「」今回はノーベル化学賞を唯一2回受賞した天才「フレデリック・サンガー」について見ていこう。彼は今日の生物学の発展に多大なる影響を残した偉人だ!この記事ではフレデリック・サンガーについて、現在もサンガーが発明した技術にお世話になりながら研究者として活動しているライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で生物学を学び、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。常日頃からサンガー先生の発見した技術にお世話になっている。

フレデリック・サンガーって何をした人?その業績をザックリ解説!

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フレデリック・サンガー(1918-2013年)は生涯に2度ノーベル化学賞を受賞した天才です。

1958年に1度目のノーベル化学賞を受賞します。この時、サンガーはタンパク質のアミノ酸配列を決定させる方法を見出し、この手法を用いてタンパク質がアミノ酸の連結したものであること確定させた功績によるものです。

そして、1980年に2回目のノーベル化学賞を受賞します。この時はジデオキシヌクレオチドを用いてDNAの塩基配列を決定する方法(ジデオキシ法、サンガー法とも呼ばれます)を開発したことが評価されました。

また、サンガーはRNAの配列決定法も開発しています。この研究もノーベル賞級の業績であり、史上初のノーベル賞3度受賞に最も近い人物です。

フレデリック・サンガーの一生

フレデリック・サンガーはイギリスのレンドクームに生まれです。

父親は医者だったので医学の道に進むものと期待されていましたが、成長するにつれ、自然や科学にとても興味を持ち、ケンブリッジ大学に進学し研究を開始しました。サンガーは2013年にその生涯を閉じるまでタンパク質のアミノ酸配列の解析、DNAやRNAのヌクレオチド配列の解読に生涯を捧げ、その成果は今日の研究の様々な場面で利用されています。このことから「ゲノミクスの父」とも呼ばれているのです。

フレデリック・サンガーが受賞したノーベル賞について

フレデリック・サンガーは2度ノーベル化学賞を受賞しています。1度目は1958年です。この時はタンパク質のアミノ酸配列を決定させる方法を確立し、この手法を用いてインスリンの一次構造の特定に初めて成功し、タンパク質がいくつものアミノ酸が連結したものであることを証明しました。

2回目の受賞は1980年です。この時はDNAの塩基配列を決定する方法を開発したことが評価されました。

タンパク質の配列決定法を発明~1回目のノーベル賞

サンガーの1回目のノーベル賞の受賞はタンパク質のアミノ酸配列決定法を確立したことに対してです。

アミノ酸の末端アミノ基にジニトロフェニル基を化学反応により結合させると黄色く着色する性質を利用して、タンパク質のアミノ酸配列を決定する方法を確立しました。この手法用いて、彼自身はインスリンの一次構造の特定に初めて成功し、タンパク質がいくつものアミノ酸が連結したものであることを証明したのです。

DNAの塩基配列決定法の発明~2回目のノーベル賞

サンガーの2回目のノーベル賞の受賞はDNAの塩基配列決定法の発明に対してです。

サンガーはDNAの合成反応がジデオキシヌクレオチドを取り込むことで停止することを利用し、DNAの塩基配列を決定する方法を開発しました。この業績が評価され、ウォルター・ギルバート、ポール・バーグと共にノーベル化学賞を受賞したのです。

\次のページで「フレデリック・サンガーの発明について詳しく解説」を解説!/

フレデリック・サンガーの発明について詳しく解説

サンガーはタンパク質とDNAの配列を決定する方法を発明しました。タンパク質、DNAの配列を知ることは生命の機能をすることで非常に重要なことです。

生物の体を構成するRNA、DNA、タンパク質について簡単に解説

生物の体を構成するRNA、DNA、タンパク質について簡単に解説

image by Study-Z編集部

生体の体はDNAが設計図です。タンパク質を合成するためにDNA を鋳型(いがた)にして同じ塩基配列を持ったRNA を合成し、RNA の情報をもとにアミノ酸を作ります。アミノ酸が連なってできたものがタンパク質です。 この「DNA → RNA →タンパク質」という情報の流れはすべての生物に共通のメカニズムであり、生命活動の根幹になります。

タンパク質のアミノ酸配列決定法について解説

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By Sponk (talk) - Own work, Public Domain, Link

サンガーの発明したタンパク質の配列を解析する方法はその名前にちなんでサンガー法やジニトロフェニル法、DNP法と呼ばれます

タンパク質に2,4-ジニトロ-1-フルオロベンゼン (DNFB) を反応させるとN末端アミノ酸のアミノ基のみがジニトロフェニル化 (Dnp化) され橙黄色を示すのですが、これが目印になるのです。その後、加水分化してアミノ酸同士の結合(ぺプチド結合)を切断し、異なる長さの目印のついたアミノ酸をクロマトグラフィーによって分離し、順番に分析することでもとのタンパク質の配列を推定します。

サンガーは10年以上の歳月をかけて、インスリンのタンパク質配列(一次構造)を解析し、この成果によってタンパク質がアミノ酸が連なってできたものだと証明したのです。

DNAの塩基配列決定法について解説

DNAの塩基配列決定法について解説

image by Study-Z編集部

DNAは4種類の核酸塩基が連なってできたものです。この4種類の塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)がどのように並んでいるかを決定する方法をサンガー法あるいはジデオキシ法と呼びます。

通常、DNAの合成反応はdNTP(デオキシヌクレオチド;dATP, dGTP, dCTP, dTTP)を取り込み伸展していきますが、この反応の際に4種類の蛍光色素で標識したジデオキシヌクレオチド(ニセモノ)を加えておくと、これを取り込んだところでDNA合成が止まるのです。ランダムに取り込まれたジデオキシヌクレオチドの蛍光色素の種類とDNA断片の長さをキャピラリー電気泳動装置で検出することで塩基配列を決定します。

\次のページで「フレデリック・サンガーの研究成果の今日での実用例」を解説!/

フレデリック・サンガーの研究成果の今日での実用例

サンガーの研究成果は今日でも幅広く利用されています。

実用例1:遺伝子検査で使用される

image by iStockphoto

サンガーの考案したDNAの配列を決定する方法(ジデオキシ法)は遺伝子検査で使用されています。例えば、疾患に関連した遺伝子検査ではある疾患に関連した遺伝子に着目し、その遺伝子のDNA配列に変異がないかを調べるのですが、その際にダイデオキシ法を使用するのです。最近、流行している新型コロナウイルスの変異型の判定にも使われています。

このようにターゲットとする遺伝子が少数の場合、迅速で費用対効果が高いジデオキシ法が使用されいるのです。最近では次世代シーケンサーと呼ばれる、数百万から数十億もの膨大なシーケンシング反応を同時並行して実行することで配列決定の処理量を飛躍的に増大させた技術が開発されました。これはヒトの全ゲノムを解析する際に使われますが、時間がかかり、費用が高額のためあまり一般的ではありません。

実用例2:研究で使用される

研究の場面でも幅広くジデオキシ法が使用されています。使用方法は遺伝子検査の場合と同様です。生物学系の研究である特定の遺伝子の機能について研究する場合、その遺伝子自体を調べたり、自分たちで遺伝子を作ったりするのですが、その際に遺伝子の配列に変異がないかをチェックする際にジデオキシ法を使用しています。今日の研究の発展にはサンガーのジデオキシ法は欠かせないのです

フレデリック・サンガーの名言

サンガーは1988年に「Sequences, sequences, and sequences.」というタイトルで自著の総説 ( Annual Review of Biochemistry, Vol. 57:1-29,July 1988)を発表しています。日本語訳すると「配列、配列、そして配列」というタイトルです。サンガーは、私たち生き物にとってアミノ酸やDNAの「配列」は大事であることを主張しています。

今日の研究を支える「ゲノミクスの父」フレデリック・サンガー

フレデリック・サンガーはタンパク質とDNA配列を決定する方法を見出して、2度ノーベル化学賞を受賞した天才です。その研究成果は今もなお研究の世界では利用され、多くの研究の礎となっていることが、サンガーが「ゲノミクスの父」と呼ばれる理由なのですね。あなたの周りにある遺伝子と名の付くもののの多くはサンガー先生の発明が関与しているかもしれないですよ。

イラスト使用元:いらすとや

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「フレデリック・サンガー」ノーベル化学賞を唯一2回受賞した天才について現役の研究者がわかりやすく解説

「」今回はノーベル化学賞を唯一2回受賞した天才「フレデリック・サンガー」について見ていこう。彼は今日の生物学の発展に多大なる影響を残した偉人だ!この記事ではフレデリック・サンガーについて、現在もサンガーが発明した技術にお世話になりながら研究者として活動しているライターポスドクランナーと一緒に解説していきます。

ライター/ポスドクランナー

大学で生物学を学び、現在も研究者として活動を続け多くの研究成果を出すべく日々奮闘している。常日頃からサンガー先生の発見した技術にお世話になっている。

フレデリック・サンガーって何をした人?その業績をザックリ解説!

Frederick Sanger2.jpg
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フレデリック・サンガー(1918-2013年)は生涯に2度ノーベル化学賞を受賞した天才です。

1958年に1度目のノーベル化学賞を受賞します。この時、サンガーはタンパク質のアミノ酸配列を決定させる方法を見出し、この手法を用いてタンパク質がアミノ酸の連結したものであること確定させた功績によるものです。

そして、1980年に2回目のノーベル化学賞を受賞します。この時はジデオキシヌクレオチドを用いてDNAの塩基配列を決定する方法(ジデオキシ法、サンガー法とも呼ばれます)を開発したことが評価されました。

また、サンガーはRNAの配列決定法も開発しています。この研究もノーベル賞級の業績であり、史上初のノーベル賞3度受賞に最も近い人物です。

フレデリック・サンガーの一生

フレデリック・サンガーはイギリスのレンドクームに生まれです。

父親は医者だったので医学の道に進むものと期待されていましたが、成長するにつれ、自然や科学にとても興味を持ち、ケンブリッジ大学に進学し研究を開始しました。サンガーは2013年にその生涯を閉じるまでタンパク質のアミノ酸配列の解析、DNAやRNAのヌクレオチド配列の解読に生涯を捧げ、その成果は今日の研究の様々な場面で利用されています。このことから「ゲノミクスの父」とも呼ばれているのです。

フレデリック・サンガーが受賞したノーベル賞について

フレデリック・サンガーは2度ノーベル化学賞を受賞しています。1度目は1958年です。この時はタンパク質のアミノ酸配列を決定させる方法を確立し、この手法を用いてインスリンの一次構造の特定に初めて成功し、タンパク質がいくつものアミノ酸が連結したものであることを証明しました。

2回目の受賞は1980年です。この時はDNAの塩基配列を決定する方法を開発したことが評価されました。

タンパク質の配列決定法を発明~1回目のノーベル賞

サンガーの1回目のノーベル賞の受賞はタンパク質のアミノ酸配列決定法を確立したことに対してです。

アミノ酸の末端アミノ基にジニトロフェニル基を化学反応により結合させると黄色く着色する性質を利用して、タンパク質のアミノ酸配列を決定する方法を確立しました。この手法用いて、彼自身はインスリンの一次構造の特定に初めて成功し、タンパク質がいくつものアミノ酸が連結したものであることを証明したのです。

DNAの塩基配列決定法の発明~2回目のノーベル賞

サンガーの2回目のノーベル賞の受賞はDNAの塩基配列決定法の発明に対してです。

サンガーはDNAの合成反応がジデオキシヌクレオチドを取り込むことで停止することを利用し、DNAの塩基配列を決定する方法を開発しました。この業績が評価され、ウォルター・ギルバート、ポール・バーグと共にノーベル化学賞を受賞したのです。

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