着生植物って聞いたことない人もいるかもしれませんね。「何かにくっついている植物なの?」と、名前からもイメージできた人も多いでしょう。そのイメージは正解です。しかしコケや地衣類とは違うのか混乱している人も多いでしょう。さらに多くの研究者が興味を持っている存在でもあるんです。今日は着生植物の意味から生活環境、利用方法まで勉強バカ大学生ライター、kirinmameと一緒に解説していきます。

ライター/sarasa

国立大学生物学科卒業。新卒で就職するも、学問の探求したさに大学心理学部に再入学。生粋の勉強バカな現役理系大学生が「着生植物」をわかりやすく解説していく。

着生植物って何?

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着生植物は植物の幹や枝、または岩などに固着する植物のことです。一般的に、植物は土壌に根を張るものをイメージする人が多いのではないでしょうか?しかし、着生植物は土壌には根を張らず、独自の方法で植物や岩の上生息しています。

着生植物の植物学上の分類!コケや地衣類とは違うのか?

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着生植物は植物の幹や枝、または岩などに固着する植物のことです。ここで「コケや地衣類も植物や岩の上に生えているけど?」という疑問を感じる人も多いのではないでしょうか。

結論を述べると、コケや地衣類は着生植物に属しています

着生植物という名前は、植物学上の特定の分類群を指す名称ではありません。着生植物の特徴を持つ植物の仲間を総称して着生植物と呼んでいます。

着生植物の代表的な分類や生育地は?

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着生植物に含まれる分類は、コケ類、地衣類の他に、ラン科植物、シダ植物、サトイモ科が代表的です

そして着生植物の生育地は一般的に高温多湿地に多くみられます。高温多湿の環境といえば、熱帯雨林ですよね。日本はもちろん、世界中の研究者が熱帯雨林で着生植物の研究をした論文をたくさん発見しました。

着生植物の具体的な代表例には何がある?

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着生植物に含まれる代表的な分類は、コケ類、地衣類、シダ類、ラン科、サトイモ科だと紹介しました。熱帯雨林だけでなく日本にも着生植物は分布しています。

日本に生息している着生植物の代表例を知って、着生植物とは何か、イメージしやすくしましょう。

1.ノキシノブ

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ノキシノブは山登りをする人なら誰しもみたことがあるよく見る着生植物です。

「ノキシノブ」という名前は、「軒(ノキ)下に忍んで生えている植物」という意味が由来とも言われています。

科名・属名:ウラボシ科ノキシノブ属

学名:Lepisorus thunbergianus

分布:日本・台湾・朝鮮半島南部・中国

\次のページで「2.ヒカゲノカズラ」を解説!/

2.ヒカゲノカズラ

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ヒカゲノカズラという名前を聞いた方は少ないかもしれません。しかし、日本料理店などでよく装飾としてヒカゲノカズラが飾られています。

もちろん、ヒカゲノカズラ日本の山でも比較的よく見つけることができる着生植物です。

科名・属名:ヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ属

学名:Lycopodium clavatum L.

分布:日本(沖縄以外)、北半球

着生植物の特殊な栄養や水分の吸収方法

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着生植物は土壌に根を張らない植物です。そのため養分や水分を土壌以外の場所から吸収しなければなりません。

しかし寄生植物と違い、着生植物は植物から養分や水分を吸収することはありません。

着生植物の養分の吸収方法

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着生植物の栄養の吸収方法から紹介していきます。

まず基礎のおさらいとして、植物が吸収すべき養分は肥料となる無機窒素化合物などの成分です。

着生植物は、それぞれの種類ごとに様々な養分の吸収方法を持っています。

・着生シダ類(オオタニワタリ、ビカクシダ):上からの落ち葉などを受け止める形をした葉を持つ。

 

・アナナス類:葉の付け根に貯水槽があり、生物がそこに生息し、その生物の排泄物を利用

 

その他にも、雨が降ると樹皮などから肥料分が滲み出てくる。これを着生植物は吸収する種類もあります。

着生植物の水分吸収方法

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次は着生植物の水分吸収方法について紹介します。

一般的に、着生植物の水の供給源は雨や霧です。

しかし、これ以外にも面白い水の吸収・貯蓄方法を持つ植物もいるのでご紹介します。

\次のページで「着生植物は常に競争している?」を解説!/

貯水機能:多肉植物のように発達したクチクラ層を持つため葉や茎が厚く・太くなっており、そこに水分を貯蓄しておく機能

根出葉:パイナップルのように根元から葉が出ており、葉を伝って水分が根元に流れるようになっている。もしくは、葉の付け根に水がたまるようになっている。

休眠:乾燥した時期に、少ない水分でも枯れない機能。コケ植物などが休眠状態で水のない期間を耐える。

着生植物は常に競争している?

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着生植物の養分や水分の吸収方法をご紹介をしました。しかし、どれも土壌に根を張っていればより簡単に吸収できるはずですよね。

着生植物がなぜ過酷な環境で生息しているのか?

その答えは、常に着生植物と他の植物が競争をし続けてきたからです。

着生植物の進化に関わる競争

着生植物の進化に関わる競争

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着生植物が植物や岩の上に固着するようになったでしょうか?

着生植物は「競争排除」により進化したと考えられています。

競争排除則は、(…中略…)同じニッチ(生態的地位)にある複数の種は、安定的に共存できないという原則である。(…中略…)同じニッチを持つ複数の種が同所的に存在すると、必ず競争によって一方が排除されるため、他の環境要因などがない場合は安定的に共存することはないという考え方である。

出典:ウィキペディア

着生植物は今も競争し続けている

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着生植物の進化は現在も続いています。参考にする研究はシノブ科とラン科の論文です。シノブ科は本記事でも紹介したノキシタシノブが属する分類になります。

シノブ科の種に多くが土壌に根を張る地生と着生がいまだに不明瞭であるためDNAを解析して着生性について研究した論文です。論文の考察として、以下の考察が導かれました。

着生性の進化には複数の経路があり、シノブ 科のように半着生性を経て段階的に進化した過程と、クモキリソウ節のように地生性から直接進化した過程が明らかになった。

出典:シノブ科とクモキリソウ属(ラン科)の系統と着生性の進化(学位論文紹介)堤 千絵

\次のページで「着生植物は温室効果ガス削減に利用できるの?」を解説!/

進化が複数の経路があるということは、進化は一回で終わっていないということです。

さらに、いまだにシノブ科は地生性と半着生性の区別ができない種があるということは進化途中であるといえます。

着生植物は温室効果ガス削減に利用できるの?

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着生植物は樹木の上に生育する植物です。つまり木が一本生えているだけよりも、着生植物が付着している木はより多く温室効果ガスを吸収します。

さらに、着生植物は他の大気汚染などにも反応が見られているため研究が盛んな植物の種類です。

着生植物が大気汚染の指標になる?

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大気汚染は生物にストレスを与えています、そのストレスを物理化学的な方法で計測するのは難しいとされています。

そこで注目されたのが、着生植物です。特に、苔類や地衣類が大気汚染の指標に使われます。

着生植物が大気汚染の指標に使われる理由は、大気汚染の影響を早く、顕著に反応するためです。

着生植物のその他利用方法

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着生植物は環境問題に対してだけでなく、鑑賞用としてもとても人気のある植物です。

特に、洋ランのほとんどが着生植物の仲間になります。また、着生植物はアクアリウムにも使用される種類です。

しかし、着生植物の美しさ、便利さが故に乱獲され熱帯雨林では絶滅の危機に追いやられている種類も多いとのこと。

研究対象として注目されている着生植物

着生植物について、分類から栄養水分の取り方、環境競争、利用方法を見てきました。着生植物は今日も研究を続けられている興味深い植物です。今回の記事で着生植物に興味を持った方は進化や、構造、分類学など興味を広げて行ってみてください。

植物は生物学などの分野だけでなく、薬学や国際問題の解決にもつながるような存在ですから、テキストや百科事典、ウィキペディアなどだけでなく論文なども探してみるのもおすすめです。

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理科生態系生物生物の分類・進化

「着生植物」とは?その特徴や定義と種類、代表例についても理系大学生が徹底わかりやすく解説!

進化が複数の経路があるということは、進化は一回で終わっていないということです。

さらに、いまだにシノブ科は地生性と半着生性の区別ができない種があるということは進化途中であるといえます。

着生植物は温室効果ガス削減に利用できるの?

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着生植物は樹木の上に生育する植物です。つまり木が一本生えているだけよりも、着生植物が付着している木はより多く温室効果ガスを吸収します。

さらに、着生植物は他の大気汚染などにも反応が見られているため研究が盛んな植物の種類です。

着生植物が大気汚染の指標になる?

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大気汚染は生物にストレスを与えています、そのストレスを物理化学的な方法で計測するのは難しいとされています。

そこで注目されたのが、着生植物です。特に、苔類や地衣類が大気汚染の指標に使われます。

着生植物が大気汚染の指標に使われる理由は、大気汚染の影響を早く、顕著に反応するためです。

着生植物のその他利用方法

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着生植物は環境問題に対してだけでなく、鑑賞用としてもとても人気のある植物です。

特に、洋ランのほとんどが着生植物の仲間になります。また、着生植物はアクアリウムにも使用される種類です。

しかし、着生植物の美しさ、便利さが故に乱獲され熱帯雨林では絶滅の危機に追いやられている種類も多いとのこと。

研究対象として注目されている着生植物

着生植物について、分類から栄養水分の取り方、環境競争、利用方法を見てきました。着生植物は今日も研究を続けられている興味深い植物です。今回の記事で着生植物に興味を持った方は進化や、構造、分類学など興味を広げて行ってみてください。

植物は生物学などの分野だけでなく、薬学や国際問題の解決にもつながるような存在ですから、テキストや百科事典、ウィキペディアなどだけでなく論文なども探してみるのもおすすめです。

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