全身をめぐる血液。血液はどのように循環しているのでしょうか。血液の循環と言えば心臓ですが、心臓はどのような仕組みで拍動しているのでしょう。心臓から送り出された血液は血管を通り全身を網羅しますが、この血管はどのような経路を辿るのでしょうか。
血液の循環について、心筋の研究もしている医学生ライター、たけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験がある。人体全般と再生医療に興味あり。

血液循環の全体像

血液循環の全体像から見ていきましょう。

image by Study-Z編集部

血液循環の動力源は心臓です。心臓がポンプとなり全身に血液を行き渡らせています。手首の血管に触れると拍動を触れますよね。この拍動は、心臓が血液を血管内に押し出していることによります。このように末端まで拍動するということは、それほどの力で血液を押し出しているということ。拳大ほどの小さな臓器なのにすごいですよね。

血液は全身に酸素を届けていますが、この酸素は肺から取り入れられます。全身から心臓へ、心臓から肺へと送り出された血液は肺で酸素をキャッチし、逆に二酸化炭素を放出した後再び心臓へ。こうして新鮮になった血液は心臓というポンプにより全身に送り出されます。ちなみに、心臓を出てから全身を回り心臓に戻るルートを体循環、心臓を出てから肺を回り心臓に戻るルートを肺循環と言いますよ。

さて、血液は全身を巡るとお話ししましたが、ただ漠然と巡っているわけではありません。全身の臓器は、血液に対し様々な作用をもたらします。例えば腎臓。腎臓に入った血液は濾過作用を受け、必要なものは血液に戻され、不要なものは尿として排出されます。また、小腸を取り囲む血管の役割は、小腸から栄養を回収すること。小腸から栄養を回収した血液は、その後肝臓へ入ります。肝臓では、栄養の保存や解毒などが行われていましたね。他にも、脳や手足の筋肉、消化管など様々な臓器・組織に栄養を届ける役割を担っています。

心臓とは?

全身に血液を循環させている心臓について見ていきましょう。

心臓の形

心臓の形

image by Study-Z編集部

心臓は4つの部屋からできています。血液の流れの順に、右心房、右心室、左心房、左心室です。心房は、心臓の上の方に存在している壁の薄い小さな部屋。静脈と心室の境目に当たる部分です。心房の下にあるのは心室。心室は壁の厚い部屋で、心臓のポンプ機能のメインとも言える部分です。

さて、心臓に入る血管・心臓から出ていく血管を確認しましょう。先ほど確認した4つの部屋との関係は以下の通りです。

\次のページで「心臓の仕組み〜拍動のメカニズム〜」を解説!/

大静脈(上大静脈、下大静脈)→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈

心臓のポンプ機能に不可欠なのが「」。心臓の各部屋の間に存在しています。この弁があることで部屋の圧が高まり、一気に血液を流すことができるのです。心臓の弁には僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁4種類があります。大静脈と右心房の間、また肺静脈と左心房の間には弁は存在していないので注意してくださいね。僧帽弁と三尖弁は共に心房と心室の間に存在している弁なので、合わせて房室弁と言います。

さて、心臓を構成している心筋細胞は大まかに2種類固有心筋細胞と特殊心筋細胞です。固有心筋細胞はその名の通り筋肉細胞で、枝分かれのある不随意な横紋筋を構成しています。心臓の本体と言えますね。一方、特殊心筋は自ら活動電位を発生させることのできる特殊な細胞。心臓の中心に、心房から心室に向かう形で線維を構成し、心房と心室の固有心筋細胞たちをリズミカルに収縮させています。特殊心筋細胞で構成される線維を刺激伝導系と言い、上部から順に洞房結節、房室結節、ヒス束、プルキンエ線維。この刺激伝導系が自動的に電気信号を発してくれるから、心臓は簡単には止まることがないのですね。

心臓の仕組み〜拍動のメカニズム〜

心臓の拍動について少し詳しく見て見ましょう。心臓は、脳からの指令なしに自動で拍動する臓器です。右心房の上部に存在する洞房結節が自ら活動電位を発生させ、心臓の中央を通る刺激伝導系がこの電気信号を心臓全体に伝えています。脳から心臓へ向かう神経として交感神経や副交感神経などの自律神経も存在していますが、これらは心臓の自動能を調節する役割を果たすのみ。とはいえ、血液の循環で重要なのは血圧を一定に保つことですから、これらの神経系も不可欠です。

さて、刺激伝導系の刺激により固有心筋細胞に活動電位が発生。心筋細胞には細胞間にたくさんのギャップ結合が存在していますから、ある心筋細胞に発生した興奮は隣接する細胞にも素早く伝わります。こうして心臓全体が迅速に同期して収縮するのです。

血管とは?

次に、血管について見ていきましょう。

血管の種類

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血管には動脈と静脈があります。それぞれの定義は以下の通り。

\次のページで「代表的な動脈」を解説!/

動脈:心臓から全身に血液を送る血管

静脈:全身から心臓へ血液を戻す血管

動脈血:酸素を多く含み二酸化炭素の少ない血液

静脈血:酸素に乏しく二酸化炭素を多く含む血液

血管は心臓との方向関係で定義されましたが、血液は酸素や二酸化炭素の量により定義されます。非常に重要な定義なので押さえておきましょう。

代表的な動脈

代表的な動脈を以下に並べます。これらは全身の血管のごく一部です。

胸:大動脈、肺動脈、腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈

首:外頸動脈、内頸動脈

おなか:腹腔動脈、上腸間膜動脈、腎動脈、下腸間膜動脈

わき〜腕:腋窩動脈、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈

腰〜足:総腸骨動脈、外腸骨動脈、内腸骨動脈、大腿動脈

\次のページで「代表的な静脈」を解説!/

代表的な静脈

代表的な静脈を以下に並べます。これらは全身の血管のごく一部です。

胸:上大静脈、肺静脈、腕頭静脈、奇静脈

首:外頸静脈、内頸静脈

おなか:下大静脈、肝静脈、腎静脈

わき〜腕:腋窩静脈、上腕静脈、正中皮静脈

腰〜足:総腸骨静脈、大腿静脈、大伏在静脈

血液の一生とは?産生と破壊について!

血液はどのように生まれ、壊れるのでしょうか?

血液は骨髄で産生される

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血液は骨髄で産生されます。骨髄とは文字どおり骨の中央(髄)。骨髄に存在する造血幹細胞から赤血球、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、単球、T細胞、B細胞などが分化していくのです。ここまででお気づきの方もいるかと思うのですが、意外なことに骨にも血管が通っています。このため、骨髄で血液が産生されうるのですね。

血液は脾臓で破壊される

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血液を構成する血球は細胞なので寿命があります。寿命を迎えた血球、特に赤血球を破壊するのは脾臓。脾臓は、赤血球から鉄成分のみを取り出し骨髄に送ります。貴重な鉄分を再利用するための仕組みですね。脾臓は左脇に存在しています。

血液は全身を循環している!

ここまで血液の循環について見てきました。血液は、全身に酸素を運ぶ一種の臓器。血球は細胞だからです。

血液について混乱したときには、血液の成分に立ち戻って整理することをお勧めします。酸素、二酸化炭素、糖分、赤血球、白血球……。一口に血液と言っても、さまざまな成分が含まれていますよね。人体の理解には自分で書いてみて整理することが大切です。ぜひ一度自分で図にまとめてみてください。

この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。

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理科生物

血液はどのように循環するの?心臓や血管の仕組みを現役医学生がわかりやすく説明!

全身をめぐる血液。血液はどのように循環しているのでしょうか。血液の循環と言えば心臓ですが、心臓はどのような仕組みで拍動しているのでしょう。心臓から送り出された血液は血管を通り全身を網羅しますが、この血管はどのような経路を辿るのでしょうか。
血液の循環について、心筋の研究もしている医学生ライター、たけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験がある。人体全般と再生医療に興味あり。

血液循環の全体像

血液循環の全体像から見ていきましょう。

image by Study-Z編集部

血液循環の動力源は心臓です。心臓がポンプとなり全身に血液を行き渡らせています。手首の血管に触れると拍動を触れますよね。この拍動は、心臓が血液を血管内に押し出していることによります。このように末端まで拍動するということは、それほどの力で血液を押し出しているということ。拳大ほどの小さな臓器なのにすごいですよね。

血液は全身に酸素を届けていますが、この酸素は肺から取り入れられます。全身から心臓へ、心臓から肺へと送り出された血液は肺で酸素をキャッチし、逆に二酸化炭素を放出した後再び心臓へ。こうして新鮮になった血液は心臓というポンプにより全身に送り出されます。ちなみに、心臓を出てから全身を回り心臓に戻るルートを体循環、心臓を出てから肺を回り心臓に戻るルートを肺循環と言いますよ。

さて、血液は全身を巡るとお話ししましたが、ただ漠然と巡っているわけではありません。全身の臓器は、血液に対し様々な作用をもたらします。例えば腎臓。腎臓に入った血液は濾過作用を受け、必要なものは血液に戻され、不要なものは尿として排出されます。また、小腸を取り囲む血管の役割は、小腸から栄養を回収すること。小腸から栄養を回収した血液は、その後肝臓へ入ります。肝臓では、栄養の保存や解毒などが行われていましたね。他にも、脳や手足の筋肉、消化管など様々な臓器・組織に栄養を届ける役割を担っています。

心臓とは?

全身に血液を循環させている心臓について見ていきましょう。

心臓の形

心臓の形

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心臓は4つの部屋からできています。血液の流れの順に、右心房、右心室、左心房、左心室です。心房は、心臓の上の方に存在している壁の薄い小さな部屋。静脈と心室の境目に当たる部分です。心房の下にあるのは心室。心室は壁の厚い部屋で、心臓のポンプ機能のメインとも言える部分です。

さて、心臓に入る血管・心臓から出ていく血管を確認しましょう。先ほど確認した4つの部屋との関係は以下の通りです。

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