今回は「雪の結晶の形」をテーマに学んでいきます。

諸君は本物の雪の結晶を見たことがあるか?見たことがない人でも、冬が近づくにつれて雪の結晶のイラストやオーナメントなどは見かけると思う。その雪の結晶はどんな形をしていたか考えてみてくれ。おそらく、六角形だったのではないでしょうか?この記事では雪ができる仕組みや雪の結晶の分類と結晶の形を決める要素、観察方法などを学習していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライター園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

そもそも雪はどうやってできるの?

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水を凍らせることでできる冷たい氷を知っているあなたは、雪も同様に、雨の水が凍って雪になっていると思っているかもしれません。ですが、実は雪が先にできて、地上に降りてくる間に溶けたものが雨となります。夏でも上空では雪の結晶ができており、地上の温度が4度までなら解けずに雪のまま降ってくるのです。この章では、上空の雲でどのように雪が作られるのか学習しましょう。

雪とは

雪はどのようにできているのでしょうか?雪の研究の第一人者である中谷宇吉郎は、雪を以下のように定義しています。

個体から直接気体になり、または気体から直接個体になる現象を一般に昇華作用と呼んでいるが、雪はこの昇華作用によって水蒸気が直接に氷になったものである。即ち昇華による固化という現象によって空気中に生じた氷が地上へ降りて来たものがわれわれのいわゆる雪なのである。

出典:中谷宇吉郎.雪.1994,p.60-61

雪の芯となるもの

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昇華作用が起こる(水蒸気が直接氷になる)には、氷の芯となるものが必要になります。

例えば、あなたが丸いチョコレートのお菓子を作りたいとき、溶かしたチョコレートだけではトロトロで丸い形を作るのは難しいですよね?そんな時は、ピーナッツを使いましょう。ピーナッツを溶かしたチョコレートの中に入れて、周りをコーティングすることで丸いチョコレートを作ることができます。つまりこの例えでは、溶かしたチョコレートは水蒸気、ピーナッツは氷の芯となるものです。

自然界においてこの芯となっているものは、空気中のチリやイオンなどのとても小さな粒子。地上から上昇気流に乗って上空に運ばれた温かい水蒸気は、地上と比べて相当気温が低い雲の中に入ります。水蒸気はチリなどの微粒子との衝突によって氷晶(氷の粒)になり、氷晶に周りの水蒸気がくっついていくことで雪の結晶になるのです。雪の結晶は、ある程度の大きさになると重くなり地上に降ってきます。

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雪の結晶の形を決めるのは温度と湿度

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先ほど引用した本の著者である中谷宇吉郎は、雪の結晶の写真集を見て感動し雪の研究を始めました。その研究においてこの章で紹介したいのは、「雪の結晶を分類したこと」と「雪の結晶の形が温度と湿度で決まるというのを証明したこと」です。

雪の結晶の分類

まず中谷宇吉郎が行ったのは、北海道にて自然の雪の結晶を顕微鏡写真におさめることでした。そして、3000枚くらい写真がたまったところで、従来の雪の結晶の分類に疑問を感じ、自ら分類を行おうと思ったそうです。

中谷宇吉郎の雪の結晶の一般分類(中分類)

  1. 針状結晶(針、針のたば、針の組み合わせ)
  1. 角柱状結晶(角錐、砲弾型、角柱、砲弾の組み合わせ、角柱の組み合わせ)
  1. 板状結晶(角板、扇形、枝の付いた角板、広幅六花、星状六花、樹枝状六花、シダ状六花、角板の付いた樹枝、樹枝の付いた角板、三花、四花、上下組合せ六花、形の整わない六花、立体六花、立体放射状)
  1. 平板角柱組合せ(つづみ型[角柱と角板]、つづみ型[角柱と樹枝]、つづみ型[段々つづみ]、角板の付いた砲弾、樹枝の付いた砲弾、シダ状十二花、広幅十二花)
  1. 平板角柱不規則組合せ(不規則な集合[粉雪]、交差した角板)
  1. 雲粒付結晶(雲粒の付いたいろいろな結晶、雲粒の付いた厚い板、あられ状雪[六花状]、あられ状雪[かたまり状]、あられ[六花状]、あられ[かたまり状]、あられ[円錐状])
  1. 無定形(形が定まらない雪[氷のかけら状、雲粒付き]

一般的な雪の結晶はなぜ六角形なのか?水分子の構造から解説

一般的な雪の結晶はなぜ六角形なのか?水分子の構造から解説

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まず、雪の結晶は水蒸気から作られるので、水蒸気の元の水分子について理解しましょう。水分子(H2O)の構造は、時計の針で例えると、時計の中心に酸素原子(O)が1個、4時と8時を指しているときの短針と長針の先に水素原子(H)が1個ずつくっついているような状態です。実際の水分子では、酸素原子と水素原子の距離はそれぞれ等しくなっています。その水分子どうしは氷になるとき、水素結合によって規則的に並ぶ性質があり、構造的に安定する形が六角形なのです。

つまり、水蒸気が空気中の微粒子にくっつくことでできる氷晶は構造的に安定する六角柱になります。そして、六角柱の氷晶をもとに成長して雪の結晶になるので、雪の結晶は六角形がよく観察されるのです。

中谷ダイヤグラム

中谷宇吉郎は、1936年に世界で初めて人工雪の作成に成功した人物です。人工雪の研究結果が示された中谷ダイヤグラムは、雪の結晶の形が温度(上空の気温)と湿度(雲の中の水蒸気量)で決まるということを証明しました。

簡単に言うと、温度は六角柱の氷晶の成長する方向(角板状もしくは角柱状)を決め、湿度は結晶の複雑さ(樹枝状)を決めます。気になった方は、中谷ダイヤグラムを調べてみてください。

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雪の結晶を観察する方法

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雪の結晶は、小さくて軽い状態だと上空で浮遊していますが、ある程度大きくなって重くなると地上に降ってきます。その大きさは通常2-3mmほど。そのため、よく目を凝らして見ると肉眼でも観察できるでしょう。ですが、様々な雪の結晶の形を鮮明に見るには、以下のものを用意して観察することをおすすめします!

・黒色などの色が濃い生地(観察しやすくするため。撥水性のあるものがよい。)

・マスク(息で溶けないようにするため。)

・虫メガネ(拡大して見るため。)

・あれば、スマホのマクロレンズ

雪の結晶は、天から送られた手紙

中谷宇吉郎のこの言葉は、「雪の結晶を観察することで、雲の状態や地表までの大気の構造を把握できる」という意味を持つと考えられます。様々な雪の結晶の分類とともに気象状態との比較をしていたことからも分かるように、雪の結晶の分析は実際の雪害の解決にもつながると考え研究をされていたそうです。

このようなロマンチックな表現をする中谷宇吉郎博士のおかげで、今でも多くの研究者が天から送られた手紙を解読するべく研究しています。その雪の研究は、正確な気象予測という形でわれわれに反映されることでしょう。

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化学暮らし物質の状態・構成・変化理科

雪の結晶の形は温度と湿度で決まる!雪の結晶ができる原理から観察方法までを農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は「雪の結晶の形」をテーマに学んでいきます。

諸君は本物の雪の結晶を見たことがあるか?見たことがない人でも、冬が近づくにつれて雪の結晶のイラストやオーナメントなどは見かけると思う。その雪の結晶はどんな形をしていたか考えてみてくれ。おそらく、六角形だったのではないでしょうか?この記事では雪ができる仕組みや雪の結晶の分類と結晶の形を決める要素、観察方法などを学習していこう。

高校・大学にて化学も専攻していた農学部卒ライター園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

そもそも雪はどうやってできるの?

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水を凍らせることでできる冷たい氷を知っているあなたは、雪も同様に、雨の水が凍って雪になっていると思っているかもしれません。ですが、実は雪が先にできて、地上に降りてくる間に溶けたものが雨となります。夏でも上空では雪の結晶ができており、地上の温度が4度までなら解けずに雪のまま降ってくるのです。この章では、上空の雲でどのように雪が作られるのか学習しましょう。

雪とは

雪はどのようにできているのでしょうか?雪の研究の第一人者である中谷宇吉郎は、雪を以下のように定義しています。

個体から直接気体になり、または気体から直接個体になる現象を一般に昇華作用と呼んでいるが、雪はこの昇華作用によって水蒸気が直接に氷になったものである。即ち昇華による固化という現象によって空気中に生じた氷が地上へ降りて来たものがわれわれのいわゆる雪なのである。

出典:中谷宇吉郎.雪.1994,p.60-61

雪の芯となるもの

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昇華作用が起こる(水蒸気が直接氷になる)には、氷の芯となるものが必要になります。

例えば、あなたが丸いチョコレートのお菓子を作りたいとき、溶かしたチョコレートだけではトロトロで丸い形を作るのは難しいですよね?そんな時は、ピーナッツを使いましょう。ピーナッツを溶かしたチョコレートの中に入れて、周りをコーティングすることで丸いチョコレートを作ることができます。つまりこの例えでは、溶かしたチョコレートは水蒸気、ピーナッツは氷の芯となるものです。

自然界においてこの芯となっているものは、空気中のチリやイオンなどのとても小さな粒子。地上から上昇気流に乗って上空に運ばれた温かい水蒸気は、地上と比べて相当気温が低い雲の中に入ります。水蒸気はチリなどの微粒子との衝突によって氷晶(氷の粒)になり、氷晶に周りの水蒸気がくっついていくことで雪の結晶になるのです。雪の結晶は、ある程度の大きさになると重くなり地上に降ってきます。

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