

チャールズ・ダーウィンが説いた「自然淘汰説」やリチャード・ドーキンスの「生物=生存機械論」で述べられているように、多くの動物は自分の遺伝子(自分の子孫)をより多く残すことを目的とする。これは、生物が種をより長く存続させるために必要なものとなっているんだ。そんな自分の遺伝子をより多く残すために行われる性転換についての概要、その中の“メスからオスに変わる”雌性先熟について、魚の具体例を見ながら学習していこう。
高校・大学にて生物を専攻していた農学部卒ライター園(その)と一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/園(その)
数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。
性転換

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性転換とは、ある個体が生きている間に性別を変えることです。これは、性別がある有性生殖において観察され、性別をコントロールすることにより子孫(自分の遺伝子)をより多く残すための手段だと言えます。
性転換について理解するうえでの重要なポイントは
○ 性転換=生殖器(精巣と卵巣)が変わること
であって、
× 性転換=別の個体になり遺伝子が変わること
ではないということです。
まずはこれをしっかり理解しておきましょう。
メリット・デメリット
性転換において、以下のメリットとデメリットが考えられます。
メリット
・自分の遺伝子をより多く残すことができる
・なわばり争いが起きにくい
デメリット
・体内で生殖器を作り変えるのでエネルギーが必要
・性転換をしている最中(完全に生殖器を変え終えるまで)は繁殖できない
魚で多く見られる理由

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私たち人間を含むほとんどの陸上生物では生涯性別は変わりません。ところが、性転換をする魚は400種以上発見されています。ではなぜ、性転換は魚で多く見られるのでしょうか?
その理由は、オスの生殖器(精巣)とメスの生殖器(卵巣)の構造的な差が少ないこと。魚は体外で受精するため、体内受精(交尾)をする動物と比べてメスの生殖器を複雑にする必要がなく、オスとメスの生殖器は比較的似たものになります。言い換えると、オスとメスの生殖器は比較的簡単に作り変えられるということです。
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