今回は放射線のタイプについて学んでいく。突然ですが、放射線と言われてどんなイメージだ?

なんだかわからないし怖い、体に悪い、被爆?!そんなコトバが飛び交いそうです。

ここではミクロの世界の中で特別わがままな原子たちの行動をつかむことで放射線の正体と特徴について説明していく。とっつきにくくテストでは丸暗記しなければならないと思われていたそれぞれの特徴ですが、理由をたどればなんとも人間じみた理由があることがお分かりいただけるでしょう。

ということで化学に詳しく大学でも放射線の勉強をした*はな*と解説していきます。

ライター/*はな*

現薬剤師!大学の専攻は化学と生物。くすりと体のことは特にお任せ。【わかりやすく】+【たのしく】+【納得!】をテーマに、伝えるスキルアップも追及している。

β線って一体どんな放射線?ざっくり解説

すさまじく自由な電子と陽子と中性子が織りなすことにより生まれる放射線です。\"線\"といいつつその正体は\"電子\"でした!β線の主なタイプは3種類で発生元は同位体。

ということで上記だけでは全くわかりませんよね。実は、今回お話する内容は大学の講義レベルの内容です。

ここまでで、わけがかからないコトバが多く登場していますが、これからじっくりとそしてわかりやすく説明します。雰囲気だけでも掴み取って、「そういうことが世の中にはあるのか」と興味を持っていただけたら大変うれしいです!

様々なタイプの放射線、どうやって出現するのか?

image by iStockphoto

まずはじめに、いきなり放射線の話には入りません。これから下に出てくる図は中学生でやる内容ですが覚えていますか?
放射線を知るうえでしらなくてはならない基礎知識です。

特に陽子+中性子=原子"核"原子核+電子=原子という構造はこの後読み進めていく中で理解していないと今回の話は正直言って難しいでしょう!次にでてくるイラストを頭にイメージしながら読み進めていってほしいです。

特に重要なのは粒の種類と電荷。わたしも注意しながらわかりやすく書いていきますのでゆっくり読んでみてください。

image by Study-Z編集部

1:α線=ヘリウム原子核

1:α線=ヘリウム原子核

image by Study-Z編集部

α線の正体を見ていきましょう。上のイラストはα線がどのようにして生まれたのかを表しています。

Ra(原子番号:88/ラジウム)という原子です。ご覧のように質量数が226と、かなり重たくなっています。少し情緒不安定でダイエットが必要なようです。

そこでダイエットをしてスッキリボディーになります。ダイエットした結果、放出されたエネルギーがα線です。α線はイラストのようにヘリウム原子核と決まっています。

ついでにγ線も放出しますがγ線についてはのちほど。

\次のページで「2:β線=電子」を解説!/

2:β線=電子

2:β線=電子

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β壊変はこのように3種類あります。

放射線の正体は電子であること。そして、同位体原子を発生元としていること。以上2点が重要なポイント!

また、α線の発現する原子は重たくて原子番号も比較的大きいものが多いですが、β壊変を起こす原子は例のように原子番号は小さく比較的なじみ深い原子のものが多いです。

また同位体のことをカタカナでアイソトープというので覚えておきましょう。

β-壊変

β+壊変

EC(電子捕獲)壊変

<β-壊変>

中性子が過剰なため原子核は不安定な状態です。物質とは、常に不安定が大嫌い。みなさん以上に生粋(きっすい)の安定志向です。何とかして落ち着こうとしてしまいます。

今回行われるのは【中性子】から【電子(-)】をとれば【陽子】になる!という妙案。

原子核の中で中性子が陽子へと変化を遂げます。すると放出されたのは、放射性をもつ電子(-)ニュートリノという素粒子。こうして不安定なエネルギーを電子という形で放出することによって、安定することができました。

ちょっと待って、ニュートリノが気になる!という方へ。

残念ながらここではニュートリノのお話は致しません。理由は2つあります。
1つは謎が多すぎること。もう1つは今回は「放射線」についての解説であり、ニュートリノを説明するとそれだけで記事が終わってしまうということ。興味のある方はぜひ調べてみてください!宇宙にも存在する神秘的な粒子です。参考までにニュートリノとは何か?を一言で。

ニュートリノは、イタリア語で「電気を帯びていない+小さい」という意味の名前を持った、素粒子のひとつです。

出典:千葉大学 ハドロン宇宙国際研究センター ニュートリノとは

<β+壊変>

β-壊変は中性子が過剰な状態でした。それに対してβ+壊変は陽子が過剰な状態。先ほどの繰り返しではありますが、物質とは、常に不安定が大嫌い。みなさん以上に生粋(きっすい)の安定志向です。

今回行われるのは【陽子】から【陽電子(+)】をとれば【中性子】になる!という妙案。

原子核の中で陽子が中性子へと変化を遂げます。すると放出されたのは、放射性をもつ電子(+)とここでもニュートリノという素粒子。こうして不安定なエネルギーを電子という形で放出することによって、安定することができました。

<EC(電子捕獲)壊変>

今回もスタートは陽子が過剰な状態。先ほどのβ+壊変は原子核内で起こる放射線でしたが、今回は”電子捕獲”とあります。どういうことか見ていきましょう。

ここで行われるのは【陽子】に【電子(-)】を足せば【中性子】になる!という妙案。

大胆ですよね。あたりを見回した原子核内の陽子。手ごろな電子がK殻をクルクルしている電子(-)を発見。ということで安定のためにパクリします。

EC壊変には反応式上には電子の動きが見えないのでどれが放射性物質かを表すことはできません。

3:γ線、X線=電磁波

実はγ線とX線ですが、両者はほぼほぼ違いがありません。ですので一緒に勉強してしまった方がよいでしょう。

補足として、みなさん"電磁波"とは何か知っていますか?身近過ぎて気づきにくいですが以下が該当します。
例えば、電子レンジの温める機能の仕組み。例えば、太陽が温かい・熱いと感じさせる赤外線やまぶしいと感じる可視光線。例えば、シミやシワの原因にもなってしまう紫外線。可視光線以外は目に見えないですが、何らかのエネルギーで影響を与えてしまう振動はたまた波とでも言えばいいのでしょうか。

ここで本題に戻りますが、γ線とX線はどこが違うのでしょうか?

唯一の違いといってもいいことは発生元つまり生みの親が原子核であるか否かだけです。

γ線は原子核内より発生した電磁波であり、X線はそれ以外。

またX線には制動X線特性X線があります。特性X線はβ崩壊のEC壊変で出てきました。少しスクロールしてイラストを見返してみましょう。

4:中性子線=中性子

ここまできたら【中性子】線ということは、中性子が飛ぶんだよね。余裕!と思った方もいるかもしれません。確かに原子核が核分裂するなどの際に運動エネルギーを持って原子核の外へ飛び出す中性子のことを中性子線といいます。

ですがこの中性子線はクセが強いです!

なぜクセが強いのかというと、中性子線は電荷がなく、かつ反応は必ず原子核としか反応しないことにあります。

次のイラストを見てみましょう。

image by Study-Z編集部

α、β、γ、X線はすべて電荷(+か-)を持つため周りでくるくると飛び回る電子(-)の影響を受けます。

一方の中性子は、電荷がありません。そのため、原子の塊の中でも標的は原子核のみ。原子核にぶつからない限りは反応しないので透過率(すり抜ける力)が高いです。

中性子線が飛び、原子核と出会うと捕獲または散乱で反応します。

捕獲:中性子線の本体である中性子が、標的の原子核にくっつく反応
    くっつくと変異して放射性同位体になりγ線を放出する能力を持つようになります。
    主に原子核が大きい場合の反応です。

散乱:中性子線の本体である中性子が、標的の原子核を突き飛ばす反応
    中性子がドンとぶつかって原子核がぐらつき、分子構造が壊れます
    主に原子核が小さい場合の反応です。

\次のページで「根っこから理解することで特徴をまるっとつかもう」を解説!/

なぜ原子核の大きさで決まるのでしょうか?

水素原子は一番小さい原子です。水素原子を思い浮かべてみましょう。原子核は陽子1つのみのものが99.9%です。中性子と陽子の大きさはほぼ同じであることがわかっています。

単純に考えてみてほしいのですが、小石に小石をぶつけるとはじけあって動きますよね。一方で、岩に小石をぶつけても岩はびくともしません。これとほぼ同じ現象です。水素の原子番号はご存知のとおり1。陽子1個のところにもしも同じような大きさの中性子がぶつかったら、小石同士のようにお互いに影響があります。そうして分子構造が崩れてしまうのです。

このように中性子は小さい原子ほど影響を与えるということがわかっています。

この方法を逆手にとって中性子をキャッチするには水素原子をたっぷり含んだ水が遮蔽に向いているということが理解できるかなと思うのですがいかがでしょうか?

根っこから理解することで特徴をまるっとつかもう

みなさんにも個々人に個性というものがありますが、放射線のタイプによっても個性があることがお分かりいただけたと思います。ルーツを知ることでその"個性"をとらえやすくなり勉強するポイントにおまけ知識まで付いてしまう!

大学のテストでは、「遮蔽するには何が適しているか?」だの、「EC壊変で放出されるのは制動X線である、〇か×か?」だのという問題が出題されます。わたしは、"個性"をつかんで芋づる式にまるっと覚えるのも勉強のたのしみではないのかなと思っておりますがみなさんの暗記法はどういったものなのでしょうか?(正直、一対一の暗記ができる方はとてもうらやましいです…)

この記事では基本的な特徴しか書くことができず、発展編である「体への影響」や「現代での活用法」などはまた今度となってしまいました。深くお詫び申し上げます。

未知のものって人って怖いんです。ぜひ調べて知って興味を持って正しい知識で感情的にならずにうまく付き合っていただきたいなと思います。みなさんの勉強のきっかけとなりますよう!

イラスト使用元:てがきですのβ、いらすとや

" /> β線の正体とは?見えない放射線の性質や特徴、放射線の種類などを薬剤師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学原子・元素物質の状態・構成・変化理科

β線の正体とは?見えない放射線の性質や特徴、放射線の種類などを薬剤師がわかりやすく解説

今回は放射線のタイプについて学んでいく。突然ですが、放射線と言われてどんなイメージだ?

なんだかわからないし怖い、体に悪い、被爆?!そんなコトバが飛び交いそうです。

ここではミクロの世界の中で特別わがままな原子たちの行動をつかむことで放射線の正体と特徴について説明していく。とっつきにくくテストでは丸暗記しなければならないと思われていたそれぞれの特徴ですが、理由をたどればなんとも人間じみた理由があることがお分かりいただけるでしょう。

ということで化学に詳しく大学でも放射線の勉強をした*はな*と解説していきます。

ライター/*はな*

現薬剤師!大学の専攻は化学と生物。くすりと体のことは特にお任せ。【わかりやすく】+【たのしく】+【納得!】をテーマに、伝えるスキルアップも追及している。

β線って一体どんな放射線?ざっくり解説

すさまじく自由な電子と陽子と中性子が織りなすことにより生まれる放射線です。\”線\”といいつつその正体は\”電子\”でした!β線の主なタイプは3種類で発生元は同位体。

ということで上記だけでは全くわかりませんよね。実は、今回お話する内容は大学の講義レベルの内容です。

ここまでで、わけがかからないコトバが多く登場していますが、これからじっくりとそしてわかりやすく説明します。雰囲気だけでも掴み取って、「そういうことが世の中にはあるのか」と興味を持っていただけたら大変うれしいです!

様々なタイプの放射線、どうやって出現するのか?

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まずはじめに、いきなり放射線の話には入りません。これから下に出てくる図は中学生でやる内容ですが覚えていますか?
放射線を知るうえでしらなくてはならない基礎知識です。

特に陽子+中性子=原子”核”原子核+電子=原子という構造はこの後読み進めていく中で理解していないと今回の話は正直言って難しいでしょう!次にでてくるイラストを頭にイメージしながら読み進めていってほしいです。

特に重要なのは粒の種類と電荷。わたしも注意しながらわかりやすく書いていきますのでゆっくり読んでみてください。

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1:α線=ヘリウム原子核

1:α線=ヘリウム原子核

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α線の正体を見ていきましょう。上のイラストはα線がどのようにして生まれたのかを表しています。

Ra(原子番号:88/ラジウム)という原子です。ご覧のように質量数が226と、かなり重たくなっています。少し情緒不安定でダイエットが必要なようです。

そこでダイエットをしてスッキリボディーになります。ダイエットした結果、放出されたエネルギーがα線です。α線はイラストのようにヘリウム原子核と決まっています。

ついでにγ線も放出しますがγ線についてはのちほど。

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