この記事ではガチョウとアヒルの違いについてみていきます。どちらも羽が白くシルエットも似ているため、違いが分かりづらいイメージがあるよな。違いはずばり原種のようですが、細かく見た目などを調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんなガチョウとアヒルの違いを、まずどんな鳥が元になっているのかを確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。様々な視点から違いを詳しく解説。

ガチョウとアヒルのざっくりした違いは?

image by iStockphoto

ガチョウとアヒルは日本でも見ることができる鳥です。最近ではペットとしても人気がでてきていますが、見た目が似ていてどっちがどっちなのか分からないという方も多いのではないでしょうか?

まずはざっくりした違いとして、それぞれどんな鳥を元に誕生したのか原種の違いをみていきましょう。

ガチョウ:ガンを原種とした鳥

ガチョウは野生の雁(ガンまたはカリ)を人間が育てたことによって生まれた鳥です。カモ目カモ科ガン亜科の総称で、ガチョウの原種となるのは「ハイイロガン」や「サカツラガン」という種になります。

ハイイロガンはの生息地は川・湖・水田など。世界に広く分布している鳥です。名前の通り羽の色は全体的に灰色で、足やくちばしはピンク色をしています。

サカツラガンは、川・湖・湿った草原などに生息。アジアやロシアの南東でよく見られる鳥です。頭から首の後ろにかけて入っている濃い茶色がポイント。全体的に茶系の色味をしていますが、くちばしは黒く足はオレンジ色です。

分布している範囲が広いこともあり、ハイイロガンを元にしたガチョウが多い傾向にあります。中国ではサカツラガンを元に改良した「シナガチョウ」も有名です。

アヒル:マガモを原種とした鳥

アヒルは野生の真鴨(マガモ)を人間が育てたことによって生まれた鳥です。カモ目カモ科マガモ属に分類されます。カモの仲間は沢山いますが、マガモはその中でも代表的存在です。

マガモの生息地はアジア・ヨーロッパ北部・北アメリカの森林など。日本でも冬になると池や湖の他に、川や海などで見ることができます。

オスとメスで見た目の色味が大きく変わるのも特徴です。オスは頭が緑でくちばしは黄色、胸や背中が茶色でお腹は淡い茶色。メスはベースが淡い茶色で、黒い斑模様が全体的に入っています。

このマガモを飼育改良したものがアヒルと呼ばれているのです。

ガチョウとアヒルの様々な違いをチェック!

image by iStockphoto

元となった鳥の種類以外にも、ガチョウとアヒルには違いがあります。細かな見た目や家畜となった歴史、何を食べているかなど様々な視点から違いを詳しくみていきましょう。

\次のページで「ガチョウとアヒルの「見た目」の違い」を解説!/

ガチョウとアヒルの「見た目」の違い

一見するとそっくりなガチョウやアヒルですが、それぞれ見た目にも特徴があります。見分けるポイントにもなるので参考にしてみてくださいね。

ガチョウの見た目

・平均的な大きさ:80〜120cm
・首の特徴:細長い
・くちばしの特徴:横からみると高さがあり、三角形のようにみえる
・体の色:羽は白/くちばしや足はオレンジ
首が細長いこともあり、アヒルに比べてスラッとしてみえる。
クチバシ上部の付け根の辺りにコブがある種も。

アヒルの見た目

・平均的な大きさ:50〜80cm
・首の特徴:太くて短い
・くちばしの特徴:黄色で横からみると平たい
・体の色:羽は白/くちばしは黄色/足はオレンジ
全体的にコロンとしていて丸みを感じる。
オスはマガモのようにおしり辺りの羽がカールしていることも。

よく見てみると上記のような違いがあります。ただ原種の鳥に比べると羽が小さく体が大きいという共通点も。これは家畜として育てられていることに原因があります。

普段飛ぶことがあまりないので羽が退化し、体重も重くなっているので高い位置まで飛ぶことや長時間飛ぶことができません。

ガチョウとアヒルの「歴史」の違い

ガチョウとアヒルはどちらも人間に飼われ始めてから長い歴史を持つ鳥です。それぞれの歴史をチェックしてみましょう。

まずはアヒル。原種であるマガモが飼われたのは、ヨーロッパ・中国・アメリカなどが始まりと言われています。中国では3000年も前には家禽化されていたようです。

日本での歴史も長く、平安時代頃に飼育されていた形跡が見つかっています。豊臣秀吉が田んぼにアヒルを放つことを勧めたことで飼育が盛んになったというエピソードも。江戸時代末期にはヨーロッパの改良種が長崎に入ってきました。

ガチョウはさらに昔から人間に飼われていたようです。5000年前にはエジプトで家禽化されていたという説も。日本最古の歴史書と言われている「古事記」にもガチョウの存在が書かれています。

奈良時代頃には日本でも飼育されていたと考えられますね。

ガチョウとアヒルの「エサ」の違い

ガチョウとアヒルはどちらも雑食ですが好みの違いがあります。アヒルがよく食べているのは、種子・果物・野菜クズなど。それらをニワトリの餌に混ぜたものがエサとなっていることが多いです。

雑草や虫も食べるため、水田であひるを放し飼いする農法も取り入れられています。

ガチョウも雑食ではありますが、特に植物性のエサを好む個体が多いようです。穀物・野菜・草などを食べています。その中でも草が好きなため、畑の雑草取りを目的に放し飼いされていることも。

エサが調達しやすく農業でも役に立つという点は、人間がガチョウやアヒルを飼い始めた大きなポイントの一つであると言えるでしょう。

ガチョウとアヒルの「成長」の違い

ガチョウとアヒルは成長のスピードや、卵を産むタイミングなどにも違いがあります。どのような違いがあるのか一緒にみていきましょう。

\次のページで「家畜として育ったガチョウとアヒルはどうなる?」を解説!/

ガチョウの成長

・孵化:1ヶ月程度
・孵化した後:2ヶ月くらいで羽が生えそろい、成長スピードがゆっくりになる
・産卵:産卵期が春頃と1年の中で決まった時期がある
・卵の数:1年で30個ほど
成鳥(大人の鳥)になるまで2年ほどかかる。
アヒルに比べて孵化後の成長スピードは遅め。

アヒルの成長

・孵化:1ヶ月程度
・孵化した後:6ヶ月くらいで卵を産めるようになる
・産卵:ほぼ毎日
・卵の数:1年で200個ほど
孵化してから8ヶ月くらいで成鳥になり繁殖が可能に。
ガチョウに比べて成長スピードが早い。

家畜として育ったガチョウとアヒルはどうなる?

家畜として育てられたガチョウやアヒルは、様々な用途で商品になり販売されています。少し残酷に感じてしまうかもしれませんが、どのような形で利用されているのかチェックしてみましょう。

食材になる

最近はペットとしても注目されているガチョウやアヒルですが、家畜として飼われている場合は食材になることがほとんどです。

例えばアヒルの卵はピータンなどの原材料として愛用されています。アヒルの肉を使った北京ダックや鴨鍋などの料理も人気ですね。また日本ではあまり見かけませんが、台湾などではガチョウのお肉も塩茹でや燻製にしてよく食べられています。

珍味として有名なフォアグラもアヒルやガチョウの肝臓が原材料です。ガチョウのお腹の脂肪を使った、ガチョウ油(グースファットオイル)という商品もあります。

羽も利用される

食材としてだけでなく、羽毛布団・ダウンジャケット・バトミントンのシャトルなど、ガチョウやアヒルの羽を使った商品も人気です。ガチョウは羽も大きく質が高いため、アヒルに比べて高い価格で販売されています。

特に「マザーグース」と呼ばれる親鳥から取れる羽を使った商品は高級です。希少なこともあり羽毛布団の相場価格は10万円を超えます。そのぶん保湿力が優れていて丈夫なので、質のいいものを長く使いたい人に人気です。

白鳥も違う鳥なの?

image by iStockphoto

ガチョウやアヒルと同じ白い羽を持つ白鳥。実は白鳥もガチョウなどと同じ、カモ科カモ目に属している鳥です。

なんとなく、見た目が似ていると感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?特徴を知らないと少し見分けが難しいかもしれません。ここでは一体どんな鳥であるのか、白鳥の特徴をご紹介していきます。

\次のページで「白鳥の特徴」を解説!/

白鳥の特徴

白鳥はカモ科カモ目ハクチョウ属に分類される水鳥。白鳥という名前はある一つの鳥を指しているわけではなく、同じ属に分類される鳥の総称です。

一般的に白鳥と呼ばれているのは、オオハクチョウ・コハクチョウ・ナキハクチョウ・コブハクチョウ・コクチョウ・クロエリハクチョウ。白い羽を持つ種がほとんどですが、黒い羽を持つ種もいます。

白鳥は季節によって生息地が変わる鳥です。オオハクチョウやコハクチョウは春から秋にかけてはユーラシア大陸やアメリカ北部で過ごし、冬になると日本にもやってきます。

日本の中でも特に、姿が見られることで有名なの北海道・青森県・新潟県です。海外から冬を越しにやってきた野生の白鳥を観察することができます。

またコブハクチョウやコクチョウはクロエリハクチョウも日本で見ることができる白鳥です。本来日本に越冬しに来ない種ではありますが、国内の公園などでも飼育されているため、逃げ出した一部が野生化していることもあります。

そんな白鳥の中でも、特にガチョウやアヒルに似ているコハクチョウの見た目の特徴は以下です。

コハクチョウの見た目

・平均的な大きさ:110〜150cm
・首の特徴:他の白鳥に比べると短いが、アヒルやガチョウよりは長い
・くちばしの特徴:先端が尖っている
・体の色:羽は白/くちばしは半分黄色で半分黒/足は黒

クチバシの色がガチョウやアヒルと異なり2色。
付け根から半分が黄色く、その半分から先端に向かって黒色になっている。

見た目を観察して見分けよう!

ガチョウとアヒルは、それぞれの特徴を知っていないと見分けがつきづらい鳥だと言えます。大きさも違いますが個体差があるので、まずクチバシの色や形で判断してみるのがおすすめです。

ガチョウはクチバシの色がオレンジで、横からみると三角のような形をしています。アヒルのクチバシの色は黄色で、横から見ると靴べらのようになだらかで平べったいです。

ガチョウやアヒルを見る機会があったら、見分けられるかチャレンジしてみるのも面白いですよ!

" /> 3分で簡単ガチョウとアヒルの違い!見た目の特徴は?白鳥との違いまで生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説 – Study-Z
生き物・植物雑学

3分で簡単ガチョウとアヒルの違い!見た目の特徴は?白鳥との違いまで生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説

この記事ではガチョウとアヒルの違いについてみていきます。どちらも羽が白くシルエットも似ているため、違いが分かりづらいイメージがあるよな。違いはずばり原種のようですが、細かく見た目などを調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんなガチョウとアヒルの違いを、まずどんな鳥が元になっているのかを確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。様々な視点から違いを詳しく解説。

ガチョウとアヒルのざっくりした違いは?

image by iStockphoto

ガチョウとアヒルは日本でも見ることができる鳥です。最近ではペットとしても人気がでてきていますが、見た目が似ていてどっちがどっちなのか分からないという方も多いのではないでしょうか?

まずはざっくりした違いとして、それぞれどんな鳥を元に誕生したのか原種の違いをみていきましょう。

ガチョウ:ガンを原種とした鳥

ガチョウは野生の雁(ガンまたはカリ)を人間が育てたことによって生まれた鳥です。カモ目カモ科ガン亜科の総称で、ガチョウの原種となるのは「ハイイロガン」や「サカツラガン」という種になります。

ハイイロガンはの生息地は川・湖・水田など。世界に広く分布している鳥です。名前の通り羽の色は全体的に灰色で、足やくちばしはピンク色をしています。

サカツラガンは、川・湖・湿った草原などに生息。アジアやロシアの南東でよく見られる鳥です。頭から首の後ろにかけて入っている濃い茶色がポイント。全体的に茶系の色味をしていますが、くちばしは黒く足はオレンジ色です。

分布している範囲が広いこともあり、ハイイロガンを元にしたガチョウが多い傾向にあります。中国ではサカツラガンを元に改良した「シナガチョウ」も有名です。

アヒル:マガモを原種とした鳥

アヒルは野生の真鴨(マガモ)を人間が育てたことによって生まれた鳥です。カモ目カモ科マガモ属に分類されます。カモの仲間は沢山いますが、マガモはその中でも代表的存在です。

マガモの生息地はアジア・ヨーロッパ北部・北アメリカの森林など。日本でも冬になると池や湖の他に、川や海などで見ることができます。

オスとメスで見た目の色味が大きく変わるのも特徴です。オスは頭が緑でくちばしは黄色、胸や背中が茶色でお腹は淡い茶色。メスはベースが淡い茶色で、黒い斑模様が全体的に入っています。

このマガモを飼育改良したものがアヒルと呼ばれているのです。

ガチョウとアヒルの様々な違いをチェック!

image by iStockphoto

元となった鳥の種類以外にも、ガチョウとアヒルには違いがあります。細かな見た目や家畜となった歴史、何を食べているかなど様々な視点から違いを詳しくみていきましょう。

\次のページで「ガチョウとアヒルの「見た目」の違い」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: