梅雨の時期に咲き誇る紫陽花、赤色・青色・紫色などキレイに咲いているな。
なぜ紫陽花の色が違うのか、知っているか。品種改良でしょうと思うかもしれないが、それだけではないぞ。実は、化学の基本pHが深く関わっている。

今回は紫陽花の色が変わる仕組みを化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

紫陽花はどんな花?

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梅雨の時期に咲き誇る「紫陽花」。梅雨といえば紫陽花というほど有名な花ですよね。実は紫陽花の原産国は日本なんです。日本に古くからある花で、日本から中国へ渡り、シルクロードを通ってヨーロッパへ伝わりました。

ヨーロッパで品種改良がおこなわれ、見た目も変わっていった歴史があります。ヨーロッパで品種改良された紫陽花を「西洋アジサイ」と呼び、日本に自生している紫陽花には「ガクアジサイ」「ホンアジサイ」「ヤマアジサイ」などがあるんです。

紫陽花は何色?

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紫陽花の色といわれて、何色を思い浮かべますか?「青色」や「紫色」が思い浮かびませんか。中には「ピンク色」や「白色」を思い浮かべる方もいると思います。

紫陽花の代表的な色といえば、先ほど紹介した「青色」「ピンク色」「紫色」ですよね。どうして紫陽花の色は違うのでしょうか。「品種の違いでしょ」と思う方もいると思いますが…実は、同じ品種でも紫陽花が育つ環境の違いで色が変わるんです!

そこには、化学の基本「pH」が深く関わっています。

紫陽花の色は「アントシアニン」がポイント?

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Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

ここからは、なぜ紫陽花の色が違うのか、紹介していきます。先ほどpHが深く関係していると紹介しましたが、もう少し詳しく言うと「紫陽花の色素分子がpHによって構造を変えるから」色が変わるんです。その色素分子の名前は「アントシアニン」。

まずは、アントシアニンがどんな分子なのか、紹介していきます。アントシアニンはポリフェノールの1種で青色の天然色素です。アントシアニンという名前、どこかで聞いたことありませんか?ブルーベリーやナス、紫芋などに含まれていることが有名ですよね。そして、視力・視覚機能の改善や眼精疲労の予防にも効果があるとしてCMでよく見かけた成分です。紫色のイメージが強いアントシアニンは、実はpHによって色が変わるんですよ!

「アントシアニン」はpHで色が変わる不思議な分子

「アントシアニン」はpHで色が変わる不思議な分子

image by Study-Z編集部

pHの詳しい紹介はここでは省略させていただきますが、簡単にご紹介すると、pHは水素イオン濃度です。pHの値が小さいほど水素イオンがたくさんあり、pHの値が大きいほど水素イオン濃度が少なく、水酸化物イオンがたくさんあります。そして、アントシアニン分子は周りに水素イオンがたくさんあると分子内に水素イオンと取り込み、周りに水素イオンが少ないと分子内から水素イオンを放出する特徴があるんです。

なので、酸性か中性かアルカリ性かで分子の形が違うんです!分子の形の違いを私たちは、色の違いとして認識できるんですよ。アントシアニンは酸性の時赤色、中性で紫色、アルカリ性で青色を発色します。

紫陽花の色を操るのはアントシアニンだけじゃない!?

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先ほど紹介したアントシアニンが紫陽花の色が変わる原因でした。つまり紫陽花は土壌のpHによって、花の色が変わるんです。一般的に知られていることですが、紫陽花は土壌のpHが酸性の時青色、中性の時紫色、アルカリ性の時ピンク色になります。

少し違和感がありませんか??酸性とアルカリ性の色がアントシアニンと逆ですよね。実は、紫陽花の発色に関わっているのはアントシアニンだけではないんです。

\次のページで「紫陽花の色を決めるアルミニウム」を解説!/

紫陽花の色を決めるアルミニウム

実は、アントシアニン分子の他に「アルミニウム」と「クロロゲン酸」も紫陽花の色を決める重要な要素なんです。「クロロゲン酸」はポリフェノールの一種で、助色素と呼ばれています。

アントシアニンとクロロゲン酸はもともと紫陽花が持っている分子です。pHによって構造が変わったアントシアニンとクロロゲン酸が、土壌から紫陽花に吸収されたアルミニウムと錯体を形成して、その錯体が紫陽花の発色に関わっています。

この錯体色素は青色を発色する性質があり、土壌中のアルミニウムを紫陽花が吸収できれば青色に、アルミニウムを吸収できなければ赤紫色~ピンク色に発色するわけです。

土壌が酸性の場合アルミニウムは多く溶けだす性質を持っており、土壌がアルカリ性ではあまり溶けだしません。日本は「火山大国であること」「雨が多いこと」などの理由から酸性の土壌が多いです。そのため、土壌中にはアルミニウムが多く溶けだしていて、青色の紫陽花を多く見ることができます。

どうして?紫陽花が「白色」や「緑色」になる原因

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紫陽花に色がつく理由をご紹介しましたが、「白色」や「緑色」の紫陽花も見たことないでしょうか。紫陽花の発色には「アントシアニン」「アルミニウム」「クロロゲン酸」が重要でした。

白色の紫陽花はアントシアニンとクロロゲン酸がないんです。なので、アルミニウムを吸収してもしなくてもそもそも白色以外に発色することができません!また、緑色の原因は、実は病気。「緑葉病」という病気でファイトプラズマという病原菌が原因で起きる現象です。

紫陽花を狙った色に育てるには?

紫陽花の発色は土壌中にアルミニウムがどの程度溶けだしているかも大切な条件でした。なので、土壌のpHを調整してあげると、「青色」「赤色」「紫色」の狙った色の紫陽花を育てることができるんです。

「紫陽花の色を青系にする方法」「紫陽花の色を赤系にする方法」を紹介していきます。

紫陽花の色を青系にする方法

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青色の紫陽花を育てたいなら、目指すのは酸性です。鹿沼土やピートモスを加えることで土は酸性に傾いていきます。また、硫酸アルミニウムを使うのも効果的です。4月~5月ごろに希釈した硫酸アルミニウムをまくと、アルミニウムを紫陽花が吸収しやすくなり、青色になります。

また、「青アジサイの青を作る水」というものも市販されているので、ホームセンターなどでチェックしてみてください。

\次のページで「紫陽花の色を赤系にする方法」を解説!/

紫陽花の色を赤系にする方法

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赤色の紫陽花を育てないなら、目指すのはアルカリ性です。腐葉土を混ぜた土に苦土石灰などの石灰を混ぜてあげることで、土壌はアルカリ性に傾いていきます。また、卵の殻を使う裏ワザも…。卵の殻には炭酸カルシウムという成分でできており、炭酸カルシウムは弱アルカリ性の成分なので、土壌に混ざると、アルカリ性に傾けてくれるんです。

土壌がアルカリ性に傾けば、ピンク色の紫陽花が育ちやすくなります。

梅雨の代名詞「紫陽花」から化学を学ぶ

今回は梅雨の代名詞「紫陽花」の発色原理を紹介しました。紫陽花の発色原理はまだまだ研究中の部分もありますが、「アントシアニン」「アルミニウム」「クロロゲン酸」が重要な要素です。そして、土壌のpHによって紫陽花の色が決まりました。

色と分子とpHの関係はとても面白く、とても奥が深い内容です。pHで色が変わる分子はほかにもあるので、ぜひチェックしてみてください!

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化学理科

紫陽花の花の色はなぜ変わる?原理とpHとの関係を理系ライターがわかりやすく解説



梅雨の時期に咲き誇る紫陽花、赤色・青色・紫色などキレイに咲いているな。
なぜ紫陽花の色が違うのか、知っているか。品種改良でしょうと思うかもしれないが、それだけではないぞ。実は、化学の基本pHが深く関わっている。

今回は紫陽花の色が変わる仕組みを化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

紫陽花はどんな花?

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梅雨の時期に咲き誇る「紫陽花」。梅雨といえば紫陽花というほど有名な花ですよね。実は紫陽花の原産国は日本なんです。日本に古くからある花で、日本から中国へ渡り、シルクロードを通ってヨーロッパへ伝わりました。

ヨーロッパで品種改良がおこなわれ、見た目も変わっていった歴史があります。ヨーロッパで品種改良された紫陽花を「西洋アジサイ」と呼び、日本に自生している紫陽花には「ガクアジサイ」「ホンアジサイ」「ヤマアジサイ」などがあるんです。

紫陽花は何色?

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紫陽花の色といわれて、何色を思い浮かべますか?「青色」や「紫色」が思い浮かびませんか。中には「ピンク色」や「白色」を思い浮かべる方もいると思います。

紫陽花の代表的な色といえば、先ほど紹介した「青色」「ピンク色」「紫色」ですよね。どうして紫陽花の色は違うのでしょうか。「品種の違いでしょ」と思う方もいると思いますが…実は、同じ品種でも紫陽花が育つ環境の違いで色が変わるんです!

そこには、化学の基本「pH」が深く関わっています。

紫陽花の色は「アントシアニン」がポイント?

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Yikrazuul投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

ここからは、なぜ紫陽花の色が違うのか、紹介していきます。先ほどpHが深く関係していると紹介しましたが、もう少し詳しく言うと「紫陽花の色素分子がpHによって構造を変えるから」色が変わるんです。その色素分子の名前は「アントシアニン」。

まずは、アントシアニンがどんな分子なのか、紹介していきます。アントシアニンはポリフェノールの1種で青色の天然色素です。アントシアニンという名前、どこかで聞いたことありませんか?ブルーベリーやナス、紫芋などに含まれていることが有名ですよね。そして、視力・視覚機能の改善や眼精疲労の予防にも効果があるとしてCMでよく見かけた成分です。紫色のイメージが強いアントシアニンは、実はpHによって色が変わるんですよ!

「アントシアニン」はpHで色が変わる不思議な分子

「アントシアニン」はpHで色が変わる不思議な分子

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pHの詳しい紹介はここでは省略させていただきますが、簡単にご紹介すると、pHは水素イオン濃度です。pHの値が小さいほど水素イオンがたくさんあり、pHの値が大きいほど水素イオン濃度が少なく、水酸化物イオンがたくさんあります。そして、アントシアニン分子は周りに水素イオンがたくさんあると分子内に水素イオンと取り込み、周りに水素イオンが少ないと分子内から水素イオンを放出する特徴があるんです。

なので、酸性か中性かアルカリ性かで分子の形が違うんです!分子の形の違いを私たちは、色の違いとして認識できるんですよ。アントシアニンは酸性の時赤色、中性で紫色、アルカリ性で青色を発色します。

紫陽花の色を操るのはアントシアニンだけじゃない!?

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先ほど紹介したアントシアニンが紫陽花の色が変わる原因でした。つまり紫陽花は土壌のpHによって、花の色が変わるんです。一般的に知られていることですが、紫陽花は土壌のpHが酸性の時青色、中性の時紫色、アルカリ性の時ピンク色になります。

少し違和感がありませんか??酸性とアルカリ性の色がアントシアニンと逆ですよね。実は、紫陽花の発色に関わっているのはアントシアニンだけではないんです。

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