今回は葉緑体のストロマやチラコイドについて解説していきます。葉緑体といえば植物が持っている細胞小器官で、光合成を行うことができるよな。さて、葉緑体の中の構造はイメージできるでしょうか。ストロマやチラコイドはどの部分なのか、起こっている反応について、覚え違いがないようにしておこう。また、葉緑体の起源についても説明していこうと思う。
この記事では生物学に詳しい、理系院卒ライターtomato1121と解説していきます。

ライター/tomato1121

大学と大学院で学んだことを元に、生物の楽しさを伝えたいと思いライターになる。生物学の知識を分かりやすく伝え、多くの人に興味を持ってもらえるように日々奮闘中。

葉緑体

image by iStockphoto

葉緑体は光合成の場となっている細胞小器官です。葉緑体は陸上植物の葉においては、主に表面のさく状組織、海綿状組織に多く存在しています。

葉緑体は二重の膜で包まれており、さらに葉緑体独自のDNAを持っているのが大きな特徴。まずは葉緑体の構造について復習していきましょう。

ストロマやチラコイド膜はどこにある?

葉緑体の内部の構造は、他の細胞小器官とは少し変わった構造をしていますね。内部には扁平な袋状のチラコイドというものが存在しています。そのチラコイドがいくつも積み重なったグラナという構造をとっているのが特徴。そしてこれらの構造体以外の、基質部分をストロマといいます。

チラコイド膜には光エネルギーを吸収する機能をもつ、クロロフィルが存在していることを覚えておきましょう。

光合成

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続きまして、光合成について説明していきましょう。光合成とは、光エネルギーを利用して水を分解し、得られたATPを使って「二酸化炭素を固定してグルコースをつくりだす」反応。二酸化炭素のような小さくて単純な分子から、グルコースのような大きい複雑な分子を合成する、このような反応を「同化」といいますね。

この光合成の反応は、大きく分けて2つの段階で行われます。それはチラコイド膜で起こる反応と、ストロマで起こる反応。それぞれにおいて、光というものが大きな役割を担っていることが分かっています。

チラコイドで行われる反応

まず光合成のスタートはチラコイド膜で起こる反応。チラコイド膜には光合成色素が存在しています。光合成色素とは、光エネルギーを吸収することができる分子。例えば高等植物がもっている光合成色素は、クロロフィルaとb、カロテノイドに分類されるカロテンとキサントフィルです。

クロロフィルはタンパク質と複合体を形成して、チラコイド膜に埋め込まれた形で存在しています。光エネルギーを吸収すると、クロロフィル分子内の電子が高エネルギー状態になるのです。この電子はどうなるかというと、チラコイド膜に存在するタンパク質間を移動してくことになります。

一方でクロロフィル分子は電子が不足した状態なので、それを補うために水を分解して電子を補充することに。その副産物として酸素と水素イオンが生じるというわけなんですね。水素イオンはチラコイド内腔に蓄積します。そのため、水素イオン濃度が低いストロマへと濃度勾配にしたがって移動するときに、ATP合成酵素を通過。それによってATPが合成されるという仕組みです。

水素イオンはATP合成に利用された後に、補酵素と結合して続くストロマでの反応に利用されることになります。

\次のページで「ストロマで行われる反応」を解説!/

ストロマで行われる反応

ストロマで行われる反応

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続いてストロマで行われる反応はカルビン・ベンソン回路といわれる二酸化炭素を固定する回路です。このカルビン・ベンソン回路は緑色植物と光合成細菌が持っている反応系であると知られています。

この回路で主役となるのが、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ。本来の名前は長いのでRubisCO(ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenaseの略)、ルビスコと呼ばれています。これは二酸化炭素を取り込むことができる酵素です。しかし他の酵素と違い、とても反応速度が遅い酵素。従って多くの二酸化炭素を固定するためにはRubisCOもたくさん必要になるのでしょう。ストロマに存在しているタンパク質の約半分がRubisCOであるとされています。

RubisCOによって二酸化炭素が固定された後に起こるのが、チラコイドでつくられたATPと還元型補酵素を使う反応。これによってグルコースが生産されます。その後は再び二酸化炭素を固定する前の状態に戻るため、サイクルを回るように反応が繰り返されることが特徴です。このカルビン・ベンソン回路によって、継続的に二酸化炭素を固定することができます。

明反応、暗反応とは

さて、光合成には明反応と暗反応があるということは聞いたことはありますか。チラコイドでの反応は光が必要だから明反応、ストロマでの反応は光を必要としないから暗反応、そのように考えられていました。

しかし、最近の研究によると、チラコイドでの反応のうち光を必要とする反応と、必要としない反応があることが分かってきたのです。さらにストロマで行われているカルビン・ベンソン回路でも、光がないと働かない酵素があるとのこと。

したがって、現在では光合成において明反応や暗反応という言葉が用いられなくなってきました。

葉緑体の起源

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光合成に必要不可欠な葉緑体ですが、最初から真核細胞に備わっていたわけではありません。葉緑体の起源として定説となっているのが細胞内共生説です。

葉緑体はシアノバクテリアという原核生物が起源と言われています。このシアノバクテリア、水を分解して光合成に利用した初めての光合成生物なんです。単独で光合成をして生存していたシアノバクテリア。どのようなきっかけかは分かりませんが、約10億年前に真核細胞に取り込まれる形で葉緑体として細胞小器官となったという説が有力です。

細胞内共生説の裏付けとなっているのが、葉緑体の中に独自のDNAをもっていること。また、細胞の分裂とは関係なく「半自律的」に分裂できることも大きな理由となっています。真核細胞の一部となった今も、単独で生きていたころの特徴を持ち続けているようですね。

ストロマトライト

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このシアノバクテリアの死骸や海中の泥などが積み重なってできた岩石のようなものあります。それがストロマトライトというもの。断面は層状になっています。数十億年前に酸素を生み出したシアノバクテリア、このような形で見られるとは驚きですよね。

\次のページで「チラコイドとストロマで起こる反応を整理しよう」を解説!/

チラコイドとストロマで起こる反応を整理しよう

今回は葉緑体のチラコイドやストロマ、光合成の反応について解説いたしました。「光合成」とひとくくりに反応式を覚えるのではなく、チラコイドでの反応とストロマでの反応、分けて理解しておきましょう。

光合成は複雑な反応の繰り返し。細かい反応を隅から隅まで覚えることは難しいですよね。ただ、どんな反応が行われるかを理解し、おおまかに整理しておくだけでも理解度は上がりますよ。

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理科生物

ストロマとはどこの部分?葉緑体の構造や光合成について理系院卒ライターが5分でわかりやすく解説!

今回は葉緑体のストロマやチラコイドについて解説していきます。葉緑体といえば植物が持っている細胞小器官で、光合成を行うことができるよな。さて、葉緑体の中の構造はイメージできるでしょうか。ストロマやチラコイドはどの部分なのか、起こっている反応について、覚え違いがないようにしておこう。また、葉緑体の起源についても説明していこうと思う。
この記事では生物学に詳しい、理系院卒ライターtomato1121と解説していきます。

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大学と大学院で学んだことを元に、生物の楽しさを伝えたいと思いライターになる。生物学の知識を分かりやすく伝え、多くの人に興味を持ってもらえるように日々奮闘中。

葉緑体

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葉緑体は光合成の場となっている細胞小器官です。葉緑体は陸上植物の葉においては、主に表面のさく状組織、海綿状組織に多く存在しています。

葉緑体は二重の膜で包まれており、さらに葉緑体独自のDNAを持っているのが大きな特徴。まずは葉緑体の構造について復習していきましょう。

ストロマやチラコイド膜はどこにある?

葉緑体の内部の構造は、他の細胞小器官とは少し変わった構造をしていますね。内部には扁平な袋状のチラコイドというものが存在しています。そのチラコイドがいくつも積み重なったグラナという構造をとっているのが特徴。そしてこれらの構造体以外の、基質部分をストロマといいます。

チラコイド膜には光エネルギーを吸収する機能をもつ、クロロフィルが存在していることを覚えておきましょう。

光合成

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続きまして、光合成について説明していきましょう。光合成とは、光エネルギーを利用して水を分解し、得られたATPを使って「二酸化炭素を固定してグルコースをつくりだす」反応。二酸化炭素のような小さくて単純な分子から、グルコースのような大きい複雑な分子を合成する、このような反応を「同化」といいますね。

この光合成の反応は、大きく分けて2つの段階で行われます。それはチラコイド膜で起こる反応と、ストロマで起こる反応。それぞれにおいて、光というものが大きな役割を担っていることが分かっています。

チラコイドで行われる反応

まず光合成のスタートはチラコイド膜で起こる反応。チラコイド膜には光合成色素が存在しています。光合成色素とは、光エネルギーを吸収することができる分子。例えば高等植物がもっている光合成色素は、クロロフィルaとb、カロテノイドに分類されるカロテンとキサントフィルです。

クロロフィルはタンパク質と複合体を形成して、チラコイド膜に埋め込まれた形で存在しています。光エネルギーを吸収すると、クロロフィル分子内の電子が高エネルギー状態になるのです。この電子はどうなるかというと、チラコイド膜に存在するタンパク質間を移動してくことになります。

一方でクロロフィル分子は電子が不足した状態なので、それを補うために水を分解して電子を補充することに。その副産物として酸素と水素イオンが生じるというわけなんですね。水素イオンはチラコイド内腔に蓄積します。そのため、水素イオン濃度が低いストロマへと濃度勾配にしたがって移動するときに、ATP合成酵素を通過。それによってATPが合成されるという仕組みです。

水素イオンはATP合成に利用された後に、補酵素と結合して続くストロマでの反応に利用されることになります。

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