
理由1 土壌の有無
実は、同じ裸地でも、二次遷移には既に土壌が存在しており、一次遷移には土壌が存在していません。
土壌は植物の生育に無くてはならない存在なのです。土壌は水分を保持するだけでなく、植物の生育に必要な窒素、リン、カリウムなどの養分を蓄えます。また、土壌中には土壌生物も生存しており、それが落ち葉や動植物の遺骸を分解して生成された無機成分を植物の養分として受け渡すという働きも。
このように土壌があることは、植物が生育しやすい環境にあることを意味するのです。そのため、二次遷移は土壌のない一次遷移よりも遷移スピードが早いことが分かりますね。
理由2 種子や根の有無
二次遷移の土壌には養分の他にも、植生が破壊される前の植物の種子や根が既に埋まっており、しばらく経つとこれらが芽生えてきます。そのため、更地から始まる遷移である一次遷移と比べると、遷移スピードが早いのです。
理由3 周囲の植物の有無
二次遷移の場合、裸地の周りに植物が残っていることがあるのです。その植物からの種子が裸地に飛ばされることや、植物に生息する動物の排泄物に種子が紛れて、それが裸地に落とされることがあります。これらの種子の存在が二次遷移の遷移スピードを早める要因だと言えますね。
二次遷移の事例
ここからは、実際に世界中で観察された二次遷移について2つご紹介します。特に1つ目の事例は、入試でも出題されることがあるほど有名なので、しっかりと頭に入れておきましょう。
1 イエローストーン国立公園の森林火災

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1988年に北アメリカにあるイエローストーン国立公園にて森林火災が発生し、3000km2以上が焼き尽くされてしまいました。この森林火災で、最も個体数が多かったマツ科のロッジポールパインを大量に失うことになります。しかし、このロッジポールパインが持つ特殊な球果(松ぼっくり)のお陰で、10年後には多数の幼木が確認されました。実は、この球果には山火事などの高熱にさらされると開いて、種子を放出するという特性を持っていたのです。このため、放出された種子は焼け跡から発芽し、何年もの歳月をかけて幼木まで成長したということになります。元の森林の状態に戻るには、およそ200年~300年もかかるそうですよ。しかし、極相に達するまでに1000年かかる一次遷移と比べると、かなり短いことがわかりますね。

ロッジポールパインはアメリカ西部の火災が発生しやすい地域で生息している。この過酷な環境でも子孫を残すために、このような特殊な球果をつけるようになったと言われているぞ。
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