大学で化学を専攻した学生は、学部時代の実験でクロマトグラフィーを使うんです。100年以上前に発見された手法ですが、現代でもまだまだ通用するんです。
学生実験で実際に何種類かのクロマトグラフィーを勉強したライター小春と一緒に解説していきます。
- 1分で分かるクロマトグラフィーの概要
- クロマトグラフィーの仕組みが分かる身近な例
- クロマトグラフィーとは物質を物理的に分離する方法のこと
- クロマトグラフィーの誕生は1906年のロシア
- クロマトグラフィーを高校化学だけで分かるように解説
- クロマトグラフィーの原理は2相との相互作用がポイント
- クロマトグラフィーの種類と使い分け
- クロマトグラフィー理解に必須! 薄層クロマトグラフィー
- 薄層クロマトグラフィーとは?
- 薄層クロマトグラフィーの用途
- 薄層クロマトグラフィーの原理(1)吸着プロセス
- 薄層クロマトグラフィーの原理(2)Rf値
- クロマトグラフィーは、化学物質の組成を簡単に素早く分析する手法
この記事の目次
ライター/小春(KOHARU)
見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。
1分で分かるクロマトグラフィーの概要
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化学の発展の多くは自然界に存在する物質を元にして、物質固有の性質について研究した結果が基礎となっています。しかしながら自然界に存在する物質が純物質であることは非常に稀なため、大抵の場合は調べたい目的物質を混合物から分離しなくてはなりません。
今回ご紹介するクロマトグラフィーは、こういった時に使用される分離分析の手法です。
クロマトグラフィーの仕組みが分かる身近な例
図工の時間、画用紙に絵の具を塗った後、うっかり水をこぼしてしまったことはありませんか?水が絵の具を広げてしまい大変なことになりますよね。これは水性絵の具に対して水をこぼしたために起こってしまうことなのですが、この「溶かしたいもの」を「溶かせる(運べる)もので溶かす」原理がクロマトグラフィーに利用されているのです。
クロマトグラフィーとは物質を物理的に分離する方法のこと
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分離分析の方法の総称がクロマトグラフィー(Chromatography)です。2つの相間(固定相と移動相)での物質の分配や吸着を利用して物理的に分離する方法をすべてクロマトグラフィーと呼んでいます。
先ほどの絵の具の例だと、画用紙が固定層で水が移動相です。水性ペンでも同じ実験ができますよ。例えば、同じ黒いサインペンでも、作った文房具メーカーが違えば成分は違います。サインペンのインクはいくつかの色の成分を独自の配合で混ぜてできていますが、クロマトグラフィーを使えばどんな色成分からできているか簡単に分かるのです。
クロマトグラフィーの誕生は1906年のロシア
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1906年に葉緑素の研究をしていたロシアの植物学者ツヴェットが、植物色素を分離させる方法を発見し、クロマトグラフィーが誕生しました。
ツヴェットの発見前から葉緑素が複数の色素から成り立っていることは推測されていたのですが、その組成は分からないままでした。ツヴェットが抽出した色素を立てたカラムの上に置き、上から石油エーテルを流したところ、葉緑素を色の異なる吸着帯として分離することができたのです。
このツヴェットが開発した手法は、ギリシャ語のChroma(色)とGraphos(記録)から、Chromatography(クロマトグラフィー)と呼ばれるようになりました。
クロマトグラフィーを高校化学だけで分かるように解説
ここから、相互作用の詳細などの難しい説明は省いて、できるだけ分かりやすくクロマトグラフィーの原理を説明していきます。
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