世の中には非常にたくさんの毒が存在している。生物には食べるために毒を使うものや、生き残るために毒を使うもの等、用途も様々です。そこで今回は特に危険な最強の毒について詳しく学んでいこう。大学で農学や合成化学について学んだ毒に詳しいY.oB(よぶ)と一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。毒素の検出装置の開発に携わった経験を持つ、毒に詳しいライター。

植物由来の毒を解説!

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植物由来の毒は弱いものから強いものまで様々存在し、部位によっても毒性の強さは異なっています。毒の正体の多くはアルカロイドと呼ばれる有機化合物です。これらは毒でもありますが、薬として利用してきた歴史もあります。毒にも薬にもなる植物の毒について学んでいきましょう。

圧倒的毒性のリシンって何?

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リシンとはトウゴマに含まれるタンパク質毒素になります。薬局で売っているリジン(アミノ酸)と間違えがちですが、全く違うものです。どのくらい強いか説明する前に、毒の強さの指標を説明します。毒素の強さを比較する際にはLD50(多数の検体1kg換算で半分死ぬ量)が一般的です。

例えば、ミステリー等で登場する青酸カリは10mg/kg(検体1kg換算で半分致死する量が10mg)となります。リシンは0.1μg/kg(青酸カリの1/100000の量)です。致死量の少なさがわかります。

美しい毒花トリカブトとは?

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トリカブトは山林に自生している有名な有毒植物です。多くの品種があり、白や紫等の綺麗な花を咲かせます。毒の正体はアコニチンというアルカロイドです。誤って接種すると嘔吐や痙攣、心臓発作を起こし、最悪死亡するほど強力な毒になります。LD50は120μg/kg(青酸カリの約1/80の量)。

トリカブトは素人には見分けることが難しい上に、全ての部位に毒があります。皮膚からも摂取してしまうため、山菜取りは経験豊富な方に同行してもらいましょう。

タバコの成分ニコチンの毒性は?

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タバコの成分で有名なニコチンは実は青酸カリよりも強い(LD50は7mg/kg)毒性を持っています。ニコチンも植物由来のアルカロイドが正体です。毒性の強さもありますが、依存症を引き起こす事が特徴的。タバコ植物が昆虫に食べられる事を防ぐために産生していると考えられています。

タバコ1本で赤ちゃんの致死量に匹敵すると考えると、吸わない方が良いですね。

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海洋生物由来の毒を解説!

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海洋生物の持つ毒は微生物が生産したものを蓄積していることが多い。そのため同じ毒を持っている生物が多数いる事もありますが、その中でも代表生物を紹介します。

この章では海の生物がどのような毒を持っているか学んでいきましょう。

イソギンチャクの毒は動物界最強?

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動物界最強の毒を持っているのはマウイイワスナギンチャクというイソギンチャクの仲間です。この毒の正体はパリトキシンと呼ばれる有機化合物になります。パリトキシンの毒性の強さは青酸カリの数万倍です。生産している微生物ははっきりわかってないが、イソギンチャク以外にもパリトキシンを持った生物は確認されている。

天然の有機化合物としては最大級の大きさを持っており、昔の人はこれを合成しました。最難関の天然物合成は本当にすごい事です。今でも有機合成の金字塔となっています。

クラゲが持つ複合毒とは?

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ご紹介するのはオーストラリアウンバチクラゲです。このクラゲは現在確認されているクラゲの中で最強の毒を持っている事で有名。この最強の毒の正体は数十種類の毒タンパク質を混ぜ合わせた毒のカクテルです。毒のカクテルの成分には溶血性、心臓毒性が確認されています。

長い触手で知らない間に触れてしまうため大変危険な生物です。実際に死亡事故も起きていますので、海に入る前に情報収集をするべきでしょう。

フグの毒の正体って何?

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フグを毒を持っている生物として真っ先に思い浮かべる人は多いと思います。そのフグの毒の正体をご存知でしょうか。正体はテトロドトキシンという有機化合物です。細菌が毒を生産し、食物連鎖によって体内に蓄積する事で毒化します。分子構造は強固で、加熱で分解する事はない(少なくとも鍋の温度では分解しない)。

摂取量によっては死亡するほど強力な毒性を持っています。主な症状は麻痺。治療薬はないのが現状です。後遺症が一切ないのが唯一の救いかもしれません。

動物由来の毒を解説!

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動物にも有毒な生物は多く存在しています。中には獲物を狩るために毒を利用する等、植物ではできない利用方法も特徴的です。植物は動けないため、身を守るために毒を生産します。海洋生物は食物連鎖の結果、毒化したものです。

ここでは動物が持つ毒について学んでいきます。

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ヤドクガエルの神経毒とは?

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非常にカラフルで毒々しい見た目のカエルが熱帯雨林にいます。それが猛毒を持つヤドクガエルです。このヤドクガエルの毒はパリトキシンを含む複数種類のアルカロイドを混ぜ合わせたものを皮膚から分泌しています。この分泌物は20μgで成人一人が死に至る程強力で、原住民が矢に毒を塗って使用する事からヤドクガエルです。

最強の毒蜘蛛とは?

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オーストラリアのシドニー周辺に生息しているシドニージョウゴグモは全ての蜘蛛の中で最強の毒を持っています。死亡事故も起きる程強力な毒性を持っているが、その毒性は霊長類にしか効かない。天敵のトカゲ、鳥、昆虫に全く効かない毒を持つ理由は謎となっている。

現在では血清が開発されたため、死亡事故は起きていないのは幸いです。

恵まれた体格に最強の毒を持つヘビとは?

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ヘビも有毒生物として有名です。その中でも最強の毒を持つと恐れられているのが、オーストラリアに生息しているインランドタイパンになります。この毒ヘビは非常に強力な神経毒を持っており、一度に成人男性100人殺せる程です。毒の正体は神経毒で、体長3mで獲物を巻き付きながら牙で注射。1回に流せる量も多く、優に致死量を超えてくる危険生物です。

幸い性格は非常に大人しく、個体数も少ないため、見かけることはほぼないでしょう。

人類が発見した最強の毒って何?

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人類が発見した最強の毒は何でしょうか。その答えはボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素です。地球上には多くの毒が存在しています。キノコ、魚類、貝類、藻類も毒を持つ事で有名です。しかし、細菌が生産する毒素には敵いません。例えば大腸菌のベロ毒素や赤痢菌のシガトキシン等は大変強力です。

その全てと比較しても地上で最高の毒はボツリヌス毒素でしょう。その毒の強さは計算上、500gあると全人口を毒殺できます。同じクロストリジウム属の破傷風菌も強力な毒があり、同じく熱に強い特性を持っているため厄介です。

毒物の取り扱いには注意しよう

普段意識している人は少ないと思いますが、意外と身近に毒は存在しています。特に植物由来の毒は山林が多い国なので、より身近になりやすいでしょう。そしてキノコや蜂はどこにでもいますよね。身近な危険は事前に確認し、正しい対処をする事をオススメします。

ちなみに強い毒ではないですが、マメ科植物も有毒の可能性がある事はご存知でしょうか。マメ科植物を食べる時は必ず火を通しましょう。天然毒素はネットで検索すると対処方法がわかります。知識があれば怖くありません。毒物は正しく取り扱いましょう。

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化学有機化合物理科生き物・植物

最強の毒はどれだ?トリカブトやクラゲなど植物や生物の毒を現役研究員がわかりやすく解説!

世の中には非常にたくさんの毒が存在している。生物には食べるために毒を使うものや、生き残るために毒を使うもの等、用途も様々です。そこで今回は特に危険な最強の毒について詳しく学んでいこう。大学で農学や合成化学について学んだ毒に詳しいY.oB(よぶ)と一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。毒素の検出装置の開発に携わった経験を持つ、毒に詳しいライター。

植物由来の毒を解説!

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植物由来の毒は弱いものから強いものまで様々存在し、部位によっても毒性の強さは異なっています。毒の正体の多くはアルカロイドと呼ばれる有機化合物です。これらは毒でもありますが、薬として利用してきた歴史もあります。毒にも薬にもなる植物の毒について学んでいきましょう。

圧倒的毒性のリシンって何?

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リシンとはトウゴマに含まれるタンパク質毒素になります。薬局で売っているリジン(アミノ酸)と間違えがちですが、全く違うものです。どのくらい強いか説明する前に、毒の強さの指標を説明します。毒素の強さを比較する際にはLD50(多数の検体1kg換算で半分死ぬ量)が一般的です。

例えば、ミステリー等で登場する青酸カリは10mg/kg(検体1kg換算で半分致死する量が10mg)となります。リシンは0.1μg/kg(青酸カリの1/100000の量)です。致死量の少なさがわかります。

美しい毒花トリカブトとは?

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トリカブトは山林に自生している有名な有毒植物です。多くの品種があり、白や紫等の綺麗な花を咲かせます。毒の正体はアコニチンというアルカロイドです。誤って接種すると嘔吐や痙攣、心臓発作を起こし、最悪死亡するほど強力な毒になります。LD50は120μg/kg(青酸カリの約1/80の量)。

トリカブトは素人には見分けることが難しい上に、全ての部位に毒があります。皮膚からも摂取してしまうため、山菜取りは経験豊富な方に同行してもらいましょう。

タバコの成分ニコチンの毒性は?

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タバコの成分で有名なニコチンは実は青酸カリよりも強い(LD50は7mg/kg)毒性を持っています。ニコチンも植物由来のアルカロイドが正体です。毒性の強さもありますが、依存症を引き起こす事が特徴的。タバコ植物が昆虫に食べられる事を防ぐために産生していると考えられています。

タバコ1本で赤ちゃんの致死量に匹敵すると考えると、吸わない方が良いですね。

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