今回はボーマンのうについて解説していきます。

ボーマンのうとは、腎臓の濾過機能に必要なパーツの1つです。糸球体、ネフロン、尿細管なども、しばしばセットで登場するキーワードです。どれも難しそうな名前をしているが、腎臓の機能と構造さえ抑えられればきちんと理解できるぞ。人体構造の理解には、マクロからミクロに順を追って整理していくことが重要です。

医学生ライターのたけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験あり。人体全般と再生医療に興味がある。

ボーマンのうって何?

ボーマンのうの位置と機能を確認していきましょう。

ボーマンのうはどこにある?

ボーマンのうはどこにある?

image by Study-Z編集部

まずはボーマンのうの位置から確認していきましょう。

ボーマンのうは腎臓の一部です。と言っても、少しややこしい場所に存在しています。

まず、腎臓はソラマメのような形をした、中央に空洞を持つ臓器です。実の部分は外側から順に皮質と髄質に分けることができ、この部分を拡大して見てみるとネフロン(腎単位)という構造がたくさん集合していることがわかります。

ネフロンは腎小体(マルピーギ小体)と尿細管(細尿管、腎細管)をセットにしたものです。その名の通り腎臓の濾過機能に必要な1単位と言えるでしょう。さらに細かく見ていくと、腎小体はボーマンのうと糸球体からできていることがわかります。

まとめると以下の通りです。

ネフロン(腎単位)=腎小体(マルピーギ小体)+尿細管(細尿管、腎細管)

腎小体=ボーマンのう+糸球体

ちなみに、ヒトでは1つの腎臓あたりおよそ100万個のネフロンがあると言われています。ヒトの腎臓は左右に2つありますから、合計しておよそ200万個です。すごい数ですね。

ボーマンのうの役割は?

では、ボーマンのうの機能を確認していきましょう。

ボーマンのうは、簡単に言えば「原尿の受け皿」。糸球体で濾過された原尿の滲み出す先がボーマンのうなのです。ボーマンのうは風船のような形をしており、端には尿細管という、原尿が流れ出ていくチューブがつながっています。

さて、栄養や老廃物が血液に乗っかり体内を移動していることはご存知でしょう。老廃物は、いつかは体外に排出されなくてはいけません。また、栄養はなるべく体内に保っておきたいものですよね。この「栄養と老廃物の取捨選択」を行っているのが腎臓という臓器なのです。難しい表現をすると、「体内の恒常性を維持している」とも言えます。

\次のページで「尿はどうやって作られる?原尿とは?」を解説!/

image by iStockphoto

そんな糸球体ですが、実は血管の一種で、その中には血液が通っています。そして、糸球体の壁は「血球やタンパク質などの大きい成分は通さないが、水やミネラルなどの小さい成分は通す」機能、すなわち濾過機能を持っており、これが腎臓の取捨選択機能の一つを構成しているのです。そしてボーマンのうの受け皿へと染み出していき、尿細管へと流れ出ていくのですね。腎臓の取捨選択機能にはまだいくつか種類がありますが、これは次の章で紹介します。

尿はどうやって作られる?原尿とは?

先ほど、「腎臓は栄養と老廃物の取捨選択をしている」とお話ししました。具体的に、どこで何を取捨選択しているのでしょうか。順を追って整理していきましょう。

1.「血管」から「尿細管」へ

1.「血管」から「尿細管」へ

image by Study-Z編集部

まず初めに、「これから濾過される血液」が腎臓に入ってくる段階。

腎臓を遠目に見てみると(医学的には「肉眼的に見る」と言います)、ソラマメ型の腎臓から腎動脈腎静脈、そして尿管が出ていることがわかります。

ここでちょっとややこしいのが「動脈」と「静脈」という名前の扱いです。普通「動脈」と言えば、「酸素や栄養を多く含んだ元気な血管」というイメージを持たれがちですが、実はこのイメージは腎動脈には当てはまりません。「動脈」とは、あくまで「体の中心(心臓)から体の端っこ(臓器)へと向かう血液の流れる血管」を意味するもので、血管に含まれる酸素や栄養の量とは関係がないのです。

ということで、腎動脈は「これから濾過される血液」を含む血管、逆に腎静脈は「ろ過されなかった残りカスの血液」を含む血管、そして尿管は「濾過された尿」を含む管、ということができます。

image by Study-Z編集部

もう少し拡大して見てみましょう。先ほどの腎動脈ですが、実は糸球体につながっているんです。糸球体の入り口に当たるので、輸入細動脈と言います。では糸球体から出ていく血管は?輸出細動脈です。動脈なのですね。この輸出細動脈はネフロンから出た後、なんと網目のような毛細血管となり尿細管を取り囲みます。毛細血管は動脈から静脈に切り替わるターニングポイントです。そのため、この毛細血管の静脈側はいずれ集合して腎静脈となり腎臓から出ていきます。

一方の糸球体ですが、前の章でも扱った通り、ボーマンのうへと原尿を濾過していましたね。原尿は尿細管へと流れ出ていきます。この時、ボーマンのうへ濾過されない物質、つまり輸出細静脈に残る物質は「赤血球、白血球、血小板、タンパク質」などの大きい物質。逆に、濾過されて原尿となる成分は「水、NaやKなどのミネラル、グルコース、尿素」などです。

さて、ここまでの流れをまとめてみましょう。

腎動脈→輸入細動脈→糸球体

→(濾過されなかった残りカスの血液コース)輸出細動脈→毛細血管→腎静脈

→(濾過された尿コース)ボーマンのう→尿細管

\次のページで「2. 「尿細管」から「集合管」へ」を解説!/

2. 「尿細管」から「集合管」へ

さて、尿細管ですがこの器官も特殊です。なんと一度下がって上がってくるUターン型をしています。このUターンにはちゃんと理由があるのですが、かなりややこしいのでここでは簡単にご説明しますね。ズバリ、「薄い原尿を濃縮して、濃い尿にする」機構なのです。原尿は、血液から血球やタンパクを取り除いただけのものですから、Naやグルコースなどがまだまだ含まれています。水分も、尿として排泄するには多すぎる。ここで、このUターンが活躍するのです。

近位尿細管、ヘンレのループ、遠位尿細管と通過していく間に、原尿に含まれていた水やミネラル、グルコースなどが毛細血管へと戻っていきます。これが再吸収です。「必要なものを体内に残しておく」方向ですね。

一方、クレアチニンなどの老廃物は毛細血管から尿細管へと排出されていきます。これが分泌です。「不要なものを体外に排出する」方向ですね。

ちなみに、「どれだけ再吸収するか」によって様々な物質の血中濃度が変動することがお分かりいただけるかと思うのですが、この調節はアルドステロンなどのホルモンが行なっています。ヒトの体は不思議なもので、常に最適の濃度が保たれるよう複雑な調節機構が働いているのです。

再吸収や分泌を受けた尿は、集合管へ。

集合管では、バソプレシンというホルモンによりさらに水が再吸収されます。どんどん尿が濃くなっていきますね。こうして尿が完成するのです。

さて、ここまでの流れをまとめます。

近位尿細管→ヘンレのループ→遠位尿細管→集合管

3. 「集合管」から「尿路」へ

3. 「集合管」から「尿路」へ

image by Study-Z編集部

さて、冒頭で、腎臓は「中央に空洞を持つ臓器」とお話ししました。実はこの空洞は腎盂と言って、完成した尿が、ネフロンのある皮質や髄質から流れ込んでくる場所なのです。

腎盂は尿管につながっています。輸尿管の先には膀胱があり、その先は尿道。膀胱である程度までためられた尿は、脳からの指令により尿道へと排出されます。これでやっと、尿の排泄が完成しました。長い道のりでしたね。

ちなみに輸尿管から尿道までをまとめて尿路と言います。便利な表現なので覚えておきましょう。

難しい名前も、構造と機能を理解すれば怖くない!

さて、ここまで「ボーマンのう」の位置と役割、そして尿が濾過される仕組みを見てきました。人体のパーツ名(解剖名)には、一見ややこしいものが多くあります。それゆえ、「難しい分野」という印象を持たれがちです。

しかし、機能と構造さえ整理すればきちんと理解できます。マクロからミクロに順を追って見ていけば、一見難しそうな名前が並んでいても怖いものなしですよ。

また補足ですが、人体の理解には良い画像と出会うことが重要です。ある地図を理解するのに、道のりの説明文だけではなく地図そのものを見た方が早いのと同じことですね。自分なりにわかりやすい図を作ってみるのもおすすめですよ。

この記事が皆さんの理解の手助けになれば嬉しいです。

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タンパク質と生物体の機能体の仕組み・器官理科生き物・植物生物細胞・生殖・遺伝

ボーマンのうとは?役割や構造は?どこにあるの?尿が濾過される仕組みを現役医学生がわかりやすく解説!

今回はボーマンのうについて解説していきます。

ボーマンのうとは、腎臓の濾過機能に必要なパーツの1つです。糸球体、ネフロン、尿細管なども、しばしばセットで登場するキーワードです。どれも難しそうな名前をしているが、腎臓の機能と構造さえ抑えられればきちんと理解できるぞ。人体構造の理解には、マクロからミクロに順を追って整理していくことが重要です。

医学生ライターのたけのこと一緒に解説していきます。

ライター/たけのこ

心臓に魅せられた現役医大生。心臓外科医に憧れ、中学生の頃は血管モデルや心臓模型を作ったりして遊んでいた。個別指導の経験あり。人体全般と再生医療に興味がある。

ボーマンのうって何?

ボーマンのうの位置と機能を確認していきましょう。

ボーマンのうはどこにある?

ボーマンのうはどこにある?

image by Study-Z編集部

まずはボーマンのうの位置から確認していきましょう。

ボーマンのうは腎臓の一部です。と言っても、少しややこしい場所に存在しています。

まず、腎臓はソラマメのような形をした、中央に空洞を持つ臓器です。実の部分は外側から順に皮質と髄質に分けることができ、この部分を拡大して見てみるとネフロン(腎単位)という構造がたくさん集合していることがわかります。

ネフロンは腎小体(マルピーギ小体)と尿細管(細尿管、腎細管)をセットにしたものです。その名の通り腎臓の濾過機能に必要な1単位と言えるでしょう。さらに細かく見ていくと、腎小体はボーマンのうと糸球体からできていることがわかります。

まとめると以下の通りです。

ネフロン(腎単位)=腎小体(マルピーギ小体)+尿細管(細尿管、腎細管)

腎小体=ボーマンのう+糸球体

ちなみに、ヒトでは1つの腎臓あたりおよそ100万個のネフロンがあると言われています。ヒトの腎臓は左右に2つありますから、合計しておよそ200万個です。すごい数ですね。

ボーマンのうの役割は?

では、ボーマンのうの機能を確認していきましょう。

ボーマンのうは、簡単に言えば「原尿の受け皿」。糸球体で濾過された原尿の滲み出す先がボーマンのうなのです。ボーマンのうは風船のような形をしており、端には尿細管という、原尿が流れ出ていくチューブがつながっています。

さて、栄養や老廃物が血液に乗っかり体内を移動していることはご存知でしょう。老廃物は、いつかは体外に排出されなくてはいけません。また、栄養はなるべく体内に保っておきたいものですよね。この「栄養と老廃物の取捨選択」を行っているのが腎臓という臓器なのです。難しい表現をすると、「体内の恒常性を維持している」とも言えます。

\次のページで「尿はどうやって作られる?原尿とは?」を解説!/

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