今回は「クジラの呼吸」について解説していきます。皆はクジラを見たことはあるか。クジラというと豪快なしおふきの様子を思い浮かべる人も多いでしょう。実はしおふきはクジラの呼吸なんです。海の中で生活しているクジラがどのように呼吸をしているのか、クジラにはどのような仲間がいるのかについても勉強していこうと思う。
この記事では生物学に詳しい、理系院卒ライターtomato1121と解説していきます。

ライター/tomato1121

大学と大学院で学んだことを元に、生物の楽しさを伝えたいと思いライターになる。生物学の知識を分かりやすく伝え、多くの人に興味を持ってもらえるように日々奮闘中。

クジラはどんな生物?

クジラはどんな生物?

image by Study-Z編集部

まずはクジラの分類について解説していきましょう。クジラは哺乳類の中でも、鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)の鯨凹歯類に属する生物です。さて、鯨偶蹄目とはどのようなグループでしょうか。

この鯨偶蹄目、最近誕生したグループなのです。実は遺伝子解析の結果から鯨と偶蹄目が非常に近縁であることが明らかになり、新たに分類分けされたグループ。鯨偶蹄目にはクジラのほかに、カバやウシ、ラクダなどが含まれています。

生物は進化の過程で海から陸に生活の場を移していきました。実はクジラの祖先も陸で生活していたのですが、再び海での生活に戻った生物。その頃は海の方がエサが豊富にあったからではないか、という説があるそうです。

そんなクジラには多くの種類がいますが、ハクジラヒゲクジラと大きく2つの仲間に分類されます。それぞれの仲間についてご紹介していきましょう。

ヒゲクジラ亜目

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ヒゲクジラの仲間は歯を持たないクジラで、その代わりに上あごにヒゲ板という器官をもっています。ヒゲというと繊維状のものを想像するかもしれませんが、クジラのヒゲ板は人間の爪のような硬さで、板状の構造物。その先が枝分かれしているので、まるでヒゲのように見ます。ヒゲ板はザルのような機能をもっていて、海水からプランクトンをこしとるようにして捕食するしくみです。

ヒゲクジラに分類されるのはシロナガスクジラザトウクジラコククジラなどの大型のクジラが多いのが特徴。ヒゲクジラの中でも小型であるコセミクジラでも、6メートル前後の大きさがあります。

ハクジラの亜目

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ハクジラの仲間は、その名の通り歯を持つクジラ。ヒゲ板はありません。マッコウクジラなどがハクジラに分類されます。歯の形は全て同じ形であり、餌である魚やイカをかみ切ったりすり潰したりはせずに、丸のみするとのこと。

さらに驚くべきことに、イルカも同じハクジラに分類されるのです。ハクジラの中で4、5メートル以下、つまり小型のハクジラをイルカと呼んでいるということですね。クジラと同じく海の中で生活する哺乳類ということは有名ですが、分類上はクジラと明確に区別はされていません。知らなかった人もいるのではないでしょうか。

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クジラの呼吸はどこでしている?

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クジラは哺乳類であることはお分かりいただけたかと思います。哺乳類は肺を持つ生物。つまり、クジラは海で生活しているのに、肺呼吸をしている生物なのです。

しかし、ほかの水中に生息している魚類はえら呼吸をしていますね。ここで、肺呼吸とえら呼吸はどのような違いがあるのかを整理してみましょう。さらにクジラが海の中でどのように肺呼吸しているか解説していきたいと思います。

肺呼吸とえら呼吸の違い

まずは肺呼吸のしくみから説明していきましょう。肺は肺胞という袋状の構造物を多数もつ器官。口から取り入れられた空気は、気管を通って肺の肺胞に入っていきます。その肺胞には毛細血管が張り巡らされおり、空気と毛細血管の間で、いわゆるガス交換が行われることに。空気中の酸素が血液に取り込まれ、血液中の二酸化炭素が肺胞に排出されます。このガス交換により、細胞呼吸に必要な酸素を取り入れているわけです。

それではえら呼吸はどうでしょうか。魚類はえらという器官をもっています。実はえらは肺と同様で、毛細血管が張り巡らされた器官。えら呼吸では口から海水を取り入れたあと、えらを透過させることで海水中に存在している酸素を血液中に取り込み、血液中の二酸化炭素を海水中に放出するのです。その後水はえら蓋から排出されます。

クジラのしおふきは呼吸!

クジラはえらを持たず、肺呼吸をしている生物。海水中から酸素を取り入れることができません。水中で暮らしているクジラはどのように空気を取り入れているのでしょうか。

実はクジラは口からではなく、鼻から空気を取り入れています。その鼻というのが頭の上の方にある鼻孔(噴気孔)というところ。水面に浮上して頭を少し出して、呼吸をしています。この体内の空気を吐き出したのが、きりのように噴き上げて見える「しおふき」なんです。そう、あくまでも吹き上げられているのは海水ではなく空気。クジラの肺で温められていた空気は外に噴出されるときに冷やされるため、白く見えているということなのです。また、鼻孔のまわりに溜まっていた海水が勢いで噴出することもあるそうですよ。

そして、このクジラの鼻の位置。呼吸がしやすいように、進化の過程で徐々に頭の上の方に移動していったようです。環境の変化に応じて進化をしてきたからこそ、今のように多くの種類があらわれるほど繁栄していったのかもしれません。

クジラの種類としおふき

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このクジラのしおふきは、クジラの種類によって違います。それは鼻孔がクジラによって違うから。例えばハクジラは鼻孔が1つ、ヒゲクジラは鼻孔が2つあります。そのため吹き出すしおも、ハクジラは1本、ヒゲクジラは2本なのです。

さらに鼻孔の向きや形によっても、しおの形は違います。中でもコククジラが噴き出す潮は、なんとハート型に見えるのだとか。最も大きいクジラであるシロナガスクジラは、しおふきの高さが10~15mほどにもなるようです。しおふきを見ただけで、クジラの種類が分かるとも言われています。

クジラの呼吸の頻度もその種類によって違うとのこと。10分程度で呼吸をするクジラもいますし、マッコウクジラは1時間以上も呼吸をせずに潜水していられるようですよ。

イルカもしおふきをするの?

では、ハクジラの仲間であるイルカも「しおふき」をするのでしょうか。もちろんイルカも肺呼吸。クジラと同様で、鼻孔が頭の上にあり、鼻孔で呼吸をしています。しかし、イルカは小型のため肺の大きさもクジラ程ではありません。さらに潜水時間も5~15分程度とのこと。

したがって、クジラのように大量の空気を噴出するわけではないため、クジラのような豪快な「しおふき」は見られないようです。

\次のページで「クジラの動画を見てみよう」を解説!/

クジラの動画を見てみよう

今回はクジラの呼吸について解説いたしました。肺呼吸であるクジラが海に生活の場を求め、生きていくために行っている呼吸が「しおふき」の正体。しおふきの見方も変わってくるのではないでしょうか。

大海原をゆったりと泳ぐクジラ。水族館では見ることができないですよね。かと言って、ホエールウォッチングには気軽に行けません。そんな人も動画でクジラを見てみるのはいかがでしょうか。是非、いろいろな種類のクジラを見比べてみてください。気持ちよさそうに、自由に泳ぐクジラに、心癒されること間違いありませんよ。

イラスト使用元:いらすとや

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理科生物

クジラは肺呼吸?イルカはクジラの仲間?クジラの分類や呼吸の方法、しおふきについて理系院卒ライターが5分でわかりやすく解説!

クジラの呼吸はどこでしている?

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クジラは哺乳類であることはお分かりいただけたかと思います。哺乳類は肺を持つ生物。つまり、クジラは海で生活しているのに、肺呼吸をしている生物なのです。

しかし、ほかの水中に生息している魚類はえら呼吸をしていますね。ここで、肺呼吸とえら呼吸はどのような違いがあるのかを整理してみましょう。さらにクジラが海の中でどのように肺呼吸しているか解説していきたいと思います。

肺呼吸とえら呼吸の違い

まずは肺呼吸のしくみから説明していきましょう。肺は肺胞という袋状の構造物を多数もつ器官。口から取り入れられた空気は、気管を通って肺の肺胞に入っていきます。その肺胞には毛細血管が張り巡らされおり、空気と毛細血管の間で、いわゆるガス交換が行われることに。空気中の酸素が血液に取り込まれ、血液中の二酸化炭素が肺胞に排出されます。このガス交換により、細胞呼吸に必要な酸素を取り入れているわけです。

それではえら呼吸はどうでしょうか。魚類はえらという器官をもっています。実はえらは肺と同様で、毛細血管が張り巡らされた器官。えら呼吸では口から海水を取り入れたあと、えらを透過させることで海水中に存在している酸素を血液中に取り込み、血液中の二酸化炭素を海水中に放出するのです。その後水はえら蓋から排出されます。

クジラのしおふきは呼吸!

クジラはえらを持たず、肺呼吸をしている生物。海水中から酸素を取り入れることができません。水中で暮らしているクジラはどのように空気を取り入れているのでしょうか。

実はクジラは口からではなく、鼻から空気を取り入れています。その鼻というのが頭の上の方にある鼻孔(噴気孔)というところ。水面に浮上して頭を少し出して、呼吸をしています。この体内の空気を吐き出したのが、きりのように噴き上げて見える「しおふき」なんです。そう、あくまでも吹き上げられているのは海水ではなく空気。クジラの肺で温められていた空気は外に噴出されるときに冷やされるため、白く見えているということなのです。また、鼻孔のまわりに溜まっていた海水が勢いで噴出することもあるそうですよ。

そして、このクジラの鼻の位置。呼吸がしやすいように、進化の過程で徐々に頭の上の方に移動していったようです。環境の変化に応じて進化をしてきたからこそ、今のように多くの種類があらわれるほど繁栄していったのかもしれません。

クジラの種類としおふき

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このクジラのしおふきは、クジラの種類によって違います。それは鼻孔がクジラによって違うから。例えばハクジラは鼻孔が1つ、ヒゲクジラは鼻孔が2つあります。そのため吹き出すしおも、ハクジラは1本、ヒゲクジラは2本なのです。

さらに鼻孔の向きや形によっても、しおの形は違います。中でもコククジラが噴き出す潮は、なんとハート型に見えるのだとか。最も大きいクジラであるシロナガスクジラは、しおふきの高さが10~15mほどにもなるようです。しおふきを見ただけで、クジラの種類が分かるとも言われています。

クジラの呼吸の頻度もその種類によって違うとのこと。10分程度で呼吸をするクジラもいますし、マッコウクジラは1時間以上も呼吸をせずに潜水していられるようですよ。

イルカもしおふきをするの?

では、ハクジラの仲間であるイルカも「しおふき」をするのでしょうか。もちろんイルカも肺呼吸。クジラと同様で、鼻孔が頭の上にあり、鼻孔で呼吸をしています。しかし、イルカは小型のため肺の大きさもクジラ程ではありません。さらに潜水時間も5~15分程度とのこと。

したがって、クジラのように大量の空気を噴出するわけではないため、クジラのような豪快な「しおふき」は見られないようです。

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