今回は「雌性先熟」をテーマに学んでいきます。

チャールズ・ダーウィンが説いた「自然淘汰説」やリチャード・ドーキンスの「生物=生存機械論」で述べられているように、多くの動物は自分の遺伝子(自分の子孫)をより多く残すことを目的とする。これは、生物が種をより長く存続させるために必要なものとなっているんです。そんな自分の遺伝子をより多く残すために行われる性転換についての概要、その中の“メスからオスに変わる”雌性先熟について、魚の具体例を見ながら学習していこう。

高校・大学にて生物を専攻していた農学部卒ライター園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

性転換

image by iStockphoto

性転換とは、ある個体が生きている間に性別を変えることです。これは、性別がある有性生殖において観察され、性別をコントロールすることにより子孫(自分の遺伝子)をより多く残すための手段だと言えます。

性転換について理解するうえでの重要なポイントは

○ 性転換=生殖器(精巣と卵巣)が変わること

であって、

× 性転換=別の個体になり遺伝子が変わること

ではないということです。

まずはこれをしっかり理解しておきましょう。

メリット・デメリット

性転換において、以下のメリットとデメリットが考えられます。

メリット

・自分の遺伝子をより多く残すことができる

・なわばり争いが起きにくい

 

デメリット

・体内で生殖器を作り変えるのでエネルギーが必要

・性転換をしている最中(完全に生殖器を変え終えるまで)は繁殖できない

魚で多く見られる理由

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私たち人間を含むほとんどの陸上生物では生涯性別は変わりません。ところが、性転換をする魚は400種以上発見されています。ではなぜ、性転換は魚で多く見られるのでしょうか?

その理由は、オスの生殖器(精巣)とメスの生殖器(卵巣)の構造的な差が少ないこと。魚は体外で受精するため、体内受精(交尾)をする動物と比べてメスの生殖器を複雑にする必要がなく、オスとメスの生殖器は比較的似たものになります。言い換えると、オスとメスの生殖器は比較的簡単に作り変えられるということです。

\次のページで「性転換の3タイプ」を解説!/

性転換の3タイプ

性転換は、以下の3つのタイプがあります。

・雌性先熟

・雄性先熟

・双方向性転換

雌性先熟

雌性先熟とはメスからオスに性転換をすることです。雌性先熟は、一夫多妻の(ハーレムを作る)魚で多く見られます。クエを例に図を見ながら理解していきましょう。

クエ

クエ

image by Study-Z編集部

雌性先熟のオスは自分の子供の世話をせず、より多くのメスと繁殖をすることで、自分の子孫をより多く残そうと考えています。そのため、繁殖相手や食料を獲得するためになわばり争いをするのです。なわばり争いでは、当然体の大きな個体の方が有利ですよね?よって体が小さいときはメスとして体の大きいオスと繁殖を行うことで、なわばり争いで負けるのを回避、かつ確実に自分の遺伝子が入った受精卵を作ります。その後、成長して体調60cmを超えるころになるとオスへと性転換をするのです。

もし、性転換をせず体が小さいときにオスでいたとしたら、体の大きいオスに負けてメスと繁殖をすることができません。その後、成長して体が大きくなるとなわばり争いで負けず、メスと繁殖することができるようになります。

どのメスも1回の繁殖で卵を5個作ることができ、かつ自分がメスの時とオスの時それぞれで1回ずつ繁殖を行うとしましょう。そうすると、性転換をした場合(図の左側の場合)は自分の遺伝子が入った受精卵を計10個作ることができます。逆に、性転換をしない場合(図の右側の場合)は自分の遺伝子が入った受精卵を計5個しか作ることができません。このように、オスの体の大きさが繁殖に影響する場合は、雌性先熟は有効になります。

雄性先熟

雄性先熟とはオスからメスに性転換をすることです。雄性先熟は、一夫一妻の魚で多く見られます。カクレクマノミを例に図を見ながら理解していきましょう。

\次のページで「カクレクマノミ」を解説!/

カクレクマノミ

カクレクマノミ

image by Study-Z編集部

雄性先熟を行う代表例として、カクレクマノミをあげて説明していきます。イソギンチャクで暮らしているカクレクマノミは、外敵から狙われる可能性があるため、イソギンチャクの外には出たくありません。しかしそれでは、自分が住んでいるイソギンチャクに相手がいなければ繁殖をすることができないですよね?そこで、自分が暮らすイソギンチャクの中にいる相手と繁殖をすることでより多くの子孫を残す方法を考えました。それが、繁殖能力の高い個体に子供をたくさん産んでもらうという方法です。繁殖能力が高い個体とは体が大きい個体のことなので、1つのイソギンチャクの中にいるカクレクマノミで1番体が大きい個体がメスへと性転換します。

もし、性転換をせず体が小さいときにメスでいたとしたら、仮にオスと繁殖できたとしても体の大きいメスに比べて産める卵の数は少なくなるでしょう。よって、体が小さいときにメスでいることは最適な方法とは言えません。その後、成長して体が大きくなると繁殖能力が高まるので多くの卵を産むことができるようになります。

1回の繁殖で体の大きなメスは卵を5個、体の小さなメスは卵を2個作ることができ、かつ自分がオスの時とメスの時それぞれで1回ずつ繁殖を行うとしましょう。そうすると、性転換をした場合(図の左側の場合)は自分の遺伝子が入った受精卵を計10個作ることができます。逆に、性転換をしない場合(図の右側の場合)は自分の遺伝子が入った受精卵を計7個しか作ることができません。このように、オスの体の大きさが繁殖機会に影響せず、メスの繁殖能力が繁殖に影響する場合に雄性先熟は有効になります。

双方向性転換

双方向性転換とは、オスメスどちらにも何回でも性転換できることです。

ホンソメワケベラ

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双方向性転換の例として、ここではホンソメワケベラについて解説しますね。ホンソメワケベラの体の小さいオスはなわばり争いで負けてしまうので、体が小さいときはメスとしてハーレムを作っているオスと繁殖をします。そして、そのハーレムのオスがほかの魚に食べられるなどしていなくなった場合、そのハーレムの中で一番大きなメスがオスへと性転換するのです。その後オスになった個体が何らかの理由でこれまでいたハーレムを離れ別のハーレムに入った時、そこに自分より大きなオスがいた場合は、またメスに性転換します。

雌性先熟は本当に最善の戦略なのか

今回は性転換をする魚について学習してきました。性転換をする生物の中で一番多く発見されている雌性先熟とわずかしか発見されていない双方向性転換。双方向性転換と分かった種の多くは雌性先熟だと思われていたものだったということから、雌性先熟とされている生物はすべて双方向性転換をするかもしれないと私は考えました。ライバルが多い環境でオスやメスのどちらにでも自由に変われることは、自分の遺伝子をより多く残すという目的のために重要なことです。性転換はできませんが、私たち人間においても2つの選択肢のどちらにも柔軟に対応できるというのは大切なことなのかもしれませんね。

イラスト使用元:いらすとや

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理科環境と生物の反応生き物・植物生物

雌性先熟とは?自分の遺伝子をより多く残すために生物がとる戦略について農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は「雌性先熟」をテーマに学んでいきます。

チャールズ・ダーウィンが説いた「自然淘汰説」やリチャード・ドーキンスの「生物=生存機械論」で述べられているように、多くの動物は自分の遺伝子(自分の子孫)をより多く残すことを目的とする。これは、生物が種をより長く存続させるために必要なものとなっているんです。そんな自分の遺伝子をより多く残すために行われる性転換についての概要、その中の“メスからオスに変わる”雌性先熟について、魚の具体例を見ながら学習していこう。

高校・大学にて生物を専攻していた農学部卒ライター園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

性転換

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性転換とは、ある個体が生きている間に性別を変えることです。これは、性別がある有性生殖において観察され、性別をコントロールすることにより子孫(自分の遺伝子)をより多く残すための手段だと言えます。

性転換について理解するうえでの重要なポイントは

○ 性転換=生殖器(精巣と卵巣)が変わること

であって、

× 性転換=別の個体になり遺伝子が変わること

ではないということです。

まずはこれをしっかり理解しておきましょう。

メリット・デメリット

性転換において、以下のメリットとデメリットが考えられます。

メリット

・自分の遺伝子をより多く残すことができる

・なわばり争いが起きにくい

 

デメリット

・体内で生殖器を作り変えるのでエネルギーが必要

・性転換をしている最中(完全に生殖器を変え終えるまで)は繁殖できない

魚で多く見られる理由

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私たち人間を含むほとんどの陸上生物では生涯性別は変わりません。ところが、性転換をする魚は400種以上発見されています。ではなぜ、性転換は魚で多く見られるのでしょうか?

その理由は、オスの生殖器(精巣)とメスの生殖器(卵巣)の構造的な差が少ないこと。魚は体外で受精するため、体内受精(交尾)をする動物と比べてメスの生殖器を複雑にする必要がなく、オスとメスの生殖器は比較的似たものになります。言い換えると、オスとメスの生殖器は比較的簡単に作り変えられるということです。

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