自己免疫疾患とは一体何?原因や症状、アレルギーとの関係などを現役研究者がわかりやすく解説
自然免疫に異常が起こり、自己炎症疾患が起こる
自然免疫では白血球やマクロファージと呼ばれる細胞が体内に侵入した異物を取り込み、消化し、分解します。この自然免疫は自己免疫疾患の要因とはあまり考えられていません。遺伝子の変異などで自然免疫系に異常が起こり、過剰な免疫反応が起こり臓器障害を生じる病気は自己炎症性疾患と呼ばれます。
自己免疫疾患では自己抗体や自己反応性Tリンパ球などを認めますが、自己炎症性疾患では自己抗体や自己反応性Tリンパ球は認めないのが違いです。
獲得免疫の異常が自己免疫疾患の原因になる
Made, for the sake of free knowledge to all mankind, by Mikael Häggström (User:Mikael Häggström);tossh_eng for some ja labels – http://en.wikipedia.org/wiki/Immune_system, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
獲得免疫では外敵(抗原)が侵入すると、免疫の司令塔であるリンパ球の一種のT細胞がB細胞に対して、抗原に対応する抗体を産生するようにシグナルを送ります。抗体は抗原と結合し、それをマクロファージなどが細胞内に取り込んで分解し、排除する。この獲得免疫の異常によって引き起こされるのが自己免疫疾患です。
近年の研究では、T細胞やB細胞の機能に異常が起こり、自分の体にある組織や細胞を異物として認識し、攻撃するようになると考えられています。T細胞に関する研究をもとに、自己免疫疾患の治療薬の開発が、現在、盛んに進められているところです。
自己免疫疾患の代表例
image by Study-Z編集部
自己免疫疾患は数多くの病気を含む包括的な概念です。自己免疫疾患は全身の組織に炎症が起こる「全身性自己免疫疾患」と、特定の臓器を攻撃する抗体によって臓器の機能がおかされる「臓器特異的自己免疫疾患」に大別される。
全身性自己免疫疾患では体中のどこにでもあるような抗原に対して免疫反応が起こるのに対して、臓器特異的自己免疫疾患では臓器の中の特定の組織中の抗原に対して自己免疫反応が起こるのが違いです。どちらの場合も、標的となった臓器や組織に慢性的な炎症が起こってリンパ球や食細胞が浸潤し、組織が破壊されます。
バセドウ病、橋本病、1型糖尿病、シェーグレン症候群、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、潰瘍性大腸炎などが自己免疫疾患の代表例です。
その1:バセドウ病、橋本病
バセドウ病や橋本病ではどちらも甲状腺が異物として認識され、障害を受け動悸、発汗、むくみ、疲労感などの症状が出現します。バセドウ病は甲状腺を異物とみなして産生された抗体(TSHレセプター抗体)が、甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、身体の新陳代謝が活発になり過ぎる病気です。一方の橋本病は、甲状腺を異物とみなして産生された抗体(抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)が、甲状腺自体の細胞を破壊して起こります。甲状腺の破壊により甲状腺ホルモンの分泌が減り、身体の新陳代謝は停滞してしまう病気です。
その2:1型糖尿病
1型糖尿病はインスリン分泌の機能を担う膵臓のβ細胞が障害により、インスリンの分泌不全が起こること発症します。通常はインスリンの作用によって細胞内にブドウ糖が取り込まれ、エネルギー源として利用されるのですが、インスリンの分泌不全が起こるとブドウ糖が細胞内に取り込まれなくなるので血糖値が上昇する。口渇、多飲、多尿、体重減少などが症状として認められます。
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