この記事では「額を合わせる」について解説する。

端的に言えば「額を合わせる」の意味は「非常に近い距離でという意味」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「額を合わせる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「額を合わせる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「額を合わせる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「額を合わせる」の意味は?

「額を合わせる」には、次のような意味があります。

額と額とがくっつくほど近くに寄る。「—・せて何事か企む」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「額を合わせる」

この言葉は「(額がくっ付くくらいに)近くに寄る」という意味の慣用表現です。「ただ近い」のではなく、額がくっ付きそうなほど、というのがポイント。

距離の近さを表現する言葉なので、「額を合わせて~する」と後ろに動詞が付くことも多くあります。引用にもあるように「額を合わせて企む」というのはよく使われる表現です。そしてそこまで近いと言うのですから、なにか強調したい意味があるのではと推測するようにしましょう。

ひそひそ話をしているのかもしれませんし、ひどく悩んで話し合っているのかもしれません。「額を合わせて」なので、二人以上で動作を行っていることもわかるなど、色々と読み取れる表現ですよ。自分だったら誰かと「額を合わせて」何かするとしたら、どんな場面になるのか想像してみるといいでしょう。

「額を合わせる」の語源は?

次に「額を合わせる」の語源を確認しておきましょう。「額(ひたい)」とは、「顔の上部の、眉と髪の生え際との間」のこと。つまり「おでこ」ですね。おでこがくっ付きそうということは、頭を前にして前傾姿勢で何かをしている様子が想像できるでしょう。

そんな、身を寄せ合っている様子から、ひそひそしていたり何かを企んでいたりするニュアンスで使われるようになったのが、この言葉と考えられるのです。

また、「額」は「頭」と近いために、「頭=思考」や、そこから転じて「考える人」を指すこともあります。「額を合わせる」が、企んだり考えたりすることに使われやすいのはそのためでしょう。

「何人もが集まって物事を相談すること」という意味で、「額を集める」という慣用表現もあります。余裕があれば、一緒に覚えてくださいね。

\次のページで「「額を合わせる」の使い方・例文」を解説!/

「額を合わせる」の使い方・例文

「額を合わせる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・僕のクラスの女子たちは、誰かが入ってくるといつも額を合わせて話を始めるので、正直あまりいい気分ではない。

・日本は終わりだといつも彼女のが言うので、じゃあどの国ならいいか額を合わせて考えてみたけれど、現実的な良い答えは出てこなかった。

・辞典を販売する会社に入ったけれど、コトバンクのようなネット辞書に負けないようにするにはどうするか、社員全員で額を合わせて解決策を出さなければならない。

「顔を非常に近づけて」というニュアンスが伝わりますでしょうか。例文三番目のように、それくらいじっくりと、しっかりとという意味合いが強くなる使い方であれば、実際には顔を近づけない比喩的な使い方もできます。

そして、やはりそれくらい近づいて何かをするのですから、隠し事・悩み事に対して使われるのがしっくりくるでしょう。たとえば逆に、「額を合わせて大笑いする」のように明るくオープンな表現にはあまり適しません。

そのためこの表現が登場した場合は、ややマイナスな方向で、動作する人物が何かに対して考えを巡らせている前提で読み解いていけば、文意を理解しやすくなるでしょう。行動の理由や目的が述べられやすいため、見逃したくないポイントですよ。

「額を合わせる」の類義語は?違いは?

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「額を合わせる」の類義語は「顔を突き合わせる」が挙げられます。

「顔を突き合わせる」

「顔を突き合わせる」は、「顔がぶつかりそうなくらいの距離で(何かをすること)」を意味する慣用表現。これも実際に顔をくっつける必要はなく、比喩的に使える言葉です。

「額を合わせる」とほぼ同じ意味と考えてもいいのですが、「付く」ではなく「突く(つつく、ぶつかる)」であることには注意したいところ。動作にやや勢いがあり、切羽詰まったり、慌てていたりする際に用いられやすいことを押さえておきましょう。

\次のページで「「額を合わせる」の対義語は?」を解説!/

各地から精選された食品を扱うこのイベントでは、原産者たちが毎月顔を突き合わせて熱く農産物について語り合っている。

「額を合わせる」の対義語は?

「額を合わせる」の対義語は「目もくれない」がいいでしょう。

「目もくれない」

「目もくれない」は「相手や物に対して、見向きもしない」を意味する慣用表現です。これも、実際に「目をやる=見る」かどうかではなく、「目」を「相手に対する意識」と考えて、興味や関心が無いということを比喩的に表しているのがわかるでしょう。

似た表現として、「眼中にも入れない」「度外視(どがいし)」などもありますね。目はそれほどまでに人間の姿勢やあり方」を表す、重要な器官とも言えるでしょう。

先月付き合い始めた彼女は、学校ではまるで僕のことなどいないかのように、目もくれないで生活している。

「額を合わせる」の英訳は?

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「額を合わせる」の英訳は「lay one's heads together」で表すことができます。

「lay one's heads together」

これは直訳すれば「~の頭を一緒に並べる」ということで、「額を合わせる」を表現できるフレーズです。

語源の項でも書きましたが、英語でも「heads」が「思考」や「考える人のこと」を表しており、実際の頭ではなく、考えたり悩んだりしている人たちを意味しています。これによって、「額を合わせて考えている」というニュアンスになるのですね。

「one's」を、「our」や「their」に変化させて色々な主語にも対応することができる便利なフレーズ。ぜひ覚えてくださいね。

\次のページで「「額を合わせる」を使いこなそう」を解説!/

They laid their heads together all night, but couldn't think of anything.
彼らは一晩中額を合わせて考えたが、何も思いつかなかった。

「額を合わせる」を使いこなそう

この記事では「額を合わせる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

解説の中でも書きましたが、「頭」や「目」など、人間の体の一部については比喩的に使われることが非常に多くあります。そうした慣用表現は、意味も想像しやすく、同時に間違えて覚えてしまったりすることもあるため、問題として使われやすいものです。

問題集などで、そのテーマを集めて載せているものなどもありますので、苦手意識を感じたら重点的に勉強すると得点アップにつながるかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「額を合わせる」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「額を合わせる」について解説する。

端的に言えば「額を合わせる」の意味は「非常に近い距離でという意味」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「額を合わせる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「額を合わせる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「額を合わせる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「額を合わせる」の意味は?

「額を合わせる」には、次のような意味があります。

額と額とがくっつくほど近くに寄る。「—・せて何事か企む」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「額を合わせる」

この言葉は「(額がくっ付くくらいに)近くに寄る」という意味の慣用表現です。「ただ近い」のではなく、額がくっ付きそうなほど、というのがポイント。

距離の近さを表現する言葉なので、「額を合わせて~する」と後ろに動詞が付くことも多くあります。引用にもあるように「額を合わせて企む」というのはよく使われる表現です。そしてそこまで近いと言うのですから、なにか強調したい意味があるのではと推測するようにしましょう。

ひそひそ話をしているのかもしれませんし、ひどく悩んで話し合っているのかもしれません。「額を合わせて」なので、二人以上で動作を行っていることもわかるなど、色々と読み取れる表現ですよ。自分だったら誰かと「額を合わせて」何かするとしたら、どんな場面になるのか想像してみるといいでしょう。

「額を合わせる」の語源は?

次に「額を合わせる」の語源を確認しておきましょう。「額(ひたい)」とは、「顔の上部の、眉と髪の生え際との間」のこと。つまり「おでこ」ですね。おでこがくっ付きそうということは、頭を前にして前傾姿勢で何かをしている様子が想像できるでしょう。

そんな、身を寄せ合っている様子から、ひそひそしていたり何かを企んでいたりするニュアンスで使われるようになったのが、この言葉と考えられるのです。

また、「額」は「頭」と近いために、「頭=思考」や、そこから転じて「考える人」を指すこともあります。「額を合わせる」が、企んだり考えたりすることに使われやすいのはそのためでしょう。

「何人もが集まって物事を相談すること」という意味で、「額を集める」という慣用表現もあります。余裕があれば、一緒に覚えてくださいね。

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