今回は「実験動物」について見ていこう。人間が安心して薬が飲めるのは実験動物のおかげです!学生時代から実験動物を使って研究を行い、今現在も研究者として活動しているライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院から実験動物を使って研究を行い、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。生物学を得意としている。

実験動物とはどんな動物?ザックリと解説

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実験動物(Experimental Animals, Laboratory Animals)とは、実験や研究のために利用するための動物のことを指します。実験動物としてよく使われるのはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ミニブタなどの哺乳類動物です。その他にも線虫 (C. elegans)やショウジョウバエ、カイコなども含まれます。

一般的に動物実験とは実験動物を使用した実験のことです。

どういった生き物が実験動物として選ばれるの?

実験動物に選ばれる動物はある程度の遺伝学的な統御がとれており、均質な遺伝的要件を備えていることが必要になります。遺伝要因は動物実験の結果に大きく影響を与えるため、研究成果の再現性や制度を高めるために実験動物には高い遺伝子構成の同一性が求められるのです。

また、動物実験には多くの場合オスが用いられます。これはメスには排卵などによるホルモンバランスの変化や妊娠などの実験条件や結果に影響を与える要素があるためです。

飼育環境はどうなっているの?

実験動物を使用する研究機関は実験動物に苦痛を感じないような環境で飼育している。実験動物の飼育、保管の方法については「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」が環境省によって定められており、また、日本学術会議からは各研究機関における動物実験に係る内部規定の共通モデルとなるガイドラインがあります。

管理者は、実験動物の生理、生態、習性等に応じた適切な整備に努めることが求められている。そのため適切に給餌、給水を行い、傷害を負ったり、疾病にかかることを予防する等の必要な健康管理を行っています。

また、実験動物に過度なストレスがかからないように、動物の日常的な動作(立ち上がる、横たわる、羽ばたく、泳ぐなど)を容易に行うための広さ備え、適切な温度、湿度、換気、明るさ等を保てる環境で飼育されているのです。

3Rの原則とは?

3Rの原則とは?

image by Study-Z編集部

3Rの原則とは動物を科学上の利用に供する場合の方法についての国際的な基本理念です。1959年にRussellとBurch氏によって提唱され、日本では2006年に「動物の愛護及び管理に関する法律」にこの内容が盛り込まれて規定されています。

3Rの3つのRはReplacement(代替法の利用)、Reduction(使用数の削減)、Refinement(苦痛の軽減)のことです。

動物実験の実施に際しては、科学上の利用の目的を達することができる範囲や、その必要な限度において、できる限りこの原則の内容に沿って実施されることが求められます。

\次のページで「代替法は動物実験の代わりとして十分に置き換えられるか?」を解説!/

代替法は動物実験の代わりとして十分に置き換えられるか?

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今のところ動物実験を十分に置き換えられる代替法は存在しません。少なくとも近い将来に動物実験の必要性が全面的になくなるのは不可能でしょう。

3Rの原則のReplacementにもあるように動物を使わないですむ代替法がある場合はそうすべきです。未だ生命現象の多くは解き明かされておらず謎に包まれています。残念ながら未知の生命現象や病因を解き明かすことは直接生物を用いた研究でしかできません。

近年では細胞培養や組織培養、人体モデル、コンピュータ・シミュレーションなどが発展してきているので、こういった研究がいつか動物実験の一部を担ってくれるかもしれません。しかし、新薬を動物実験なしでヒトに投与することはないと思いますので動物実験は完全にはなくならないでしょう。

動物実験についてくわしく解説

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動物実験は前臨床試験とも呼ばれ、実験動物を用いて行う、研究・実験のことです。

実験動物の飼育、保管の方法については「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」が環境省によって定められていましたが、文部科学省、厚生労働省及び農林水産省はそれぞれの所管する研究機関での動物実験に係る基本指針が策定しています。動物実験を実施する各研究機関では、これらの基準や指針に基づいて、動物実験を適正に実施する必要があるのです。そのため、各研究機関で行われる動物実験は、すべて動物実験委員会の倫理審査を受け、その目的や手法、実験動物の使用数などが妥当であることが承認されて初めて行うことができます。このようなルールが守られているという保障なしに、研究成果は学術雑誌や学術集会、特許申請などを行うことはできません。

どんなことをするの?

動物実験にはいろいろなものがあります。動物の行動を調査したり、薬を与えたり、血液を採取して分析したり、神経活動を解析したり、運動させたり、動物から採取した細胞や組織・臓器を用いて、遺伝子やタンパク質の発現を解析したり、と多種多様です。実験期間も短時間で終わるものから数年にわたるものもあります。

実験動物は人の医学の役に立つ?

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実験動物はヒトの医学の役に立ちます。ヒトと種が違うので、実験動物で得られた結果はヒトに適用できないのではないか?ということを思うかもしれませんがそんなことはありません。薬の効き具合や量に違いはあるかもしれません。多くの生命は共通の生命原理をもちます。例えばですが、ヒトの薬がイヌやネコなどの治療に使われますが、これは病気の起こる原因や治療法の基本原理が共通だからです。

ヘルシンキ宣言において「ヒトを対象とする医学研究は動物実験に基づかなければなら ない」と述べられています。私たちが健康に生活してくために、身体や組織、細胞がどのように働いているか、病気の原因の解明、薬の効果や副作用の調査を行わなければなりません。そのため、実験動物は私たちの生活に欠かせないのです。

実験動物は私たちの生活に欠かせない生き物

「実験動物はかわいそう。動物実験なんて必要ない。」など、動物を使って実験を行うことに対してみなさま様々なご意見があるかと思います。しかし、実験動物は私たちの生活に欠かせない生き物です。実験動物を使った検証が行われることで私たちは安心して薬が飲めたり、いろんなものを食べれます。私たちの生活は実験動物に支えられいるので、「かわいそう。」ではなく、実験動物に感謝しながら生活を送っていくべきなのです。

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理科生き物・植物生物

「実験動物」ってどんな動物?マウスやモルモット、種類や倫理的にはどうなの?現役の研究者がわかりやすく解説!

今回は「実験動物」について見ていこう。人間が安心して薬が飲めるのは実験動物のおかげです!学生時代から実験動物を使って研究を行い、今現在も研究者として活動しているライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院から実験動物を使って研究を行い、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。生物学を得意としている。

実験動物とはどんな動物?ザックリと解説

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実験動物(Experimental Animals, Laboratory Animals)とは、実験や研究のために利用するための動物のことを指します。実験動物としてよく使われるのはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ミニブタなどの哺乳類動物です。その他にも線虫 (C. elegans)やショウジョウバエ、カイコなども含まれます。

一般的に動物実験とは実験動物を使用した実験のことです。

どういった生き物が実験動物として選ばれるの?

実験動物に選ばれる動物はある程度の遺伝学的な統御がとれており、均質な遺伝的要件を備えていることが必要になります。遺伝要因は動物実験の結果に大きく影響を与えるため、研究成果の再現性や制度を高めるために実験動物には高い遺伝子構成の同一性が求められるのです。

また、動物実験には多くの場合オスが用いられます。これはメスには排卵などによるホルモンバランスの変化や妊娠などの実験条件や結果に影響を与える要素があるためです。

飼育環境はどうなっているの?

実験動物を使用する研究機関は実験動物に苦痛を感じないような環境で飼育している。実験動物の飼育、保管の方法については「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」が環境省によって定められており、また、日本学術会議からは各研究機関における動物実験に係る内部規定の共通モデルとなるガイドラインがあります。

管理者は、実験動物の生理、生態、習性等に応じた適切な整備に努めることが求められている。そのため適切に給餌、給水を行い、傷害を負ったり、疾病にかかることを予防する等の必要な健康管理を行っています。

また、実験動物に過度なストレスがかからないように、動物の日常的な動作(立ち上がる、横たわる、羽ばたく、泳ぐなど)を容易に行うための広さ備え、適切な温度、湿度、換気、明るさ等を保てる環境で飼育されているのです。

3Rの原則とは?

3Rの原則とは?

image by Study-Z編集部

3Rの原則とは動物を科学上の利用に供する場合の方法についての国際的な基本理念です。1959年にRussellとBurch氏によって提唱され、日本では2006年に「動物の愛護及び管理に関する法律」にこの内容が盛り込まれて規定されています。

3Rの3つのRはReplacement(代替法の利用)、Reduction(使用数の削減)、Refinement(苦痛の軽減)のことです。

動物実験の実施に際しては、科学上の利用の目的を達することができる範囲や、その必要な限度において、できる限りこの原則の内容に沿って実施されることが求められます。

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