
薄層クロマトグラフィーの原理(1)吸着プロセス
TLCプレートの片方の端にサンプルをスポットし、有機溶媒の入った密閉容器内に立てかけます。この有機溶媒が移動相です。
移動相は毛細管力によりプレート上を上向きに移動していくのですが、サンプルもこれまで吸着していた固体相を脱離して移動相に溶解し、移動相と共にプレート内を上昇します。上昇中、サンプルは固定相と移動相の間で吸着と脱離を繰り返しているので、吸着しやすさの差が移動の速度に反映されるのです。
吸着のしやすさは成分ごとに違うので、成分ごとにプレート状にスポットとして固定されます。これが吸着プロセスです。
薄層クロマトグラフィーの原理(2)Rf値
移動相がプレートの一番上に達したら、プレート上にスポットとして現れた分離された成分と各成分の保持係数(Rf値)を評価します。Rf値は成分ごとに異なる値を持っているので、この値が分かればサンプル中の成分を同定できるのです。
吸着プロセスは、極性の異なる化合物(エステル、アルコール、酸)の分離や、固定相との相互作用エネルギーに差がある構造異性体の分離に適しています。例えば、アルコールからエステルへ合成しているときであれば、生成物に対してTLCを行えばその生成物がアルコール(原材料のまま)なのか、うまく実験が成功してエステルが作れているか、一目で見分けられるのです。
しかしこの手法では「何が」サンプルに入っているかは分かっても「どのくらい」入っているかは分かりません。量を知るためにはまた別の測定法をする必要があります。

薄層クロマトグラフィーをざっくり理解できたか?こういうものは1回試せばすぐ理解できるから安心してくれ。百聞は一見にしかずってやつだ。
クロマトグラフィーは、化学物質の組成を簡単に素早く分析する手法
クロマトグラフィーにはたくさんの種類がありますが、その基本となる原理はどれも同じです。クロマトグラフィーは再現性よく、混合物の成分を定性的に分析することができるので、大変便利な手法ですよ。
今回は例として薄層クロマトグラフィーについて触れました。原理が面白いなと思った方は是非、ガスクロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィーについても調べてみてください。それぞれの物質の物理的性質を学ぶ重要性に気がつけると思います。