理学部に再入学。生粋の勉強バカな現役理系大学生が「鉛筆の芯」についておもしろ、わかりやすく解説していく。

鉛筆の芯の基本知識|HBなどの記号の意味や歴史

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小学生の頃からお世話になっている鉛筆にHBやHといった記号が書かれていますよね。でも実際どれだけ鉛筆の種類があって、その記号の意味を正確に知っている人は少ないのではないでしょうか?また、鉛筆がどのように誕生したのか、歴史についてお話していきます。

鉛筆の芯の記号の謎|H、HB、Bの他には?

私たちがよく使う鉛筆は「HB」のものではないでしょうか?HBは「Hard Brack」の略です。鉛筆の記号の正体は「Hard(硬さ)」「Black(黒さ)」の段階づけです。鉛筆の種類は「9H,8H,...2H,H,F,HB,B,...6B」まであります。

H:Hard(硬さ):折れにくく、シャープな文字になる

B:Black(黒さ):字が太く、濃い文字になる

F:Firm(ひきしまった):HBとBの中間

鉛筆の芯の発明歴史

1560年にイギリスで黒鉛が発見され、当初は細長く切ったものをヒモで巻いたり、木で挟み「書くもの」として使われていました。その後、1795年にニコラス・ジャック・コンテというフランス人が黒鉛に粘土を混ぜ、焼き固めることで鉛筆の芯の開発に成功しました。これが鉛筆の発明のスタートです。

鉛筆の芯の元素や構造について

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鉛筆の名前には「鉛(なまり)」という文字が使われていますよね。鉛筆の芯は黒鉛と呼ばれる鉱物を使って作られています。そのため、「鉛の筆」とかいて鉛筆と呼ばれるようになりました。鉛筆の原料である黒鉛の元素と構造について詳しく見ていきましょう。

\次のページで「鉛筆の芯の原素」を解説!/

鉛筆の芯の原素

黒鉛の原素はC(炭素)です。炭素が互いに結合することで、層状の結晶ができます。これが無数に集まり、黒鉛、鉛筆の芯のような大きな結晶になりますよ。黒鉛は、炭素の結合により層状であるため、一枚一枚の層が滑りやすくなっているのが特徴です。この滑りやすさが、鉛筆の描きやすさの秘訣ですね。

鉛筆の芯の化学構造

鉛筆の芯の原料である黒鉛は炭素の共有結合で層状の結晶を作っています。原子同士が持つ電子が不安定なため、共有結合して構造が安定することで結晶が生まれますよ。

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共有結合

・特徴

 非常に硬い

 融点*が非常に高い(*融点とはその結晶が解ける温度のこと)

・仕組み*

 不対電子が結合し、電子対になることで結晶構造が作られる。

 *上の図参照

鉛筆の芯はダイヤモンドと同じ?

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鉛筆の芯は炭素でできている結晶の集まりです。そして、ダイヤモンドも炭素でできている結晶になります。しかし、鉛筆の芯の原料である黒鉛は黒い・柔らかい特徴を持つのに対して、ダイヤモンドは白透明・硬い鉱物ですよね。同じ原素からできているようには思えませんね。果たしてそうなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

ダイアモンドの化学構造

ダイヤモンドは鉛筆の芯と同じく、C(炭素)が共有結合することによってできた結晶です。しかし、ダイヤモンドは鉛筆の芯と違う方法で共有結合しているため全く異なる性質を持っています。同じ共有結合でも異なる構造をしているものを同素体と呼びますよ。

鉛筆の芯からダイアモンドに変化できる?

鉛筆の芯からダイヤモンドに変化できます!ダイヤモンドは高温・高圧な環境でゆっくりと生成されます。そのため、ダイヤモンドに変化させるためには同じ環境を作ればいいのです。

しかし本物のダイヤモンドを作るには何億年とかかりますので簡単にお家で作ることは難しそうですね。

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鉛筆の芯とシャープ芯との違い

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鉛筆の芯を細くしたものが、シャープ芯なのでは?と思っている方も多いのではないでしょうか。細くしても折れないシャープ芯は鉛筆の芯と同じ黒鉛を使っているのですが、鉛筆の芯よりも高強度にするために原材料が工夫されています。

シャープ芯の作り方

シャープ芯ができるまでの工程は、「原材料を混ぜる→練る→形を作る→焼く→油状物を浸透させる」です。鉛筆の芯も同様の工程で作られます。油状物に浸す工程は、なめらかに書けるようにするための工程です。

鉛筆の芯とシャープペンシルの原材料は?

同じような工程を経る、鉛筆の芯とシャープ芯の決定的な違いは原材料です。鉛筆の芯は黒鉛と粘土から作られまが、シャープ芯は黒鉛とプラスチックから作られます。シャープ芯は細くても折れない強度が必要となるためプラスチックが使われていますよ。

鉛筆の芯が未来の材料?

私たちの生活に当たり前に存在している鉛筆ですが、鉛筆の芯の主な材料である黒鉛は貴重なものです。黒鉛は別名グラフェンと呼びます。研究材料としては、黒鉛よりもグラフェンと呼ぶことの方が一般的です。グラフェンの面白い研究をご紹介します。

鉛筆の芯「グラフェン」は世界一

黒鉛、グラフェンが未来の材料として研究が行われているのには理由があります。フラフェンが注目される理由は、グラフェンが世界一薄い層をつくることができ、伸縮性や柔軟性がありながらも強度が高いからです。グラフェンの硬さは鋼鉄の100倍もあります。

グラフェンは、あらゆる物質の中で最も速く電子や熱を通し、平面状での炭素原子の結合はダイヤモンドよりも強固です。さらに、安定した物質の元素としては、トップクラスの軽さです。

出典:「化学が導く鉛筆の中の未来材料」佐賀大学 理工学部 准教授 坂口 幸一先生

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電子回路への利用

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グラフェンは電気をよく通すという性質があります。現在の半導体は金属で作られていますが、金属はどれも比較的重い素材です。そのためいかに軽くて丈夫な金属を見つけるかという研究がされています。しかし、もしグラフェンを使って電子回路を作れると、従来より軽い電子機器ができるかもしれません。

どんな匂いも吸着する強力脱臭炭も作れる?

電子回路といった難しい話だけでなく、馴染みの深い脱臭炭を作る研究も行われています。脱臭炭もグラフェンと同じくC(炭素)からできているので、想像がつきやすいのではないでしょうか?2019年にはグラフェンだけを使用した、脱臭・傷に強い・最薄のパーカーも商品化されていますよ。

CUTTING EDGE CLOTHING WITH GRAPHENE INTEGRATED INTO EVERY FIBRE. ALL OUR FABRICS ARE EMPOWERED WITH THE STRONGEST, THINNEST, TOUGHEST MATERIAL YET DISCOVERED. WEARABLE SCIENCE FOR LEGENDARY LIVING.

(和訳)すべての繊維にグラフェンを採用したカッティングエッジの衣類。
私たちの布は、まだ発見されていない最強、最薄、最強の素材です。
身につけられる科学で伝説的な生き方を。

出典:GRAPHENE-X

使い慣れた鉛筆の芯は将来の利用方法に期待が集まる!

小学生の頃から馴染みがある鉛筆でも、まだまだ私たちの知らないことは沢山ありますね。また鉛筆の芯からもわかるように、化学は私たちの身の回りにあふれています。鉛筆の芯のように、既にあるものの使い道が変わるだけで私たちの生活は大きく変わることもある時代。ぜひ身の回りの化学にも興味を持って、日々を過ごしてみてください。

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化学原子・元素岩石・鉱物有機化合物物質の状態・構成・変化理科

鉛筆の芯とダイアモンドは同じ構造?成分やシャープペンシルとの違いを理系大学生がわかりやすく解説!

小学生の頃から多くの人が慣れ親しんでいる鉛筆の芯ですが、まだまだお前たちが知らないことが多いんです。鉛筆の芯の成分や、宝石の王とも言えるダイヤモンドとの関係、シャープ芯との違いについて化学に詳しいライターsarasaと一緒に解説していきます。

ライター/sarasa

国立大学生物学科卒業。新卒で就職するも、学問の探求したさに大学心理学部に再入学。生粋の勉強バカな現役理系大学生が「鉛筆の芯」についておもしろ、わかりやすく解説していく。

鉛筆の芯の基本知識|HBなどの記号の意味や歴史

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小学生の頃からお世話になっている鉛筆にHBやHといった記号が書かれていますよね。でも実際どれだけ鉛筆の種類があって、その記号の意味を正確に知っている人は少ないのではないでしょうか?また、鉛筆がどのように誕生したのか、歴史についてお話していきます。

鉛筆の芯の記号の謎|H、HB、Bの他には?

私たちがよく使う鉛筆は「HB」のものではないでしょうか?HBは「Hard Brack」の略です。鉛筆の記号の正体は「Hard(硬さ)」「Black(黒さ)」の段階づけです。鉛筆の種類は「9H,8H,…2H,H,F,HB,B,…6B」まであります。

H:Hard(硬さ):折れにくく、シャープな文字になる

B:Black(黒さ):字が太く、濃い文字になる

F:Firm(ひきしまった):HBとBの中間

鉛筆の芯の発明歴史

1560年にイギリスで黒鉛が発見され、当初は細長く切ったものをヒモで巻いたり、木で挟み「書くもの」として使われていました。その後、1795年にニコラス・ジャック・コンテというフランス人が黒鉛に粘土を混ぜ、焼き固めることで鉛筆の芯の開発に成功しました。これが鉛筆の発明のスタートです。

鉛筆の芯の元素や構造について

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鉛筆の名前には「鉛(なまり)」という文字が使われていますよね。鉛筆の芯は黒鉛と呼ばれる鉱物を使って作られています。そのため、「鉛の筆」とかいて鉛筆と呼ばれるようになりました。鉛筆の原料である黒鉛の元素と構造について詳しく見ていきましょう。

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