突然ですが、ナメクジに塩をかけたことはあるか?
みるみるうちに小さくなっていくナメクジを見て、驚いたでしょう。

実はこの現象には、高校の化学でも習う「浸透圧」が関係しているんです。
今回はナメクジと塩から浸透圧について学習していこう。

化学メーカーで研究をしているnaaaakaに解説してもらうぞ。

ライター/naaaaka

化学メーカーに研究・開発者として勤める。 製品を開発することよりも、法則や理論を見出すことに喜びを感じる困った男。

ナメクジに塩をかけると何が起きる?

ナメクジに塩をかけると何が起きるか知っていますか?ナメクジの体は溶けている?それとも気化して、消えてしまっているのでしょうか?

答えは、ナメクジの体内の水分が外へ出て、体が縮んでいるのです。人間に塩をかけても縮んだり、脱水なんてしないですよね。なぜナメクジは体の水が抜けてしまうのでしょうか?

脱水の原因は「浸透圧」

塩をかけられたナメクジが脱水して縮んでいく現象には「浸透圧」が関係しています。浸透圧の定義は以下の通りです。

浸透圧濃度の異Fなる溶液半透膜で隔てられると、濃度の低い方から高い方へと溶媒分子が移動する。この溶媒分子を半透膜を透過させる力を浸透圧という。

半透膜:一定のサイズより小さい分子やイオンだけが透過できる膜。

まず浸透圧のメカニズムを説明し、次にナメクジの脱水と浸透圧の関係を見ていきます。

\次のページで「浸透圧のメカニズム」を解説!/

浸透圧のメカニズム

浸透圧のメカニズム

image by Study-Z編集部

濃度の異なる溶液を半透膜で隔てると、両側の濃度差を解消するために物質の移動が始まります。この時濃度差の解消方法として考えられるパターンは以下の3つです。

パターン1:濃度の低い方から溶媒分子が移動
パターン2:濃度が高い方から溶質分子が移動
パターン3:パターン1とパターン2の両方

半透膜の性質から、濃度の解消方法はパターン1に限定されます。半透膜はサイズの小さな溶媒分子は透過することができますが、大きい溶質分子は通過できないからです。そのため濃度の低い方の溶媒分子が、濃度の高い方へ移動することによって濃度差は解消されます。また溶媒分子の移動が生じるため、濃度が高い方の液面は上昇し、濃度が低い方の液面は下降するのです。

image by Study-Z編集部

液面が高くなったほうに、ピストンなどを用いて圧力を加えると、液面が再び下がっていきます。これは浸透圧時とは逆に、溶媒分子が濃度が高い方から低い方へと移動しているのです。これが浸透「圧」と言われている理由であります。分子の移動とかかる力に関係があることを示し、溶媒分子には浸透圧という力が加わっていることが確認できるのです。

この力を加えることで、濃度に逆らって溶媒分子が移動することを逆浸透と言います。逆浸透を用いれば、濃度の低い溶液を作り出すことができるのです。

ナメクジの脱水と浸透圧

image by iStockphoto

まずはナメクジの体の構造を説明します。ナメクジは体の90%が水分です。体の表面は、人間のようなしっかりとした皮膚はなく、薄い膜が覆われています。この薄い膜は力が加わると水分を通してしまう半透膜です。また自身を保護するために、体の表面から粘液を出しています。ナメクジの体は体内の水と粘液が薄い膜によって隔てられている構造と言えるのです。

ナメクジに塩がかかると、体を覆う粘液に塩が溶けていきます。粘液の塩分濃度は高くなり、体内の水分と濃度差が生じるのです。これはまさに、半透膜で濃度差のある溶媒が隔てられている状態であり、浸透圧が生じる条件が揃ってしまいます。こうして塩をかけられたナメクジは、脱水して縮んでいくのです。

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塩以外でもナメクジは縮む?

ナメクジに塩というのは、ことわざにもあるように、とても有名です。では塩ではなく、砂糖をかけたらどうなると思いますか?塩とは逆にナメクジは膨張してしまうのでしょうか?

砂糖や小麦粉でも縮む

結論から言うと、砂糖をかけてもナメクジは縮んでしまいます。つまり砂糖でも浸透圧は生じるということです。浸透圧が生じるための要因の1つは、溶質の濃度差でしたよね。塩であるということは重要ではありません。そのため塩や砂糖以外に、小麦粉をかけられてもナメクジは縮んでしまいます。

なぜ人間は塩をかけられても縮まない?

ナメクジは塩や砂糖に小麦粉などに触れると、脱水して縮んでしまうとお話ししました。一方で私たち人間は、料理をするとき塩や砂糖に触れていますが、縮みはしないですよね。人はなぜ平気なのでしょうか?

「浸透圧」には半透膜が不可欠

人間が塩をかけられても平気な理由は、人間の皮膚は半透膜ではないからです。人の皮膚は水も塩も透過させません。そのため、浸透圧が生じないのです。浸透圧が生じるための要因の1つは、半透膜でしたよね。濃度差がいくら大きくても、半透膜で隔てられていなければ、浸透圧は生じません

水を通さないから脱水しない、と考えてみればシンプルな理由ですよね。

浸透圧が関係している身近な現象

浸透圧はナメクジに塩以外にも、身の回りの多くの現象に関わっているのです。いくつか紹介します。

\次のページで「青菜に塩」を解説!/

青菜に塩

image by iStockphoto

青菜に塩という言葉を聞いたことがあるでしょうか?元気がなく、しょんぼりした様子を表すことわざなのですが、こちらも浸透圧が関わる現象なのです。

ナメクジと同様に、青菜の細胞膜水は通過できるが、塩は通過できない半透膜。そのため塩をかけられると「半透膜」と「濃度差」の条件が揃うため、浸透圧が生じます。こうして脱水してしまい、ことわざの通り、しょんぼりしてしまうのです。

青菜以外にも、食材に塩をかけて余分な水分を除くということは、料理ではよく行われいますよね。

血液透析

image by iStockphoto

血液透析は、本来腎臓が行う、血液中から毒素を排出するために行われる治療行為。この毒素を排出に浸透圧が利用されているのです。

ダイアライザーというものが、半透膜の役割を果たします。このダイアライザーは毒素や電解質(ナトリウムやカリウムなど)は透過できるが、赤血球や白血球といった大きな成分は透過できない構造となっているのです。各種濃度差のある血液と透析液を半透膜であるダイアライザーで隔ててると、浸透圧が生じます。このとき赤血球や白血球などの血液に必要な成分は、半透膜を通過できないため排出されません。

一方で半透膜を透過してしまうが、電解質は体には一定量必要となります。そこで電解質濃度が調整された透析液が使用されているのです。これにより電解質の排出は制御されて、透析後も電解質濃度は一定以上保たれます。

ナメクジに塩かけると縮むのは、浸透圧が原因

ナメクジに塩をかけると縮んでしまうのは、浸透圧が生じることで脱水してしまうことが原因でした。
浸透圧が生じる条件は、「濃度差のある溶液が半透膜で隔てられる」ことです。

料理や医療など、浸透圧が関係している事象は身の回りにたくさんあります。
他にも浸透圧がどのように応用されているか、ぜひ探してみてください。

" /> ナメクジに塩をかけると縮むのはなぜ?浸透圧との関係を開発者のライターがわかりやすく解説! – Study-Z
化学化学平衡理科生活と物質

ナメクジに塩をかけると縮むのはなぜ?浸透圧との関係を開発者のライターがわかりやすく解説!



突然ですが、ナメクジに塩をかけたことはあるか?
みるみるうちに小さくなっていくナメクジを見て、驚いたでしょう。

実はこの現象には、高校の化学でも習う「浸透圧」が関係しているんです。
今回はナメクジと塩から浸透圧について学習していこう。

化学メーカーで研究をしているnaaaakaに解説してもらうぞ。

ライター/naaaaka

化学メーカーに研究・開発者として勤める。 製品を開発することよりも、法則や理論を見出すことに喜びを感じる困った男。

ナメクジに塩をかけると何が起きる?

ナメクジに塩をかけると何が起きるか知っていますか?ナメクジの体は溶けている?それとも気化して、消えてしまっているのでしょうか?

答えは、ナメクジの体内の水分が外へ出て、体が縮んでいるのです。人間に塩をかけても縮んだり、脱水なんてしないですよね。なぜナメクジは体の水が抜けてしまうのでしょうか?

脱水の原因は「浸透圧」

塩をかけられたナメクジが脱水して縮んでいく現象には「浸透圧」が関係しています。浸透圧の定義は以下の通りです。

浸透圧濃度の異Fなる溶液半透膜で隔てられると、濃度の低い方から高い方へと溶媒分子が移動する。この溶媒分子を半透膜を透過させる力を浸透圧という。

半透膜:一定のサイズより小さい分子やイオンだけが透過できる膜。

まず浸透圧のメカニズムを説明し、次にナメクジの脱水と浸透圧の関係を見ていきます。

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