今回はpH変化の指示薬として使われるメチルオレンジを詳しく解説していきます。
メチルオレンジは酸性領域でのpH変化に対応して色が変わる指示薬です。ですが、どうして酸性領域でしか使用できないのか、そもそもどうして色が変わるんでしょうか。

今回はpHが変化することで、メチルオレンジ分子にどのような化学変化が起きているのか、なぜ溶液の色が変わるのか、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

pHは水素イオン濃度のこと

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まずは、pHとは何なのか、簡単に紹介していきますね。pHとは「水素イオン濃度」のことで、0~14で表され、0~6は「酸性」、7が「中性」、8~14が「アルカリ性」と分けられます。実際には、酸性とアルカリ性にも「弱酸性」や「強酸性」、「弱アルカリ性」や「強アルカリ性」という強い・弱いがあるのでさらに詳しく分けることも可能です。

酸性でないと進まない化学反応や、アルカリ性でないと進まない化学反応、さらに反応が進むとpHが変化していく化学反応もあります。なので、反応をコントロールするためにも、pHは化学実験で多用されているんです。

pHについての詳しい解説は別の記事でご紹介しているので、合わせてチェックしてみてください。

pHをなんと読む?

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突然ですが、pHをどう読みますか?「ピーエイチまたはピーエッチ」と読みますか?それとも「ペーハー」って読みますか?どちらも正解です。ただ、どちらの読み方も聞いたこと、ありませんか?「ピーエイチ」と「ペーハー」の違いは何なんでしょう?

2つの違いは読み方だけで、ピーエイチは英語読みペーハーはドイツ語読みなんですよ。1909年にpHの概念を発表したセーレン・セーレンセンはデンマークの化学者で、当時はドイツが化学先進国でした。なので、日本もpHをドイツ語で「ペーハー」と読むことにしたんです。

その影響もあり、日本はpHは「ペーハー」と読むと学校教育で教えてきました。しかし、徐々にpHを「ピーエイチまたはピーエッチ」と読む流れが進み、最近の教科書ではpHの読み方はすべて「ピーエイチまたはピーエッチ」に変更されています。広辞苑では、pHは「ピーエイチまたはピーエッチ」と読むとされていて、「ペーハー」は旧称であると書いてあるんです。

ただ、研究の現場や学会では「ペーハー」と呼んでいる方はまだまだいらっしゃいます。教育現場では過去の呼び名になってしまった「ペーハー」も、研究現場ではまだまだ現役です。

pHを測定するための方法とは

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pHを実際に測定するためには、何を使いますか?多くの人がリトマス試験紙や万能試験紙を思い浮かべると思います。万能試験紙は1~14まで広範囲のpHを簡単に測定できるので、中学や高校の実験で幅広く使われていますよね。

pHを測定するための試薬や測定器はたくさんあり、下に一覧をご紹介します。それぞれの試薬の特徴は別の記事でご紹介していますので、合わせてチェックしてみてください!

・ リトマス試験紙

・ BTB溶液

・ 万能試験紙

・ フェノールフタレイン溶液

・ メチルオレンジ

・ 紫キャベツの液

・ pHメーター

どの試薬も、pHの値に応じて色が変わるので、一目で溶液のpHが分かり、とても便利です。ただ、pHの数値がいくつかをはっきり調べることはできないので、研究現場では「pHメーター」を使います。

pHメーターは、溶液のpHの値を数字で調べられるので実験を進めるうえで必要不可欠なんですよ。

\次のページで「酸性領域の変化に使う「メチルオレンジ」を解説」を解説!/

酸性領域の変化に使う「メチルオレンジ」を解説

Methyl orange 02035.JPG
Rubashkyn - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

ここからは、酸性領域のpH変化を知るための指示薬、メチルオレンジについて詳しく紹介していきます。

メチルオレンジは、pH3.1~4.4の間に変色域を持ち、pHが3.1以下の時、溶液は赤色です。溶液のpHが中性に近づく(7に近づく)につれて、赤→オレンジ→黄色と色が変わっていきます。

pH4.4を超えると完全に黄色になり、それ以上は変化しません。なので、中性でもアルカリ性でも溶液は黄色のままです。pH3.1~4.4という狭い領域ではっきりと色の変化がわかるので、酸の滴定によく使われます。

pHが変わるとメチルオレンジ分子に何が起きるのか

pHが変わるとメチルオレンジ分子に何が起きるのか

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ここからは、「pHが変わると、メチルオレンジ分子に何が起きるのか」ご紹介していきます。完全に高校化学の領域を出て、大学レベルの化学になってしまうので、難しいと思いますが、できるだけ簡単に紹介していきますね。

まず、pHが変わるということは、水素イオン濃度が変わることでしたよね。pHの値が小さいほうが水素イオンがたくさんあり、pHが大きくなるほど水素イオンが少なくなっていくんです。そして、メチルオレンジ分子は、周りに水素イオンがたくさんあると「分子の中に水素イオンをくっつけたい」場所があります。逆に水素イオンが少ないと「分子内の水素を放出してあげるよ」という場所もあるんです。

なので、メチルオレンジ分子は周りの水素イオンの量で、分子の形が変わっています。

pHが変わることで分子がどんな形に変化しているのかは、図をチェックしてみてください。一見、まったく違う形の分子に見えますが、「分子内に水素をくっつけるか」「分子内の水素を放出するか」だけの違いなんです。

そもそもどうして色が変わるのか?

メチルオレンジがそれぞれのpHでどんな分子の形をしているか、先ほどご紹介しました。けれど、どうして分子の形が変わると色が変わるの?と不思議に思いますよね。

この理由を簡単にご紹介していきたいんですが…これも完全に高校化学の範囲外になってしまうんです。まず「分子内に二重結合が一つ飛ばしで連続してたくさんある分子には色がついて見える!」と覚えてください。

実際、色がついて見える分子は二重結合をたくさん持っているんです。

メチルオレンジの場合、pH3.1以下の強酸性領域では分子内に水素原子を取り込む構造をとり、緑色の光を吸収するので、その補色の赤色が目に見えるようになります。逆に、pH4.4以上の弱酸性・中性・アルカリ性領域では、水素イオンを放出した構造をとり、青色の光を吸収するので、その補色の黄色が目に見えるようになるんです。

pH指示薬の色の変化は分子の変化で決まる!

今回はpH指示薬の一つ「メチルオレンジ」の色の変化と実際に分子がどう変化しているのかをご紹介しました。pH指示薬の色の変化は高校化学では覚えるしかありません。

ですが、どうして色が変化するのかは、分子構造の変化ですべて説明できてしまうんです。今回はメチルオレンジ分子の構造変化を例にして紹介しましたが、フェノールフタレイン液やBTB溶液の色の変化も同じように分子構造の変化で起きているんです!

もっと知りたい!と感じた方はぜひ調べてみてください。

" /> pHでメチルオレンジはなぜ色が変わるのか?色の変化は分子の変化?理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
化学理科

pHでメチルオレンジはなぜ色が変わるのか?色の変化は分子の変化?理系ライターがわかりやすく解説


今回はpH変化の指示薬として使われるメチルオレンジを詳しく解説していきます。
メチルオレンジは酸性領域でのpH変化に対応して色が変わる指示薬です。ですが、どうして酸性領域でしか使用できないのか、そもそもどうして色が変わるんでしょうか。

今回はpHが変化することで、メチルオレンジ分子にどのような化学変化が起きているのか、なぜ溶液の色が変わるのか、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

pHは水素イオン濃度のこと

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まずは、pHとは何なのか、簡単に紹介していきますね。pHとは「水素イオン濃度」のことで、0~14で表され、0~6は「酸性」、7が「中性」、8~14が「アルカリ性」と分けられます。実際には、酸性とアルカリ性にも「弱酸性」や「強酸性」、「弱アルカリ性」や「強アルカリ性」という強い・弱いがあるのでさらに詳しく分けることも可能です。

酸性でないと進まない化学反応や、アルカリ性でないと進まない化学反応、さらに反応が進むとpHが変化していく化学反応もあります。なので、反応をコントロールするためにも、pHは化学実験で多用されているんです。

pHについての詳しい解説は別の記事でご紹介しているので、合わせてチェックしてみてください。

pHをなんと読む?

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突然ですが、pHをどう読みますか?「ピーエイチまたはピーエッチ」と読みますか?それとも「ペーハー」って読みますか?どちらも正解です。ただ、どちらの読み方も聞いたこと、ありませんか?「ピーエイチ」と「ペーハー」の違いは何なんでしょう?

2つの違いは読み方だけで、ピーエイチは英語読みペーハーはドイツ語読みなんですよ。1909年にpHの概念を発表したセーレン・セーレンセンはデンマークの化学者で、当時はドイツが化学先進国でした。なので、日本もpHをドイツ語で「ペーハー」と読むことにしたんです。

その影響もあり、日本はpHは「ペーハー」と読むと学校教育で教えてきました。しかし、徐々にpHを「ピーエイチまたはピーエッチ」と読む流れが進み、最近の教科書ではpHの読み方はすべて「ピーエイチまたはピーエッチ」に変更されています。広辞苑では、pHは「ピーエイチまたはピーエッチ」と読むとされていて、「ペーハー」は旧称であると書いてあるんです。

ただ、研究の現場や学会では「ペーハー」と呼んでいる方はまだまだいらっしゃいます。教育現場では過去の呼び名になってしまった「ペーハー」も、研究現場ではまだまだ現役です。

pHを測定するための方法とは

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pHを実際に測定するためには、何を使いますか?多くの人がリトマス試験紙や万能試験紙を思い浮かべると思います。万能試験紙は1~14まで広範囲のpHを簡単に測定できるので、中学や高校の実験で幅広く使われていますよね。

pHを測定するための試薬や測定器はたくさんあり、下に一覧をご紹介します。それぞれの試薬の特徴は別の記事でご紹介していますので、合わせてチェックしてみてください!

・ リトマス試験紙

・ BTB溶液

・ 万能試験紙

・ フェノールフタレイン溶液

・ メチルオレンジ

・ 紫キャベツの液

・ pHメーター

どの試薬も、pHの値に応じて色が変わるので、一目で溶液のpHが分かり、とても便利です。ただ、pHの数値がいくつかをはっきり調べることはできないので、研究現場では「pHメーター」を使います。

pHメーターは、溶液のpHの値を数字で調べられるので実験を進めるうえで必要不可欠なんですよ。

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