今回は大人が大好きな「ビールに炭酸があるのはなぜ」をテーマに紹介していきます。
ビールの泡はどうして出てくるか、どうして泡が消えないのでしょうか、どのような特徴があるか学んでいこう。

ビールの炭酸について化学メーカーの研究員ライターY.oB(よぶ)と一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。農学部出身で発酵に詳しい化学ライター。

ビールに炭酸ガスが出る理由とは?

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ビールの栓を開けた時のガスが抜けた音、そしてグラスにビールを注ぐと泡が出るシーンを見た事があるかと思います。このガスと泡の正体は炭酸ガスです。ビールのびんの中には炭酸ガス、つまり二酸化炭素が充填されており、開栓してグラスに注ぐと泡があふれ出てきます。

ではなぜ炭酸ガスが充填されているのでしょうか。この章ではビールのガスができる仕組みについて学んでいきましょう。

ビールの発酵とは?

ビールの発酵とは?

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ビールの炭酸ガスは、人工的にビンの中に入れたものではありません。サイダー等は人工的に炭酸ガスを充填しますが、ビールの炭酸ガスは自然にできるものです。自然にできる理由は発酵にあります。

ビールの原料は主に大麦とホップです。大麦中に含まれる糖をビール酵母が代謝してアルコールに変換され、この時に代謝物として二酸化炭素も出てきます。これがビールの炭酸ガスです。話は別になりますが、微生物の代謝が人が利用できる場合を発酵と言い、利用できない場合を腐敗と言います。

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人工的に充満させる理由は?

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人工的に充填されていないと上記にありますが、実は缶ビールや瓶ビールには充填されている場合があります。これは、ビールは空気中の酸素に触れると時間と共に酸化されていくからです。酸化されると味や風味が劣化していきます。酸素を追い出して、賞味期限を長くするための炭酸ガスです。

炭酸ガス以外には?

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炭酸ガスだけでなく、窒素ガスを混ぜたガスを使ったビールもあります

有名なのがギネスビール。このギネスビールは1950年代に混合ガスを用いる独自技術を開発しました。この混合ガスは炭酸ガスだけの製品と比較すると、泡がきめ細かく膨満感を抑えることができるといった特長を持っています。泡がきめ細かいと口当りもクリーミーに変化し、大変人気です。

炭酸ガスの重要性について解説!

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炭酸ガスは賞味期限を延ばすだけではありません。飲んだ時の喉越しが大きく変わります。極端な話ですが、ガスが抜けたビールは全く美味しくありません。逆に強炭酸すぎても好みが分かれてしまうでしょう。この章では炭酸ガスが持つ重要性、役割についてご紹介します。

日本人が好きな「キレ」とは?

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日本人がビールと言えば、ラガービール。このラガービールは炭酸ガスが爽快感を生み出し、飲んだ時にキレがあります。このキレとは後味がスッキリした爽快感の事です。

現在は密閉技術や冷蔵技術が進んでいるため、ビールのスタイルによって適切な炭酸ガスの量を充填できます。エールビールには強炭酸は合わないので少量を、ラガービールには強炭酸を充填。味に影響がある炭酸ガスの役割は非常に大きいです。

泡が持つ役割とは?

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ビール好きの多くが泡にこだわっています。グラスに注いだ時に、ビールと泡の比率は7:3が理想であると聞いたことがあるでしょうか。

泡の正体は炭酸ガスの気泡に付着したタンパク質やホップ樹脂です。基本的にはビールに含まれる炭酸ガスの量が多ければ多いほど、泡が多く発生。この泡は、ビールが空気と触れて味が変わってしまうのを防ぐという大切な役割も担っています。

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泡を長持ちさせるためには?

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泡が長持ちするとそれだけ味や風味が長持ちします。それでは長持ちさせるにはどのようにしたら良いでしょうか。答えは注ぎ方を変える事です。ビールメーカーが推奨している方法は3度に分けて注ぎ、1度目は泡が立つように高い位置から注ぐようにしましょう。グラスは冷凍庫で冷やす事でより効果があります。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

そもそもサイダーやコーラの炭酸ガスと異なり、泡が消えない理由はホップに含まれる樹脂が泡を長持ちさせているからです。

ビール業界も脱炭素社会

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炭酸ガス、つまり二酸化炭素は地球温暖化に及ぼす影響が最も大きな温室効果ガスです。二酸化炭素排出量の大部分は石炭、石油の消費やセメントの生産が占めています。

それと比較すると少量ですが、ビールを含む炭酸飲料の製造は二酸化炭素の排出がつきものです。そこで、ビール業界も二酸化炭素排出削減のための取り組みをしています。この章では炭酸ガスの影響や対策について学んでいきましょう。

ビールに含まれる温室効果ガスとは?

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ビールの温室効果ガスとは二酸化炭素の事です。温室効果ガスとは地表で反射した赤外線を熱として吸収し、地表に放出するガスの総称。このガスがないと地球の平均気温がマイナス19℃になると言われています。温暖化は温室効果ガスが多すぎる事で、温室効果により平均気温が上がっていく仕組みです。

二酸化炭素やフロンを減らそうと努力しているのは、量を増やしすぎないようにするためとなります。

炭酸ガスの環境への影響とは?

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ビール業界はどのくらい炭酸ガスを排出しているでしょうか。これはピーク時の1997年で約125万トン排出しています。日本の二酸化炭素排出量はこの当時10億トンありますので、割合から見ると微々たるものです。ビールの排出量を制限することで環境への負担が直接改善されることはないでしょう。

しかし、排出されていることは事実で、2050年に二酸化炭素実質排出量ゼロを目指しているため、対策は必要です。

二酸化炭素排出量削減への取り組みとは?

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ビール業界はピーク時から徐々に二酸化炭素排出量の削減を行なっています。それは製造工程での省エネルギー化や包装容器のリサイクル、そして製品の充填ガスの変更等です。また製造工程で排出された水からバイオメタンガスを利用した発電などの実証実験が行われています。

\次のページで「ビールの炭酸はこだわりが強い」を解説!/

ビールの炭酸はこだわりが強い

ビールの炭酸はビールの種類によって適切な量を充填するようにしています。よく見かけるビールのラガーは喉越しを良くするため、炭酸は強い。その他、黒ビールのような香り豊かなビールは炭酸は弱めです。また、泡が細かくなるような工夫がされている缶や、炭酸ガスの代わりに窒素ガスを充填する等、そのビールの特徴を活かすような泡の作り方がされています。

次にビールを見る機会があれば、泡の出方に注目してみてください。ビール業界の泡に対するこだわりは強いと感じます。泡が長持ちするような注ぎ方をする事で酸化を防ぎ、長く美味しくいただきましょう。

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ビールに炭酸があるのはなぜ?炭酸ガスが出る仕組みや泡が消えない理由などを現役研究員が5分でわかりやすく解説!

今回は大人が大好きな「ビールに炭酸があるのはなぜ」をテーマに紹介していきます。
ビールの泡はどうして出てくるか、どうして泡が消えないのでしょうか、どのような特徴があるか学んでいこう。

ビールの炭酸について化学メーカーの研究員ライターY.oB(よぶ)と一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。農学部出身で発酵に詳しい化学ライター。

ビールに炭酸ガスが出る理由とは?

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ビールの栓を開けた時のガスが抜けた音、そしてグラスにビールを注ぐと泡が出るシーンを見た事があるかと思います。このガスと泡の正体は炭酸ガスです。ビールのびんの中には炭酸ガス、つまり二酸化炭素が充填されており、開栓してグラスに注ぐと泡があふれ出てきます。

ではなぜ炭酸ガスが充填されているのでしょうか。この章ではビールのガスができる仕組みについて学んでいきましょう。

ビールの発酵とは?

ビールの発酵とは?

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ビールの炭酸ガスは、人工的にビンの中に入れたものではありません。サイダー等は人工的に炭酸ガスを充填しますが、ビールの炭酸ガスは自然にできるものです。自然にできる理由は発酵にあります。

ビールの原料は主に大麦とホップです。大麦中に含まれる糖をビール酵母が代謝してアルコールに変換され、この時に代謝物として二酸化炭素も出てきます。これがビールの炭酸ガスです。話は別になりますが、微生物の代謝が人が利用できる場合を発酵と言い、利用できない場合を腐敗と言います。

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