
今回は蒸気圧降下を解説してくぞ。蒸気圧降下や沸点上昇は、原理はよくわからないが、公式を丸暗記して問題を乗り切っている人も多いでしょう。
ですがそれでは、応用問題や発展問題が解けなくなってしまう。なにより、「何が起きて」「どうして起きたのか」が分からないと、化学は面白くないぞ!
今回は、蒸気圧降下と沸点上昇の原理と、公式の使い方を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。
ライター/リック
高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。
蒸気圧降下とは
まずは、用語の意味を紹介していきます。「蒸気圧降下」とは、不揮発性の溶質が溶けている溶液の蒸気圧は純溶媒の蒸気圧よりも低くなるという現象です。どうゆうこと?と思いますよね。
そもそも蒸気圧とは何なのか、を次から紹介していきますね。
まずは、蒸気圧とは蒸気の圧力のこと

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まず、蒸気圧を紹介していきます。蒸気圧とは、液体が気体になったときの、気体の圧力のことです。常温常圧で液体の水を入れた容器を密閉しておくと、だんだんと液体表面の水分子が熱運動で気相へ飛び出していきます。液体の水から気体の水蒸気へ変化するということですね。この時の水蒸気の圧力が蒸気圧です。
密閉容器の中でしばらく放置していくと、液相から気相へ飛び出す水分子と気相から液相へ戻る水分子の量が一緒になります。この時の水蒸気の圧力が飽和蒸気圧です。テストや入試で出題される問題は、密閉された容器内の蒸気圧を主に扱うので、蒸気圧=飽和蒸気圧として出題されることが多いですね。
飽和蒸気圧は物質と温度で異なる物性値で、それぞれの温度での飽和蒸気圧を結んだ曲線を蒸気圧曲線と呼びます。蒸気圧曲線は、気体-液体の状態変化を扱う問題で必ず出てくるので、絶対にチェックしてください!
温度が高くなるほど飽和蒸気圧は上がっていき、逆に温度が低くなるほど飽和蒸気圧は下がっていきます。
蒸気圧曲線の読み方はこれだけ!
ここからは、蒸気圧曲線の読み方を簡単に紹介していきます。蒸気圧曲線は、それぞれの温度での飽和蒸気圧を結んだ曲線でした。なので、縦軸に圧力、横軸に温度が書かれいています。
蒸気圧が分かると沸点が分かる?

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蒸気圧曲線の読み方が分かると、重要な物質の情報をグラフから読み取ることができます。それは、物質の沸点。実は…沸点はそれぞれの圧力に対応した蒸気圧曲線上の点なんです。常圧(100kPa)の水の場合、100kPaから水平に線を引くとちょうど100℃のところで蒸気圧曲線とぶつかり、水の沸点は100℃と分かります。この考え方はほかの圧力でも同じです。
例えば…富士山頂では、水の沸点は100℃でないと聞いたことありませんか。その理由は、蒸気圧曲線を見ると分かります。富士山頂の気圧は約630hPa程度です。水の蒸気圧曲線の630hPaから水平線を引くと、87℃のところで蒸気圧曲線と交わります。なので、富士山頂では水は約87℃で沸騰すると分かるんです。
蒸気圧降下は水溶液で起きる!
ここまでの蒸気圧の話はあくまで純物質の話でした。では、水に別の物質が溶けた水溶液の場合はどうでしょうか。水に食塩の粒子が溶けた食塩水を例にして考えてみましょう。塩水の中には、水分子とナトリウムイオン粒子と塩化物イオン粒子が溶け込んでいます。
この時、蒸気圧はどのように変化するか考えてみましょう。まず、ナトリウムイオンと塩化物イオンは気体になりませんよね。なので、不揮発性の物質が水のなかに溶けている状態です。
一番初めに紹介した「蒸気圧降下」とは、を思い出してみてください。蒸気圧降下は、「不揮発性の溶質が溶けている溶液の蒸気圧は純溶媒の蒸気圧よりも低くなるという原理」でした。つまり、水に食塩が溶けた塩水は、蒸気圧降下が起きるんです。では、なぜ蒸気圧降下が起きるのか、考えてみましょう。
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