今回はドラッグストアでもおなじみの尿素についてです。
『知ってるよ、ハンドクリームでしょ?』
『要は排泄物だろ?”尿”って書いてあるし』
くらいの認識しかしていないだろ。

『アンモニアと何が違うわけ?』
と思ったのやつがいればいい線行っているかもしれませんね。

ここでは学生の試験でも狙われやすく、身近に感じていないであろう諸君に向けて

・尿素とは何か
 ・尿素の原料と化学反応
 ・肝臓や腎臓との関わり
・現代での活用法
 ・化学的利用
 ・生物学的利用



の順に化学専攻だけではなく人体・生物にも詳しい
薬剤師ライター*はな*と一緒に解説していくぞ

ライター/*はな*

現薬剤師!大学の専攻は化学と生物。くすりと体のことは特にお任せ。【わかりやすく】+【たのしく】+【納得!】をテーマに、伝えるスキルアップも追及している。

尿素とは何か?アンモニアとの差は?

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尿素とは何かと問われて、スパッとことができるのは理科系の高校教師くらいです。+α学生のころに体内での動き方について習ったという方も、もしかしたらいるかもしれません。

まずはじめに化学と生物学の両方の視点から、尿素の正体を紐解いていきましょう。尿素の基本的な特徴を知っておくことで、後半のお話がスッと入ってきます。構造式も登場しますが、必要な方はここで覚えてしまいましょう。

どうして「尿素」を知らなくてはならないのかという疑問はのちほどたくさん紹介します。あなたの周りに実はあふれかえっていて重要な化合物の一つだからです。それでは、ぜひ最後までたのしんでください!

[化学の尿素とは]シアン酸アンモニウムから生成される

Urea Synthesis Woehler.png
- 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

尿素は、有機化学史上初めてとなる無機化合物×無機化合物の反応から作られました。尿素を生成する方法とはシアン酸アンモニウムを加熱するだけです。この合成方法ををヴェーラー合成と呼びます。

どんな性質を持つのでしょうか?

・化学式:H2NCONH2
・分子量:60.06
・無色・無臭の結晶
・冷涼味がある
・極めて水に溶けやすい/エタノールにやや溶けやすい/エーテル,クロロホルムには極めて溶けにくい
・水溶液はほぼ中性
・加熱すると約133℃で融解し、更に加熱すると分解してアンモニア等を生じる

出典:高杉製薬(製品Q&A)尿素についての製品情報

[生物学の尿素とは]アンモニアが解毒され排泄物として出てきた物質

突然ですが、肝臓(かんぞう)と腎臓(じんぞう)の働きについてはご存知でしょうか?

\次のページで「尿素の活用方法・使い方」を解説!/

・肝臓:害のあるものを無毒化している
・腎臓:いらないものを仕分けしている

という認識でOKです。

筋肉など体中にあるたんぱく質は、分解したり別の化合物とつなげたりすることで、必要な物質に変わります。例えば、ホルモンや酵素、抗体など。すべてが再利用できればよいのですが、分解する中で毒性のある老廃物も出来上がってしまうのです。たんぱく質からできあがってしまう有毒な代謝物とは、小学校でにおいを嗅がされることもあるでしょう。その正体は、アンモニアです。肝臓でアンモニアを尿素にする経路を尿素回路、別名オルニチン回路といい、解毒処理を行います。

できあがってしまったアンモニアは、肝臓において毒性が極めて低い「尿素」に変えられ、腎臓においてほぼ要らないものとみなされ体外へ排泄されるのです。

<知ってほしい腎臓のコト>

腎臓「ときめくか?ときめかないか?」で体の中のお片づけをしています!

腎臓に集まる老廃物や栄養素で、分子量の大きいたんぱく質以外は一度すべて捨てられます。その後、必要と思われるものだけを拾い上げる仕組みで、仕分け作業を行っているのです。

尿素の活用方法・使い方

尿素の活用方法・使い方

image by Study-Z編集部

尿素の登場する理由や特徴などはつかめたでしょうか?それではいよいよあなたとの深い深いかかわりについてみていきましょう。

その1:尿素×おくすり

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<ハンドクリーム/保湿剤>

医師の処方による保湿剤でも、一般の皆さんが気軽に購入できるハンドクリームでも。尿素配合のぬりぐすりは女性の方々は特になじみ深いのではないでしょうか。効能・効果は10%濃度と20%濃度のもので厳密には異なります。

\次のページで「その2:尿素×農業」を解説!/

・10%:保湿効果がメイン。

・20%:+角質溶解作用。カチコチに固まってしまったかかとなどにも有効。

気軽に乾燥が気になったところに使用できてさらっとした仕上がりになる印象で値段も手ごろなものが多い印象です。

その2:尿素×農業

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<肥料として利用>

”肥料をあげる”とは植物の成長を促すために栄養分を足してあげることです。肥料において欠かせない栄養素、三大栄養素があります。

ー肥料の三大栄養素ー

窒素(N)  :葉や茎を大きくする
リン酸(P) :花や実のつきをよくする
カリウム(K):根や葉、茎を丈夫にする

上記の三大栄養素のなかで、尿素の中にある元素は何でしょうか?尿素の構造式には「N」が含まれていました。ですので正解は、窒素です。

具体的には、常温で固体の結晶である尿素の粒を利用します。土に混ぜ込んで使用したり、水溶性なので水に溶かして葉っぱに直接吹き付けたりして使用することが多いです。手ごろで簡単に手に入りやすいので、ガーデニングや家庭菜園にも利用されます。

その3:尿素×スポーツ

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<瞬間冷却材>

運動部はほぼ全員お世話になったことがあるはず。叩いて冷える「瞬間冷却剤」。ねん挫したときなどに氷が手元になかったりして腫れや炎症を抑えたりしたいときに便利ですよね。ところで、内容成分の部分を読んだ方はいらっしゃいますか?

内容成分:尿素硝安(=硝酸アンモニウム)、

内側には水の入った袋と、尿素・硝安が分かれて入っており、パンチをすると中の袋が破れて水と反応させることができます。

[尿素が反応したときの反応式]
CO(NH2)2 + aq → CO(NH2)2 aq + Q(kJ)(溶解熱:単位kJ)

尿素または硝安が水と混ざるときは自身の周囲の熱を吸収して反応するエネルギーを得るのです。そのため、反応している周りの空気は冷たくなります(吸熱反応)。吸熱反応とは反対に、エネルギーを熱として発する反応もあり(発熱反応)、ホッカイロが有名です。

\次のページで「その4:尿素×医療」を解説!/

その4:尿素×医療

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<BUN/Blood Urea Nitorogen:血清尿素窒素>

BUNは血液検査の項目のひとつ。主に腎臓の機能の指標です。尿素は腎臓ではどのような扱いであったかとかというと、「体の中でほぼ要らないものとみなされ体外へ排泄」でした。そのため、血液検査でBUNが高い数値を示すと、分別機が壊れており体内に残ってしまっていると判断されるため、腎機能の低下を疑います

では低値の場合はどのようなことを疑うのか考えてみましょう。

尿素はアンモニアを解毒化した老廃物でしたので、一定数体内にないと生産工場がおかしいということを疑います。したがって、尿素を作り出している肝機能の低下を示すと考えるのが一般的な考え方ではないでしょうか。

体の中だけにとどまらず多彩な活躍を実はしていた

学校の教科書ではどのような反応をするのか、どうやって作られるのか、特徴は何かなどといったことがらを覚えることに集中しがちです。一歩視野を広げてみましょう!どこかでお世話になっていることがわかり、興味をもってもっと調べたり、勉強に励むことができたりします。

今回紹介した尿素という物質は体の中の臓器の働きを、さらには農業との関係まで教えてくれました。この記事を読んでくださったあなたはどこの部分がおもしろかったですか?自分の体の中にあるだけではなく、農業で、スポーツで、医療で役立っているとわかると、身近に感じられますよね。

最後まで読んでくださったそこのあなた!体内で実は毎日作られていただなんて・・・ということをお手洗いに行くたびに思い出す呪いをかけました!

ぜひ勉強に疲れたときには寄り道して調べてみてください。たくさん培った知識が、モコモコとつながっていって「そういうことだったのか!」「経験していて、調べてみてよかった!」という体験のきっかけになりましたら幸いです。

イラスト使用元:photo AC

" /> 尿素とは簡単にいうとコレだ!特徴や使われ方、体との関係を化学研究室卒・薬剤師がわかりやすく解説 – ページ 2 – Study-Z
体の仕組み・器官化学有機化合物理科生活と物質生物

尿素とは簡単にいうとコレだ!特徴や使われ方、体との関係を化学研究室卒・薬剤師がわかりやすく解説

・肝臓:害のあるものを無毒化している
・腎臓:いらないものを仕分けしている

という認識でOKです。

筋肉など体中にあるたんぱく質は、分解したり別の化合物とつなげたりすることで、必要な物質に変わります。例えば、ホルモンや酵素、抗体など。すべてが再利用できればよいのですが、分解する中で毒性のある老廃物も出来上がってしまうのです。たんぱく質からできあがってしまう有毒な代謝物とは、小学校でにおいを嗅がされることもあるでしょう。その正体は、アンモニアです。肝臓でアンモニアを尿素にする経路を尿素回路、別名オルニチン回路といい、解毒処理を行います。

できあがってしまったアンモニアは、肝臓において毒性が極めて低い「尿素」に変えられ、腎臓においてほぼ要らないものとみなされ体外へ排泄されるのです。

<知ってほしい腎臓のコト>

腎臓「ときめくか?ときめかないか?」で体の中のお片づけをしています!

腎臓に集まる老廃物や栄養素で、分子量の大きいたんぱく質以外は一度すべて捨てられます。その後、必要と思われるものだけを拾い上げる仕組みで、仕分け作業を行っているのです。

尿素の活用方法・使い方

尿素の活用方法・使い方

image by Study-Z編集部

尿素の登場する理由や特徴などはつかめたでしょうか?それではいよいよあなたとの深い深いかかわりについてみていきましょう。

その1:尿素×おくすり

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<ハンドクリーム/保湿剤>

医師の処方による保湿剤でも、一般の皆さんが気軽に購入できるハンドクリームでも。尿素配合のぬりぐすりは女性の方々は特になじみ深いのではないでしょうか。効能・効果は10%濃度と20%濃度のもので厳密には異なります。

\次のページで「その2:尿素×農業」を解説!/

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