痛てて…。昨日、新型コロナウイルスワクチンのブースター摂取を受けたからか腕が痛いぞ。そもそもブースター効果とはといったものでしょう?今日は「ブースター効果」について生物に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院で免疫について研究し、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。

ブースター効果とは何かざっくりと解説!

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ブースター効果はワクチン接種の時によく耳にする言葉です。

ブースターとは、「増幅器」のことで、自然感染やワクチン接種で既に免疫が得られている状態で再感染したり、ワクチンの追加接種をすることで、より早く強い、免疫が得られる効果のことをブースター効果と言い、追加免疫効果とも呼ばれます。

ブースター接種は免疫の効果を高めるためのワクチン接種のことです。これにより、本来ある免疫機能をさらに向上させることができます。

ブースター効果はいつから発揮される?

ブースター効果はワクチン接種後すぐに発揮されます。

初めてのワクチン接種と異なり、ブースター効果を期待したブースター接種では既に体内に免疫(抗体)がある状態でワクチン接種を行うので速やかに抗体が産生され始めるからです。抗体の産生量がピークに達した時が最も効果が高く、抗体量の減少に伴ってその効果は減少します。

複数回行うワクチン接種があるのは、一度のワクチン接種では抗体の産生量が不十分であり、ブースター接種によってその効果を高める必要があるからです。

ブースター効果のメカニズムについて詳しく解説!

ヒトの免疫システムは先天的に備わっている自然免疫(先天性免疫)と獲得免疫(後天性免疫)の2種類に分けられます。

一般的に馴染みが深いのは獲得免疫です。私たちが普段行っている予防接種(ワクチン摂取)では、弱毒化あるいは不活化した抗原(ワクチン)を体内に入れることで、抗体をあらかじめ体内に作らせます。

ブースター効果ではブースター接種などで抗原を複数回、体内に投与することで、獲得免疫を活性化し、大量かつ強力な抗体を作らせるのを目的としているのです。

獲得免疫について解説

獲得免疫について解説

image by Study-Z編集部

獲得免疫では外敵(抗原)が侵入すると、免疫の司令塔であるリンパ球の一種のT細胞がB細胞に対して、抗原に対応する抗体を産生するようにシグナルを送ります。抗体は抗原と結合し、それをマクロファージなどが細胞内に取り込んで分解することで外敵は体内から排除されるのです。

私たちの免疫機能には免疫学的記憶(免疫記憶)という機能が備わっています。免疫機能を担うT細胞やB細胞などの免疫細胞は、一度侵入した抗原を記憶しており、記憶にある抗原が再度侵入したときは、素早く、大量に、強力な抗体をつくり出すことができ、症状の悪化を防げるのです。

ワクチン接種(予防接種)は免疫記憶の機能を利用しています

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自然免疫について解説

外敵が生体内に侵入した際に、体内に入るのを防ぐ役割を担っているのが自然免疫です。自然免疫では白血球やマクロファージなどの細胞が体内に侵入した異物を取り込み、消化し、分解することで外敵の体内への侵入を防いでいます。

自然免疫では防御できない場合に獲得免疫が作動し、抗体を産生することで外敵を排除するのです。

ブースター効果の実例を紹介

ブースター効果は自然感染やワクチン接種で既に免疫が得られている状態で再感染したり、ワクチンの追加接種をすることで起こります。予防接種のうち、新型コロナウイルス、インフルエンザ、B型肝炎など、複数回の予防接種が必要なものの多くがブースター効果を利用している実例です

新型コロナウイルスのワクチン接種はブースター効果?

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近年、流行している新型コロナウイルスに対するワクチン接種を複数回行うことはブースター効果を得るためです

ブースター接種とも呼ばれ、日本では既に3回目の予防接種が広がり、イスラエルでは4回目の予防接種が既に開始されています。ブースター接種を行ったヒトの体内では抗体量が増加しているとの研究があり、複数回の予防接種(ブースター接種)を行うことによる効果(ブースター効果)は出ているようです。

インフルエンザのワクチン接種はブースター効果?

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毎年、冬になると流行するインフルエンザの予防接種もブースター効果を利用しています

13歳未満の子供は2回の予防接種が推奨されていますが、これは子供ではインフルエンザにかかったことがない、または予防接種を受けた回数が少ないからということで十分な抗体が産生されないと考えられるためです。

成人はすでにインフルエンザにかかったり予防接種を何回も接種していることが多く、1回の接種で十分に抗体が産生されると考えられています。

帯状疱疹にブースター効果は有効?

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帯状疱疹にもブースター効果は有効です。帯状疱疹とは水痘(水ぼうそう)と同じように、水痘・帯状疱疹ウイルスを原因として発症すし、皮膚がピリピリするような痛みを感じ、赤みや水疱形成などの皮膚症状が現れます。ウイルスは生涯にわたって体内に潜伏しますが、普段は悪さをすることはありません。ストレスや疲れ、免疫機能の低下などに伴い体内に潜んでいたウイルスが再活性化すると、帯状疱疹を発症すると言われています。

近年、帯状疱疹の罹患者数が増えており、ブースター効果の低下はその要因の一つです。これまでは、水ぼうそうを発症した子どもと接する機会があると、そのときにブースター効果(体内の免疫が再活性化)を知らず知らずに受けていました。2014年から水痘ワクチンが定期接種となったことで、水ぼうそうにかかる子どもが激減し、大人がブースター効果を得る機会がしました。その結果、体内の水痘ウイルスに対する免疫が知らないうちに低下し、帯状疱疹を発症しやすくなっていると考えられています。

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化粧品にもブースター効果がある?

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ブースター化粧品と呼ばれる、化粧水などの肌への浸透をよくするための導入美容液がありますが、ブースター化粧品はブースター効果を利用したものではありません

確かにブースター化粧品を化粧水の前に使用すると、肌が柔らかくなって化粧水などが肌により浸透しやすくなります。この効果はブースター化粧品に含まれる成分によるもので、体内の免疫系を利用して免疫を高めているわけではないからです。

 

ブースター効果は獲得免疫によりワクチン接種の効果を高める方法!

ブースター効果とは獲得免疫によりワクチン接種の効果を高める方法です。しかし、同じようにワクチン接種を行ったとしても、全員がブースター効果を得られるわけではありません。残念ながらブースター接種をしても病気になるヒトもいます。また、副反応やアレルギーにより、複数回のワクチン接種ができないヒトもいるので、ワクチン接種をしない、できない。ことに対しての理解を持つことも重要です。

周りへの理解とともに、バランスの取れた食事、運動、質のいい睡眠など健康的な生活を送ることで予防していきましょう!

イラスト使用元:いらすとや

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体の仕組み・器官理科生物

ブースター効果ってどんな効果?ワクチンの予防接種との関係について現役の研究者がわかりやすく解説!

痛てて…。昨日、新型コロナウイルスワクチンのブースター摂取を受けたからか腕が痛いぞ。そもそもブースター効果とはといったものでしょう?今日は「ブースター効果」について生物に詳しいライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院で免疫について研究し、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。

ブースター効果とは何かざっくりと解説!

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ブースター効果はワクチン接種の時によく耳にする言葉です。

ブースターとは、「増幅器」のことで、自然感染やワクチン接種で既に免疫が得られている状態で再感染したり、ワクチンの追加接種をすることで、より早く強い、免疫が得られる効果のことをブースター効果と言い、追加免疫効果とも呼ばれます。

ブースター接種は免疫の効果を高めるためのワクチン接種のことです。これにより、本来ある免疫機能をさらに向上させることができます。

ブースター効果はいつから発揮される?

ブースター効果はワクチン接種後すぐに発揮されます。

初めてのワクチン接種と異なり、ブースター効果を期待したブースター接種では既に体内に免疫(抗体)がある状態でワクチン接種を行うので速やかに抗体が産生され始めるからです。抗体の産生量がピークに達した時が最も効果が高く、抗体量の減少に伴ってその効果は減少します。

複数回行うワクチン接種があるのは、一度のワクチン接種では抗体の産生量が不十分であり、ブースター接種によってその効果を高める必要があるからです。

ブースター効果のメカニズムについて詳しく解説!

ヒトの免疫システムは先天的に備わっている自然免疫(先天性免疫)と獲得免疫(後天性免疫)の2種類に分けられます。

一般的に馴染みが深いのは獲得免疫です。私たちが普段行っている予防接種(ワクチン摂取)では、弱毒化あるいは不活化した抗原(ワクチン)を体内に入れることで、抗体をあらかじめ体内に作らせます。

ブースター効果ではブースター接種などで抗原を複数回、体内に投与することで、獲得免疫を活性化し、大量かつ強力な抗体を作らせるのを目的としているのです。

獲得免疫について解説

獲得免疫について解説

image by Study-Z編集部

獲得免疫では外敵(抗原)が侵入すると、免疫の司令塔であるリンパ球の一種のT細胞がB細胞に対して、抗原に対応する抗体を産生するようにシグナルを送ります。抗体は抗原と結合し、それをマクロファージなどが細胞内に取り込んで分解することで外敵は体内から排除されるのです。

私たちの免疫機能には免疫学的記憶(免疫記憶)という機能が備わっています。免疫機能を担うT細胞やB細胞などの免疫細胞は、一度侵入した抗原を記憶しており、記憶にある抗原が再度侵入したときは、素早く、大量に、強力な抗体をつくり出すことができ、症状の悪化を防げるのです。

ワクチン接種(予防接種)は免疫記憶の機能を利用しています

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