特定化学物質と有機溶剤という分類を聞いたことはあるか?それぞれ安全に取り扱うための規則があるんです。化学物質は災害をもたらすだけでなく、人体に癌などの健康被害を及ぼすこともあるから、取り扱いは本当に気をつけなくてはならなのです。
メーカー勤務時代には有機則に該当するような化学物質を取り扱っていたライター小春と一緒に解説していきます。

ライター/小春(KOHARU)

見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。メーカーでは日々、有機溶剤を使って実験を行っていた。

有機溶剤と特定化学物質の違いは規制している物質の違い

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有機則や特化則という言葉を聞いたことがありますか?それぞれ略称で、有機則の正式名称は有機溶剤中毒予防規則、特化則は特定化学物質障害予防規則です。これらは化学薬品を扱う人なら必ず知っておかなくてはならない規則と言われています。火災などの災害を起こさないために大切な規則もありますが、有機則と特化則は自分自身や労働者に健康被害を起こさないために必要です。

どちらも労働安全衛生法に基づいている

どちらも労働安全衛生法に基づいている

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労働安全衛生法の第22条や第27条で事業者の講ずべき措置等が定められているのはご存知ですか?

これらの法律に基づいて、具体的な規制として「有機溶剤中毒予防規則」「特定化学物質障害予防規則」「鉛中毒予防規則」「四アルキル鉛中毒予防規則」「石綿障害予防規則」の5つの特別規則が定められています。この有機溶剤中毒予防規則がいわゆる有機則、特定化学物質障害予防規則がいわゆる特化則と呼ばれるものです。

これら5つの特別規則は、特に危険・有害性の高い物質・作業を特定し、それぞれ製造・取扱いにあたって遵守すべき事項を個別具体的に規定しています。

有機則と特化則は定められている法律は全く同じ「労働安全衛生法」で、目的も「労働者の健康を守るため」ではありますが、指定している化学物質が違うために製造・取扱いにあたって遵守すべき事項が違うため違う規則となっているのです。

1 有機溶剤中毒予防規則って?カンタンに解説

有機溶剤中毒予防規則は、有機溶剤を吸入や接触することによる健康被害を防ぐために、対象となる54種類の有機溶剤の取扱い方法などを規制した法律です。

毒性と蒸発速度をもとにそれぞれの有機溶剤の有害度を決定し、有害度の高いものが第1種有機溶剤に、中程度のものが第2種有機溶剤に、低度のものが第3種有機溶剤に区分されています。

有機溶剤は常温で液体ですが、揮発性が高いものが多いため蒸気となって作業者の呼吸を通して体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質もあることから皮膚からも吸収されますので、使用には特に注意が必要です。

2 特定化学物質障害予防規則って?カンタンに解説

特定化学物質障害予防規則は、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するために定められた規則です。対象となる物質は、障害を引き起こす暴露量や管理の程度によって第1類から第3類に分類されています。つまり特化則で重要なのは含有濃度と管理濃度です。

有機則と特化則は定められている法律と目的が「労働者の健康を守るため」で同じですが、指定している化学物質が違うために違う規則となっているのです。

なお、特別有機溶剤の単一成分が1%を超えるものは「特化則」が適用され、有機溶剤の含有率が5%を超える場合は「有機則」が適用されます。有機溶剤の種類によっては、有機則と特化則の両方が適用される場合もあるのです。詳しくは次章以降で説明していきますね。

有機溶剤について深掘り!

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先ほどざっくり説明した有機溶剤とその取り扱いについて、深掘りしていきましょう。

有機溶剤中毒予防規則とは

そもそも有機溶剤とは何か、まずは説明しましょう。有機溶剤は油・ロウ・樹脂・ゴムなどの水に溶けないものを溶かすことができる有機化合物の総称です。様々な場面で溶剤として塗装、洗浄、印刷などの作業に幅広く使用されています。身近なものでは石油・灯油・シンナー・接着剤が有機溶剤です。工業的に使用されているものだけでも約500種類が知られています。そのうち有機溶剤中毒予防規則の適用を受けるものは現在54種のみです。

有機溶剤は、呼吸するだけで体内に取り込んだり、付着した皮膚から体内に吸収してしまう恐れがあります。有機溶剤を使用していると無意識に体内に取り込んでしまう可能性が高いので、労働者の健康を守るために有機溶剤中毒予防規則が定められているのです。

起こりうる健康被害には、めまい、吐き気、痙攣などの症状があります。高濃度を吸うと急性中毒に、低濃度でも長い期間吸うことで慢性中毒を引き起こすことがあるほか。種類によってはがんの原因にもなるので取り扱いには十分気をつけてください。

\次のページで「第1種、第2種、第3種の違いとは?」を解説!/

第1種、第2種、第3種の違いとは?

有機溶剤の毒性に応じて、有害性の高いものから第1種、第2種、第3種と分類しています。有機溶剤の区分に応じて、必要換気量など対策が異なりますのでご注意ください。

第1種
クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン、二塩化アセチレン、四塩化アセチレン 、トリクロルエチレン、二硫化炭素

第2種
アセトン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、オルトージクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸ノルマル-ブチル、酢酸ノルマル-プロピル、酢酸ノルマル-ペンチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン 、1,4-ジオキサン、二塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミド、スチレン、テトラクロルエチレン、テトラヒドロフラン、1,1,1-トリクロルエタン 、トルエン、ノルマルヘキサン、1-ブタノール、2-ブタノール、メタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル-ノルマル-ブチルケトン

第3種
ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリット

作業する際に気をつけるべきポイント

まず、屋内作業場などで有機溶剤業務を行うときは、有機溶剤作業主任者を選任しなくてはなりません。作業場の排気・換気装置の点検を行うほか、労働者が正しく保護具を使用しているか、有機溶剤が正しく保管されているかなど労働者の指揮と監視を行う義務があります。また資格ある作業環境測定士または作業環境測定機関により、作業場の気中濃度を6ヶ月以内ごとに1回測定しなくてはなりません。

作業者としては、使用する有機溶剤が有機則の対象かどうかを確認し、さらに自分の業務内容が対象業務・対象場所に該当するかを自ら把握しておく必要があるでしょう。該当する場合、指定された保護具を正しく使用し、有機溶剤作業主任者の指示に従って作業を進めなくてはなりません。定期的に特殊健康診断を受ける必要がありますよ。

特定化学物質について深掘り!

次は、特定化学物質とその取り扱いについてご説明しましょう。

特定化学物質障害予防規則とは

特定化学物質障害予防規則とは

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特定化学物質障害予防規則は、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するために定められています。化学物質を使用する事業者は労働者を守るために、使用する物質の毒性の確認、代替物の使用、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底、など必要な措置を講じなくてはなりません。

有機則との大きな違いは、有機則は対象となる化学物質は有機溶剤のみですが、特化則では対象となるのは全ての化学物質です。そのため、有機則と特化則の両方に該当する物質もあり、これを特別有機溶剤と呼びます

また特化則で規制している化学物質による健康被害は、がんなどすぐに症状が出ない場合もあるので、記録の保管義務は30年間とかなり長い期間なのです。

第1種、第2種、第3種

有機溶剤と同じく、有害性の高いものから第1種、第2種、第3種と分類しています。

第1類
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、特に有害性が高く、製造工程で特に厳重な管理(製造許可)を必要とするもの
ジクロルベンジジン及びその塩、アルファ―ナフチルアミン及びその塩
塩素化ビフェニル(別名PCB)、オルト―トリジン及びその塩、ジアニシジン及びその塩、ベリリウム及びその化合物、ベンゾトリクロリド

第2類
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、第1類物質に該当しないもの。特定第2類物質、特別有機溶剤等、オーラミン等、管理第2類物質の4種類に分けられます。該当する化学物質は全部で40種類以上です。
該当する化学物質は多いので、有機則と特化則の両方に該当する珍しい特別有機溶剤等の紹介だけにしましょう。
エチルベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、1,4―ジオキサン、二塩化エチレン、1,2―ジクロロプロパン、二塩化メチレン、スチレン、四塩化アセチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン

第3類
大量漏えいにより急性中毒を引き起こす物質
アンモニア、一酸化炭素、塩化水素、硝酸、二酸化硫黄、フェノール、ホスゲン硫酸

\次のページで「作業する際に気をつけるべきポイント」を解説!/

作業する際に気をつけるべきポイント

第1類、第2類、第3類によって違いますが、ガス、蒸気、粉じんが発散する場合は排気、換気の設備を設けなくてはなりません。また、廃液処理についても義務づけがあります。運搬、貯蔵するときには強固な容器を使用し、確実な包装をしなくてはなりません。

有機溶剤と同じく、特定化学物質を使用する事業者は特定化学物質作業主任者の選任の義務があります。特定化学物質作業主任者は、労働者が健康障害を受けることを予防するための装置を一月を超えない期間ごとに点検、保護具の使用状況を監視、さらに六月以内ごとに一回、定期に、第一類物質または第二類物質の空気中における濃度を測定しなければなりません。

化学物質による最近の災害事例

令和元年に起きた化学物質による災害の事例を一部ご紹介します。

引用:https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei10/index.html

1 有機溶剤による中毒

まずは令和元年に起きた有機溶剤による中毒例を2件ご紹介します。

1月 化学工業 中毒1名 メタノール
被災者はメタノールを含有する結晶塊をふるいにかけて細かい結晶にする作業を行っていたところ、急性メタノール中毒となり、目眩、吐き気を訴えたもの。被災者は防毒マスク、保護メガネ、保護手袋、防塵服を着用していたが、防毒マスクの破過時間は計算しておらず、被災者の判断に任せ40~50分ごとに吸収缶の交換を行っていた。換気装置は設置されていたが、被災当日は稼動していなかった。

10月 無機・有機化学工業製品製造業 中毒1名 トルエン
被災者は、反応缶を用いて製造する品種の切替作業のため、上部蓋を開放した上で缶内部に入り、トルエンを用いて缶の内壁の払拭・吹き上げ作業を行っていたところ、意識を消失し、救急搬送された。缶は上部を開放したのみで他に通風箇所は無かった。

2 特定化学物質による中毒

続いて、令和元年に起きた特定化学物質による中毒例を2件紹介します。

無機・有機化学工業製品製造業 中毒2名 塩素
塩素製造設備である電解槽の交換作業において、電解槽の配管途中にあるサンプリング口から塩素ガスを抜取るため、サンプリング口に取り付けられたゴム栓を取り外し、塩素ガス抜取り用のホースを接続しようとしたところ、塩素ガスの流入先である配管途中にある弁(バタフライ弁)を閉め忘れていたため、電解槽及び配管内に存在した塩素ガスがサンプリング口から漏れ出し、当該箇所で作業していた労働者2名が塩素ガスを吸入したもの。

製造業 中毒1名 塩酸
工場設備の洗浄や魚介類の消毒等に用いるため、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸の混合液を、専用機械により用途に応じた濃度で調整していた。被災者は、2種類の原料となる溶液のタンクに、保管容器から溶液を補充した際、漏洩センサーが作動したため、溶液が漏洩したと思われる箇所を雑巾で拭き取っていたところ、徐々に具合が悪くなった。なお、中毒を起こしたガスは、2種類の溶液の反応により発生したものか、単一の溶液によるものかは不明である。化学手袋、保護眼鏡、呼吸用保護具等は用意されておらず、着用していなかった。

\次のページで「化学物質を取り扱う人向けの健康診断」を解説!/

製造業 中毒1名 シアン化水素
被災者は、めっき液(シアン化銀)に濃硝酸と濃硫酸を加えた混合液を、囲い式フード付き局所排気装置が設置された電熱器上で加熱した後、混合液の入ったビーカーに近づいた際、気化したシアンガスを吸引した。吸入時はのどの刺激や頭痛等の症状であったが、その後手に力が入らない等の異常を認め、病院を受診。シアン化物の毒作用と診断された。被災者は防毒マスクではないマスクを着用。保護手袋等の保護具も着用していなかった。局所排気装置が故障等で能力が不足していたため、シアン化ガスがフード外に漏洩したと推定される。

化学物質を取り扱う人向けの健康診断

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最後に、有機則や特化則で定められている健康診断について紹介します。

特殊健康診断を受けましょう

事業者は、有機溶剤や特化物を使用する業務に従事させる従業員に対して、6ヶ月以内ごとに1回、定期に医師による特殊健康診断を行う義務が定められています。それぞれ、有機溶剤の場合は有機溶剤健康診断、特定化学物質の場合は特定化学物質健康診断と呼ばれる健康診断です。

普通の健康診断との違い

健康被害はすぐに出るとは限りませんので、健康診断の結果を長期間保管する義務があります。有機溶剤健康診断は、有機溶剤健康診断個人票を作成し、5年間保存しなくてはなりません。特定化学物質健康診断では特定化学物質健康診断個人票を作成しますが、作業環境、作業内容と同じく保存期間は30年間です。

健康診断の内容は使用している化学物質ごとに、尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査、肝機能検査、貧血検査、眼底検査などが定められています。作業内容や作業状況の調査、自覚症状の有無の確認もありますよ。

有機則も特化則も、化学物質による労働者への被害を防ぐために定められた規則

有機溶剤と特化物は、吸入や接触により人体の健康に被害を及ぼす可能性があります。化学物質による健康被害はすぐには現れないことも多いので、事業者は労働者の健康診断を定期的に課すとともに記録を長期間補完する義務があるのです。

また作業中の事故を防ぐためにも作業環境を適切に整えなくてはなりません。

作業者自身も、SDSを確認するなどして自らの健康を守るよう心がけましょう。

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化学理科

特定化学物質と有機溶剤の違いは規制する物質?元メーカー勤務ライターがわかりやすく解説!

特定化学物質と有機溶剤という分類を聞いたことはあるか?それぞれ安全に取り扱うための規則があるんです。化学物質は災害をもたらすだけでなく、人体に癌などの健康被害を及ぼすこともあるから、取り扱いは本当に気をつけなくてはならなのです。
メーカー勤務時代には有機則に該当するような化学物質を取り扱っていたライター小春と一緒に解説していきます。

ライター/小春(KOHARU)

見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。メーカーでは日々、有機溶剤を使って実験を行っていた。

有機溶剤と特定化学物質の違いは規制している物質の違い

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有機則や特化則という言葉を聞いたことがありますか?それぞれ略称で、有機則の正式名称は有機溶剤中毒予防規則、特化則は特定化学物質障害予防規則です。これらは化学薬品を扱う人なら必ず知っておかなくてはならない規則と言われています。火災などの災害を起こさないために大切な規則もありますが、有機則と特化則は自分自身や労働者に健康被害を起こさないために必要です。

どちらも労働安全衛生法に基づいている

どちらも労働安全衛生法に基づいている

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労働安全衛生法の第22条や第27条で事業者の講ずべき措置等が定められているのはご存知ですか?

これらの法律に基づいて、具体的な規制として「有機溶剤中毒予防規則」「特定化学物質障害予防規則」「鉛中毒予防規則」「四アルキル鉛中毒予防規則」「石綿障害予防規則」の5つの特別規則が定められています。この有機溶剤中毒予防規則がいわゆる有機則、特定化学物質障害予防規則がいわゆる特化則と呼ばれるものです。

これら5つの特別規則は、特に危険・有害性の高い物質・作業を特定し、それぞれ製造・取扱いにあたって遵守すべき事項を個別具体的に規定しています。

有機則と特化則は定められている法律は全く同じ「労働安全衛生法」で、目的も「労働者の健康を守るため」ではありますが、指定している化学物質が違うために製造・取扱いにあたって遵守すべき事項が違うため違う規則となっているのです。

1 有機溶剤中毒予防規則って?カンタンに解説

有機溶剤中毒予防規則は、有機溶剤を吸入や接触することによる健康被害を防ぐために、対象となる54種類の有機溶剤の取扱い方法などを規制した法律です。

毒性と蒸発速度をもとにそれぞれの有機溶剤の有害度を決定し、有害度の高いものが第1種有機溶剤に、中程度のものが第2種有機溶剤に、低度のものが第3種有機溶剤に区分されています。

有機溶剤は常温で液体ですが、揮発性が高いものが多いため蒸気となって作業者の呼吸を通して体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質もあることから皮膚からも吸収されますので、使用には特に注意が必要です。

2 特定化学物質障害予防規則って?カンタンに解説

特定化学物質障害予防規則は、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するために定められた規則です。対象となる物質は、障害を引き起こす暴露量や管理の程度によって第1類から第3類に分類されています。つまり特化則で重要なのは含有濃度と管理濃度です。

有機則と特化則は定められている法律と目的が「労働者の健康を守るため」で同じですが、指定している化学物質が違うために違う規則となっているのです。

なお、特別有機溶剤の単一成分が1%を超えるものは「特化則」が適用され、有機溶剤の含有率が5%を超える場合は「有機則」が適用されます。有機溶剤の種類によっては、有機則と特化則の両方が適用される場合もあるのです。詳しくは次章以降で説明していきますね。

有機溶剤について深掘り!

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先ほどざっくり説明した有機溶剤とその取り扱いについて、深掘りしていきましょう。

有機溶剤中毒予防規則とは

そもそも有機溶剤とは何か、まずは説明しましょう。有機溶剤は油・ロウ・樹脂・ゴムなどの水に溶けないものを溶かすことができる有機化合物の総称です。様々な場面で溶剤として塗装、洗浄、印刷などの作業に幅広く使用されています。身近なものでは石油・灯油・シンナー・接着剤が有機溶剤です。工業的に使用されているものだけでも約500種類が知られています。そのうち有機溶剤中毒予防規則の適用を受けるものは現在54種のみです。

有機溶剤は、呼吸するだけで体内に取り込んだり、付着した皮膚から体内に吸収してしまう恐れがあります。有機溶剤を使用していると無意識に体内に取り込んでしまう可能性が高いので、労働者の健康を守るために有機溶剤中毒予防規則が定められているのです。

起こりうる健康被害には、めまい、吐き気、痙攣などの症状があります。高濃度を吸うと急性中毒に、低濃度でも長い期間吸うことで慢性中毒を引き起こすことがあるほか。種類によってはがんの原因にもなるので取り扱いには十分気をつけてください。

\次のページで「第1種、第2種、第3種の違いとは?」を解説!/

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