カフカの『変身』はハッピーエンド?
カフカの『変身』は、ムシになってしまった男の悲しい話。しかし、どこかハッピーエンドを思わせる終わり方をしています。そんな終わり方もまた不条理なものでした。
家族に見放されたムシのグレゴール
家族の家の一室を3人の紳士に貸し出すことに。そんなとき、グレーテのバイオリンを聞いた紳士は、部屋にグレーテを呼んで演奏させることになります。その音色に感動したグレゴールは、部屋から出て紳士たちの部屋をのぞきました。紳士たちは化け物がいると激怒。家賃を払わず部屋を引き払いました。
この一件をきっかけに、グレーテがムシのグレゴールを見捨てることを提案。家族は同意します。グレゴールは、絶望しながらも家族を恨むことなく息絶えました。父、母、妹は、久しぶりに揃って散策へ。父母はムシがいなくなった今、グレーテに素敵なお婿さんを見つけてやることを誓います。
カフカはムシを何の象徴と捉えた?
家族の心の変容は冷たいと言っていいのでしょうか。このムシは家を出て行くべきだと言うグレーテは冷徹な女性なのでしょうか。今まで一生懸命働いて、家族に良い暮らしをさせてきたグレゴールに対する家族の態度は賛否が分かれます。
また、グレゴールが変身したムシの種類も不明。毛虫のようなもの、ゴキブリのようなもの、いろいろ考えてしまいます。ドイツ語の原文では「鳥や小さな動物も含む有害生物一般」。当時のヨーロッパの人々の解釈では「ごきぶり」だったようです。
不条理の文学の最高峰のカフカ
カフカの名声は1930年から1940年代に高まり、サリンジャーやメイラーなど多くの作家に影響を与えました。 カフカの作品は、孤独でありながらユーモラス、現実的でありながら夢の世界をさまようような雰囲気がありました。そのため作品の解釈も多種多様。カミュの『ペスト』とともに「不条理の文学」の地位を築きました。