身の回りにあるガラスについて注目したことはあるか?当たり前に存在しているが、もちろん原料から作り出され、窓ガラスなど人々に多く利用されている。
今回はそんなガラスについて、大学では有機合成の実験が好きだったというライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

ガラスってそもそも何だろう?

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わたしたちの身の回りには多くのガラス製品が存在します。お家の窓ガラスやグラスなどのガラス食器、スマートフォンにもガラスが利用されていますね。

そんな日常生活には欠かせないガラスについて、深く考えたことはあるでしょうか?構造から知ることで、ガラスとは何なのかを理解していきましょう。

ガラスの構造は美しい!

ガラスの構造は美しい!

image by Study-Z編集部

ガラスの成分から見ていきましょう。元素で言うと、主にケイ素酸素から成り立っています。ケイ素を中心として酸素が4つ、正四面体構造を作っているのです。

この基本構造をつなげていくのですが、ガラスは金属などの他の個体とは違う構造を持っています。個体とは分子が規則正しく整列している「結晶質」ですが、ガラスは分子がランダムに配置されている「非晶質」です。アモルファスとも呼びます。

イメージすると、箱にボールが隙間なくきれいに詰まっているより、何も考えずぎゅうぎゅうに詰め込んである方が不安定ですよね。このことから、ガラスは様々な形に加工しやすい素材と言えます。

また、わたしたちが目で見るガラスは完全に個体ですよね?ですが、分子レベルで考えると液体ではないのかという説があり、いまだに議論が繰り返されている不思議な素材なのです。

ガラスの3つの特徴

ガラスの特徴としてすぐ思い浮かぶのは、無色透明であることですね。透明ということは光を通すということです。例えばお家の窓。室内と室外を遮断するのに金属だったら、部屋の中が真っ暗になってしまいます。そこで窓には光を通す個体として、ガラスが使われるようになりました。

2つめは、化学変化を起こしにくいことです。金属は時間が経つと酸化して錆びたり色が変わったりしますが、ガラスは時間が経ってもほぼ劣化しません。日本では弥生時代に製造されたガラスが発見され、現在も存在しているくらいです。

ただ、ガラスの表面に水がついたまま何回も放置すると「白やけ」という現象が起こってしまいます。その名の通り表面が白くなってしまうので、ガラス食器を洗った後はしっかり水気を取りましょう。

3つめは、熱が伝わりづらいことです。物質の熱の伝わりやすさは熱伝導率で比較します。鉄が84(W/mK)、ステンレスが16(W/mK)なのに対し、ガラスは1(W/mK)と低い数値です。窓にガラスが用いられるのは、熱の移動を抑えることができ断熱効果もあるからなんですね。

ガラスの原料は砂!?ガラスができるまで

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ガラスにはどのような原料が使われているか知っていますか?実は、主な原料は3つしかなく意外とシンプルです。

身近にありすぎて、あるのが当たり前になっているガラス。それらがどのように製造されているのか詳しくご紹介します。

\次のページで「ガラスの主な原料」を解説!/

ガラスの主な原料

ガラスの主な原料は、珪砂(けいしゃ)、ソーダ灰、石灰の3つです。

珪砂とは漢字の通り砂のことで、石英という二酸化ケイ素で構成されている鉱物でできています。

ソーダ灰は、無水炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)の工業薬品名で、原料は塩です。アンモニアソーダ法によりできた重曹を加熱した際に出た灰がソーダ灰になります。

石灰とは、鉱石を原料にした炭酸カルシウム(CaCO₃)のことです。

つまり、ガラスの原料はどれも天然資源で成り立っていることがわかるでしょう。環境にやさしい物質ということですね。

アンモニアソーダ法(ソルベー法)

2NaCl+CaCO₃→NaCO3+CaCl₂

炭酸ナトリウムの工業的製法。電気分解が必要ないため、低コストで生産できる方法である。副材料のアンモニアと二酸化炭素を回収し再利用できるといった特徴を持っている。

ガラスの作り方

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ガラスの製造工程をご覧いただきましょう。

一般的なガラスはフロート法と呼ばれる方法で製造されます。先程ご紹介した原料を約1600℃まで加熱。これらをガラスより重い金属のスズが溶けているフロートバスに流し込みます。するとガラスの方が軽いのでスズの上に浮かびながら流れて広がり、徐冷炉で緩やかに冷やされることで平滑な板状のガラスが完成するのです。

製造工程で出た不用なガラスは、粉砕してガラスの原料として再利用されます。無駄な廃棄物が出ず、リサイクルも可能なことから身の回りにたくさん用いられるようになったんですね。

ガラスは加工もできるすごい素材!

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ガラスは、人々が快適に暮らせるように工夫して使える素材です。

また、ガラス細工のような芸術作品もありますね。「江戸切子」や「琉球ガラス」が有名です。カットによって光の通り方が変わるキラキラ輝いて見えたり、着色することで鮮やかな世界観を表現しています。

ガラスを強化する

一般的なガラスのことをフロートガラスと言います。フロートガラスは落としたりぶつけたりすると、すぐ割れてしまいますね。そこで生み出されたのが強化ガラスです。強化ガラスは、フロートガラスと比べて3~5倍強度があります

では、強化ガラスの製造工程を簡単に解説していきましょう。まず、フロート板ガラスを約650℃まで加熱。ここでガラスが変形し始めたら、冷風ですぐに冷やします。そうすると、ガラスの表面は急激に冷やされ内側は徐々に冷えていきますね。すると、ガラスの表面に圧縮応力層、内側に引張応力層が形成されます。圧縮応力層ができることで、ガラス表面に前もって圧縮力を溜めておくことができるのです。以上のことから、ガラスの強度が向上します。

\次のページで「ガラスを着色する」を解説!/

ガラスを着色する

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色鮮やかなガラスは角度によって輝きが変わり、人々を魅了します。無色透明なガラスにどのように着色しているのでしょうか?

それはガラスの原料に微量の金属化合物を加えたり、比率を変えたりすることで色を調整しているのです。例えば青はコバルトや銅、緑は鉄、黄色は銀やニッケル、クロムを使用します。

中でも赤いガラスは特別で、原料はなんと金!金はイメージ通り希少価値が高く、溶かすのが難しいです。よって他の原料に比べてコストがかかるので、赤いガラスは貴重なものとされています。

ガラスは今後もわたしたちの生活に必要不可欠!

ガラスがリサイクルできることは周知されていますが、それがなぜなのかを説明できる人は少ないのではないでしょうか?主な原料は砂で、用いられる原料はすべて天然資源。製造工程でも無駄なものは出ないので、本当に環境にやさしい素材ですね!

ガラスの加工は強化と着色について解説しましたが、他にも目的に合わせて切り出したり変形させたりもできる素材です。ガラス細工では表面だけ細工が施されていたりしますね。ガラスにはたくさんの特性があることを理解してもらえたら嬉しいです。

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化学理科

ガラスは何でできてるの?ガラスの原料や構造から作り方までを理系出身ライターがわかりやすく徹底解説!


身の回りにあるガラスについて注目したことはあるか?当たり前に存在しているが、もちろん原料から作り出され、窓ガラスなど人々に多く利用されている。
今回はそんなガラスについて、大学では有機合成の実験が好きだったというライターyuaと一緒に解説していきます。

ライター/yua

理工学部化学科を卒業している理系女子。有機化学が好き。だが理系には見えず、だいたいの人にびっくりされるらしい。塾講師の経験もあり、化学が苦手な人にもわかりやすく解説できるように努力している。

ガラスってそもそも何だろう?

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わたしたちの身の回りには多くのガラス製品が存在します。お家の窓ガラスやグラスなどのガラス食器、スマートフォンにもガラスが利用されていますね。

そんな日常生活には欠かせないガラスについて、深く考えたことはあるでしょうか?構造から知ることで、ガラスとは何なのかを理解していきましょう。

ガラスの構造は美しい!

ガラスの構造は美しい!

image by Study-Z編集部

ガラスの成分から見ていきましょう。元素で言うと、主にケイ素酸素から成り立っています。ケイ素を中心として酸素が4つ、正四面体構造を作っているのです。

この基本構造をつなげていくのですが、ガラスは金属などの他の個体とは違う構造を持っています。個体とは分子が規則正しく整列している「結晶質」ですが、ガラスは分子がランダムに配置されている「非晶質」です。アモルファスとも呼びます。

イメージすると、箱にボールが隙間なくきれいに詰まっているより、何も考えずぎゅうぎゅうに詰め込んである方が不安定ですよね。このことから、ガラスは様々な形に加工しやすい素材と言えます。

また、わたしたちが目で見るガラスは完全に個体ですよね?ですが、分子レベルで考えると液体ではないのかという説があり、いまだに議論が繰り返されている不思議な素材なのです。

ガラスの3つの特徴

ガラスの特徴としてすぐ思い浮かぶのは、無色透明であることですね。透明ということは光を通すということです。例えばお家の窓。室内と室外を遮断するのに金属だったら、部屋の中が真っ暗になってしまいます。そこで窓には光を通す個体として、ガラスが使われるようになりました。

2つめは、化学変化を起こしにくいことです。金属は時間が経つと酸化して錆びたり色が変わったりしますが、ガラスは時間が経ってもほぼ劣化しません。日本では弥生時代に製造されたガラスが発見され、現在も存在しているくらいです。

ただ、ガラスの表面に水がついたまま何回も放置すると「白やけ」という現象が起こってしまいます。その名の通り表面が白くなってしまうので、ガラス食器を洗った後はしっかり水気を取りましょう。

3つめは、熱が伝わりづらいことです。物質の熱の伝わりやすさは熱伝導率で比較します。鉄が84(W/mK)、ステンレスが16(W/mK)なのに対し、ガラスは1(W/mK)と低い数値です。窓にガラスが用いられるのは、熱の移動を抑えることができ断熱効果もあるからなんですね。

ガラスの原料は砂!?ガラスができるまで

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ガラスにはどのような原料が使われているか知っていますか?実は、主な原料は3つしかなく意外とシンプルです。

身近にありすぎて、あるのが当たり前になっているガラス。それらがどのように製造されているのか詳しくご紹介します。

\次のページで「ガラスの主な原料」を解説!/

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