今回はガットフォセという人物について解説します。
フランスの調香師であるガットフォセは、今となっては幅広く知られている「アロマテラピー」という言葉を生み出した人物なんです。
では、ガットフォセとアロマテラピーの誕生にはどんな歴史があるのでしょうか?
公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)認定アロマテラピーアドバイザーの資格を持つライターくすやまなぎと一緒に解説していきます。

ライター/くすやまなぎ

AEAJ認定アロマテラピーアドバイザー資格を持つ薬剤師ライター。アロマの香りに日々癒されている。

ガットフォセとはどんな人物なのか?

René-Maurice Gattefossé.jpg
RMG © Gattefossé - Archives Gattefossé, CC 表示 3.0, リンクによる

ルネ=モーリス・ガットフォセは1881年にフランスのリヨンに生まれました。調香師や、香料及び香粧品の研究者、経営者としての顔を持つガットフォセですが、どのような歴史を持つ人物なのでしょうか。

ここでは、ガットフォセの略歴について追っていきます。

父の会社で働き始める

ガットフォセは、父親であるルイ・ガットフォセの経営するガットフォセ社で働き始めます。ガットフォセは1894年に開かれた国際博覧会以降、精油の輸入と合成香料の輸出をガットフォセ社の事業として加えました。

というのも、当時の調香師たちが用いていた香料の品質は安定しておらず、大幅に希釈されたものがあるなど、濃度の定義も統一されていなかったのです。調香師たちに使い方を指導するため、ガットフォセは1906年に「Formulaire du Parfumeur」という本を出版しました。

父の他界と訪れる転機

1910年、父親であるルイ・ガットフォセが他界します。同年、ガットフォセはひどい火傷を負いますが、悪化した傷をある植物の精油で治療しました。

自身の経験から、ガットフォセは民間薬として精油を利用する、ということに興味を持ち始めます。幸い、リヨンにあるいくつかの病院で医師からの助力を得られたため、ガットフォセは香料や精油を医療に利用する研究を続けました。

アロマテラピーという言葉の誕生

image by iStockphoto

ガットフォセは香料や精油を医療に利用する研究を続けていき、のちに「アロマテラピー」という言葉を生み出しました。現在よく知られているアロマテラピーはガットフォセが発祥、というわけですが、アロマテラピーという言葉の誕生にはどのような歴史があるのでしょうか。

ガットフォセの経験を詳しく追っていきましょう。

\次のページで「火傷の治療に用いられたものとは?」を解説!/

火傷の治療に用いられたものとは?

ガットフォセは、自身が負ったひどい火傷をラベンダー精油によって治療しました。ガットフォセの負った火傷はガス壊疽に達していたため、かなり重篤な状態であったと推測されます。

プロヴァンス地方にはラベンダー精油を使った民間療法があったそうです。そのことをガットフォセが認知していたため、火傷の治療にラベンダー精油を用いたと考えられています。

ガットフォセはこの火傷の事件以前から民間の精油療法を知っていたことになりますが、火傷事件は伝説として伝えられており、歴史的事実として認識されているのが実情です。

書籍「アロマテラピー」の発刊

書籍「Aromathérapie(アロマテラピー)」はガットフォセの著作で、精油や香料の医療への利用について記された本です。医師による報告や動物実験の結果などが、当時の知見で分析されています。

この書籍を発刊する以前からヨーロッパで広く行われていた精油を使った医療について、ガットフォセはその医療を「アロマテラピー」と呼んでいました。このことから、アロマテラピーという言葉を書籍の名前として採用した、とも言われています。

アロマテラピーの歴史

image by iStockphoto

ガットフォセとアロマテラピーの関係についてわかったところで、アロマテラピーの歴史についてもう少し深掘りしてみましょう。ここでは、ガットフォセと関わりのある人物を二人紹介します。

ジャン・バルネ博士の精油による治療

Docteur Valnet NB.jpg
<a href="//commons.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Laboratoire_Cosbionat&amp;action=edit&amp;redlink=1" class="new" title="User:Laboratoire Cosbionat (page does not exist)">Laboratoire Cosbionat</a> - <span class="int-own-work" lang="ja">投稿者自身による作品</span>, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

フランスの医学博士であるジャン・バルネは、第二次世界大戦とインドシナ戦争に従軍した人物です。ジャン・バルネ博士は負傷者に対して精油を使った医療を施し、功績を上げました

軍籍を離れたあとも、民間の病院で精油による治療を続けたとされています。1964年に「ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法」という書籍を著し、アロマテラピーという言葉は再び有名になりました。

ロバート・ティスランドによる書籍の出版

ロバート・ティスランドはイギリスのアロマセラピストです。ガットフォセが著した書籍「アロマテラピー」を20年以上も探していたと言われています。

縁があって書籍を入手したロバート・ティスランドは書籍を基に英訳し、1993年に英訳版「アロマテラピー」が出版されました。日本でも、2006年に日本語訳版が出版されています。

\次のページで「ラベンダー精油について」を解説!/

ラベンダー精油について

image by iStockphoto

ガットフォセが火傷の治療に用いたとされるラベンダー精油にはどのような効果があるのでしょうか。ここでは、ラベンダーに関する歴史とラベンダー精油の持つ効果について追っていきます。

ラベンダーは古代から日常的に使用されてきた

ラベンダーが歴史上の文献に初めて登場したとされるのは、ギリシャ出身のローマの医師であるペダニオス・ディオスクリデスが著した「マテリア=メディカ(薬物学)」でした。この書籍は1世紀に出版されてから、なんと17世紀頃になっても現役で使用されていたそうです。

古代ローマ時代では高額で取引されており、入浴時の芳香剤や肌着類の保存剤として用いていたなど、ラベンダーは古くから日常的に使用されていたことがうかがえます。

ラベンダー精油は万能選手

ラベンダー精油にはガットフォセが火傷の治療に用いたような、痛みや炎症を鎮めて正常化し、再生を早める身体面での効果や、心を和らげて落ち着かせる精神面での効果があります。不眠に対する効果などもあり、万能選手とも言えるでしょう。

一方で使用する際には禁忌・注意すべき人がいること、また効果の度合いには個人差があることに注意が必要です。

ガットフォセはアロマテラピーの歴史を語るうえでの重要人物!

ガットフォセとアロマテラピーの歴史は切っても切れない関係であることがわかりましたね。

ガットフォセの著した書籍は後世にも大きな影響をもたらしています。

アロマテラピーは現在の日本では医療行為として認められていませんが、いずれは現在よりも幅広く認知され、また精油が医療行為として使用されていく時代になっていくかもしれませんね。

" /> フランスの調香師ガットフォセとはどんな人物?火傷をアロマの力で治したって本当?薬剤師ライターが詳しくわかりやすく解説! – Study-Z
文化・歴史暮らし理科生物

フランスの調香師ガットフォセとはどんな人物?火傷をアロマの力で治したって本当?薬剤師ライターが詳しくわかりやすく解説!

今回はガットフォセという人物について解説します。
フランスの調香師であるガットフォセは、今となっては幅広く知られている「アロマテラピー」という言葉を生み出した人物なんです。
では、ガットフォセとアロマテラピーの誕生にはどんな歴史があるのでしょうか?
公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)認定アロマテラピーアドバイザーの資格を持つライターくすやまなぎと一緒に解説していきます。

ライター/くすやまなぎ

AEAJ認定アロマテラピーアドバイザー資格を持つ薬剤師ライター。アロマの香りに日々癒されている。

ガットフォセとはどんな人物なのか?

René-Maurice Gattefossé.jpg
RMG © Gattefossé – Archives Gattefossé, CC 表示 3.0, リンクによる

ルネ=モーリス・ガットフォセは1881年にフランスのリヨンに生まれました。調香師や、香料及び香粧品の研究者、経営者としての顔を持つガットフォセですが、どのような歴史を持つ人物なのでしょうか。

ここでは、ガットフォセの略歴について追っていきます。

父の会社で働き始める

ガットフォセは、父親であるルイ・ガットフォセの経営するガットフォセ社で働き始めます。ガットフォセは1894年に開かれた国際博覧会以降、精油の輸入と合成香料の輸出をガットフォセ社の事業として加えました。

というのも、当時の調香師たちが用いていた香料の品質は安定しておらず、大幅に希釈されたものがあるなど、濃度の定義も統一されていなかったのです。調香師たちに使い方を指導するため、ガットフォセは1906年に「Formulaire du Parfumeur」という本を出版しました。

父の他界と訪れる転機

1910年、父親であるルイ・ガットフォセが他界します。同年、ガットフォセはひどい火傷を負いますが、悪化した傷をある植物の精油で治療しました。

自身の経験から、ガットフォセは民間薬として精油を利用する、ということに興味を持ち始めます。幸い、リヨンにあるいくつかの病院で医師からの助力を得られたため、ガットフォセは香料や精油を医療に利用する研究を続けました。

アロマテラピーという言葉の誕生

image by iStockphoto

ガットフォセは香料や精油を医療に利用する研究を続けていき、のちに「アロマテラピー」という言葉を生み出しました。現在よく知られているアロマテラピーはガットフォセが発祥、というわけですが、アロマテラピーという言葉の誕生にはどのような歴史があるのでしょうか。

ガットフォセの経験を詳しく追っていきましょう。

\次のページで「火傷の治療に用いられたものとは?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: