化学理科

5分で分かる鈴木章氏とその功績!ノーベル賞を受賞したカップリング反応について阪大院卒ライターがわかりやすく解説!

鈴木章という化学者の名前を聞いたことはあるか?2010年にノーベル化学賞を受賞した日本人の化学者です。
彼が発見した鈴木ー宮浦カップリングは、現代の化学合成にはなくてはならない重要な反応になっている。
いろんな身近な製品もこの反応を生かして作られているんです。そんな鈴木章氏と鈴木ー宮浦カップリングについて、化学に詳しいライター小春と一緒に解説していきます。

ライター/小春(KOHARU)

見た目はただの主婦だが、その正体は大阪大学大学院で化学を専攻していたバリバリの理系女子。大学院卒業後はB to Bメーカーで開発を担当し、起きている現象に「なぜ?』と疑問を持つ大切さを実感した。

鈴木章氏とは?ざっくり解説

image by iStockphoto

2010年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章氏をご存知ですか?薬学、化学の分野で非常に有用な鈴木ー宮浦カップリングを提唱した有名な日本の化学者です。

今回は鈴木章氏の紹介と、ノーベル賞受賞のきっかけとなった鈴木ー宮浦カップリング反応の有用性についてご紹介します。

ノーベル賞を受賞した鈴木・宮浦カップリングとは?

鈴木ー宮浦カップリングについてご紹介していきます。いかに鈴木ー宮浦カップリングが使いやすい反応であるかは、次章以降を読めば分かってくると思いますよ。

鈴木・宮浦カップリング

1979年、鈴木氏と宮浦氏によって有機ホウ素化合物を用いて炭素ー炭素結合をつくる鈴木ー宮浦カップリングが報告されました。もともと有機ホウ素化合物は、あまりに安定しているため反応しないというデメリットがありました。鈴木氏らは、有機アミン類や炭酸カリウムなどの塩基(アルカリ性の物質)を加えることで、非常に純度も良く、高い収率でクロスカップリングが容易に起こることを発見したのです。

まず加えたOH-(水酸化イオン)がホウ素と結びつきます。すると、もともとホウ素と結合していた有機基がイオン性を増し、炭素の陰イオン性も増加。これによって、有機ホウ素化合物も有機金属化合物と同じように反応するのです。

鈴木氏は講演で「この反応で塩基を加えるということが、私のノーベル賞受賞のもとになったということができると思います」とも述べています。

鈴木ー宮浦カップリングが優れていた点

意外なことに、鈴木ー宮浦カップリング反応は発表すぐは全く注目されませんでした。ですが現在ではこの鈴木ー宮浦カップリング反応がクロスカップリングにおける主流の手法となっています。クロスカップリングに使用されてきた他元素に比べて、ホウ素が水や空気に対して安定であることと、毒性が極めて低いため、安心して医薬品の合成に使えるほか工業的に使用できるからです。

扱いが難しい有機溶媒でなく普通の水溶液中で反応が進むメリットも大きく、この手法は世界に広まりました。現在は高血圧症や腎臓病の治療薬などの医薬品や農薬、液晶材料のような次世代電子材料の製造にも利用されています。

\次のページで「鈴木ー宮浦カップリングの応用先」を解説!/

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