10分でわかる「ワーキングプア」定義や背景・その実態は?現役大学院生がわかりやすく解説
高学歴ワーキングプア
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高学歴ワーキングプアとは、大学院を出たにもかかわらず、その学歴を生かした正規の職業に就くことができずに非正規雇用で生計を立てている人のことです。かつては 「末は博士か大臣か」と言われたこともあるように、大学院を修了して博士の学位を持つことは、大臣になることと同じくらい、憧れの対象とされていました。
しかし、博士課程修了後に就業した人のうち、正規雇用でない人の割合は32.4%で、これは学部卒業者の非正規雇用率の6倍です。
なぜ、このような状況が生じてしまったのでしょうか。大学院を修了した人が希望する就職先として大学教員や研究機関・企業の研究員が挙げられます。大学教員の求人数が少ないため、就職を目指しながらいくつかの大学で非常勤講師を掛け持ちしたり、期限付きの研究員として研究を続けている人が多いことが現状です。
大学院修了者の増加
そもそも、高学歴ワーキングプアが増えた原因には大学院卒の人が増えたことがあります。そのため、需要(就職希望者)と共有(就職先)がマッチしません。
では、なぜ大学院修了者が増えたのでしょうか。日本政府は、1991年に「高度産業社会に対応できる人材を算出すること」を目的として大学院修了者を増やすことを提言しました。その結果、全国的に大学院が増え、大学院生が増加します。一方、民間企業は博士号取得者を積極的に採用する動きは見られませんでした。理由は、博士号を取得した新規学卒者と4年生大学を卒業した新規学卒者とでは支払わなければならない初任給の金額が大幅に違うからです。企業は、できるだけ安価に訓練可能な若い人材を求める傾向にあるため、大学院修了者を取得者を積極的に採用しませんでした。
そのため、大学院を修了後も就職先が見つからず、正社員として就職することができない人が増えていくことになります。
ひとり親のワーキングプア
ワーキングプアは、ひとり親世帯に多く、特に母親一人で子どもを育てる母子家庭にワーキングプアが多くみられます。
母子家庭の場合、子育てと両立するためには非正規雇用で働くしかないというの主な理由です。本人は正社員を希望していても、一人で子育てをしているため、子どもが小さい時期は正社員として働くことは非常に困難あることは明らかでしょう。
育児休暇制度や多様な働き方改革が浸透しつつあるものの、このような制度は、配偶者がいることを前提とした制度であることが多いため、一人で子育てをする女性には十分に対応できていないのが現状となっています。
中高年のワーキングプア
中高年のワーキングプアの多くは正社員を希望していても、希望通りに雇用されない不本意非正規雇用労働者です。ワーキングプアのうちの約4割が働き盛りの35歳〜50歳の中高年ともいわれています。
中高年の場合、これまで正社員として働いていた企業から解雇された場合もありますが、20代の頃から非正規雇用で働いてきた人も多いのが現状です。35歳を超えると30歳未満と比較して、新たに正社員として採用されることが困難になることが様々な調査から明らかになっています。というのも、年齢が上がるにつれて新たに正社員として雇用されることは困難だからです。
35歳以上の場合であっても、経験やスキルがある人であれば比較的採用されやすいのですが、職種未経験の場合、年齢を重ねるごとに正社員として採用されることが難しくなってしまう現状があります。
政府による支援はあるのか?
ここまで、ワーキングプアの実態について非正規雇用が多い職種に焦点を絞って見てきました。では、ワーキングプアの状況から抜け出すための支援策はあるのでしょうか。以下では、支援策の一部を紹介します。
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