みんなは「孔辺細胞」はどういう細胞のことかわかるか?孔辺細胞は植物に存在する気孔を形成する細胞ですが、植物の生存には必要不可欠な存在なのです。そんな孔辺細胞と気孔の役割や特徴、仕組みについて、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

孔辺細胞とは?

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孔辺細胞(こうへんさいぼう)とは、植物の葉や茎の表皮に多く存在する気孔を構成している細胞のことです。植物によっては孔辺細胞の周辺にいくつかの助細胞が存在するものもあり、それも含めて気孔と呼ばれることもあります。孔辺細胞は、半月形の細胞が2個で1対になっており、気孔は、この1対の孔辺細胞間の中心にある孔の大きさを調節されることで開閉するのです。気孔は通気孔のような役割を担っており、開閉することで、植物体内と大気間のガス交換や水蒸気の放出が行われます。ほとんどの植物は気孔を持っており、生存には欠かせません。

気孔は何のためにあるの?役割を解説

孔辺細胞は気孔を構成している細胞であることを学びましたが、そんな気孔にはどのような役割があるのでしょうか。いずれも植物が生きていく上では欠かせない反応なので、しっかり頭に入れておきましょう。

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1 光合成

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「光合成」とは植物が光エネルギーを使って無機物である二酸化炭素などからデンプンなどの有機物を合成することを言います。この反応には水が必要であり、これにより、酸素が発生するのです。気孔は光合成に必要な二酸化炭素を植物体内に取り込み、この反応で発生した酸素を放出します。

2 呼吸

植物は、私たち人間と同じように「呼吸」を行うことで生きるためのエネルギーを作っています。呼吸とは酸素を取り込み、二酸化炭素を出すことでしたね。そのため、植物は昼夜関係なく常に呼吸を続けています。ただし、日光が良く当たる晴天の時は光合成を盛んに行われることで呼吸がどうしても目立たなくなるのです。

3 蒸散

蒸散とは植物体内の水分が、葉の気孔から水蒸気として植物体外に放出されることです。蒸散は、強い日差しによって上昇した葉の温度を下げることができます。私たち人間が体温調節するために汗をかくことと同じですね。さらに、蒸散をすることで根からの水や養分の吸収を促進することができます。

孔辺細胞の特徴とは?

孔辺細胞の特徴として、「2タイプの形があること」、「表皮系にも関わらず葉緑体があること」、「様々な細胞小器官が発達していること」の3つが挙げられます。それぞれについて詳しく学びましょう。

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腎臓型と亜鈴型の2種類がある!

すべての双子葉植物とタマネギやツユクサなどの単子葉植物が腎臓型の孔辺細胞を持っています。一方、単子葉植物であるイネ科の全ては、孔辺細胞は亜鈴型です。イネ科の中でも、イネの孔辺細胞はコムギやトウモロコシなどに比べるとかなり小さいと言われています。

葉緑体が存在する!

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植物の表皮系には「表皮細胞」、「孔辺細胞」、毛や根毛の「毛状突起」からなります。普通、葉緑体は「葉肉細胞」に多くあり、表皮系には存在しませんが、ほとんどの植物の孔辺細胞には、葉緑体が確認されているのです。しかも葉肉細胞の葉緑体と異なり、孔辺細胞の葉緑体は気孔の開閉に関連した特殊な役割があります。しかし、この詳しい役割や仕組みは、まだ完全には解明されていないので、今もなお、日本だけでなく世界中で研究が進められているのです。

その他の細胞小器官も存在する!

葉緑体のほかにも、ミトコンドリアや液胞、小胞体などの細胞小器官も存在しています。特に液胞は気孔の開閉に大変重要な役割を果たしており、ミトコンドリアも発達していることで、呼吸活性も高いです。

気孔の開閉のメカニズムとは?

孔辺細胞によって気孔が開いたり閉じたりすることを学びましたね。それでは、どのように気孔が開閉するのでしょうか。ここからは、孔辺細胞の作りや気孔開閉の合図についても触れながら勉強していきましょう。

孔辺細胞の作りについて

孔辺細胞の作りについて

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孔辺細胞は図のように細胞壁の内側(気孔側)が厚く、外側が薄くなっています。この細胞壁の厚さの違いによって孔辺細胞が湾曲するように膨らんだり縮んだりすることで気孔が開閉するのです。

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気孔が開く時は「フォトトロピン」が作用する!

気孔が開く場合、「フォトトロピン」という光受容体が活性化することで、孔辺細胞が反応し、開口します。フォトトロピンは、主に細胞膜に存在し、青色光(390nm~500nm)を吸収する光受容体のことです。気孔開口のほかにも、光屈性や葉緑体の定位運動にも関与します。

気孔が閉じる時は「アブシシン酸」が作用する!

気孔の閉鎖は水不足になることで合成される「アブシシン酸」が作用することで孔辺細胞が反応します。アブシシン酸は1965年にワタの果実から発見され、落果を促進する物質として取り出されました。気孔の閉鎖のほかにも、発芽抑制と芽や種子の休眠維持にも作用するのです。

孔辺細胞の浸透圧の変化で気孔が開閉する!

気孔は孔辺細胞が膨張することで開口し、収縮することで閉鎖することを学びましたね。実は、この膨張と収縮は孔辺細胞の浸透圧の変化によって起こるのです。

気孔が開口する時は、はじめにフォトトロピンが青色光を吸収することで活性化しますね。その活性化した情報をH+ATPase(H+を輸送するポンプ)が感知すると、H+が孔辺細胞外へ流れ出て、膜電位が過分極になります。そして、この過分極の状態に反応したK+チャネルによってK+が取り込まれるのです。この取り込まれたK+によって浸透圧が上昇し、吸水することで孔辺細胞が膨張します。

一方、気孔が閉鎖する時は、はじめにアブシシン酸が作用することで、孔辺細胞内のCa2+濃度が上昇。これにより、陰イオンの排出が起こり、膜電位が脱分極の状態になり、これに反応したK+チャネルが開くことで、K+を孔辺細胞外に排出されるのです。これにより、浸透圧が下がり、排水することで孔辺細胞が収縮します。

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孔辺細胞がないと気孔は成り立たない!

孔辺細胞の浸透圧が上昇することで吸水が起こり、膨張することで気孔が開口します。さらに、孔辺細胞の浸透圧が減少することで排水が起こり、収縮することで気孔が閉鎖するのでした。また、この孔辺細胞が構成している気孔は、光合成や蒸散など植物が生きていく上で欠かせない反応に関わっていることがわかりましたね。気孔の開閉の仕組みはなかなか複雑ですが、少し苦手に思う方も、ぜひこの記事を通して孔辺細胞のことを学び、苦手を克服してくださいね。

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理科環境と生物の反応生き物・植物生物細胞・生殖・遺伝

孔辺細胞って何?気孔の役割や特徴と仕組みについても現役理系学生がわかりやすく解説

みんなは「孔辺細胞」はどういう細胞のことかわかるか?孔辺細胞は植物に存在する気孔を形成する細胞ですが、植物の生存には必要不可欠な存在なのです。そんな孔辺細胞と気孔の役割や特徴、仕組みについて、生物に詳しいライターききと一緒に解説していきます。

ライター/きき

大学生の頃は農学部に所属し植物のことを勉強した。現在は大学院に進学し植物のことを研究中。生物や植物の面白さを伝えられるライターを目指している。

孔辺細胞とは?

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孔辺細胞(こうへんさいぼう)とは、植物の葉や茎の表皮に多く存在する気孔を構成している細胞のことです。植物によっては孔辺細胞の周辺にいくつかの助細胞が存在するものもあり、それも含めて気孔と呼ばれることもあります。孔辺細胞は、半月形の細胞が2個で1対になっており、気孔は、この1対の孔辺細胞間の中心にある孔の大きさを調節されることで開閉するのです。気孔は通気孔のような役割を担っており、開閉することで、植物体内と大気間のガス交換や水蒸気の放出が行われます。ほとんどの植物は気孔を持っており、生存には欠かせません。

気孔は何のためにあるの?役割を解説

孔辺細胞は気孔を構成している細胞であることを学びましたが、そんな気孔にはどのような役割があるのでしょうか。いずれも植物が生きていく上では欠かせない反応なので、しっかり頭に入れておきましょう。

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