随意筋は、文字通り「随意に動かせる筋肉」です。動かしたいと思って動かせる筋肉です。
随意筋とセットで不随意筋という筋肉もありますが、これらの違いも理解しているか?
随意筋はどこにあるのでしょう。また、どのようにして機能しており、どのような神経に支配されているのでしょうか?
現役医学生ライターのたけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験がある。人体全般と再生医療に興味あり。

随意筋とは?

ヒトの筋肉は、「意図的に動かせるかどうか」で2種類に分けられます。

随意筋:意図的に動かすことができる筋肉

不随意筋:意図的に動かすことができない筋肉

名前の通りですね。随意筋の方が定義はわかりやすく、意図的に動かそうと思って動かせる筋肉、ということになります。

では、具体的にどのような筋肉が随意筋、不随意筋に該当するのでしょう?

筋肉の種類

筋肉の種類

image by Study-Z編集部

ヒトの筋肉は、大きくこの表のように分けることができます。骨格筋、心筋、内臓筋の3種類です。

先ほど、ヒトの筋肉について「随意筋か不随意筋か」という分け方をしましたが、それ以外にもこの表のように「横紋筋か平滑筋か」、「平行に並ぶか枝分かれするか」などの特徴で分けることができます。そして、これらの特徴は骨格筋、心筋、内臓筋に複雑にオーバーラップしてみることができるのです。

また、表からもおわかりいただけるかと思うのですが、心筋は骨格筋と内臓筋の間のような特徴を持っています。心筋については不随意筋のページで扱っていますので、気になる方はそちらを参照してくださいね。

さて、「意図的に動かせる/動かせない」とはどういうことでしょうか。ずばり、これらでは神経が異なるのです。

筋肉を支配する神経

随意筋(骨格筋):体性神経

不随意筋(心筋、内臓筋):自律神経

脳の「骨格筋を動かす司令塔(前頭葉の一次運動野)」から出された指令は、体性神経を通り骨格筋に到達します。この指令が出されるのは私たちの意識下。だから、骨格筋は「随意」筋なのです。一方、脳の「内臓・心臓を動かす司令塔(延髄など)」から出された指令は、自律神経を通り心筋や内臓筋に到達します。そしてこの指令が出されるのは私たちの無意識下。だから「不随意」筋なのですね。

ということで、ここまでをまとめると次の図のようになります。

image by Study-Z編集部

随意筋は1種類!〜骨格筋〜

随意筋は、骨格筋1種類のみです。骨格筋の特徴について見ていきましょう。

骨格筋の構造【細胞レベル】

骨格筋の構造【細胞レベル】

image by Study-Z編集部

骨格筋は体性神経に支配される随意筋です。骨格筋はその名の通り骨格を構成しています。いわゆる、筋トレで鍛える筋肉です。

骨格筋には、図のように筋肉線維に対し横方向(垂直)に多数の線が見られます。これが横紋です。横紋のある筋肉を横紋筋と言います。横紋筋の詳細については次の章で扱いますね。

骨格筋は1つの細胞に複数の核を持っています(多核)。これは、筋肉が発生する段階で複数の骨格筋細胞が融合し、細胞膜は1つになったものの核はバラバラのままだったことによります。ちなみに、このように細胞同士が融合しているため骨格筋細胞はこれ以上増えることができません。しかし、「筋肉は修復される」とか「筋トレで筋肉が大きくなる」といった話はよく耳にしますよね。これは「ミオシンフィラメントやアクチンフィラメントが太くなる」ことに由来します。筋線維が傷つけられたことに反応して骨格筋細胞内の核のみが増やされ、これらのフィラメントの合成が盛んになり筋線維が太くなるのです。

\次のページで「骨格筋の構造【束が束になる】」を解説!/

また、骨格筋では筋収縮の主体であるミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが非常に発達しており、これらが細胞内のど真ん中を陣取っています。だから、核は細胞の端っこに押しつぶされた(圧排された)構造をしているのですね。

骨格筋の構造【束が束になる】

骨格筋の構造【束が束になる】

image by Study-Z編集部

さて、骨格筋について少し大きく見て見ましょう。骨格筋の一番細い線維筋原線維です。筋原線維はミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが図のように整列して束になった構造をしています。骨格筋に横紋が見られるのはこの整列のおかげです。さて、この筋原線維はさらに複数本の束となり筋細胞膜に包まれます。これが筋細胞(筋線維)の1単位。筋細胞膜の1部は筋細胞内へと落ち窪み、T細管(T管)となります。ということは、T細管の中は細胞の外と言えますよね。筋原線維は、複数本集まって筋小胞体という袋に取り囲まれるのですが、この筋小胞体はT細管と接するように位置しています。細胞外の情報が、T細管を通り筋小胞体に伝えられるための構造です。

さて、線維状の筋細胞ですが、これらが複数本集まり筋線維束となります。そして、筋線維束が複数本集まることで筋肉が完成するのです。

入れ子状になっている線維の、どの段階が何という名前なのか、混乱しないよう注意しましょう。

骨格筋は横紋筋!

さて、横紋筋とは何でしょうか?横紋筋と平滑筋の違いについて見ていきましょう。

横紋筋も平滑筋も、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが手繰り寄せられるように収縮する仕組みは同じです。ではどこが違うのかというと、それは、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの並び方にあります。

\次のページで「横紋筋とは?」を解説!/

横紋筋とは?

横紋筋とは?

image by Study-Z編集部

横紋筋と平滑筋の1番の違いはフィラメントの整列具合。

横紋筋では、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが縦横に整列しています。この整列のおかげで、筋線維を遠目に見ると暗帯という暗いゾーンが出現。この整列は縦横にいくつも繰り返されますから、やがてしましまの線維が出来上がります。これが横紋の正体です。

一方、平滑筋ではアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの並びはバラバラ。このため暗帯は見ることができず、当然横紋も見ることができません。よって、「平滑」な筋肉と名付けられました。

筋肉が収縮する仕組みは?

では、筋肉が収縮する仕組みを見ていきましょう。基本的な仕組みは同じですが、わかりやすいので横紋筋で説明しますね。

まず、脳からの指令を受けた神経の末端からアセチルコリンが放出されます。このアセチルコリンは、筋細胞膜の表面にある受容体に結合。すると、この刺激を受けてナトリウムチャネルが開きます細胞内にナトリウムイオンが大量に流入すると、細胞内がプラスの電位に傾き活動電位が発生。活動電位は細胞膜を経由してT細管へと伝えられます。このT細管ですが、筋小胞体と接していましたよね。筋小胞体は細胞の中の袋です。中にはカルシウムイオンが大量に含まれており、T細管からの刺激でこのカルシウムイオンが細胞内に放出されます。筋細胞内に放出されたカルシウムイオンはアクチンフィラメントと結合。これによりアクチンフィラメントはミオシンフラメントと結合できるようになります。

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ミオシンフィラメントの頭部は、図のようにアクチンフィラメントと結合します。そしてミオシンフィラメントの頭部でATPが分解されると、ミオシンフィラメントの頭部がアクチンフィラメントを手繰り寄せるように動き、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込むようにして収縮。これが筋収縮の仕組みです。

繰り返しになりますが、この基本構造は横紋筋でも平滑筋でも変わりません。

随意筋を動かす体性神経とは?

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さて、随意筋を動かしているのは体性神経です。神経には脳から末梢に向かう遠心性のものと、末梢から脳に向かう求心性のものがありますが、遠心性の体性神経の役割は随意運動のみ。体性神経が担っている機能を総称して動物機能と呼んだりもします。

随意筋は意図的に動かせる筋肉!

ここまで、随意筋の場所や仕組み、神経について見てきました。

随意筋、すなわち骨格筋は筋肉の代表です。筋肉を勉強する上では、不随意筋よりも随意筋から勉強し始めるとわかりやすいかもしれません。また本文でも扱いましたが、筋肉構造はミクロとマクロを理解する必要があります。「今見ているものはどのレベルのサイズ感なのか」をいつも確認するようにすると迷子になりにくいですよ。

この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。

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理科生物

随意筋とは一体どんな筋肉?具体的な種類や仕組み、神経について現役医学生が詳しくわかりやすく解説!


随意筋は、文字通り「随意に動かせる筋肉」です。動かしたいと思って動かせる筋肉です。
随意筋とセットで不随意筋という筋肉もありますが、これらの違いも理解しているか?
随意筋はどこにあるのでしょう。また、どのようにして機能しており、どのような神経に支配されているのでしょうか?
現役医学生ライターのたけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験がある。人体全般と再生医療に興味あり。

随意筋とは?

ヒトの筋肉は、「意図的に動かせるかどうか」で2種類に分けられます。

随意筋:意図的に動かすことができる筋肉

不随意筋:意図的に動かすことができない筋肉

名前の通りですね。随意筋の方が定義はわかりやすく、意図的に動かそうと思って動かせる筋肉、ということになります。

では、具体的にどのような筋肉が随意筋、不随意筋に該当するのでしょう?

筋肉の種類

筋肉の種類

image by Study-Z編集部

ヒトの筋肉は、大きくこの表のように分けることができます。骨格筋、心筋、内臓筋の3種類です。

先ほど、ヒトの筋肉について「随意筋か不随意筋か」という分け方をしましたが、それ以外にもこの表のように「横紋筋か平滑筋か」、「平行に並ぶか枝分かれするか」などの特徴で分けることができます。そして、これらの特徴は骨格筋、心筋、内臓筋に複雑にオーバーラップしてみることができるのです。

また、表からもおわかりいただけるかと思うのですが、心筋は骨格筋と内臓筋の間のような特徴を持っています。心筋については不随意筋のページで扱っていますので、気になる方はそちらを参照してくださいね。

さて、「意図的に動かせる/動かせない」とはどういうことでしょうか。ずばり、これらでは神経が異なるのです。

筋肉を支配する神経

随意筋(骨格筋):体性神経

不随意筋(心筋、内臓筋):自律神経

脳の「骨格筋を動かす司令塔(前頭葉の一次運動野)」から出された指令は、体性神経を通り骨格筋に到達します。この指令が出されるのは私たちの意識下。だから、骨格筋は「随意」筋なのです。一方、脳の「内臓・心臓を動かす司令塔(延髄など)」から出された指令は、自律神経を通り心筋や内臓筋に到達します。そしてこの指令が出されるのは私たちの無意識下。だから「不随意」筋なのですね。

ということで、ここまでをまとめると次の図のようになります。

image by Study-Z編集部

随意筋は1種類!〜骨格筋〜

随意筋は、骨格筋1種類のみです。骨格筋の特徴について見ていきましょう。

骨格筋の構造【細胞レベル】

骨格筋の構造【細胞レベル】

image by Study-Z編集部

骨格筋は体性神経に支配される随意筋です。骨格筋はその名の通り骨格を構成しています。いわゆる、筋トレで鍛える筋肉です。

骨格筋には、図のように筋肉線維に対し横方向(垂直)に多数の線が見られます。これが横紋です。横紋のある筋肉を横紋筋と言います。横紋筋の詳細については次の章で扱いますね。

骨格筋は1つの細胞に複数の核を持っています(多核)。これは、筋肉が発生する段階で複数の骨格筋細胞が融合し、細胞膜は1つになったものの核はバラバラのままだったことによります。ちなみに、このように細胞同士が融合しているため骨格筋細胞はこれ以上増えることができません。しかし、「筋肉は修復される」とか「筋トレで筋肉が大きくなる」といった話はよく耳にしますよね。これは「ミオシンフィラメントやアクチンフィラメントが太くなる」ことに由来します。筋線維が傷つけられたことに反応して骨格筋細胞内の核のみが増やされ、これらのフィラメントの合成が盛んになり筋線維が太くなるのです。

\次のページで「骨格筋の構造【束が束になる】」を解説!/

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