構成分子の面から気体の重さを捉える
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これまでに、大気圧は私たちの身体のあらゆる方向からかかるために、気体の重みを感じ取ることができないと説明しました。このことは空気のみならず、気体中にある物体全てに同じことです。合わせて、気体は形状が刻々と変化するため、その重さを直接計測して比べることは実質不可能といえます。
では、どのように考えれば気体の重量を求めることが出来るのでしょうか?この問題を解く鍵は、実際に計測できないなら、構成分子に着目して計算で求めればいいと発想を変えることです。
引き続き詳しく解説していくのですが、その前にひとつだけおさらいしたい内容があります。それは原子量、分子量という概念で、大雑把に言えばある原子や分子に含まれる陽子と中性子の数のことです。例えば、陽子6個と中性子6個からできる炭素(12C)の原子量は12、水素原子(陽子1個)が2つ集まった水素分子の分子量は2となります。
物質量を利用した物質の重さを考える方法
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気体に関わらず、世の中のすべての物質は原子や分子といった粒子が集まって構成されています。それらの粒子一つ一つは重さ(質量)があるので、気体を構成する分子の数が分かれば、気体そのものの重さを計算することが理論上可能です。しかし、それら分子は粒子の半径が非常に小さいうえに膨大な数が集まっているため、粒子の数を物理的に数えることも現実的ではありません。
その難問を解決するため、物質量という考えが考案されました。実は、物質の構成原子や分子がある数になると、原子量や分子量と物質の重さが一致することが判明しています。その時の粒子の個数を基準として、その何倍かを示したものが物質量であり、単位はmol(モル)です。例えば、炭素原子が1mol分だけ集まった場合、重さは原子量と同じ12gとなります。
気体がもつ情報と物質量を結びつける法則
物質量(粒子の個数)を基準に考えると、原子量や分子量を考えることで簡単に重さを求めることが可能です。ただ、実際の気体がもつ物質量が分からなければ、この方法を使うことはできません。
そこで気体に物質量の考え方を当てはめられるように、アボガドロの法則が利用されています。アボガドロの法則は、「同一の圧力、温度、体積」の気体は、気体の種類に関わらず分子数が等しくなることを示した法則です。つまり、圧力、温度、体積が一定なら、同じ物質量の気体として考えることが可能だと考えられます。
さらに、温度0℃、1気圧(1013hPa)、体積22.4Lに設定した(標準状態という)とき、気体の物質量が1molとなることが解明されました。このおかげで、標準状態にある気体はその分子量を考えるだけで重さを求めることができるんです。
二酸化炭素、空気はどっちの方が重いの?
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ここまでの考え方を使うと、実際に二酸化炭素と空気の重さを計算して比較することができます。やることは、お互い標準状態にあるとそろえて考えた上で、それぞれの分子量を比べるだけと簡単です。
炭素原子Cの原子量が12、酸素原子Oの原子量が16なので二酸化炭素CO2の分子量は12+(16×2)=44となります。一方で空気は混合気体で、内訳は窒素分子N2が約80%、酸素分子O2が約20%です。窒素原子Nの原子量は14なので、空気の分子量は (14×2)×0.8+(16×2)×0.2=23.04となります。
このように、二酸化炭素は空気と比べて約2倍の重量があるんです。分子量さえ求められれば、同じ手順で様々な気体の重さを計算、比較することができます。
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