俺たちの住む地球。その大きさは想像を絶するもので、直径で表現するとおよそ1万2000㎞と言われているそうです。桁大きすぎて、あっけにとられたかもしれませんね。ところでお前たちは、この手の話を聞いてこう思ったことはないか。「一体どうやって誰がいつごろ地球の大きさを知ったのか」、と。この記事を読むとこれらの疑問が解決するとともに、実際に自力で計算することもできるようになるぞ。今回は、現役理系大学生のライターアルゴスと一緒に解説していくから、ぜひ最後まで見ていってくれ。

ライター/アルゴス

現役の理系大学生。数学の教員免許取得を目指しているが、専攻は地球惑星科学。

地球の直径を始めて計算した人や経緯とは?

image by iStockphoto

地球の直径を始めて計算した人は、エラトステネスと言われています。彼は数学者でもあり、天文学者でもありました。彼はエジプトのアレクサンドリアとシエネの2地点でできる影のでき方の違いに着目して、そこから地球一周の長さを求め、その後地球の直径を求めました。ここからは、より具体的に解説していきます。

最初に地球の直径を求めた人は?

まず初めにどんな人が地球の直径の値を求めたのか誰なのか、そしてどんな人物なのかについて解説していきます。

最初に計算した人はエラトステネス

Eratosthenes.jpg
パブリック・ドメイン, リンク

地球の直径を初めて計算した人は、エラトステネスと言われています。彼は数学者でもあり、天文学者でもありました。例えば、皆さんが中学校で習う「エラトステネスの篩」は、彼の数学者としての功績でしょう。

彼は2200年前に活躍していた学者であることから、地球の大きさは2200年も前に判明していたことになります。このことは驚きの事実かもしれませんが、それが実現したのは地球の大きさの計算方法がとても簡単だからでしょう。

エラトステネスはどうやって地球の直径を求めたのか

最初に地球の直径を知った人やその時期に関しては、説明しました。そこで次は、彼がいかにして地球の直径を知ったのかという経緯について迫っていこうと思います。

\次のページで「地球は平面ではなく球体である」を解説!/

地球は平面ではなく球体である

まず、地球の直径を求めるには地球が球体であることを認めなければいけません。日常的に我々が、地球が球体であると実感できる場面としては水平線があげられます。

例えば、皆さんが山の高いところから水平線を眺めていると、水平線が直線ではなく少しだけ湾曲していることが確認できるでしょう。これはまさしく地球が球状になっている一つの根拠になります。あるいは、水平線のかなたから船がやってくるとき、いきなり船の全てが見られるわけではなく、まず帆先が見えて、マストが見えて…、というように上から少しずつ船が見えてくるわけです。これは、単に視力の問題で水平線の向こう側が見えないのだ、という主張を否定する例になります。他にも皆既月食などの珍しい例をもちいて、地球が球体であることを論じることはできますが、ともかくこれからは地球が球体であることを認めたうえで、地球の直径について考えていきましょう。

実は、エラトステネスがいた時代にはすでに地球が球体であるという考えは存在していたようで、だからこそ地球の直径を求めることに成功したといえるでしょう。

エジプトにある2つの都市を利用した

All Gizah Pyramids.jpg
Ricardo Liberato - All Gizah Pyramids, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

エラトステネスはエジプトにあるアレクサンドリアとシエネの2の都市に着目しました。夏至の日の正午のことですが、シエネの井戸では太陽が真上から差し込んでいました。その一方でアレクサンドリアでは状況は異なりました。というのもアレクサンドリアでは地面に垂直に立てた棒に影ができていたのです。つまり太陽の光が差し込む角度が異なっていたわけですね。

そこでエラトステネスは、地球が球体であること、棒の影は棒のtan7.2°倍であったこと、アレクサンドリアとシエネの距離がおよそ900㎞であること、2地点が同じ子午線上にあるということなどの情報を駆使して、地球のおおよその直径を求めることに成功したのです。一体どういうことなのか、詳しく解説していきます。

地球の直径計算のポイント

実際に計算を行う前に、計算するにあたって重要なポイントについて説明しようと思います。それでは見ていきましょう。

場所が違うと影のでき方が違う

場所が違うと影のでき方が違う

image by Study-Z編集部

太陽光のように遠いところからくる光は、ほぼ平行にやってきます。このとき、図のような球体に刺さっている2つの棒の影のでき方を考えると互いに異なる影のでき方をするとわかるのです。

例えば、地点Aでは棒と太陽光の進む向きは平行ですから、影ができません。一方で、地点Bでは棒と太陽光の進む向きは平行ではないためにいくらか影ができることになります。この場合、図で示したように弧ABをなす中心角は、地点Bの棒と太陽光の進む向きがつくる角度と一致します(錯角が等しいため)。

円弧の長さと中心角には比例関係がある

円に関する性質の一つに、円弧の長さと中心角の比例関係があげられます。まず、普通の円と半円の中心角と弧の長さを考えてみましょう。どちらも同じ半径を持っているとしましょう。このとき、半円のこの長さは円の2分の1です。そして半円の中心角は、円の2分の1になります。何かに気づきませんか。そうです、実は半円になると角度も弧長も同じ2分の1になっているのです。

この例から一般化すると、円弧の性質として、中心角がa倍したら弧長もa倍されるというように、比例関係があることがわかります。

実際の計算方法

実際の計算方法

image by Study-Z編集部

それでは実際に計算してみましょう。先ほどの図では夏至の日に、地点Aでは棒には影ができずに、地点Bではいくらか影ができることを説明しました。今回計算するにあたって、エラトステネスが計算した事例で計算するのでこの図のように、地点Aはシエネ、地点Bはアレクサンドリアに置き換えて考えていきましょう。

行うことはとても簡単で、まず弧の中心角を求める、次に弧長を求める、そしてそれらを使って地球の全周の長さを求める、最後にそこから直径を求める、というように4ステップで構成されています。それでは詳しく見ていきましょう。

\次のページで「STEP1:中心角を求める」を解説!/

STEP1:中心角を求める

まずここで、2地点が作る弧の中心角を求めましょう。先ほど説明したように、中心角は太陽光と地点B(アレクサンドリア)の棒がつくる角(以下、角Bと表記)の角度と一致します。角Bの角度は、棒と棒の影の長さの比を利用して求めることが可能です。エラトステネスが計測して計算したところ、角Bの角度は7.2°であるとわかりました。

STEP2:弧長を求める

STEP1で2地点が作る弧の中心角を求めました。次に、先述したように弧ABの長さ(弧長)を知る必要があるのです。弧長は、アレクサンドリアとシエネの直線距離からわかります。今どきは、Google mapを活用して大体の距離を測ることが可能ですが、エラトステネスがいた当時は、アレクサンドリアとシエネ間の距離はおよそ900㎞であると言われていましたので、これを使いましょう。

STEP3:地球の全周を求める

そして中心角と弧長の関係から、地球の全周を求めます。先ほど説明した円弧の長さと中心角に比例関係があることを利用して求めるわけです。地球の全周をx㎞であるとして、比で弧長と中心角を表現すると900:x=7.2:360 というようになります。これを解くと地球の全周は45000㎞となりました。

STEP4:直径を求める

ここまでで地球の全周が求まったので最後に、地球の直径を求めましょう。円の周の長さは、直径×3.14で求められることは皆さんご存じですが、これを利用すると、円周の長さを3.14で割ることで地球の直径が求まることがわかります。実際に計算すると地球の直径はおよそ14331㎞となり、これで計算完了です。

誤差の原因

2000年以上前に計算した結果であることを考えれば、かなりの精度であると言えますが、それでも誤差は気になりますね。

誤差の原因として、アレクサンドリアでの影の計測誤差や、アレクサンドリアとシエネの間の距離が不正確であること、そして厳密には2都市が同じ子午線上にないことなどが考えられます。

\次のページで「計算は意外と簡単」を解説!/

計算は意外と簡単

2000年以上前の科学者であるエラトステネスが、簡易的な方法で地球の大体の大きさを求めていたことは驚きでしたね。計算のステップは4つあって「中心角を求める」、「弧長を求める」、「地球の全周を求める」、「直径を求める」でした。計算は中学生レベルなので簡単ですし、高価な器具も必要ないので、皆さんでエラトステネスがしたように実験して地球の直径を求めてみると面白いかもしれません。

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地学地球地質・歴史宇宙理科

地球の直径を計算してみよう!始めて計算した人物とは?計算方法も理系大学生がわかりやすく解説

俺たちの住む地球。その大きさは想像を絶するもので、直径で表現するとおよそ1万2000㎞と言われているそうです。桁大きすぎて、あっけにとられたかもしれませんね。ところでお前たちは、この手の話を聞いてこう思ったことはないか。「一体どうやって誰がいつごろ地球の大きさを知ったのか」、と。この記事を読むとこれらの疑問が解決するとともに、実際に自力で計算することもできるようになるぞ。今回は、現役理系大学生のライターアルゴスと一緒に解説していくから、ぜひ最後まで見ていってくれ。

ライター/アルゴス

現役の理系大学生。数学の教員免許取得を目指しているが、専攻は地球惑星科学。

地球の直径を始めて計算した人や経緯とは?

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地球の直径を始めて計算した人は、エラトステネスと言われています。彼は数学者でもあり、天文学者でもありました。彼はエジプトのアレクサンドリアとシエネの2地点でできる影のでき方の違いに着目して、そこから地球一周の長さを求め、その後地球の直径を求めました。ここからは、より具体的に解説していきます。

最初に地球の直径を求めた人は?

まず初めにどんな人が地球の直径の値を求めたのか誰なのか、そしてどんな人物なのかについて解説していきます。

最初に計算した人はエラトステネス

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地球の直径を初めて計算した人は、エラトステネスと言われています。彼は数学者でもあり、天文学者でもありました。例えば、皆さんが中学校で習う「エラトステネスの篩」は、彼の数学者としての功績でしょう。

彼は2200年前に活躍していた学者であることから、地球の大きさは2200年も前に判明していたことになります。このことは驚きの事実かもしれませんが、それが実現したのは地球の大きさの計算方法がとても簡単だからでしょう。

エラトステネスはどうやって地球の直径を求めたのか

最初に地球の直径を知った人やその時期に関しては、説明しました。そこで次は、彼がいかにして地球の直径を知ったのかという経緯について迫っていこうと思います。

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