今回は「雄性先熟」をキーワードに解説していこう。不思議なことに、生き物の中には”オスからメスに”、あるいは”メスからオスへ”と性別を変えられる生物が存在します。中にはオスとメス、どちらの特徴も持ち合わせた動物もいる。このように生涯で性別を変えることを性転換というぞ。中でも、オスからメスに変わるものを雄性先熟、メスからオスに変わるものを雌性先熟と呼ぶ。陸上には性転換を行う生物はあまりいないが、海の中には性転換する生き物が多くいる。今回は海の生き物たちが性転換する理由や、しくみについて学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

雄性先熟はオスからメスに性転換

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雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)とは生物がオスからメスに変化すること。クロダイやクマノミなどは幼魚のうちはすべてオスですが、成長するとメスになります。カキやフナクイムシ、フネガイなども同じような成長の仕方をするんですよ。

なぜこのように性別を変化させるのかというと、“繁殖の方法”“身体の大きさ”に関係があるんです。

一夫一妻制をとる生き物に多い

オスからメスに変化する雄性先熟は、一夫一妻制の繁殖方法をとる魚に多く見られます。繁殖の際、メスは産卵をしますよね。メスは身体が大きい方が産卵能力が高いため、十分成長していなければなりません

そのため、生まれたばかりでまだ身体が小さい時期はオスとして生活し、大人になって身体が十分成長したらメスになるのです。メスになる際は雌性器官は退化し、卵巣が発達していきます。成長段階に合わせて性別を変えることで、効率よく子孫を残せるというわけですね。ここからは雄性先熟の例をみていきましょう。

クロダイ:身体の大きさによって性分化する

クロダイ幼魚のうちはすべてオスです。生まれて2年ほどたつと体長は15~25センチほどになり、両性型といってオスの生殖器官もメスの生殖器官も持ち合わせた体(雌雄同体)になります。

体長が25センチを超える頃になると、性の分化が始まり、完全にオスになるのかメスになるのかを決定できるんですよ。自分の身体の大きさに合わせて性別を選んでいるなんて驚きですね。

クマノミ:集団で最も大きいものだけがメスになれる!

オレンジの模様がキュートなクマノミも、身体が小さい子どものうちはみんなオスなんですよ。雄性先熟の例としては大変有名なんです。クマノミは集団の中で最も大きい個体だけが、メスになることができるんですよ。

ここで興味深いのが、メスが死ぬと2番目に大きかったオスがメスに性転換してしまうこと。そして、3番目のオスと繁殖を行います。このように身体の大きさが上位のもの同士で繁殖することで、より強い子孫を残していこうとする賢い戦略なんですね。

雌性先熟はメスからオスに性転換

一方で、雌性先熟(しせいせんじゅく)とはメスからオスに身体が変化すること。始めのうちは卵巣が発達していますが、成長するにつれて、のちに精巣が発達してくるようになります。

この場合も雄性先熟と同じように、“繁殖の方法”と“身体の大きさ”が関係しているんですよ。

\次のページで「一夫多妻制をとる生き物に多い」を解説!/

一夫多妻制をとる生き物に多い

雌性先熟では、一夫多妻制をとる生き物で見られます。一夫多妻制とは1匹のオスが縄張りをもち、複数のメスと繁殖を行う方法です。

縄張りが広ければ広いほど繁殖相手や食料を多く得られるため、オスは縄張りを巡って激しく争います。しかし、身体の小さいオスは争いに勝てずに、縄張りを持てません。そのため、身体が小さいうちはメスとして繁殖を行い、縄張りをもてるくらいの大きさになったらオスに性転換をするのです。

ベラ科、ブダイ科、ハタ科、モンガラカワハギ科、ハゼ科などのサンゴ礁に暮らす魚で多く見られます。

image by Study-Z編集部

魚たちが雄性先熟や雌性先熟といった性転換をする理由は、自分の身体の大きさや繁殖方法に応じて、子孫を効率よく残していくためだったんですね。両者とも、身体の小さいうちでも自分の子孫を残せるように、オスもしくはメスでいたのです。そして成長して身体が大きくなれば、さらに効率よく子孫を残せる性別になるんですね。

海の生物が性転換する理由は生存競争が激しいため!

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陸上生活する哺乳類の中には性転換をする生き物はいません。それなのに、海には性転換をする生き物が250種類以上も存在しています。どうして海にはこんなにおおくの性転換する生き物が暮らしているのでしょうか?

それはおそらく海の生存競争が激しいためだと考えられています。海は生命の源です。私たちの祖先も何億年も前に海から生まれました。海では今日も生き物が誕生しており、海は生き物の多様性に富んだ環境といえます。

しかし海の生物たちにとっては、ライバルが増えること。そのため、自分たちの種を受け継いでいくためにはより多くの子孫を産み、残していかなければなりません。子どもの数を増やす手段として魚たちは性転換を行っているのです。

\次のページで「動物だけじゃない!植物の性転換とは?」を解説!/

動物だけじゃない!植物の性転換とは?

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性転換をするのは動物だけではありません。植物にだって、雄しべと雌しべといって性別を表す性表現というものがあるんですよ。植物における性転換は、受粉を助ける媒介物が何であるかによって雄性先熟なのか、雌性先熟なのかが分かれるんです。

雄性先熟:虫媒花に多い

雄性先熟の植物はヤツデやクサギなど虫媒花という植物に見られます。虫媒花とは、昆虫によって花粉が雌しべの柱頭に運ばれることで受粉する花のことです。

種子植物の雄性先熟では、花を咲かせている時期に、オスからメスへと性表現が変わります。開花したばかりの頃は雄しべだけが成熟し、“花粉を放出している”のですが、時間がたつと今度は雌しべが成熟し“花粉を受け取る”ようになるんです。ヤツデなどでは、性表現が変わる時期には雄しべも雌しべもない中性期が存在するんですよ。

雌性先熟:風媒花に多い

雌性先熟では、雄性先熟とは反対に、先に雌しべが成熟し、後から雄しべが成熟するようになります。イネ科、カヤツリグサ科などでよく見られますね。風によって花粉を運び、受粉させる風媒花という種類に多く見られるんですよ。

植物は近親交配を避けるために性転換する!

ところで植物が性転換を行う理由とは何でしょうか?答えは近親交配を避けるため

花は蜜や目立つ花びらをつけて虫をひきつけたり、風にのせて花粉を運びますよね?これは他の花と受粉することで、新たな遺伝子をもった子孫を残すためなんです。これを他家受粉(たかじゅふん)といいます。

もし、自分の花粉が自分の柱頭についてしまったら、自家受粉が起きてしまいます。もし自家受粉をしてしまうと、自分と同じ遺伝子をもった子孫ができてしまいますよね。それを防ぐために雄しべと雌しべが作られる時期をずらしているんです。

一般的に、遺伝子は多様性であることが有利です。遺伝子がどれも同じであると、病気に対する耐性がみんな同じになってしまうため、病気が蔓延しやすくなり絶滅の可能性が高くなります。また、近親交配を続けていると遺伝子の欠損などにより変異株が生じやすいです。そのため、生物にとって遺伝子の多様性を保つためにも他家受粉が望まれるのですね。

\次のページで「性転換は生物が子孫を残すための戦略!」を解説!/

性転換は生物が子孫を残すための戦略!

ここまで読んでいただきありがとうございました。今回は性転換をする生き物について、雄性先熟や雌性先熟の例をあげながら解説してきました。オスがメスに変わるなんて、私たちにとっては考えられないことですが、海の生き物たちにとっては、生存競争の激しい環境で自分の子孫を残していくために大切な体の機能だったんですね。オスとメス、それぞれの性質を生かした、賢い戦略だったということがわかりましたね。また、植物においても、性転換は遺伝子の多様性を保つために行われます。生物の知識をもっていると水族館や森に遊びに行ったときの価値が大きく変わりますよ。ぜひ、今回初めて知ったことを頭の片隅に入れておいてくださいね。

画像使用元:いらすとや

" /> オスからメスに変わる?!雄性先熟ってなんだ?性転換の理由について獣医学部卒ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
体の仕組み・器官理科生き物・植物生物

オスからメスに変わる?!雄性先熟ってなんだ?性転換の理由について獣医学部卒ライターがわかりやすく解説!

今回は「雄性先熟」をキーワードに解説していこう。不思議なことに、生き物の中には”オスからメスに”、あるいは”メスからオスへ”と性別を変えられる生物が存在します。中にはオスとメス、どちらの特徴も持ち合わせた動物もいる。このように生涯で性別を変えることを性転換というぞ。中でも、オスからメスに変わるものを雄性先熟、メスからオスに変わるものを雌性先熟と呼ぶ。陸上には性転換を行う生物はあまりいないが、海の中には性転換する生き物が多くいる。今回は海の生き物たちが性転換する理由や、しくみについて学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

雄性先熟はオスからメスに性転換

image by iStockphoto

雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)とは生物がオスからメスに変化すること。クロダイやクマノミなどは幼魚のうちはすべてオスですが、成長するとメスになります。カキやフナクイムシ、フネガイなども同じような成長の仕方をするんですよ。

なぜこのように性別を変化させるのかというと、“繁殖の方法”“身体の大きさ”に関係があるんです。

一夫一妻制をとる生き物に多い

オスからメスに変化する雄性先熟は、一夫一妻制の繁殖方法をとる魚に多く見られます。繁殖の際、メスは産卵をしますよね。メスは身体が大きい方が産卵能力が高いため、十分成長していなければなりません

そのため、生まれたばかりでまだ身体が小さい時期はオスとして生活し、大人になって身体が十分成長したらメスになるのです。メスになる際は雌性器官は退化し、卵巣が発達していきます。成長段階に合わせて性別を変えることで、効率よく子孫を残せるというわけですね。ここからは雄性先熟の例をみていきましょう。

クロダイ:身体の大きさによって性分化する

クロダイ幼魚のうちはすべてオスです。生まれて2年ほどたつと体長は15~25センチほどになり、両性型といってオスの生殖器官もメスの生殖器官も持ち合わせた体(雌雄同体)になります。

体長が25センチを超える頃になると、性の分化が始まり、完全にオスになるのかメスになるのかを決定できるんですよ。自分の身体の大きさに合わせて性別を選んでいるなんて驚きですね。

クマノミ:集団で最も大きいものだけがメスになれる!

オレンジの模様がキュートなクマノミも、身体が小さい子どものうちはみんなオスなんですよ。雄性先熟の例としては大変有名なんです。クマノミは集団の中で最も大きい個体だけが、メスになることができるんですよ。

ここで興味深いのが、メスが死ぬと2番目に大きかったオスがメスに性転換してしまうこと。そして、3番目のオスと繁殖を行います。このように身体の大きさが上位のもの同士で繁殖することで、より強い子孫を残していこうとする賢い戦略なんですね。

雌性先熟はメスからオスに性転換

一方で、雌性先熟(しせいせんじゅく)とはメスからオスに身体が変化すること。始めのうちは卵巣が発達していますが、成長するにつれて、のちに精巣が発達してくるようになります。

この場合も雄性先熟と同じように、“繁殖の方法”と“身体の大きさ”が関係しているんですよ。

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