出版は生前と死後に分かれている
生前に出版されたものは、『観察』(1912)、『火夫』(1913)、『変身』(1916)、『判決』(1916)、『流刑地にて』(1919)、『田舎医者』(1920)、『断食芸人』(1924)の7作品のみ。死後、マックスにより発表されたのが、『審判』(1925)、『城』(1926)、『失踪者』(1927)、『アメリカ』(1927)などです。
死後にカフカは再評価され、実存主義的見地から注目されるようになりました。カフカの不条理な世界観は、若者を中心に世界的なブームに。カフカの死後、ちょうどドイツではナチス・ヒットラーがユダヤ人大量虐殺の道を進み始めます。現実世界も不条理な出来事に襲われ、余計の多くの人の心を惹きつけたのでしょう。現在では20世紀を代表する文学と言われるようになりました。
代表作となるのが『変身』
カフカの代表作として不動の地位を築いているのが、第一次世界大戦後のドイツの精神的危機を思わせる暗くて奇妙な小説『変身』です。とても暗い作品ですが、カフカ自身は友人の前でこの作品を朗読する時には、笑ったり拭き出したりしていました。
執筆されたのは1912年11月ころ。1915年の月刊誌『ディ・ヴァイセン・ブレッター』10月号に掲載されています。カフカ自身、他の短編と合わせて出版を目指しましたが、採算が合わないと実現しませんでした。
カフカの『変身』のストーリーは意味不明
『変身』のスタートは朝。主人公のグレゴール・ザムザが目を覚ますと、巨大なムシになっていました。なぜムシになったのか、どんなムシなのかは記されていません。突然、理解不可能な不条理がグレゴールを襲います。
ある朝、ムシになった男が主人公
それまでのグレゴールの生活はまじめそのもの。両親と妹を養い、それなりに良い家に住まわせ、妹グレーテが音楽学校に行く資金を貯めていました。そのためグレゴールは、ムシになった体で、必死に外へ出て働こうとしますが当然無理。この場面は読むだけで切なくなります。
一匹の大きなムシを見た父は泣き、母はへたりこみ、様子を見に来た支配人は逃げ出しました。妹は、気持ちが悪いと思いながらも必死に耐えました。家族がこのムシを見て、なぜ、グレゴールだと分かったかは記されていません。このあたりも意味不明です。
不条理を受け入れる家族たち
家族は不条理な事実を受け入れ、生活費を稼ぐために、両親とグレーテは働きに出ます。グレーテは働きながらムシの世話もしました。一家の稼ぎ手が一家の重荷になってから、家族は徐々に変化。不条理な事実を受け入れ、立ち直っていきます。しかしながらグレーテは、ムシの世話が徐々に重荷になってきました。
グレゴールは天井や壁をじょうずにはい回るようになり、それなりに平穏な暮らしをしていました。しかしある日、父はムシのグレゴールにリンゴを投げつけます。グレゴールは、背中にリンゴをのめりこませたまま傷で苦しみました。仕事で忙しいグレーテは、ムシの世話をする女を雇います。女はムシを怖がりもせず、からかうありさまでした。
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