この記事では「顎振り三年」について解説する。

端的に言えば顎振り三年の意味は「何事も身につけるには長い年月を要する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で7年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「顎振り三年」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な7年目のライター、eastflower。「顎振り三年」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「顎振り三年」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顎振り三年」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「顎振り三年」の意味は?

まずは、「顎振り三年」の辞書の意味を見ていきましょう。

1. 尺八を習得する場合、顎を振ることだけで三年もかかるほど困難なこと。転じて、何事も身につくようになるまで習うには年月を要することにもいう。

出典: 日本国語大辞典(精選版)「顎振り三年」

「あご振り三年」(あごふりさんねん)とは、辞書に記載されているとおり、「尺八」(しゃくはち)を習得するには、顎(あご)をうまく振れるようになるまでに3年かかるという意味になります。「尺八」とは、竹製の縦笛で、歌口(うたぐち)と呼ばれる部分に息を吹きかけて音を出すという単純な構造の楽器ですね。「尺八」には、表に4つと裏に一つの穴が空いていて音色を変えることができ、吹きかける息や手で抑える穴の大きさを調節することで綺麗なメロディーが演奏できるわけです。「尺八」の長さは、「一尺八寸」で、現在の単位に直すと約50cm。「尺八」の名前は、この「一尺八寸」の真ん中の二文字をとって名付けられたと言われています。尺八の構造は単純ですが、「顎振り三年」と言われるとおり、習得するには、かなりの時間がかかると言われているのです。

「顎振り三年」の語源は?

次に「顎振り三年」の語源を確認しておきましょう。
「顎振り三年」という慣用句がいつごろから日本で使われるようになったのかは確かではありませんが、「尺八」のルーツは「中国の唐」の時代にあると言われています。「唐」(とう)は西暦618年から907年まで続く中国の王朝ですが、630年に初めて遣唐使(けんとうし)と呼ばれる日本の派遣団が唐に派遣され、200年以上の間に20回の遣唐使が派遣されました。その行き来の中で尺八が日本に持ち込まれたと言われています。ですから、「顎振り三年」という言葉ができたのは、西暦600年以降であるのは間違いないようです。

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「顎振り三年」の使い方・例文

顎振り三年」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 「顎振り三年って尺八を演奏するのにきちんとあごを振れるようになるまでに3年かかるという意味なんだって」
顎振り三年と同じような尺八についての慣用句に『首振り三年ころ八年』という慣用句もあるんだ。首を振って音をうまく加減できるようになるまでに三年、指の動きをうまく調整してコロコロといういい音を出すまでには8年が必要だという意味なんだ」

2.「顎振り三年って、顎ばかり3年も振っていたら首を痛めちゃうんじゃない?」
「そうじゃないよ。尺八をうまく吹く動作の中にうまく顎を振る技術が必要なんだ。そのスキルをつけるのに三年かかるという意味さ。」

「顎振り三年」という言葉を初めて聞いた人にとっては「何それ?」という反応になってしまいますよね。「尺八」についての慣用句だとわかってこそ、意味を理解できる表現ですね。

「顎振り三年」の類義語は?違いは?

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それでは、「顎振り三年」の類義語を見ていきましょう。

「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」

「顎振り三年」は、尺八を習得するためには、長い年月をかける修行が必要であるという意味でしたが、習得に長い年月がかかるものは、音楽に限ったことではありません。例えば、うなぎの蒲焼(かばやき)の焼き方を習得するのにも長い時間がかかるのです。それを表した格言に「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」というのがあります。

「串打ち」とは、うなぎの身の真ん中に串を通す過程で、うなぎの身は固く、やってみると想像以上に難しいと言われているのです。「裂き」とは、まな板に固定した活きたうなぎの頭を目打ち(めうち)で固定して捌(さば)いていく過程のことをいうのですが、8年もかかるのですね。

「焼き」とは、素焼きしたうなぎをタレにつけて焼くのを繰り返すのです。団扇(うちわ)で風を送りながら炭火の火力を調整して完璧に焼き上げるのには、一生かかると言われているのですね。「尺八」や「うなぎ」に限らず、どんなことでもきちんとやれるようになるには、やはり3年やそれ以上の継続の努力が要求されるわけです。

\次のページで「「顎振り三年」の対義語は?」を解説!/

「顎振り三年」の対義語は?

次に「顎振り三年」の対義語を見ていきましょう。

「朝飯前」

「顎振り三年」とは、「尺八」を吹くのにもきちんと習得するには非常に困難で、長い年月を要するということでした。そこから何事も身につくようになるまでには長い時間を要する例として使われているのです。ですから、「顎振り三年」の対義語とは、「困難が伴わない簡単なことで、しかも短い時間で完成できる」という意味を持つ言葉になりますよね。

そんな言葉のひとつに「朝飯前」(あさめしまえ)があります。「朝飯前」とは、時間の観点から言えば、「朝ごはんを食べる前」という意味になりますが、多くの場合、「朝ごはんの前のお腹の空いたときでも、できるような簡単でたやすいこと」の意味で使われる言葉です。

「顎振り三年」の英訳は?

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次に「顎振り三年」の英訳を見ていきましょう。

「There is no improvement without long time and continuous efforts to master a thing」

「顎振り三年」の類義語のひとつとして、「石の上にも3年」(いしのうえにもさんねん)もあり、英訳として「perseverance prevails」などが紹介されています。「perseverance prevails」の「perseveranc(p`ɚːsəví(ə)rəns)とは「忍耐力」や「我慢強いさま」という意味で、「prevails」は、「prevail」(prɪvéɪl)の三人称単数形であり、「打ち勝つ」や「まさる」という意味で使われているのです。「perseverance prevails」は全体で「忍耐はまさるものだ」になるのですが、言われた方も「どうして忍耐力があれば打ち勝てるの?」と一瞬、考えなければならないかもしれませんね。

「顎振り三年」とは、「ひとつのことを成し遂げるには、時間とたゆまぬ努力が必要だ」という教訓ですから、「There is no improvement without long time and continuous efforts to master a thing」と訳してみたのですが、いかがでしょうか? 直訳すると「ひとつを習得するためには、長い時間とたゆまぬ努力なしに向上はない」となりますが、おそらく言いたいことは相手に理解してもらえると思います。

「顎振り三年」を使いこなそう

この記事では、「顎振り三年」の意味や使い方を見てきました。「顎振り三年」とは、「何事も習得するには長い年月を要する」という意味でしたね。同じような意味を持つ慣用句やことわざはたくさんあり、先人たちが言うとおり、たゆまぬ努力の継続はことを成し遂げるために必要なことです。しかし、人には向き不向きもあり、やってる本人には向いているかどうかがわからないこともあります。やはり、自分の好きなこと興味のあることに時間と力を注ぐことが正しいのかもしれませんね。

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【慣用句】「顎振り三年」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「顎振り三年」について解説する。

端的に言えば顎振り三年の意味は「何事も身につけるには長い年月を要する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で7年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「顎振り三年」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な7年目のライター、eastflower。「顎振り三年」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「顎振り三年」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「顎振り三年」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「顎振り三年」の意味は?

まずは、「顎振り三年」の辞書の意味を見ていきましょう。

1. 尺八を習得する場合、顎を振ることだけで三年もかかるほど困難なこと。転じて、何事も身につくようになるまで習うには年月を要することにもいう。

出典: 日本国語大辞典(精選版)「顎振り三年」

「あご振り三年」(あごふりさんねん)とは、辞書に記載されているとおり、「尺八」(しゃくはち)を習得するには、顎(あご)をうまく振れるようになるまでに3年かかるという意味になります。「尺八」とは、竹製の縦笛で、歌口(うたぐち)と呼ばれる部分に息を吹きかけて音を出すという単純な構造の楽器ですね。「尺八」には、表に4つと裏に一つの穴が空いていて音色を変えることができ、吹きかける息や手で抑える穴の大きさを調節することで綺麗なメロディーが演奏できるわけです。「尺八」の長さは、「一尺八寸」で、現在の単位に直すと約50cm。「尺八」の名前は、この「一尺八寸」の真ん中の二文字をとって名付けられたと言われています。尺八の構造は単純ですが、「顎振り三年」と言われるとおり、習得するには、かなりの時間がかかると言われているのです。

「顎振り三年」の語源は?

次に「顎振り三年」の語源を確認しておきましょう。
「顎振り三年」という慣用句がいつごろから日本で使われるようになったのかは確かではありませんが、「尺八」のルーツは「中国の唐」の時代にあると言われています。「唐」(とう)は西暦618年から907年まで続く中国の王朝ですが、630年に初めて遣唐使(けんとうし)と呼ばれる日本の派遣団が唐に派遣され、200年以上の間に20回の遣唐使が派遣されました。その行き来の中で尺八が日本に持ち込まれたと言われています。ですから、「顎振り三年」という言葉ができたのは、西暦600年以降であるのは間違いないようです。

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