今回の記事では「偏利共生」について学習していこう。

漢字を見ればどんな状態を指す言葉なのか大体予想がつくかもしれないが、詳しく説明できるやつは少ないかもしれない。そんな共生関係のうち「偏利共生」について、そのほかの共生関係との違いや具体的にどんな動物が偏利共生の関係にあるのかを理解していこう。

高校・大学にて生物専攻の農学部卒ライター園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

共生とは

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共生とは、“共”に“生きる”という文字通り、「異なる種の生物が、お互いに影響しあって生活すること」です。

共生の4タイプ

共生の4タイプ

image by Study-Z編集部

異なる種からなる共生関係のうち、それぞれにプラス(利益)・マイナス(不利益)の影響があると観察できるものには名前がつけられています。以下では、共生の4タイプを理解していきましょう。

相利共生

相利共生は、「異なる種の生物どちらにもプラスの影響がある関係のこと」です。

相利共生の具体例として、アリとアブラムシの関係が挙げられます。アリは、アブラムシが排出する甘い蜜を食べたいので、アブラムシの天敵であるテントウムシがアブラムシに近づくと追い払うようにするのです。アリは甘い蜜が食べられるし、アブラムシは天敵から守られるのでどちらにもプラスの影響がある関係の相利共生と言えます。

偏利共生

偏利共生とは片利共生と同義で、「異なる種の生物のうちどちらか一方にプラスの影響があり、他方にはプラス・マイナスどちらの影響もない関係のこと」です。

この記事のテーマである偏利共生については、次の章で具体例を見ながら詳しく解説していきます。

\次のページで「片害共生」を解説!/

片害共生

片害共生とは、「異なる種の生物のうちどちらかにマイナスの影響があるけれど、他方にはプラス・マイナスどちらの影響もない関係のこと」です。

片害共生の具体例としては、森の中の大木とその下にある小さい木の関係が挙げられます。大きな木は周りにさえぎるものがないため太陽光を十分に受けられますが、その下にある小さな木は大きな木により太陽光がさえぎられるので成長できない、もしくは枯れてしまうかもしれません。この例では、小さい木にとって大きな木はマイナスの影響がありますが、大きな木にとって小さな木はプラスにもマイナスにも影響しないので、片害共生と言えます。

寄生

寄生とは、「異なる種の生物のうちどちらか一方にプラスの影響があり、他方にはマイナスの影響がある関係のこと」です。

寄生の具体例としては、ヒトと蚊が挙げられます。蚊はヒトの血液を得て繁殖でき(プラスの影響)、ヒトは吸血によってデング熱などの非常に危険な病気にかかるかもしれない(マイナスの影響)ので、ヒトと蚊の関係は寄生です。

教科書で見られる偏利共生の代表的な生物

それでは、この記事のテーマである偏利共生の代表的な生物を見ていきましょう。偏利共生は、一方にはプラスもマイナスも影響がない関係のことなので、この章ではプラスの影響を受ける生物に焦点を当て解説していきます。

カクレクマノミと(イソギンチャク)

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刺胞動物に分類され、生物最強の毒を持つ仲間もいるイソギンチャク。そんなイソギンチャクと暮らすカクレクマノミは、敵から襲われたとき、イソギンチャクの中に隠れて身を守ります。つまり、カクレクマノミにとってイソギンチャクと暮らすことはプラスになるのです。

コバンザメと(ジンベイザメ)

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水族館などでジンベイザメの下にくっついている小さな魚を見たことがないでしょうか?それがコバンザメで、頭部にある吸盤によって自分より大きな魚などにくっつくことができます。そのおかげでコバンザメは苦労せず移動ができ、かつ食事のおこぼれももらえることがプラスの影響です。

\次のページで「(ナマコ)とカクレウオ」を解説!/

(ナマコ)とカクレウオ

Carapus acus.jpg
Etrusko25 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

その名の通り、ほかの生物の肛門から入り、体内に住み着く習性があるカクレウオ。昼間は生物の体内に隠れ、夜になると食事をしに外に出て行きます。カクレウオにとってナマコの体内で暮らすことは、外敵から身を守ることができたり、繁殖の場になったりするのでプラスです。

共生の4タイプは時間や環境などの要因で変化するもの

これまで偏利共生の代表的な生物を見てきました。しかし様々な研究が行われ、生物間の関係は時間や環境などの要因で変化するということが分かってきています。つまり、偏利共生の代表例として紹介した上記の生物も、相利共生や寄生の関係を示すことがあるのです。この章では、先ほどプラスの影響があるとされていた生物ではない、もう片方の生物に焦点を当てて解説します。

(カクレクマノミ)とイソギンチャク

カクレクマノミは縄張り意識が強いため、イソギンチャクを食べに来た魚(縄張りに侵入してきた魚)を追い払いますその結果、イソギンチャクは敵から守られるのでプラスの影響を受けていると言えるでしょう。さらに、カクレクマノミが敵を追い払うことで食べられる心配がないので、カクレクマノミと暮らすイソギンチャクは、触手を隠しておく必要がありません。そのため、イソギンチャクの口盤(触手に囲まれた口部分)に住む(光によって光合成をおこないエネルギーを生産する)褐虫藻に光が当たる時間が増えます。これにより、褐虫藻はたくさん光合成をおこないエネルギーを生産。そして、褐虫藻が使いきれなかったエネルギーはイソギンチャクが使うことができるので、イソギンチャクにとってカクレクマノミと褐虫藻と共生することはプラスになるのです。つまり、どちらにとっても利益があるので相利共生と言えます。

反対に、カクレクマノミの胃袋からイソギンチャクの触手が発見されることもあるそうです。これはカクレクマノミがイソギンチャクを食べていることから(=イソギンチャクにとってマイナス)、寄生と言えるでしょう。

(コバンザメ)とジンベイザメ

ジンベイザメは10m以上にもなる世界最大の魚です。そんなに大きなサメに体調1mほどの魚がくっついても何も影響がないように思いますよね。ですが、コバンザメはジンベイザメの寄生虫を食べたり表皮の掃除をしたりしている(ジンベイザメにとってプラス)ので相利共生とも言えます。

ナマコと(カクレウオ)

カクレウオの中には、ナマコの腸の内容物を食べたり、腸壁を食べたりしてしまう仲間もいるそうです。そうすると、ナマコにとってはマイナスの影響なので、寄生と言えるのではないでしょうか。しかし、これはまだ不確実なことが多く、一般的にナマコとカクレウオの関係は偏利共生と言われています。

共生関係の理想

この記事では、異なる生物間の関係のうち、偏利共生に焦点を当てて解説してきました。さらに、その関係性は時間や環境などによって変わるということも理解できたのではないでしょうか。

私たちは、犬や牛など人以外の動物と同じ地球で生活していることから、人はすべての生物と共生しているという考え方もあります。そして、その関係が変動的であったとしても“寄生”になることは避けなければなりません。人だけがプラスになるのではなく、自然を作る植物からあなたの膝の上にいるペットに至るすべての生物にとって、人と暮らすことがプラスになる相利共生の関係になるべきだと思います。

イラスト使用元:いらすとや

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理科生態系生物

偏利共生とは?相利共生やよく似た寄生との違いは?農学部卒ライターが5分で徹底わかりやすく解説!

今回の記事では「偏利共生」について学習していこう。

漢字を見ればどんな状態を指す言葉なのか大体予想がつくかもしれないが、詳しく説明できるやつは少ないかもしれない。そんな共生関係のうち「偏利共生」について、そのほかの共生関係との違いや具体的にどんな動物が偏利共生の関係にあるのかを理解していこう。

高校・大学にて生物専攻の農学部卒ライター園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフること。分かりやすく面白い情報を発信していく。

共生とは

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共生とは、“共”に“生きる”という文字通り、「異なる種の生物が、お互いに影響しあって生活すること」です。

共生の4タイプ

共生の4タイプ

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異なる種からなる共生関係のうち、それぞれにプラス(利益)・マイナス(不利益)の影響があると観察できるものには名前がつけられています。以下では、共生の4タイプを理解していきましょう。

相利共生

相利共生は、「異なる種の生物どちらにもプラスの影響がある関係のこと」です。

相利共生の具体例として、アリとアブラムシの関係が挙げられます。アリは、アブラムシが排出する甘い蜜を食べたいので、アブラムシの天敵であるテントウムシがアブラムシに近づくと追い払うようにするのです。アリは甘い蜜が食べられるし、アブラムシは天敵から守られるのでどちらにもプラスの影響がある関係の相利共生と言えます。

偏利共生

偏利共生とは片利共生と同義で、「異なる種の生物のうちどちらか一方にプラスの影響があり、他方にはプラス・マイナスどちらの影響もない関係のこと」です。

この記事のテーマである偏利共生については、次の章で具体例を見ながら詳しく解説していきます。

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