果実の分類の1つである「偽果」。みんなは、どういう植物が偽果に当てはまるのかを知っているでしょうか。また、偽果に対する言葉である「真果」との違いを説明できるでしょうか。今回は偽果について、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

偽果って何?

「偽果」とは、子房壁以外の箇所が発達した果実のことを言います。これだけでは、「子房壁とは何なのか」、「そもそも子房壁が発達する果実はあるのか」、「子房壁以外とはどういうことなのか」、など気になることが多いのではないでしょうか。

「偽果」とはどういう意味なのかを知るためには、まずは花と果実の構造を知る必要があります。はじめに、この2つについて学び、結論として偽果は何を指すのか、また偽果とセットでよく耳にする「真果」との違いは何なのかについて学習しましょう。

花の構造

はじめに、花の構造についておさらいしておきましょう。

多くの果樹は1つの花に雄しべと雌しべが存在するのでしたね。雄しべの上部には花粉を作る「やく」があり、雌しべの上部には花粉がくっつく「柱頭」があります。そして、雌しべの下部の膨らんだ部分を「子房」と呼び、中には「胚珠」があるのです。この胚珠の中では雌性配偶体が発達しており、受精すると「種子」になります。これらが花の基本的な構造になるので、しっかりと頭にいれておきましょう。

子房の位置

花には様々な構造があるのですが、花の最も外側にあるがくと子房の位置で「子房上位」、「子房中位」、「子房下位」の3つに分類することができます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1. 子房上位

1. 子房上位

image by Study-Z編集部

「子房上位」とは、子房ががくや雄しべ、花びらよりも上に位置するものを言います。花のつくりを学ぶときに、たびたび、この子房上位の花の図が使われており、皆さんにとって最もなじみ深い花の構造でしょう。

\次のページで「2. 子房中位・子房周位」を解説!/

2. 子房中位・子房周位

2. 子房中位・子房周位

image by Study-Z編集部

「子房中位」とは子房が花床筒(かしょうとう)に収まっており、その上端に雄しべや花びらが付いているものを指します。また、「子房周位」は、子房の中程度までに花床筒が合着しており、花びらや雄しべは子房の真ん中あたりから発生していることが特徴です。

子房中位も子房周位もどちらも、がくが子房の真ん中あたりに位置しています

3. 子房下位

3. 子房下位

image by Study-Z編集部

「子房下位」は、子房が完全に花床(かしょう)に合着し、包まれたものを言います。子房はがくや花びら、雄しべよりも下に位置していることが特徴です。

果実の構造

花の構造について学んだので、次は花が成長した後の果実の構造について勉強しましょう。花のつくりは3種類に分けることができたので、それぞれの具体的な果実を使って解説しますね。

1. カキ:子房上位

1. カキ:子房上位

image by Study-Z編集部

カキの花は子房上位で、カキにまで成長すると上記の図のような断面になります。種子は「花の構造」で説明したように、子房の中の胚珠が成長したものです。この種子を包み込むように、果皮が存在しており、外側から外果皮、中果皮、内果皮と呼ばれます。実はこの3種類の果皮は子房の壁(子房壁)が変化してできたものなのです。私たちはカキを食べるとき、外果皮と中果皮を食べますよね。これは、花の雌しべの子房壁が発達した部分に当てはまることになるのです。このように、子房壁が発達してできた果実を「真果」と言います。

2. モモ:子房中位

モモの花は子房中位で、成長したモモの断面は上記の図のようになります。モモの種子もカキと同じように子房の中の胚珠が成長したものです。そして子房壁が発達して外果皮、中果皮、内果皮ができます。内果皮は核にあたるので食べられません。私たちはモモを食べる時は、外果皮に当たる皮を剥がしてから、中果皮の部分を食べますよね。これも子房上位のカキと同じように、花の雌しべの子房壁が発達した部分を食べていることになるのです。このため、子房中位の果実も子房壁が発達した果実なので、「真果」であると言えますね。

\次のページで「3. リンゴ:子房下位」を解説!/

3. リンゴ:子房下位

3. リンゴ:子房下位

image by Study-Z編集部

リンゴの花は子房下位で、成長すると断面は上記の図の通りです。子房下位の花が成長した果実は、他の2種類と大きく異なる点があります。子房上位と子房中位の果実は子房壁が発達した果皮が可食部分でした。しかし、子房下位の果実の場合、可食部分は果皮ではなく、花床などの子房壁以外の部分が発達したものになるのです。リンゴの場合、外果皮、中果皮、内果皮はリンゴの芯に当てはまります。そして、私たちが普段食べるところは子房を包んでいた花床になるのです。このように、子房壁以外が発達してできた果実のことを「偽果」と呼びます。

偽果と真果の違い

花と果実の構造を学んだので、この記事のテーマである「偽果」について学習しましょう。「果実の構造」でも少し登場しましたが、偽果とは何なのか、真果との違いは何なのかについて、最後にまとめましょう。

偽果:子房壁以外が発達した果実

image by iStockphoto

「偽果」とは子房壁以外の花床といった部分が発達した果実のことです。偽果は子房下位の花から発達します。果皮の部分は食べられず、花床が発達した箇所は食べられるのです。例として、リンゴやイチゴ、ナシ、イチジクなどがあります。

真果:子房壁が発達した果実

image by iStockphoto

「真果」とは子房壁が発達した果実のことです。真果は子房上位もしくは子房中位の花から発達します。子房壁はやがて外果皮、中果皮、内果皮になるのでしたね。そして、その果実の可食部分は外果皮や中果皮に相当するのでした。例として、カキやモモ、ウメ、サクランボ、カンキツ類などがあります。

\次のページで「果実の構造は様々、食べられる部分も様々!」を解説!/

果実の構造は様々、食べられる部分も様々!

今回は偽果について解説しました。偽果はリンゴやイチゴなどのように子房壁以外の部分が発達した果実のことでした。そして、偽果の対となる真果は、カキやモモなどのように子房が発達する果実のことでしたね。私たちが普段、何気なく食べている果物はどれもおいしいのですが、実は食べている箇所は全く異なるのです。実際に果物を買って、食べる前に観察してみると面白いですよ!

イラスト引用元:いらすとや

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理科生き物・植物生物

偽果とは?植物の種類や真果との違いについて例を挙げて現役理系学生がわかりやすく解説

果実の分類の1つである「偽果」。みんなは、どういう植物が偽果に当てはまるのかを知っているでしょうか。また、偽果に対する言葉である「真果」との違いを説明できるでしょうか。今回は偽果について、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

偽果って何?

「偽果」とは、子房壁以外の箇所が発達した果実のことを言います。これだけでは、「子房壁とは何なのか」、「そもそも子房壁が発達する果実はあるのか」、「子房壁以外とはどういうことなのか」、など気になることが多いのではないでしょうか。

「偽果」とはどういう意味なのかを知るためには、まずは花と果実の構造を知る必要があります。はじめに、この2つについて学び、結論として偽果は何を指すのか、また偽果とセットでよく耳にする「真果」との違いは何なのかについて学習しましょう。

花の構造

はじめに、花の構造についておさらいしておきましょう。

多くの果樹は1つの花に雄しべと雌しべが存在するのでしたね。雄しべの上部には花粉を作る「やく」があり、雌しべの上部には花粉がくっつく「柱頭」があります。そして、雌しべの下部の膨らんだ部分を「子房」と呼び、中には「胚珠」があるのです。この胚珠の中では雌性配偶体が発達しており、受精すると「種子」になります。これらが花の基本的な構造になるので、しっかりと頭にいれておきましょう。

子房の位置

花には様々な構造があるのですが、花の最も外側にあるがくと子房の位置で「子房上位」、「子房中位」、「子房下位」の3つに分類することができます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1. 子房上位

1. 子房上位

image by Study-Z編集部

「子房上位」とは、子房ががくや雄しべ、花びらよりも上に位置するものを言います。花のつくりを学ぶときに、たびたび、この子房上位の花の図が使われており、皆さんにとって最もなじみ深い花の構造でしょう。

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