今回のテーマは「ルシャトリエの原理」です。
高校化学で登場する考え方ですが、これも化学を勉強するうえで重要な原理の一つで、テストでもよく狙われるぞ。
平衡状態の反応系が題材になるルシャトリエの原理ですが、まずは概念や考え方を理解することが大切だ!

今回は平衡状態とルシャトリエの原理について、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

ルシャトリエの原理とは

image by iStockphoto

まずは、ルシャトリエの原理がどのような原理なのか紹介していきますね。wikipediaで調べると、ルシャトリエの原理とは、こう書いてあります。

化学平衡状態にある反応系において、その状態に対して何らかの変動を起こさせたときに、平衡が移動する方向を示す原理のこと

出典:wikipedia、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86

この説明を読んだだけでは、よく分かりませんよね。この記事を最後まで読むと、ルシャトリエの原理はこう考えるんだ!と概念がなんとなく分かるようになると思います。本来は平衡定数などを使わないといけませんが、考え方や概念を理解してもらうために、できるだけ簡単に説明していきますね。

ルシャトリエって、だれ?

Lechatelier.jpg
http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Lechatelier.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

まずは、原理の名前にもなっている、「ルシャトリエ」とはどのような人物なのか紹介していきます。ルシャトリエの原理は、1884年にフランスの化学者「アンリ・ル・シャトリエ」が発表した考え方です。

アンリ・ル・シャトリエは化学産業の発展に大きく貢献した人物でした。化学産業では、平衡反応をどうやってコントロールして、目的の生成物を得るかがとても大切なキーワードで、ルシャトリエの原理は化学平衡をコントロールするうえでとても重要な原理だったんです。

平衡状態を知るために「可逆反応」と「不可逆反応」をチェック

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「化学平衡」とは何なのかを知ることが、ルシャトリエの原理を理解するための初めの一歩です。「平衡状態」を紹介している記事はほかにもあるので、そちらもあわせてチェックしてみてください。まずは、可逆反応不可逆反応をチェックしていきましょう。

化学反応には「可逆反応」「不可逆反応」という反応があります。可逆反応とは、化学反応でどちらの向きにも起きる反応のこと。不可逆反応は一方向のみにしか進まない反応のことです。

化学反応式は、左辺に反応物、右辺に生成物、間に矢印を書きます。「矢印は右向きだけ」だと思っていませんか??実は、左向きの矢印もあるんですよ。矢印が右向きだけの反応は不可逆反応。右と左の矢印が同時にあるのが可逆反応です。

\次のページで「ルシャトリエの原理の基本「化学平衡」とは」を解説!/

ルシャトリエの原理の基本「化学平衡」とは

先ほど、化学反応には可逆反応不可逆反応があると紹介しました。化学反応時の化学平衡は、可逆反応の時成立します。不可逆反応の時は化学平衡は成立しません。

そもそも化学平衡とは何なのか、簡単に紹介していきますね。化学平衡とは、可逆反応が成立しているとき、正反応と逆反応が同時に起こり、反応物と生成物の濃度が見かけ上変化していない状態。つまり、見かけ上反応が進んでいない状態ということです。

化学平衡時は、実際は反応が進んでいますが、正反応と逆反応が同じ速度で同時に起きるため、反応が進行していないように見えます。

ルシャトリエの原理を具体的な反応でチェック

ルシャトリエの原理を具体的な反応でチェック

image by Study-Z編集部

さて、ここからはルシャトリエの原理を詳しく見ていきましょう。ルシャトリエの原理は、「平衡状態にある可逆反応の条件を変化させると、その変化を打ち消す方向に平衡が移動する」というのが基本の考え方です。

具体的な反応を例にして見ていきましょう。窒素分子と水素分子からアンモニアを作り出す「ハーバーボッシュ法」ですが、この反応は、実は可逆反応です。反応開始後しばらくすると、化学平衡状態に到達します。

この平衡状態にある操作をしたとき、平衡がどのように移動するのか、ルシャトリエの原理から考えてみましょう。

窒素分子や水素分子を過剰に加える

窒素分子や水素分子を過剰に加える

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ルシャトリエの原理は、「平衡状態にある可逆反応の条件を変化させると、その変化を打ち消す方向に平衡が移動する」でしたよね。反応物の窒素分子や水素分子を平衡状態の反応系中にたくさん入れたらどうなるでしょうか。

反応物を増やすと、その変化を打ち消す(反応物を減らす)方向に平衡が移動するため、平衡は右向きに移動します。つまりアンモニアの生成量は増えることになるんです。

窒素分子や水素分子を除去する

窒素分子や水素分子を除去する

image by Study-Z編集部

次に先ほどと逆の場合を考えてみます。水素分子や窒素分子を除去してみましょう。反応物の量が減ることになるので、平衡状態は、反応物を増やす方向に移動します。つまり、左向きに平衡が移動して、反応物が増えることになるんですね。

\次のページで「ルシャトリエの原理を使って、さらに色々な条件を変えてみる」を解説!/

ルシャトリエの原理を使って、さらに色々な条件を変えてみる

ここからは、さらにたくさんの条件を変えたときに平衡状態がどう移動するのか、考えてみましょう。反応は引き続き窒素分子と水素分子からアンモニア分子を作る「ハーバーボッシュ法」で見ていきます。

温度を変化させる

温度を変化させる

image by Study-Z編集部

まずは、温度を変化させたときの平衡の移動を見てみましょう。化学反応式を見ると、熱の移動があります。アンモニアの後ろに+92kJとついていますよね。つまりアンモニアが生成するときに、正反応は発熱反応で、92kJの熱を放出しているんです。

加温して平衡状態の温度を上げた場合、温度を下げる方向に平衡は移動しますよね。温度を下げるためには、発熱と逆の反応(吸熱反応)をしなくてはいけません。つまり左辺側に平衡が移動します。

逆に、平衡状態の温度を下げた場合、温度を上げる方向に平衡は移動しますよね。温度を上げるためには、発熱しないといけません。発熱する反応は正反応なので、右辺側に平衡が移動します。

圧力を変化させる

圧力を変化させる

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反応系の圧力を変化させても、平衡状態は移動します。圧力を変化させるときは、反応物と生成物の分子数をチェックしょう。右辺と左辺の分子数を比べてみると、左辺は窒素分子が1個、水素分子が3個です。右辺はアンモニア分子が2個ですよね。基本的に圧力は気体分子数が多いほど高いです。

そのため、圧力を高くしたい場合は気体分子が増加する方向に、低くしたい場合は気体分子が減少する方向に平衡が移動します。それを踏まえて見てみましょう!

平衡状態の反応系に圧力を加えて高くした場合、気体分子数を減らす方向に平衡が移動するので、平衡は右辺側に移動します。平衡状態の圧力を低くした場合、気体分子数を増やす方向に平衡が移動するため、平衡は左辺側に移動するんです。

平衡状態を操る「ルシャトリエの原理」をチェック

今回はルシャトリエの原理をテーマに紹介していきました。ルシャトリエの原理は「平衡状態の反応を操る」とても重要な考え方。

特に化学工学の分野では、平衡状態の反応から、いかに生成物を多く回収するかは重要な課題です。ルシャトリエの原理は平衡状態を操り生成物の回収量を上げる、とても重要な考え方なんですよ。

またテストでも狙われやすく、平衡状態の反応系に何が起きて、平衡がどのように移動するのか、1つずつ考えていくことが大切です。そのため、ルシャトリエの原理の考え方の基本を1つずつチェックしていってください。

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化学理科

ルシャトリエの原理とは?圧力や温度を変化させるとどうなる?重要な考え方を理系ライターが分かりやすくわかりやすく解説!



今回のテーマは「ルシャトリエの原理」です。
高校化学で登場する考え方ですが、これも化学を勉強するうえで重要な原理の一つで、テストでもよく狙われるぞ。
平衡状態の反応系が題材になるルシャトリエの原理ですが、まずは概念や考え方を理解することが大切だ!

今回は平衡状態とルシャトリエの原理について、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

ルシャトリエの原理とは

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まずは、ルシャトリエの原理がどのような原理なのか紹介していきますね。wikipediaで調べると、ルシャトリエの原理とは、こう書いてあります。

化学平衡状態にある反応系において、その状態に対して何らかの変動を起こさせたときに、平衡が移動する方向を示す原理のこと

出典:wikipedia、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86

この説明を読んだだけでは、よく分かりませんよね。この記事を最後まで読むと、ルシャトリエの原理はこう考えるんだ!と概念がなんとなく分かるようになると思います。本来は平衡定数などを使わないといけませんが、考え方や概念を理解してもらうために、できるだけ簡単に説明していきますね。

ルシャトリエって、だれ?

Lechatelier.jpg
http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Lechatelier.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

まずは、原理の名前にもなっている、「ルシャトリエ」とはどのような人物なのか紹介していきます。ルシャトリエの原理は、1884年にフランスの化学者「アンリ・ル・シャトリエ」が発表した考え方です。

アンリ・ル・シャトリエは化学産業の発展に大きく貢献した人物でした。化学産業では、平衡反応をどうやってコントロールして、目的の生成物を得るかがとても大切なキーワードで、ルシャトリエの原理は化学平衡をコントロールするうえでとても重要な原理だったんです。

平衡状態を知るために「可逆反応」と「不可逆反応」をチェック

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「化学平衡」とは何なのかを知ることが、ルシャトリエの原理を理解するための初めの一歩です。「平衡状態」を紹介している記事はほかにもあるので、そちらもあわせてチェックしてみてください。まずは、可逆反応不可逆反応をチェックしていきましょう。

化学反応には「可逆反応」「不可逆反応」という反応があります。可逆反応とは、化学反応でどちらの向きにも起きる反応のこと。不可逆反応は一方向のみにしか進まない反応のことです。

化学反応式は、左辺に反応物、右辺に生成物、間に矢印を書きます。「矢印は右向きだけ」だと思っていませんか??実は、左向きの矢印もあるんですよ。矢印が右向きだけの反応は不可逆反応。右と左の矢印が同時にあるのが可逆反応です。

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