今日は「マルターゼ」について学習していこう。マルターゼは糖質の分解に重要な酵素だ!この記事では「マルターゼ」について、大学で生物学について研究し、現在も研究者として活動しているライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院で体の仕組みについて研究し、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。

マルターゼってどんな消化酵素?ざっくりっと解説

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消化酵素の一つで、マルトース(麦芽糖)を加水分解して2分子のグルコースにする酵素です。マルターゼのような二糖類分解酵素はα-グルコシダーゼとも呼ばれます。

動物から植物まで幅広い生物種が持つ消化酵素で、動物では小腸の消化液に含まれており、麦芽,酵母,糸状菌などのマルターゼはその活性が強いです。ヒトの体温に近い30度や中性付近のph(6.6~7.3)で活性が強まる特徴をもちます。

どこから分泌されるの?

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マルターゼは小腸から分泌される消化酵素になります。唾液にも含まれますがほとんどが小腸からの分泌です。小腸は栄養分を効率よく吸収するためにマルターゼ以外にもスクラーゼ、ラクターゼ、イソマルターゼ、トレハラーゼ、ペプチターゼといった様々な消化酵素を小腸粘膜に存在する上皮細胞から分泌します。

何を分解しているの?

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Zippanova - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

マルトースが分解するのはグルコースが2つ結合した状態であるマルトース(麦芽糖)です。マルトースを多く含む食品は水飴、麦芽(ばくが)、とうもろこしなどになります。

小腸壁の細胞から分泌されたマルターゼの役割はマルトースを構成する2分子のグルコース間のグリコシド結合を切断し、2分子のグルコースにすることです。分解されたグルコースは小腸上皮細胞膜状のナトリウム依存性グルコース輸送体(sodium/ glucose cotransporter:SGLT)から能動的に吸収され、細胞の基底膜側にある糖輸送体(GLUT2)を通って血管内へと移動し、肝臓や他の組織に運ばれてエネルギー源として使われたり、グリコーゲンとして貯蔵されます。

糖尿病の患者は食後に高血糖を示すことが特徴です。この治療のためにニ糖類分解酵素であるα-グルコシダーゼの阻害剤用いられます。α-グルコシダーゼの活性を阻害することで小腸での糖の分解・吸収を遅らせることで食後高血糖が抑えられるのです。

マルターゼは糖質を分解する酵素

マルターゼはマルトースを加水分解して2分子のグルコースにすることができますが、マルターゼだけではすべての糖質を分解することはできません。

糖質には、でんぷんやオリゴ糖などの多糖類、マルトース、スクロース(砂糖)やラクトース(乳糖)などの二糖類、グルコースやフルクトースなどの単糖類が含まれます。摂取した糖質は消化酵素によって多糖類や二糖類を単糖類に分解することで体内に吸収されますが、このうちマルターゼが分解できるのはマルトースのみです。他の糖質にはそれぞれ別の消化酵素が存在しています。

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糖質分解のメカニズムを解説

糖質分解のメカニズムを解説

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私たちの体は摂取した糖質を吸収するためにグルコースやフルクトースといった単糖類に分解しなければなりません

でんぷんやオリゴ糖などの多糖類を摂取すると、まず唾液に含まれるアミラーゼによって分解され、マルトースになり、小腸でマルターゼの働きによってグルコースになることで吸収できます。

マルトース、スクロースやラクトースなどの二糖類の場合、これらは唾液に含まれるアミラーゼでは分解できません。そのままの形で小腸まで運ばれます。小腸の上皮細胞でマルトースはマルターゼ、スクロースはスクラーゼ、ラクトースはラクターゼによって分解され、それぞれグルコースやフルクトース、ガラクトースといった単糖類に分解されることで吸収できるようになるのです。

このように多糖類や二糖類は吸収のために消化する必要があり、吸収までに時間がかかります。しかし、単糖類であるグルコースやフルクトースはそれ以上分解を行う必要がないので、体内への吸収が早いのが特徴です。そのため、エネルギー補給のために使用するスポーツドリンクなどに使用されています。

スクラーゼとの違いを解説

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Don A. Carlson - Self-made with Inkscape and .svg glucose and fructose graphics from the Commons  このW3C-unspecified ベクター画像Inkscapeで作成されました ., CC 表示-継承 3.0, リンクによる

スクラーゼはインベルターゼともよばれ、マルトースと同じように小腸から分泌されるグルコシダーゼですが、分解する糖類が異なります。

スクラーゼが分解するのはグルコースとフルクトースが結合してできたスクロース(砂糖)です。スクロースはテンサイやサトウキビに含まれます。スクラーゼはグルコースとフルクトースの結合を切断し、単糖類にすることでスクロースを体内に吸収できるようにするのです。

フルクトースはグルコースと異なりグルコース輸送体であるGLUTファミリーの一員であるGLUT5によって吸収されます。

マルターゼはアミラーゼ?

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よく間違われますがマルターゼはアミラーゼではありません。アミラーゼはジアスターゼとも呼ばれ、でんぷんを分解する酵素です。主に膵臓、睡液腺、耳下腺から分泌されます。

でんぷんはたくさんのブドウ糖(グルコース分子)が結びついてできたものです。そのため、構造が大きくそのままの形では吸収できないので吸収できる形に分解する必要があります。この時に働くのがアミラーゼです。アミラーゼはは、αアミラーゼと、βアミラーゼの2種類のアミラーゼによって、でんぷんをマルトースの形まで分解します。マルトースになるとマルターゼが作用し、体内に吸収できる形であるグルコースになるのです。そのため、でんぷんの消化にはアミラーゼとマルターゼーの両方が必要になります。

マルターゼがなくなると病気になる?

遺伝性の筋肉の病気であるポンペ病(糖原病Ⅱ型)は酸性マルターゼの働きがないためにおこる病気です。

ポンペ病は難病にも指定されている病気ですが発症年齢や症状によって乳児型と遅発型に分けられます。 乳児型は心不全の症状が強いですが、 遅発型では小児期あるいは成人後に症状があらわれ、うでや脚の力が弱く階段の昇降や立ち上がり、ものを持ちあげる動作などが難しくなってしまうのが特徴です。筋ジストロフィーにも症状が似ているので、肢帯型筋ジストロフィーと診断されていることがあります。治療に用いられるのは酵素補充療法がです。

マルターゼは糖質分解に重要な酵素

マルターゼは糖質分解に重要な酵素です。体内で作られる酵素の量には上限があり、無尽蔵ではありません。暴飲暴食などで消化酵素を浪費すると、酵素量が減ってしまい、酵素が不足し、病気になったり寿命が短くなったりする原因になると考えられています。酵素を多く含む食物を撮ったり、酵素を浪費しない食生活を心がけることが健康維持のために重要です。

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タンパク質と生物体の機能体の仕組み・器官理科生物

「マルターゼ」ってどんな消化酵素?役割や機能について現役の研究者がわかりやすく解説

今日は「マルターゼ」について学習していこう。マルターゼは糖質の分解に重要な酵素だ!この記事では「マルターゼ」について、大学で生物学について研究し、現在も研究者として活動しているライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学院で体の仕組みについて研究し、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。

マルターゼってどんな消化酵素?ざっくりっと解説

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消化酵素の一つで、マルトース(麦芽糖)を加水分解して2分子のグルコースにする酵素です。マルターゼのような二糖類分解酵素はαグルコシダーゼとも呼ばれます。

動物から植物まで幅広い生物種が持つ消化酵素で、動物では小腸の消化液に含まれており、麦芽,酵母,糸状菌などのマルターゼはその活性が強いです。ヒトの体温に近い30度や中性付近のph(6.6~7.3)で活性が強まる特徴をもちます。

どこから分泌されるの?

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マルターゼは小腸から分泌される消化酵素になります。唾液にも含まれますがほとんどが小腸からの分泌です。小腸は栄養分を効率よく吸収するためにマルターゼ以外にもスクラーゼ、ラクターゼ、イソマルターゼ、トレハラーゼ、ペプチターゼといった様々な消化酵素を小腸粘膜に存在する上皮細胞から分泌します。

何を分解しているの?

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マルトースが分解するのはグルコースが2つ結合した状態であるマルトース(麦芽糖)です。マルトースを多く含む食品は水飴、麦芽(ばくが)、とうもろこしなどになります。

小腸壁の細胞から分泌されたマルターゼの役割はマルトースを構成する2分子のグルコース間のグリコシド結合を切断し、2分子のグルコースにすることです。分解されたグルコースは小腸上皮細胞膜状のナトリウム依存性グルコース輸送体(sodium/ glucose cotransporter:SGLT)から能動的に吸収され、細胞の基底膜側にある糖輸送体(GLUT2)を通って血管内へと移動し、肝臓や他の組織に運ばれてエネルギー源として使われたり、グリコーゲンとして貯蔵されます。

糖尿病の患者は食後に高血糖を示すことが特徴です。この治療のためにニ糖類分解酵素であるα-グルコシダーゼの阻害剤用いられます。α-グルコシダーゼの活性を阻害することで小腸での糖の分解・吸収を遅らせることで食後高血糖が抑えられるのです。

マルターゼは糖質を分解する酵素

マルターゼはマルトースを加水分解して2分子のグルコースにすることができますが、マルターゼだけではすべての糖質を分解することはできません。

糖質には、でんぷんやオリゴ糖などの多糖類、マルトース、スクロース(砂糖)やラクトース(乳糖)などの二糖類、グルコースやフルクトースなどの単糖類が含まれます。摂取した糖質は消化酵素によって多糖類や二糖類を単糖類に分解することで体内に吸収されますが、このうちマルターゼが分解できるのはマルトースのみです。他の糖質にはそれぞれ別の消化酵素が存在しています。

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