
メーカー勤務時代には有機則に該当するような化学物質を取り扱っていたライター小春と一緒に解説していきます。
- 有機溶剤と特定化学物質の違いは規制している物質の違い
- どちらも労働安全衛生法に基づいている
- 1 有機溶剤中毒予防規則って?カンタンに解説
- 2 特定化学物質障害予防規則って?カンタンに解説
- 有機溶剤について深掘り!
- 有機溶剤中毒予防規則とは
- 第1種、第2種、第3種の違いとは?
- 作業する際に気をつけるべきポイント
- 特定化学物質について深掘り!
- 特定化学物質障害予防規則とは
- 第1種、第2種、第3種
- 作業する際に気をつけるべきポイント
- 化学物質による最近の災害事例
- 1 有機溶剤による中毒
- 2 特定化学物質による中毒
- 化学物質を取り扱う人向けの健康診断
- 特殊健康診断を受けましょう
- 普通の健康診断との違い
- 有機則も特化則も、化学物質による労働者への被害を防ぐために定められた規則
この記事の目次
ライター/小春(KOHARU)
見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。メーカーでは日々、有機溶剤を使って実験を行っていた。
有機溶剤と特定化学物質の違いは規制している物質の違い

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有機則や特化則という言葉を聞いたことがありますか?それぞれ略称で、有機則の正式名称は有機溶剤中毒予防規則、特化則は特定化学物質障害予防規則です。これらは化学薬品を扱う人なら必ず知っておかなくてはならない規則と言われています。火災などの災害を起こさないために大切な規則もありますが、有機則と特化則は自分自身や労働者に健康被害を起こさないために必要です。
どちらも労働安全衛生法に基づいている

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労働安全衛生法の第22条や第27条で事業者の講ずべき措置等が定められているのはご存知ですか?
これらの法律に基づいて、具体的な規制として「有機溶剤中毒予防規則」「特定化学物質障害予防規則」「鉛中毒予防規則」「四アルキル鉛中毒予防規則」「石綿障害予防規則」の5つの特別規則が定められています。この有機溶剤中毒予防規則がいわゆる有機則、特定化学物質障害予防規則がいわゆる特化則と呼ばれるものです。
これら5つの特別規則は、特に危険・有害性の高い物質・作業を特定し、それぞれ製造・取扱いにあたって遵守すべき事項を個別具体的に規定しています。
有機則と特化則は定められている法律は全く同じ「労働安全衛生法」で、目的も「労働者の健康を守るため」ではありますが、指定している化学物質が違うために製造・取扱いにあたって遵守すべき事項が違うため違う規則となっているのです。
1 有機溶剤中毒予防規則って?カンタンに解説
有機溶剤中毒予防規則は、有機溶剤を吸入や接触することによる健康被害を防ぐために、対象となる54種類の有機溶剤の取扱い方法などを規制した法律です。
毒性と蒸発速度をもとにそれぞれの有機溶剤の有害度を決定し、有害度の高いものが第1種有機溶剤に、中程度のものが第2種有機溶剤に、低度のものが第3種有機溶剤に区分されています。
有機溶剤は常温で液体ですが、揮発性が高いものが多いため蒸気となって作業者の呼吸を通して体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質もあることから皮膚からも吸収されますので、使用には特に注意が必要です。
2 特定化学物質障害予防規則って?カンタンに解説
特定化学物質障害予防規則は、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するために定められた規則です。対象となる物質は、障害を引き起こす暴露量や管理の程度によって第1類から第3類に分類されています。つまり特化則で重要なのは含有濃度と管理濃度です。
有機則と特化則は定められている法律と目的が「労働者の健康を守るため」で同じですが、指定している化学物質が違うために違う規則となっているのです。
なお、特別有機溶剤の単一成分が1%を超えるものは「特化則」が適用され、有機溶剤の含有率が5%を超える場合は「有機則」が適用されます。有機溶剤の種類によっては、有機則と特化則の両方が適用される場合もあるのです。詳しくは次章以降で説明していきますね。
有機溶剤中毒予防規則とは
そもそも有機溶剤とは何か、まずは説明しましょう。有機溶剤は油・ロウ・樹脂・ゴムなどの水に溶けないものを溶かすことができる有機化合物の総称です。様々な場面で溶剤として塗装、洗浄、印刷などの作業に幅広く使用されています。身近なものでは石油・灯油・シンナー・接着剤が有機溶剤です。工業的に使用されているものだけでも約500種類が知られています。そのうち有機溶剤中毒予防規則の適用を受けるものは現在54種のみです。
有機溶剤は、呼吸するだけで体内に取り込んだり、付着した皮膚から体内に吸収してしまう恐れがあります。有機溶剤を使用していると無意識に体内に取り込んでしまう可能性が高いので、労働者の健康を守るために有機溶剤中毒予防規則が定められているのです。
起こりうる健康被害には、めまい、吐き気、痙攣などの症状があります。高濃度を吸うと急性中毒に、低濃度でも長い期間吸うことで慢性中毒を引き起こすことがあるほか。種類によってはがんの原因にもなるので取り扱いには十分気をつけてください。
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