今回は「緑色植物」について解説していきます。その名の通り、緑色の植物のことを緑色植物という、そう思っている人は多いでしょう。しかし、緑色に見えるのはなぜなのか、その理由を説明できるでしょうか。それは緑色植物のもつクロロフィルに秘密があるんです。緑色植物の細胞にある葉緑体についても、一緒におさらいしていこうと思う。
この記事では生物学に詳しい、理系院卒ライターtomato1121と解説していきます。

ライター/tomato1121

大学と大学院で学んだことを元に、生物の楽しさを伝えたいと思いライターになる。生物学の知識を分かりやすく伝え、多くの人に興味を持ってもらえるように日々奮闘中。

緑色植物とは

image by iStockphoto

緑色植物の読み方は「りょくしょくしょくぶつ」。早速、生物学的に緑色植物がどのような植物なのかを説明していきたいと思います。

緑色植物は生物学的には「クロロフィルaとクロロフィルbをもつ葉緑体を持っており、光合成によってグルコースを生産する」植物のこと。定義上、緑色植物の例として挙げられるのは陸上植物、緑藻となります。

緑色植物の例

糸状
Wiedehopf20 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

それでは緑色植物では具体的にどのような植物が該当するのでしょうか。陸上植物は私たちの身の回りに存在しているので、容易くイメージできますね。種子植物以外にもコケ植物、シダ植物も該当しますよ。

緑藻はというと、思い浮かべるのが難しいかもしれません。緑藻にはクロレラやクラミドモナス(コナミドリムシ)のような単細胞生物、アオミドロ、大型の藻であるアオサマリモなども含まれます。

緑色植物のもつ葉緑体とは

Chloroplast-japanese.jpg
新しき人 - 投稿者自身による作品, CC0, リンクによる

さて、まずは葉緑体についておさらいです。葉緑体は細胞小器官の一つ。葉緑体は二重膜で包まれていて、中の構造はチラコイドという扁平の袋状の構造がいくつか積み重なったグラナという構造をもっています。そして、それ以外の基質部分がストロマ。このチラコイド膜とストロマにおいて光合成の反応が行われますね。

このチラコイド膜には先ほど名前が出てきました、クロロフィルが存在しています。

緑色植物のもつクロロフィル

この葉緑体のチラコイド膜にある、クロロフィルについて解説していきましょう。クロロフィルとは光合成色素の一つです。この光合成色素とは、光エネルギーを吸収することができる分子。そう、光合成は最初に光エネルギーを吸収するところから始まりますよね。この最初の段階で重要な働きをしているのが光合成色素なのです。

そして光合成色素はクロロフィル、カロテノイド、フィコビリンに分類されます。さらにクロロフィルだけでもクロロフィルa、b、c、d、f、バクテリオクロロフィルと多数の種類が。この中で、クロロフィルaとbを持っているのが緑色植物ということですね。

緑色植物の行う光合成

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動物は自身が活動する上で必要なエネルギーを、外部から摂取することでまかなっています。炭水化物、タンパク質、脂質を消化し、細胞呼吸を行うことでATPを生産。(これを「異化」といいますね。)この細胞呼吸で得られたATPを用いて生命活動を維持しているわけです。このことから動物は食物連鎖において「消費者」と言われています。

対して緑色植物は光エネルギーを活用して光合成を行い、細胞呼吸に必要なグルコースを自身の細胞内で生産できますね。(これを「同化」といいますね。)このことから植物は食物連鎖において「生産者」と言われています。この光合成において、クロロフィルの役割に注目して解説していきましょう。

\次のページで「光とは」を解説!/

光とは

光合成での最初の反応は光エネルギーを吸収すること。光について少し学んでおきましょう。光は電磁波の一つ、つまり波なんですね。目に見える光、いわゆる可視光は様々な波長の電磁波が混ざった状態。可視光の中で一番波長の短いのは紫、順に青、水色、緑、黄、オレンジ、赤とそれぞれの波長によって、異なる色の光に見えるのです。

物は特定の波長を反射し、それ以外の波長を吸収しています。そして、反射した波長が私たちの目に届いて色として認識されるというわけ。ちなみに、全ての波長を吸収する物は黒く見えます。

クロロフィルの吸収する光

さて、光合成で利用される光エネルギーは、葉緑体のクロロフィルで吸収されることは先ほど少し触れましたね。このクロロフィルは450nm付近と680nm付近の波長を吸収しやすい特徴があります。つまり青と赤の波長は吸収しやすいのですが、緑色の波長を吸収しにくいのです。

吸収されなかった緑色の波長は散乱または反射され、私たちの目に届く。さらに緑色は私たちの目はより感じ取りやすいという特徴があるので、より鮮やかな緑色に見えるというわけです。

光エネルギーは光合成に利用される

光エネルギーは光合成に利用される

image by Study-Z編集部

クロロフィルは単体で存在しているわけではありません。クロロフィルはタンパク質と複合体を形成して、チラコイド膜に埋め込まれた状態で機能する分子です。

少し難しい話になってしまいますが、光を吸収するとクロロフィル分子の中の電子は、光のエネルギーによって高エネルギー状態になる特徴があります。この高エネルギー状態の電子はチラコイド膜に埋め込まれたタンパク質間を移動することができるのです。この過程でなくなった電子を補充するため、水が分解されて水素イオンと酸素が生産されるというわけ。チラコイド内腔に溜まった水素イオンは、濃度勾配に従ってATP合成酵素を通り、ストロマに移動します。それによってATPが合成されるのです。

合成されたATPはストロマで行われる二酸化炭素の固定に使われ、グルコースの生産される。これが光合成の反応です。

共生説とシアノバクテリア

光合成を行う上で欠かせない葉緑体、実は最初から真核細胞の中に存在していたわけではないのです。葉緑体が細胞小器官になった経緯としては「共生説」が有力とされています。

共生説とは、原核生物であるシアノバクテリア真核細胞に取り込まれたことで葉緑体として機能するようになったという説です。これは葉緑体が内外の性質が異なる二重膜で覆われていることや、葉緑体が独自のDNAを持っていることなどが裏づけとなっています。

そもそも、このシアノバクテリアは約27億年前頃に誕生した生物。それまで光合成は硫黄などを利用して行われていました。シアノバクテリアは水を分解して電子を得ることで光合成をすることができる、初めての酸素発生型の光合成生物なのです。水は幅広く存在するため生息域が限定されず、シアノバクテリアによる光合成は盛んに行われました。

その結果、地球に酸素が多量に放出され、オゾン層が形成されたというわけ。オゾン層は地上に降り注ぐ紫外線を遮ることができたので、生物の陸上進出が可能になったのです。

\次のページで「緑色植物や他の生物の歴史」を解説!/

緑色植物や他の生物の歴史

今回は「緑色植物」について解説いたしました。緑色植物について漠然としたイメージをもっていた人も、その定義やクロロフィルの機能、光合成のしくみなどについて興味を持つきっかけになったでしょうか。

動くこともコミュニケーションをとることもできない植物ですが、私たち動物にはなくてはならない存在です。そもそも、緑色植物が生まれるきっかけになったシアノバクテリアの存在がなければ、生物は海から陸に生活の場を移すことはできませんでした。今私たちの存在があるのは、長い歴史を経て生物が積み重ねてきたものがあるからこそ。私たちも次の世代の生物のために、できることを考えてみるのもいいかもしれませんね。

イラスト引用元:いらすとや

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理科生物

緑色植物が緑色に見えるのはなぜ?緑色植物の定義や葉緑体のもつクロロフィルの役割について理系院卒ライターが5分でわかりやすく解説!

今回は「緑色植物」について解説していきます。その名の通り、緑色の植物のことを緑色植物という、そう思っている人は多いでしょう。しかし、緑色に見えるのはなぜなのか、その理由を説明できるでしょうか。それは緑色植物のもつクロロフィルに秘密があるんです。緑色植物の細胞にある葉緑体についても、一緒におさらいしていこうと思う。
この記事では生物学に詳しい、理系院卒ライターtomato1121と解説していきます。

ライター/tomato1121

大学と大学院で学んだことを元に、生物の楽しさを伝えたいと思いライターになる。生物学の知識を分かりやすく伝え、多くの人に興味を持ってもらえるように日々奮闘中。

緑色植物とは

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緑色植物の読み方は「りょくしょくしょくぶつ」。早速、生物学的に緑色植物がどのような植物なのかを説明していきたいと思います。

緑色植物は生物学的には「クロロフィルaとクロロフィルbをもつ葉緑体を持っており、光合成によってグルコースを生産する」植物のこと。定義上、緑色植物の例として挙げられるのは陸上植物、緑藻となります。

緑色植物の例

糸状
Wiedehopf20投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

それでは緑色植物では具体的にどのような植物が該当するのでしょうか。陸上植物は私たちの身の回りに存在しているので、容易くイメージできますね。種子植物以外にもコケ植物、シダ植物も該当しますよ。

緑藻はというと、思い浮かべるのが難しいかもしれません。緑藻にはクロレラやクラミドモナス(コナミドリムシ)のような単細胞生物、アオミドロ、大型の藻であるアオサマリモなども含まれます。

緑色植物のもつ葉緑体とは

Chloroplast-japanese.jpg
新しき人投稿者自身による作品, CC0, リンクによる

さて、まずは葉緑体についておさらいです。葉緑体は細胞小器官の一つ。葉緑体は二重膜で包まれていて、中の構造はチラコイドという扁平の袋状の構造がいくつか積み重なったグラナという構造をもっています。そして、それ以外の基質部分がストロマ。このチラコイド膜とストロマにおいて光合成の反応が行われますね。

このチラコイド膜には先ほど名前が出てきました、クロロフィルが存在しています。

緑色植物のもつクロロフィル

この葉緑体のチラコイド膜にある、クロロフィルについて解説していきましょう。クロロフィルとは光合成色素の一つです。この光合成色素とは、光エネルギーを吸収することができる分子。そう、光合成は最初に光エネルギーを吸収するところから始まりますよね。この最初の段階で重要な働きをしているのが光合成色素なのです。

そして光合成色素はクロロフィル、カロテノイド、フィコビリンに分類されます。さらにクロロフィルだけでもクロロフィルa、b、c、d、f、バクテリオクロロフィルと多数の種類が。この中で、クロロフィルaとbを持っているのが緑色植物ということですね。

緑色植物の行う光合成

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動物は自身が活動する上で必要なエネルギーを、外部から摂取することでまかなっています。炭水化物、タンパク質、脂質を消化し、細胞呼吸を行うことでATPを生産。(これを「異化」といいますね。)この細胞呼吸で得られたATPを用いて生命活動を維持しているわけです。このことから動物は食物連鎖において「消費者」と言われています。

対して緑色植物は光エネルギーを活用して光合成を行い、細胞呼吸に必要なグルコースを自身の細胞内で生産できますね。(これを「同化」といいますね。)このことから植物は食物連鎖において「生産者」と言われています。この光合成において、クロロフィルの役割に注目して解説していきましょう。

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