皆はテルミット法という言葉を聞いたことがあるか?
テルミット法は、テルミット反応という化学反応を利用した金属の精錬方法のことです。今回はテルミット法の原理やその用途について、材料の性質や加工に詳しい理系出身ライター「ふっくらブラウス」と一緒に解説していきます。

ライター/ふっくらブラウス

理系単科大学にて機械系を専攻。力学や電磁気学といった基礎的な分野のほか、材料物性や加工法についても学んでいる。塾講師時代の経験を活かし、シンプルで分かりやすい解説を心がけている。

テルミット法とは金属の精錬方法の一つ

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テルミット法とは金属の精錬方法の一つです。精錬とは各種鉱石から酸素や窒素といった不純物を取り除く工程のことを言います。特に鉄鉱石などは、空気中に含まれる酸素と結合して酸化してしまっているものが多く、酸素を取り除くことが工業的に重要です。

鉄鉱石などの酸化した鉱物は工業的な方法としてコークス(石炭を加工した炭素塊)と共に燃焼させる精錬方法が広く用いられています。しかし、酸化したクロムやコバルト、マンガンといった金属は炭素との反応性が悪く、あまり還元できません。そこで活躍するのがテルミット法というわけです。

テルミット法はテルミット反応という化学反応を利用しています。テルミット反応は対象酸化物の酸素とアルミニウムが反応して結合し、純粋な物質と酸化アルミニウムが生成される反応です。まずはじめにテルミット法(テルミット反応)の具体的な流れについて見ていきましょう。

テルミット法(テルミット反応)の具体的な手順

テルミット反応は比較的安価かつ簡単な方法で行うことが可能です。対象の金属酸化物およびアルミニウムを粉末状にして混合、反応の引き金となる熱源を近づける(着火する)ことで反応が開始、進行します。生成物は反応時の高温によって自然に融解、沈下するため純粋な金属を楽に取り出すことが可能です。

テルミット反応は大きな熱量と強い光が発生、持続する燃焼反応の一種となります。ただし、発生する熱量、光ともに普通の燃焼反応の比ではないため、可燃物を取り除く、反応物が飛び散らないよう陶磁器類(無機物質)で囲うなど、注意が必要です。

酸化物とアルミニウム粉末、着火源があれば実行でき特別な道具が必要ないため、鉄道レールなど鉄の溶接にも用いられています。また、炭素を必要としない精錬なので、生成した金属に炭素が含まれないのが利点です。

テルミット法はアルミニウムの還元作用を利用した方法

ある物質が対象の酸化物から酸素を取り除くと、その酸化物は酸素を失い還元されたことになります。このように別の物質を還元させる(自身は酸化する)性質を還元作用といい、アルミニウムは高い還元作用をもつ物質である還元剤の一つです。では、テルミット法では具体的にどのような変化が起こっているのでしょうか?

\次のページで「テルミット反応における酸化、還元の仕組み」を解説!/

テルミット反応における酸化、還元の仕組み

テルミット反応における酸化、還元の仕組み

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画像は化学基礎の教科書などにも書かれている、酸化鉄とアルミニウムによる代表的なテルミット反応の一つを示したものです。このように反応前後で酸化鉄Fe₂O₃が鉄Feとなり、酸素が取り除かれて還元されていることが分かります。この変化の際、実際には何が起こっているのか詳しく見ていきましょう。

酸化物の結合は各原子間の電気的なやりとりとして考えることが可能です。原子はイオン化といって、電子の放出や受け取りを行って+や-に帯電することがあります。酸化鉄Fe₂O₃は鉄Feと酸素Oが化合していますが、実は鉄から電子を受け取った酸素イオンO²⁻と、電子を失った鉄(Ⅱ)イオンFe³⁺の電気的な反応と見なせるんです。

このように酸化や還元は電子のやりとりを元に考えることができ、反応前後で物質が電子を失うと酸化した、電子を受け取ると還元したことになります。これらのことから、ある物質が電子を失いやすいほど、別の物質に電子を与えやすく還元させやすいんですね。物質の電子の失いやすさ(陽イオンへのなりやすさ)をイオン化傾向といい、アルミニウムはイオン化傾向の大きな物質となります。

テルミット法で発生する高温と化学反応との関係

テルミット法で発生する高温と化学反応との関係

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テルミット法(テルミット反応)の大きな特徴として、反応時に非常に高い熱量が生じる点があります。比較的簡単な手順にて大きな熱量が得られるため、テルミット法は精錬以外の用途にも用いられる手法なんです。テルミット反応が高い熱量を発生させる理由も、その仕組みを考えることで理解することができます。

実は化学反応では必ず熱のやり取りが生じていて、その量は反応前と反応後の安定性によって決まるんですね。化合物が安定しにくい状態では、結合を維持するために大きなエネルギーが必要となります。化学反応後に物質がより安定した、つまり必要なエネルギーが少ない状態になると、余ったエネルギーが熱として放出されるんです。

テルミット反応では元の酸化物よりも酸素に電子を受け渡ししやすいアルミニウムを用いるため、アルミニウムが酸化した状態の方が自然、つまり安定した状態となります。またアルミニウムは還元作用が高いため、反応前後でのエネルギー差も大きく、比例して生じる熱量も大きくなるんです。

テルミット法の精錬以外での使用例

これまで触れたように、テルミット法は炭素を必要としない精錬であり、副産物として大きい熱量が得られるのでさまざまな用途で用いられています。最後に、精錬以外の分野でテルミット法が利用されている代表的な例をいくつか見てみましょう。

テルミット法の利用例:金属材料の溶接

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テルミット法では比較的簡単な設備で大きな熱量を得られるため、金属材料の溶接に使われることがあります。ゴールドサミット溶接とも呼ばれ、特に鉄道用レールの交換作業などでの溶接に用いられるのが一般的です。

鉄道レールの溶接では細かく破砕した酸化鉄と粉末アルミニウムを移動可能な簡易溶鉱炉に入れ反応させます。この工程で溶鉱炉から流れ出る溶鉄は2000℃以上になるため、レール継ぎ目部の鋳型に流すだけで溶接できるんです。この方法は作業内容が比較的簡単かつ所要時間が短く、設備も小さいことからスピーディーな保守作業が求められる鉄道分野に向いています。

\次のページで「テルミット法の利用例:燃料、推進剤」を解説!/

テルミット法の利用例:燃料、推進剤

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実はアルミニウムは酸化しやすい性質から、表面に薄い酸化被膜を形成してしまい反応性が落ちてしまいます。また酸化アルミニウムは融点も3000℃とかなり高いためほとんどガス化せず、推進剤としては向いていません。

そこで、酸化物およびアルミニウムなどの還元剤をナノレベルの粉末にまで成形、混合させたナノテルミットという混合材料が開発されています。ナノテルミットは酸化被膜と同等かそれ以下のサイズの粉末であるため、被膜の影響をほぼ受けず反応性を高め、推進剤として用いることが可能です。

特にアルミニウムは、非常に安定した物質である水すらも還元させてしまうことから、アルミニウムと氷によるテルミット反応を利用した安全性の高い推進剤の研究も進められています。

テルミット法はアルミニウムの還元性を利用した金属の精錬方法のこと!

テルミット法はアルミニウムの還元性を利用して、酸化した金属を還元する精錬方法を指します。対象酸化物とアルミニウム粉末、着火源があれば実行でき、高い熱量を得ることも可能です。

酸化物は酸素が化合した別の物質から電子を受け取っている状態であり、電子を放出しやすい物質の方が酸化しやすいと言えます。電子を放出しやすい性質をイオン化傾向といい、アルミニウムはイオン化傾向が大きな物質です。そのため、大抵の酸化物よりも酸化しやすく、別の物質を還元させやすい金属となります。

テルミット法は準備が比較的簡単かつ高い熱量を得られるため、金属の溶接や燃料、推進剤としての用途も一般的です。

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テルミット法って何?原理や反応式、用途例について理系出身のライターが5分で簡単にわかりやすく解説!

皆はテルミット法という言葉を聞いたことがあるか?
テルミット法は、テルミット反応という化学反応を利用した金属の精錬方法のことです。今回はテルミット法の原理やその用途について、材料の性質や加工に詳しい理系出身ライター「ふっくらブラウス」と一緒に解説していきます。

ライター/ふっくらブラウス

理系単科大学にて機械系を専攻。力学や電磁気学といった基礎的な分野のほか、材料物性や加工法についても学んでいる。塾講師時代の経験を活かし、シンプルで分かりやすい解説を心がけている。

テルミット法とは金属の精錬方法の一つ

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テルミット法とは金属の精錬方法の一つです。精錬とは各種鉱石から酸素や窒素といった不純物を取り除く工程のことを言います。特に鉄鉱石などは、空気中に含まれる酸素と結合して酸化してしまっているものが多く、酸素を取り除くことが工業的に重要です。

鉄鉱石などの酸化した鉱物は工業的な方法としてコークス(石炭を加工した炭素塊)と共に燃焼させる精錬方法が広く用いられています。しかし、酸化したクロムやコバルト、マンガンといった金属は炭素との反応性が悪く、あまり還元できません。そこで活躍するのがテルミット法というわけです。

テルミット法はテルミット反応という化学反応を利用しています。テルミット反応は対象酸化物の酸素とアルミニウムが反応して結合し、純粋な物質と酸化アルミニウムが生成される反応です。まずはじめにテルミット法(テルミット反応)の具体的な流れについて見ていきましょう。

テルミット法(テルミット反応)の具体的な手順

テルミット反応は比較的安価かつ簡単な方法で行うことが可能です。対象の金属酸化物およびアルミニウムを粉末状にして混合、反応の引き金となる熱源を近づける(着火する)ことで反応が開始、進行します。生成物は反応時の高温によって自然に融解、沈下するため純粋な金属を楽に取り出すことが可能です。

テルミット反応は大きな熱量と強い光が発生、持続する燃焼反応の一種となります。ただし、発生する熱量、光ともに普通の燃焼反応の比ではないため、可燃物を取り除く、反応物が飛び散らないよう陶磁器類(無機物質)で囲うなど、注意が必要です。

酸化物とアルミニウム粉末、着火源があれば実行でき特別な道具が必要ないため、鉄道レールなど鉄の溶接にも用いられています。また、炭素を必要としない精錬なので、生成した金属に炭素が含まれないのが利点です。

テルミット法はアルミニウムの還元作用を利用した方法

ある物質が対象の酸化物から酸素を取り除くと、その酸化物は酸素を失い還元されたことになります。このように別の物質を還元させる(自身は酸化する)性質を還元作用といい、アルミニウムは高い還元作用をもつ物質である還元剤の一つです。では、テルミット法では具体的にどのような変化が起こっているのでしょうか?

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